フェイト嬢を伸して、なのは嬢に認識の甘さを伝えてた日から数日たった。特筆することと言えば、何でも紫耀達がなのは嬢に自分も魔導師ということを打ち明けたらしく、四人と一匹でせっせとジュエルシードを集めているらしい。話によるとジュエルシードは全部で21個。その内の9個をなのは嬢チーム、5個をフェイト嬢、一個を私が所持している。あと6個は未だに見つかっていないらしい。なんともまあ大変な事だ。
私がジュエルシードを持っているのは紫耀達にも伝えてないので、第三者がジュエルシードを集めていると思っているらしい。なのは嬢から聞いた状況からエイヴィヒカイトに似た術式と判断したようで私に相談してきたが、誤魔化しておいた。唯一私が姿を変化させているのを見ている紫耀に対しては【記憶を喰らって】そのことを忘れさせた。奴が覚えているのは『私がフェイト嬢に会いに行こうとした事』だけだ………改竄がバレたら面倒くさそうだ。バレる訳がないがな。
それと紫耀達がなのは嬢に魔導師ということを打ち明けたのと前後して、件の時空管理局とやらが地球に来たらしい。私のスタンスは『魔法については何も知らない裏の人間』なので、管理局の連中とは出会っていないが紫耀達から情報は仕入れている。
何でも14歳の少年が実働部隊の指揮を取ってるとかなんとか。………次にジュエルシード関連の事件が起こったら管理局と接触するとしようか。無論、黒円卓のメンバーとしてだがな。
私の周りに関してはこの程度だな。そのように周りが若干慌ただしくなっているが、私にはあまり関係無い。現在私は異空間内に存在する自分のラボでジュエルシードの分析を行っている。あまり目新しい発見は無かったが、魔導師が使う魔力の性質等は解ったので、それを封じ込める機械を開発する傍らで私の専用機体である、【アストラルセイヴァー】の整備もおこなっていた。
アストラルセイヴァー。科学が発展し、人型兵器が闊歩する世界で創り出された私だけの機体。正式な機体番号は存在しないが、一応シャドウミラーが所有していたアシュセイヴァー系列になる機体だ。とは言っても全高がアシュセイヴァー系列が20mほどに対して、アストラルセイヴァーは40m越え。所謂【特機】サイズの代物だ。
『向こう側』の技術と『こちら側』の技術を結集させたもので、動力炉は最新式のブラックホールエンジンと『向こう側』のトロニウムを使用したトロニウムエンジンの複合型。補助動力としてTEアブゾーバーも積んでいる。
武装もシャドウミラー系列のものから、ツェントル・プロジェクトのものまで取り揃えている。他にも様々な機能を積んであるが、割愛する。この異空間には整備スタッフとして、レモンから教わった技術を使い、量産型Wシリーズが存在している。本来この異空間、私以外の生命は滞在出来ないのだが、Wシリーズは別だった。まあ人手不足で悩む必要もないから助かっているが。整備に使う素材も【ホワイトスター】にあったキブツを利用している為不足するということはない。
…………と、本題から逸れてしまったかな?
まあ現在開発している対魔導師用の機械……仮に
Anti Magiring System、略してAMSとでもしようか。管理局との邂逅の時に脅しの意味で使ってやるとするか。これに関しては試作機は完成済み、効力もジュエルシードを暴走しない程度に稼働させて魔力を抑え込んでいるのを確認している。後は携行可能なサイズにまで小さくするだけだが………この空間で2日もあれば出来るだろう。この空間、時の流れが非常に緩やかでここでの1日過ごしたとしても外では10分程度しか経過しない。研究するには最適な環境ではあるが、元々武闘派であるためにあまり活用していない。どちらかというと、この研究所から離れたところにある演習場でのカールから贈られてくる代物の習熟のために使っていることが多いな。
とは言いつつもここ最近は研究機材フル稼働だがな。
ガイアメモリもバイラルコアやシグナルバイクも自身で調整出来るようにしなければのちのち面倒になるからな。では、管理局とやらが本格的に動き出す前にAMS、ガイアメモリ、バイラルコア、シグナルバイクの調整を済ませるとしよう。
<メイドインヘヴン!!トキハカソクスル!!!!
時間が加速する感覚がしたが無視する。………俗に言う気にしたら負け、と言う奴だ。
現在は調整を始めた日から現実世界で2日ほど経過している。この異空間では、288日つまりはほぼ1年近く経過している。元々想定していた諸々の調整は100日程度で済んでしまったので、残りの日にちは五大ギアとバイク、アストラルセイヴァーの調整をしていた。
何故このようなことを話し始めたかと言うと、紫耀から連絡があったのだ。何でもフェイト嬢が残りのジュエルシードが残っていると思わしき地点で、強引に暴走させようとしているらしい。私にそれを止める為の手伝いを要請してきたのだが、今研究で手が離せないから向かえないと嘘をついて断ったが、また変装して向かうとする。
とはいえ、模倣する人物も限られて来るのだ。
ベイ、マレウスは紫耀に私だとバレる可能性がある為除外。ベアトリスも海の上では効率よく無効化するのが手間取りそうなので駄目だ。三騎士は強過ぎる、リザ、シュピーネは少々弱い。ゲオルギウスやヴァレリアは今回のケースではイマイチ役に立たない。こうなると、戒と螢くらいか?………戒の力を借りるとするか。脅す、という点ではマキナ並に効果的だろう。
空を飛ぶ
…………では、向かうとしよう。
異空間を出てすぐ、外の竜巻が発生している地点へと向かう。私の姿は既に櫻井戒と同じものになっている。顔の部分に黒色のバイザーを付けて、念の為顔を隠してはいるがな。
「……………あれは紫耀かな?上手いことフェイトちゃんたちを庇いながら立ち回っているね」
恐らくフェイト嬢はジュエルシードを暴走させた時に魔力を殆ど使ってしまったのか飛行すらおぼついていない。そんなフェイト嬢を守るようにあの狼の人型が飛んでいるが、どう見ても近接型にしか見えない。そんな彼女がフェイト嬢を守りきるのは難しいだろう、事実幾つか迎撃漏らしがフェイト嬢を襲うが、それを全て紫耀が竜巻に対処しながら迎撃している。それも居合で魔力を飛ばしているのだから、よほど居合に自信があるのだろう。
ローザ・シャルラハロートや灰群蒼児はなのは嬢と黒服の少年と連携して竜巻に対処している。………あの黒服の少年が紫耀の言っていた、管理局の実働部隊の指揮を取っている少年なのだろう。随分と真面目そうな顔をしている。あの顔は融通の効かない堅物の顔だな。
「おっと、何時までぼーっとしてないで僕も手伝うとするかな」
そう呟きつつ、エイヴィヒカイトの位階を形成位階へとあげる。そうして現れるのは櫻井戒の身長に匹敵する大きさの漆黒の大剣。銘を
【
黒円卓首領であるラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ卿の聖遺物である
【
「ッ!!?誰だテメェは!!!」
「君に答える必要があるとは思えないが………まあいいだろう。僕は古代遺産管理・調査部隊、聖槍十三騎士団黒円卓第二位、櫻井戒。仲間からは専ら
【
「「「「!!!!???」」」」
仮染めの名を名乗ると、その場に居た全員が反応する。…………まあなのは嬢と容易く倒した奴と同じ組織に所属している人物が現れたらそれは驚くか。
「その黒円卓の一員が何のようだ……よっ!!」
「………この竜巻が先日確保した物と同じ波動を放っていたからね、様子を見に来たと言う訳だ」
「ああそうかよ!!ならとっとと失せろ!!邪魔だ!!!!」
「別にそれでも構わないんだが………ここで何もしないで去るというのもどうかと思うし、手伝うことにするよ」
「はぁ……!!?」
先程から私と会話を繰り広げていた紫耀の素っ頓狂な声を無視して、
「なっ……!!?」
「何を惚けているんだ?さっさとあの石を封印したらどうだい?」
「………チッ!言われなくても解ってるよ!!ローザ!!なのは嬢ちゃん!!合わせろ!!」
「は、はい!!」
「勿論ですわ!!」
紫耀が声を掛け、三人が一斉に封印術式が組み込まれた魔法を放つ。なのは嬢は杖の先端からの収束砲撃、ローザ・シャルラハロートは手にっている剣に魔力を集めそれを放ち、紫耀は居合の形で魔力を凝縮したもの、魔力刃とでも呼称しようか。それをジュエルシードに向かって放つ。…………ローザ・シャルラハロートのあれはどう見ても
何にせよ、無事にジュエルシードを全て封印出来たので良しとしようか。
「うし、ジュエルシードはこれでオッケーだな。問題は……櫻井戒だったか?テメェは」
「何かな?僕としてはこの場でやるべきことは総て済ませたから、帰るつもりなんだが」
「そんな訳にはいかない!!君達の組織に有るジュエルシードをこちらに渡してもらう!!」
紫耀と私の会話に黒服の少年が割り込んでくる。………さあて、時空管理局とやらの執務官のお手並み拝見と行こうか。
「何だ?君は。彼女達にしてもそうだが、子供が戦場に出て来るなんて、どういう教育を受けているのやら」
「僕は時空管理局所属、執務官クロノ・ハラウオンだ。そして僕は自分の意志で此処にいる!!馬鹿にするのは止めろ!!」
「おや、それは済まないね。それで?時空管理局だったかな?それはこの世界に関係のある組織なのかな?生憎と僕は聞いたことが無いのだが?」
「………確かに管理局はこの世界には関わりが無かった。だが!!魔法絡みの事件が発生した以上、これは管理局の問題だ!!」
成程、成程。まさに餓鬼の言い分だな。自分達が使っている技術が使われている事件が発生したらそこはもう自分達の法が適用する世界だと?
「………巫山戯ているのか?君は」
「なっ!!!?」
「この世界はずっと以前から、僕たちが守っている。君………いや、貴様等程度の力しか持たない屑共が口を出そうなどと、調子にのるな……!!」
まあ嘘だが。だが勝手に来てこれは管理局の仕事だから介入してくるな、と言うのは傲慢に過ぎるというものだ。
「なら貴方も公務執行妨害で確保させてもらう!!」
そう叫ぶなり、少年が魔力で出来た砲弾をこちらへと飛ばしてくる。防御してやってもいいのだが、この少年には抗い難い絶望というものを体感してもらうとしよう。
私は何もせずに棒立ちのまま、彼の魔力弾を受ける。すると、その魔力弾は拘束具となって私の身体を縛り上げる。
「そのまま大人しくしといてもらおう!!」
少年はそう私に言い放ち、何処かに通信をし出す。…………詰めの甘いことだな。
折角だ。この隙を利用させて貰うとしよう。
血の道と血の道とその血の道返し畏み給おう。
禍災に悩むこの病毒を、
この加持にて今吹き払う呪いの神風。
橘の小戸の禊を始めにて、
今も清むる吾が身なりけり。
千早振る神の御末の吾ならば、
祈りの叶わぬは無し。
「だ、駄目………!その詠唱を完成させちゃ!!」
なのは嬢から少年に注意が飛ぶが、もう遅い。
創造―
櫻井戒の「大切な人(ベアトリスと螢)の穢れを引き受ける者になりたい」という渇望のルールを具現化した求道型の創造。能力は『自身を腐食毒そのものへと変化させる』こと。この力により、私の身体を縛っている拘束具は腐り落ちる。
「何………ッ!!?僕の魔法が!?」
「遅い」
「………………ッア!!!!??」
少年が驚いている隙に、少年へと迫り、腹部に蹴りを入れる。………少々感触が可笑しかったが、少なくとも確実に骨を砕いた。…………やはり、人に対しての攻撃はエイヴィヒカイトの効力が落ちるな。本来なら血袋のようになっていないとおかしいのに原形を留めている時点で異常だ。
私を放浪させている上位のモノの意志なのかもしれんが、無用な殺しをせずに済むから助かると言えば助かるが。
「………この程度の攻撃も躱せないのに、一体何を成せるというんだ?此処にいるのが僕であることに感謝するといい。マキナやザミエル卿であれば、跡形も無く消滅させられていたからね」
「な、何を………?」
「解らないかい?なら簡潔に教えてやる。この世界に介入するつもりなら、せめて僕くらいは圧倒してくれ。でなければ、三騎士の方々の怒りを買ってしまう………と言っても、もう遅いと思うが」
「何………だと……?」
「あれだけ無作為にこの世界に近付いて我々が気付かないとでも思ったのか?その時点で君達は彼等の不興を買っている。その上、このように我が物顔で僕達の領域を侵しているのだから始末に負えない」
敢えて大仰なリアクションを取る。顔は仮面で隠しているから相手にはこちらの顔色を窺う事はできないからな。動作で表わしてやるしかない。
「………と、意味のない事を話している時間は無いんだった。では、僕はこれで失礼するよ。管理局とか言う巫山戯た組織の方々は、出来れば早急にこの世界から去ることをオススメするよ」
死にたくなければね。と言い残し、この場を去る。今回の私の介入はここまでだ。これに懲りずにまだ介入してくる様なら………その時は