巻き込まれた放浪者   作:北河静

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第19話

はやて嬢が守護騎士達を家族として受け入れてから早くも2ヶ月が経ち、今は10月も下旬である。最初のひと月程はあの様な堅物共がはやて嬢の傍にいるのが少々不安だった為、3日に一度くらいの頻度で様子を見に行っていたが、はやて嬢の気質もあって日常生活に充分馴染んでいった。

それ以降は、一週間に一度程度の訪問に頻度を下げた。理由は色々とあるが、一番に理由を上げるとすれば、私が守護騎士達に嫌われている。という点になる。

 

………特に嫌われるような真似をしたつもりは無かったのだが、やはり魔導師、引いては管理局に多少なりとも関与している立場と言うのが影響しているのだろう。

それゆえ、と言っていいのかは定かでは無いが、こちらの腹の中を探って来るような事は、今の所は無い。

最も、闇の書について調べようとする時だけは流石に追い払われたが、それ以外では特に問題は無い。

BB達からも順調にデータが送られて来ている。此処二ヶ月の間で送られてきたデータの中で、一番の収穫が、はやて嬢と出会った時に襲いかかって来たあの屑の裏にいる人物を突き止めてくれた事だろう。

その人物の名は、【ギル・グレアム】。時空管理局の顧問官を務める重鎮であり、前回の闇の書事件に於いて殉職した【クライド・ハラウオン】の上官だった男……しかも、はやて嬢に援助をしている人物でもあった。

 

そして、私に襲いかかって来たのが彼の使い魔である【リーゼロッテ・アリア姉妹】。何でもあの仮面姿は魔法による変装なのだとか。……そして、これが最も重要な情報、彼等の目的である。

それは【闇の書を現在の所有者ごと、永久封印する】事らしい。彼等は態々その為にはやて嬢の周りから人を遠ざけていたらしいが……

 

「……随分と傲慢な事だ。天狗道の連中ですら多少ではあるが、まだ身の程を弁えていたというのに」

 

思わず、口からそんな言葉が漏れる。口調こそ普段と同じようにしてはいるが、内心では腸が煮えくり返る思いだ。………年端もいかない少女を犠牲にしてでも危険な代物を封印しようとする意志は高潔と表現出来るのだろうが、それを決意した理由は、ただの復讐に過ぎない。と言うのが、BB達がもたらした情報である。

………この情報と、紫耀達転生者組の情報、更には私が入手した管理局のデータから推測するに、管理局の上層部は余程腐っているようだな。管理局全体の思想であろう『自分達が世界の守護者である』という傲慢極まりない思想も気に入らんが、それを上回る醜悪さだ。

正直、管理局ごと上層部の連中の存在を消し去ってやろうかとも思ったのだが、後始末が面倒そうな上、前線に立つ者達にも迷惑がかかりそうなので辞めておいた。代わりと言ってはなんだが、BB達には此方に戻って来る際に上層部の汚職データを全てネット上に垂れ流して来いと指示して置いた。

………ギル・グレアムの所在も既に入手してある為、いつか自分の罪を数えさせるとしよう。無論、リーゼ姉妹諸共にな。

 

 

 

 

さて、長々と裏工作に勤しんでいる屑共について語ったが、そんな私が今何処に居るのかと言うと、はやて嬢が通院している【海鳴大学付属病院】にいる。

 

シャマル嬢、シグナム嬢、ヴィータ嬢と共に、はやて嬢の定期検診にやってきたのだ。とはいえ、厳密には違うのだが身内と病院側に認識されている彼女達と違い、世間的には赤の他人となっている私は、担当の医師から直接はやて嬢の容態を聞くことが出来ぬ為、そちらはシャマル嬢とシグナム嬢に任せて、私はヴィータ嬢と一緒にはやて嬢の傍についている。………なに?ザフィーラ?あれは犬(本人は狼だと譲らんが)に姿を変えて留守番だ。盾の守護獣を自称している癖に守護対象と離れるのはどうかと思うのだが、口出しする義理は無いので黙っておく。……万が一、はやて嬢に危機が迫った時は私がどうにかすれば良いだけの話だ。

 

「つーかよぉ………何でテメェも此処に居るんだよ」

「シャマル嬢から付いてきてくれと頼まれたのだから仕方無いだろう?馬鹿にしているわけでは無いが、ヴィータ嬢も見た目は年端もいかない少女なのだ。形式上とはいえ、大人が傍に居た方が何かと都合が良いだろう?」

「………その物言いが既にアタシを馬鹿にしてねぇか……?」

 

私がこの場に居るのが気に食わないのであろう、ヴィータ嬢が突っかかって来る。彼女は守護騎士の中でも特にはやて嬢に懐いているからな、私という不安要素をはやて嬢から遠ざけようとしているのだろう。

………まあパッと見、姉を取られて嫉妬している妹にしか見えぬので、微笑ましい物と私は捉えている。

 

「コラ、ヴィータ!!何時まで蓮夜さんに突っかかってんねや!!」

「うぇええ!!?は、はやて!!?別にこいつに突っかかった訳じゃ……」

「歳上の人にそんな口の聞き方してる時点でアウトに決まっとるやろー!!!」

 

不満げな態度を隠そうとしないヴィータ嬢をはやて嬢が叱り始める。………はやて嬢、確か9歳だった筈なのだが、守護騎士達と一緒に暮らし始めてからなんというかこう………母親じみて来ていないだろうか?

まぁ元々の気質がお人好しなのだろうが、今まで人との関わりが無かった分、その反動でこうなっていると思っておくとしよう。

 

「………元気なのは良い事なのだが、もう少し声量を抑えようか、はやて嬢」

「へ?………せやった、ここ病院やった!!うぁ〜恥ずかし〜」

 

私の指摘で自分がしている事を自覚したのか、顔を真っ赤にするはやて嬢。……うむ、やはり子供はこれくらい感情豊かな方がいい。

 

「お待たせ致しました、我が主」

「お待たせ〜はやてちゃん」

「シグナム、シャマルお疲れ様〜。先生は何て言ってたん?」

「……………少しずつではあるのですが、良くなって行っているそうです。完治するかどうかまでは分からないそうですが………」

「………そーなんか。まあ少しずつでも良くなってるっていうのは朗報やね!!これからもリハビリ頑張らなあかんな!!」

 

シグナム嬢とシャマル嬢が戻って来て、シグナム嬢がはやて嬢に診察結果を伝えている。………だが、シャマル嬢の顔が僅かに曇っているように見える。恐らく、シグナム嬢が伝えた病状が良くなってきているという検査結果は嘘で、実際の結果は悪化の一途を辿っているのだろう。そして、その原因は闇の書……なのだろうな。

それを聞いたはやて嬢も、恐らくではあるがそれに薄々感づいているのだろう。だが、それでもシグナム嬢達を心配させない為か、明るく振る舞っている。

 

…………互いが、互いを気遣っているが故に、見事に悪循環が生まれているな。

こうなると守護騎士達は、はやて嬢の意志に背いてでも闇の書の蒐集を始めるだろう。………彼女達の動きにも注意する必要がある。あらかじめ守護騎士達にはハラウオン少年と同じタイプの盗聴器を仕込ませている為、動向を事前に察知する事は可能だが……問題はそれに対してどう対処するかという点だ。黒円卓は地球以外で使う訳にも行かぬが……仕方あるまい。『奴』見張りとして使うとしよう。ラインハルト曰く、『諜報能力だけは一流』らしいので、大丈夫だろう。……………多分。どうもかませ犬というイメージが頭から離れないが、それは飽くまで戦闘に持ち込まれた場合だけだ。諜報だけなら問題は無い筈だ。そうに違いない。

 

はやて嬢と守護騎士達を眺めながら、これからについて、思考を巡らせる。………現段階で出来る事は、少なくは無いが、BB達と『奴』による情報収集が一段落するであろう、十一月の中旬頃になるまでは、静観するとしよう。

 

 

 

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