巻き込まれた放浪者   作:北河静

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第11話

管理局への牽制という名の脅しをしてから数日。

私は紫耀に捕まっていた。場所は翠屋とはまた別の喫茶店。落ち着いた大人の雰囲気を感じるこの店は表通りから外れた場所にあるため、人に聞かせられないような話をするにはうってつけの場所だ。こんな場所を紫耀が知っていたのいうのに、少々驚いたのは秘密だ。

 

「………ったく、マジで何なんだあの軍服野郎!ローザの話によりゃあの軍服、ドイツのゲシュタポで使われてたやつと瓜二つだとか言ってやがったし……」

「わかったわかった。その話もう六度目になるぞ?いい加減今回の件の顛末を教えろ」

「あ?ワリィな、どうしても収まんなくてよー………ったく何で日本人がドイツの軍服着てんだよ」

 

そう、もう既にジュエルシードを巡る事件は終結している。執務官の少年を蹴り飛ばした際に取り付けたナノマシンサイズの盗聴器から逐一情報は得ていた。関わらなかった間になのは嬢とフェイト嬢のジュエルシードを賭けた決闘があったのだが、それはこっそり結界内に侵入して観戦させてもらった。余りにも良い勝負だったので思わず6台もの超高性能ビデオカメラを使ってあらゆる角度から撮影してしまった。

この行為が犯罪者のそれだと気付いたのがビデオを編集し終わった時だった。捨てるのも勿体無いので、今度カールに頼んでハイドリヒに送ってやろう。奴もこういう強い意志がぶつかり合うものは好きだった筈だ。

にしても彼女達は末恐ろしいな。フェイト嬢はベアトリスに扮した私が見せた雷速機動を再現しているし、彼女が私に放ったフォトンランサー・ファランクスを改良したと思われるフォトンランサー・ジェノサイド・ファランクス等という技を使っていた。1024発から、3072発に変わっていたのに加え、一発ごとの威力も増大しているのだから驚いたものだ。流石にあれは私にもダメージが入ると思わせる代物へと変貌を遂げていた。

だが、なのは嬢はそれを防ぎ切った挙句、周辺に漂う魔力を収束させた砲撃、スターライトブレイカーとやらを放っていた。それだけで終わればまだ良かったものを、そこから更に周辺魔力を収束、それをデバイスの先端に凝縮させて刀身を形成、そしてそれでフェイト嬢に切りかかるという技まで披露していた。

刀身の形状が、黒円卓の聖槍に非常に酷似していたことから、戒に扮した私に多少なりとも影響を受けたようだ。………正直あれは私でさえ鳥肌がたった。スターライトブレイカーの時点でボロボロになっていたフェイト嬢にスターライト……長いな、SLBでいいか。それとほぼ同じ量の魔力を収束させた一閃を喰らわせるとは………戦闘民族TAKAMACHIの血は彼女にも引き継がれているということなのだろう。もしこれから先、彼女達と戦うことがあるなら開幕の一撃で沈めるのが吉だな。見たところ、彼女達はまだまだ潜在能力を秘めている。これからの成長が楽しみでもあり恐ろしくもある。

 

「………おい蓮夜。ちゃんと聞いてんのか?」

「聞いているよ。なのは嬢とフェイトと言う少女が決闘したんだろう?」

「………ちゃんと聞いてんなら構わねぇけどよ」

 

そう言って紫耀は語りを再開するが、全部知っているので聞き流す。どの部分を語っているかだけ聞き逃さなければ問題はない。

 

今回のジュエルシードを巡る事件は結局1人の女性が原因だったようだ。

【プレシア・テスタロッサ】

フェイト嬢の母親に当たる人物で研究者でもあった彼女はジュエルシードを使って1人娘である

【アリシア・テスタロッサ】の蘇生を行おうとしたらしい。上記の説明と食い違う点が有るかもしれないが、それについては今から説明する。

事の始まりはプレシア・テスタロッサが【アレクトロ社】という会社に在籍していた頃にまで遡る。この頃の彼女は会社の上層部による無理かつ無謀な指令に追われるうち、上層部が強行した実験による事故でアリシア・テスタロッサを失う。

その後【F計画】と呼ばれる人造生物を創り出すプロジェクトに参加し、そのノウハウを学ぶ。

 

そして彼女に『アリシアの代わり』として創り出されたのがフェイト嬢。つまり彼女はクローン人間となる。だが、フェイト嬢はアリシア・テスタロッサとは人格等が異なっていたため、プレシア・テスタロッサにはフェイト嬢が自分の娘だと受け入れることが出来なかったようだ。

それ故にジュエルシードという人の手に余る代物を使ってまでアリシア・テスタロッサを蘇生させようとした。

 

プレシア・テスタロッサにしてみれば、失ったものを取り戻そうとしただけ。だが、手段を選ばなかった故に彼女は犯罪者となってしまった。その彼女も最期は管理局に追い詰められて、次元の狭間に存在する

【虚数空間】にアリシア・テスタロッサと共に落ちていった。

 

何故私がここまで裏事情に詳しいのかと言うと、先程説明した通り、執務官の少年に盗聴器を取り付けている。ナノサイズである以上肉眼では捉えられない為に座標を知らせるシステムも組み込んである。その座標を頼りにして管理局の船に潜入、後は手頃な端末を探して管理局のデータベースにハッキング。その結果、山程の汚職、事件隠蔽、挙句の果てには犯罪幇助までキッチリデータが残っていた。次、管理局の連中が来たら三騎士の武力制圧の後にこのデータを突き付けてやることにしよう。……ククッ。そのときが愉しみで仕方がない。

 

 

「…………とまあこんな感じで今回の事件は解決ってとこだな」

「ああ、態々すまんな。特に手伝いもしていないのに説明などさせて」

「ああ、気にすんなって。こっちも愚痴に付き合ってもらったからな。お互い様だ」

「………そう言ってもらえるとありがたいよ」

 

実質今回の事件で私がした事と言えば、黒円卓の連中に変装して余計な茶々を入れたことと、管理局の裏データを根こそぎ奪った程度だ。………言葉にして纏めると本当に酷いな。

 

「てか蓮夜よ〜お前本当に聖槍十三騎士団とか言う連中について心当たりねぇの?」

「ふむ……聖槍十三騎士団、ねぇ……?」

 

さて、なんと答えるべきだろうか。此処で余計な疑いを持たれても面倒だからな……黒円卓という組織についてだけ軽く説明すればいいか。

 

「その黒軍服連中かどうかは知らんが、古代遺産管理・調査部隊という組織は聞いたことがある」

「本当か!!!?」

「ああ。とはいえ、こことは別の世界での話だからこの世界の連中が同じかどうかまでは確証は持てんぞ?」

「それでも構わねぇ!!少しでも情報が欲しいんだ!!」

「………わかった。古代遺産管理・調査部隊、この組織は第二次世界大戦前にドイツで作られた組織だった。その当時はただのオカルトに関係ありそうな物を収集するだけの組織だったのだが、世界大戦が激化する中で本当に古代遺産………つまりは聖遺物を見つけ出した」

「…………それって、確かエイヴィヒカイトを発動させる為に必要なもんじゃ無かったか?」

「ああ、まあ聖遺物(それ)単体なら問題は無かったんだが、それと時を同じくしてドイツに一人の魔術師が現れた。その当時は【カール・クラフト】と名乗っていたかな?まあその辺はどうでもいいとして、そいつがエイヴィヒカイトを生み出した張本人だった」

「………そんで?」

「エイヴィヒカイトを修得した集団が生まれた。彼等は聖槍十三騎士団と名乗り始め、暗躍し出した………らしい」

「らしい!!!?何で一番大事なとこがあやふや何だよ!」

「仕方あるまい。実際にその当時私はそこにいなかったのだから」

「ぐっ……!!!ならしゃあねぇか……」

「まあ私が知っているのはそのくらいだ。この世界でも同じ存在になっているかは知らんが、一応可能性として頭に入れておくといい」

 

全部ホラ話だがな。まあ警戒を怠っていれば、死なない程度にぶちのめしてやるとしよう。

 

「………そう言えば紫耀。お前達管理局とはどのような関係になったのだ?今回は只の協力関係だったのだろう?」

「ああ、それ?一応、委託魔導師扱いになってる。これは高町の嬢ちゃんも一緒だ」

「何だ、管理局には入らなかったのか?」

「あんなブラック組織誰が入るかよ。高町の嬢ちゃんは知らねぇけどよ〜」

「あと、フェイト・テスタロッサは保護観察だったか?」

「まあ犯罪行為に手を染めてたのは事実だからな〜リンディ提督が代理保護者になるらしいから問題無いとは思うぜ?」

 

ふむ、関わった者は皆収まるべきところに収まったようだな。

 

「成程。ということはこの件は一先ず解決ということか?」

「聖槍十三騎士団の連中がしゃしゃり出て来なかったら、だけどな」

「それならば問題あるまい。聞いた話による推測に過ぎんが、彼等は古代遺産と呼ばれるもの、この世界でいえばロストロギアと呼ばれる代物が出てこん限りかち合う事は無いだろう」

「………ホントか〜?」

「買い物の帰りに鉢合わせすることはあるかも知れんな」

「ゲッ!!?マジかよ!!?」

「あくまで可能性に過ぎんよ。そう嫌そうな顔をするな」

 

冗談半分で言ったのに本気で嫌そうな顔をしてきた。………嫌がらせでベイにでもなって会いに行ってやろうか?まあ冗談だが。

 

一先ずこのジュエルシードを巡る事件は終わりを迎えたということで良いだろう。紫耀曰く次に起こる事件は今回の事件より危険度が高いらしいので、私が表立って動く必要が有るかも知れんな。

 

 

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