巻き込まれた放浪者   作:北河静

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第18話

ディアブロッサ・カスタムを飛ばし、はやて嬢の家へ向かうこと数十分。私は今、八神家内のリビングに座っている。

横にははやて嬢が不安げな顔をして座っており、私の正面には桃色の髪をポニーテールにしている女性、赤髪の幼女、金髪の女性が座っており、更にその後ろに犬耳をつけた銀髪の男が腕を組んで立っている。補足として、桃色ポニーテールと赤髪ロリータが私の事を睨み付けている。しかも殺気のオマケ付きだ。まあこの程度の殺気など気にするほどの物では無いので、無視しているが。

 

「………さて、互いにこのまま黙ったままでいるのも時間の無駄だろう。いい加減貴様等について、説明してもらいたいのだがな」

「断る。貴様のような得体の知れない奴に話す事なぞ何一つ無い」

「…………………」

 

取り付く島もないとは、正にこの状態を指すのだろうな。桃色ポニーテールはこちらの問いをバッサリと切り捨てる………気は進まんが、仕方あるまい。

 

「ハァ………すまんが、君から彼女達に説明する様促してもらえるか?はやて嬢」

「え!!?で、でも私の言うこと聞いてくれるかどうか分からんで?」

「それについては心配ない。そこの私を睨んでいる二人は君が、自分達より得体の知れない奴を信用しているのが気に入らんだけだ。要は、子供の癇癪と一緒だよ」

「貴様……ッ!!」「テメェ……!!」

 

私の言葉に憤りでもしたのか、二人が身を乗り出して来る。………自分を御することも出来んのかこいつらは。

 

「黙れよ塵芥が。相手との実力差も理解出来ぬ分際で吠えるな、鬱陶しい」

「「「「……………ッ!!!!?」」」」

 

はやて嬢へは影響を与えないように細心の注意を払いながらも連中に、殺気を全力の半分ほどでぶつける。

………情けない事に、連中はこの程度の殺気で動けない様だ。その程度の実力しか無いくせに歯向かって来るとは、愚か者としか言いようが無いな。

 

「………?緋峰さん、何かしたん?」

「別に君が気にする事では無いさ。………身の程を知らん連中に現実を教えてやっただけだ」

「ならええけど……それでシグナム…さん、やったっけ?もう一回、私にしてもらった説明してもらっていい?私にはよう分からんかったけど、緋峰さんなら理解出来ると思うし」

「し、しかし主!!この様な得体の知れない輩に話す訳には……!」

 

シグナムとか言う桃色ポニーテールが過剰に反応しているが、はやて嬢はそんな彼女に対して苦笑いを浮かべている。

 

「………うーん、こんなこと言うのもなんなんやけど……私からしたら、シグナムさん達の方が得体が知れへんのやけれど……」

「「なっ………!!!?」」

 

驚愕しているシグナムと赤髪ロリータ。金髪と犬耳の男は当然だろうと言わんばかりの表情をしているが、少しばかり顔が強ばっている。少し殺気を強く当て過ぎたか………?どうでもいいが。

 

「それもそうよね。はやてちゃんからしたら、私達は突然家の中に現れて、自分の事を主と呼んできた不審者に過ぎないのよね……」

「シャマル、お前まで………」

 

金髪はシャマルというのか。彼女はあの中で一番常識人のようで何よりだ。

 

「はやてちゃん、私から説明させてもらうわ。えっと………緋峰さん?もそれでいいかしら?」

「別に構わんよ。君たちがどういった存在で、何故はやて嬢の事を主と呼ぶかを説明してもらえればそれでいい」

 

………まあ、大体の予想は立ててあるのだが、それが外れていてくれればいいのだが、な。

 

「そう………それじゃまずは私達について話しますね」

 

 

 

 

<キングクリムゾン!!ジカンハケシト…ギャ―ッ!!

 

 

 

 

………また時間が消し飛ばされたな。悲鳴が聞こえたようだが気にしない気にしない。

 

シャマル嬢の説明を簡潔に纏めれば、彼女達は

【闇の書】の守護騎士で、その闇の書の現在の所有者がはやて嬢だというのだ。

…………嫌な予感というものは当たるものだな。これも運命とでも言うのだろうか?とはいえ、ある意味ではチャンスだな。闇の書のデータと取る事が出来れば、【夜天の書】との繋がりも見えてくるかも知れん。

 

「………話はだいたい分かった。それで?はやて嬢はどうしたいんだ?闇の書は所有者に強大な力をもたらすらしいが?」

 

少々意地が悪いのを自覚しながらも、敢えてはやて嬢に問い掛ける。………これだけは、どうしても聞いておかなければならないからな。

 

「どうしたい………って言われてもな〜闇の書やったっけ?それはまだ未完成で、完成させるには魔力…?とか言うのを集めなあかんくて、それは他の人から取らなあかんねやろ?」

「その通りです、主。ですが主がお気になさる事はありません。魔力の蒐集も、全て私たちが行います」

 

はやて嬢の疑問に、シグナムが答える。その答えを聞いた、はやて嬢は何かを決意したような表情になる。

 

「なら尚更やな、わたしはそんな力何かいらん。わたしはただ……」

「ただ……?」

「守護騎士の皆と一緒に暮らせれば、それでええよ。シグナム達も、蒐集何かせんでええ」

「し、しかし主!!」

「あ、言うとくけどこれ、闇の書の主としての命令な♪」

「うっ……!!?ハァ………わかりました、我が主。我等守護騎士、貴女の名に従います」

 

はやて嬢の言葉に観念したのか、シグナム達がはやて嬢の前に跪く。その光景はまさしく、自らの主に忠誠を誓う騎士達そのものだった。

 

「ふふふ………随分と似合っているではないか、はやて嬢」

「あ、緋峰さん!!からかうのは止めてぇな!!」

「別段からかったつもりは無いのだが?………それはそうと、守護騎士の連中に尋ねたい事があるのだが、いいかね?」

「………なんだ」

「そう警戒するな。はやて嬢が君達を受け入れている以上、私が貴様等に危害を加える事は無いさ」

「私が答えますよ?緋峰さん………もっとも答えられることなら、ですけどね」

「そうか。すまんな、シャマル嬢。とはいえ、私が聞きたいことはひとつだけだ。………【夜天の書】と言う物を知っているか?」

 

私の質問に、守護騎士達が揃って首を傾げる。

 

「夜天の書……?少なくとも私は聞き覚えが無いわ。シグナム達は?」

「私も聞いたことがない。………名前から察するに、闇の書の同型か?」

「あたしも知らねー……闇の書の管制人格なら知ってるかも知れねぇけど」

「管制人格、か……」

 

赤髪ロリータこと、ヴィータが零した言葉を反芻する。………確か資料によれば、魔力の蒐集によって一定以上のページが埋まると現れる存在……だったか?

 

 

「そうか………手間を取らせたな」

「………おい待てよ。お前、なんであたしらの魔法について知ってんだ?はやては魔法なんて知らねぇって言ってたのによぉ……」

 

………少々迂闊だったな。魔法についての知識が有る事を知られるのは別に構わなかったが、まさかこんな形で知られる事になるとは思わなかった。しかも一見幼女にしか見えんヴィータに指摘されるとは……この私が動揺したとでも言うのか?もしそうだとすれば、ここ最近の出来事で気が緩んでいたのだろうな。………全く、情けない話だ。

ヴィータの発言にシグナムと犬耳……ザフィーラが身構える。………さて、どう言いくるめるかな。

 

「………大したことではない。私が嘗て魔法文化がある世界に住んで居ただけだ。こう見えて、研究者なのでね。法に抵触する様なこともしていたので、管理外世界であるこの世界に逃げ込んで来たというわけだ。………心配せんでも、管理局との繋がりは無い」

 

………一応、嘘は言っていない。魔法について研究しているのも事実だし、この世界に流れ着いたのも事実だ。

 

「…………信じて、いいのだな」

「無論だ」

 

シグナムがこちらの真意を確かめる様に尋ねてくる。………余程主が大切と見える。こいつらならば、はやて嬢も気を遣うことなく過ごせるだろう。

 

「………難しい話終わった?緋峰さん」

「うん?ああ……私に関してはもう用件は済んだ。安心したまえ、はやて嬢。彼女達は君に害を為すような存在ではない……寧ろ、君を害から護ってくれるだろう」

「ほんま?シグナムさん……?」

「勿論です、我が主。我等守護騎士は貴女をあらゆるものから御守り致します」

 

不安げな表情をするはやての問いに、シグナムが守護騎士を代表して答える。その顔は、自らの主の不安を取り除こうとしているためか、とても自然な笑顔だった。

 

「…そうなんや。じゃあこれからよろしゅうな、皆」

 

シグナムの言葉に安心したのか、はやて嬢も朗らかな笑みを浮かべている。

 

………いい雰囲気が漂っている中、こんなことを思うのは不謹慎なのだろうが、言わせて欲しい。

 

………私が来る必要は無かったのでは無かろうか?

 

 

 

 

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