巻き込まれた放浪者   作:北河静

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第6話

紫耀達三人の暴露から時間が経ち、現在はその翌日の朝である。何をしているかというと、目の前にある荷物を眺めていた。

 

「今度は何を送ってきたのだ、あいつは……」

 

荷物はダンボールひとつ、差出人のところには『メルクリウス』とある。どう考えてもカールが送ってきた物だろう。彼は度々こうやって何かしらの物を送りつけてくるのだ、こんな手間をかけるなら直接渡しに来いと言いたい……というか一度言ってやったのだが、それに対する返答が、

 

『何故私が直接渡しにいかねばならんのだ。確かに貴方も私の友だ、だが我が女神の下を離れてまで向かう意義を感じないのだよ』

 

とのことだ。即座に鳩尾を殴った私は悪くないと思う。まあ彼が送ってくる物には何度も助けられているのも事実なため、なんとも言い難い。

 

「………考えていても仕方が無い、か」

 

そう呟き、開封する。

ダンボールにはアタッシュケースが二つと、手紙がひとつ、入っていた。

 

「これだけの荷物を一度に送ってくるのは珍しいな………」

 

いつもならば、小包ひとつ程度だというのにこれだけ送ってきたということは何かしら事情があるのだろうが、奴ならば嫌がらせという点も拭い切れない。

 

「態々手紙を備えているあたり、まだマシなのだろうが……」

 

取り敢えず、手紙を開く。

 

『やあ我が友よ、この手紙を今君が読んでいるという事は、無事に私が手配した荷物が届いたということだろう。今までも何度かこのような事をしているが、今回は少々特別な物になる。何故ならこれら総て、君の知り合いから渡されたものなのだ』

「…………何だと?」

 

書かれた内容は私を驚かせるものだった。私の知り合いだと……?

 

『総て身体能力を強化する類の物のようだ。無論、そのままでは君の身体能力についていけないので私が手を加えさせて貰ったがね。まあ詳しくはそれぞれのケースの中に伝言が残っているのでそれを見てくれたまえ、では君の旅にも終幕が訪れることを祈っているよ』

「………カールも代わり映えしないが、それも仕方が無いかね」

 

事実、奴の女神に対する執着は永遠の刹那に言わせれば【コズミック変態】と呼べるくらい執着しているらしいからな。それを聞いて言い得て妙だと納得した私は悪くない筈だ。

 

「しかし、身体能力を強化する物……か」

 

何となく察しはつくのだが、それにカールが手を加えたという事実が恐ろしい。

 

「取り敢えず一つずつ確認していくとするかね」

 

そう呟き、アタッシュケースの一つに手を伸ばす。ケースには【MUSEUM】と書かれたロゴが貼られている。

 

「ミュージアム……となると、彼等かね?」

 

アタッシュケースを開く。

その中に入っていたのは、USBメモリを模した掌サイズのものが26本、そしてそれを入れると思わしき形状をしたバックルだった。

 

「ガイアメモリにロストドライバーか……しかしこのガイアメモリ、もしやT2メモリを送ってきたのか?」

 

ケースの中にカールの言った通り、手紙がついていたので、それを開く。

 

『やあ緋峰 蓮夜。久しぶり……になるのかな?君と最後に出会ってからもう2年になるが、こちらは相変わらずだ。翔太郎はハーフボイルドだし、照井竜は亜樹子ちゃんと仲睦まじく暮らしている』

「………そうか、彼らの世界ではまだ二年しか経っていないのか。時の流れからこの身が逸脱しているのを実感してしまうな」

 

そう呟きつつ、手紙を読み進める。

 

『さて、本題に入るとしよう。君に送った物だが、それはT2メモリを参考にして財団Xが作りだした、新型のガイアメモリだ。マキシマムブレイクで破壊出来ない点はT2と同じだが、問題はメモリに内包された記憶だ。半分近くが、ゴールドメモリクラスの力を有しているようだ。幸い利用される前に回収出来たから良かったが、僕たちも持て余していた所に君の友を名乗るメルクリウスなる人物がやって来てね。丁度いいから君にこれを託すことにしたんだ、君なら上手く使ってくれると期待しているよ。では、またいつか会おう』

「………………」

 

これは要するに厄介なものを押し付けられただけでは無いのか……?フィリップらしいといえばらしいが。

 

「……まあ有り難く使わせてもらうとしよう」

 

さて、次だ。残ったケースを開ける。

そこに入っていたのは、緋と黒で装飾されたバイクの

ハンドルグリップを模した物と、ミニカーのようなもの、バイクの排気口にも似た装飾が施されているバックル、そしてミニカーと同じサイズのバイクのようなものが入っている。

 

「………何だ?これは。何処かで見たことがある気もするが」

 

これにも手紙が内包されているので確認しておくとしよう。

 

『やあ緋峰 蓮夜!久方ぶりだねぇ。メルクリウスなる君の友を名乗る男に何かプレゼントはあるかと聞かれたので、りんなとハーレー博士に頼んで、ブレイクガンナーを模して、君用に再調整したものを贈ることにした。名付けて、【ファントムガンナー】だ!

専用のバイラルコアも一緒に送ってあるので、上手く活用してくれたまえ!それと、試作型マッハドライバーと、変身機能だけのシグナルバイクのレプリカも一緒に送らせて貰うよ!では、 Good bye!!また会おう!!』

 

「……クリム・スタインベルトからだったか。相変わらずテンションの高い御仁だ」

 

彼らとはさほど関わりが無かったような気もするが、もしかしたらまたいつか彼らの下を訪れることがあるやもしれんな。

 

「ふむ、こうやって今まで出会って来た者が私のことを覚えていてくれているというのは嬉しいことだな」

 

私の様な存在を恐れずに接してくれる存在は希少だからな。

 

そんな風に感慨に耽っていると、部屋の内線が鳴り始めた。おそらくカウンターからの連絡だろうと思い、受話器を取る。

 

「もしもし?何用かね」

『申し訳ありません、緋峰様。黒岸と名乗る方がカウンターで緋峰様のお部屋を聞きたいとのことでお電話した次第でございます』

 

もうきたのか。しかしいくら何でも早すぎないだろうか?まだ午前中なのだが。まあそれだけ話す内容が多いのだろう。

 

「ああ、彼は私の友人だ。もし連れがいるのならば、その者達も連れて来てくれ」

『かしこまりまりました。それでは失礼いたします』

 

その言葉と共に内線が切られる。

………飲み物でも用意してやるとするかね。

 

 

 

カウンターから連絡がきてからわずか数分。

部屋のドアがノックされる。

ドアを開けると、ホテルのボーイと紫耀達3人がそこにきていた。ケースは二つとも異空間に仕舞っているので問題はない。

 

「失礼いたします、ご友人をお連れいたしました」

「ご苦労。紫耀達もよく来てくれた。さ、入ってくれたまえ」

「お、おう。邪魔するぜ」

 

ボーイにチップを渡し、紫耀達を部屋へと招き入れる。

 

「どうした?遠慮せずに好きなところに座るといい」

「なあ蓮夜………ひとつ、いいか?」

「何かな紫耀?」

「こんな高級ホテルに泊まってるんだったらお前翠屋でバイトする必要ねぇだろ!?」

「何だ、そんなことかね。翠屋でのバイトは単純に有り余っている時間を潰すためのものなのだよ」

 

高級……なのかね?一泊、数万程度なのだが……まあ一般人にとっては高級か。

………私?私は逸般人だから除外だ。何処かの世界で誰かが言っていたが、『金の単位はtで数えるもの』などと戯けた事を抜かすような奴もいるからまだセーフだろう。

 

「で、だ。朝から訪ねて来たということはそれなりに話す内容が多いのだろう?」

「…………まぁな」

「ならさっさとそこに座れ、今飲み物を入れてくる

……全員珈琲でいいかね?」

「おう、すまねぇが頼むわ」

「では、暫し待ちたまえ」

 

 

 

 

彼らを待たせる事数分、全てブラックで入れた珈琲四つと、シュガースティックとミルクを幾つかテーブルまで運ぶ。

 

「待たせたね、砂糖とミルクは自分で調節したまえ」

「……悪ぃな、ここまでもてなして貰ってよ」

「別に構わん。それより話を進めるとしようじゃないか」

「おう……昨日どこまで話したっけか?」

「まだ貴様らが転生者だということと、この世界で何かが起こるという程度しか聞いておらんよ。そこの二人には自己紹介もされていないが」

 

正確には名前だけは知っているが、敢えて呼ばない。ある世界での教訓で、相手が名乗らなければその人物の名を呼ばないことにしている。………私がまだエイヴィヒカイトを習得する前の変哲のない学生だった頃の経験だ。あの頃はいつ何時も気が抜けなかったものだが、今となっては懷かしい。

彼女たちは元気だろうか?あの時は別れも言えずに去ってしまったから、もう忘れられているかもしれんな。その方が彼女たちにとっても幸せな筈だと思うが……まああいつらが何とかしてくれているだろう。

 

「……そういや、名乗ってなかったね」

「私としたことが抜かっていましたわ………」

 

二人して自責の念に苛まれているようだが、こちらとしてはさっさと話を進めたいのだがね。

 

「……まあ自己紹介に関しては私もしていないのだから、お互い様というものだろう」

「………まあお前については俺が教えてたんだけどな」

「自分で名乗って無いのだから一緒だろう……では、改めて名乗るとしよう。私の名は緋峰 蓮夜、化外だ。まあよろしく頼むよ」

「ローザ・シャルラハロートと申しますわ。転生者で今生ではドイツの生まれですが、前世では日本の高校生でした。宜しくお願い致しますわ」

「………灰群蒼児(かいむらそうじ)。この中では一番年下で高3、転生者だ。別に仲良くしてくれなくていい。めんどいし」

「んじゃ俺も改めて、黒岸紫耀、転生者だ。一応この中では仕切りを担当している。歳は23、ローザも同い年だ」

「………紫耀よ、女性の年を断りなく明かすのは辞めたまえ。要らぬトラブルを引き起こす原因になるぞ」

「は?何言ってんだよお前」

 

紫耀の後ろで黒いオーラ全開のローザ・シャルラハロート。本当なら怒鳴り散らしたいのだろうが、昨日の俺の言葉を覚えているのか我慢しているようだ。

………というか紫耀、もしかして鈍感スキルでも持っているのか?あの漆黒オーラを感じ取れないとは。

 

「………ローザもいちいち反応しなきゃいいのに」

「何か言いましたか、蒼児……?」

「何でもないよ」

「………いい加減そのコントのような流れを止めたまえ。話が進まん」

 

仲裁に入るのも疲れるのだがね。彼等のコント紛いの掛け合いは見ている分には面白そうだが、自分が関わっていると面倒でしかない。

 

「確かにな。つーわけでローザ、蒼児。しばらく黙ってろ、お前らが口挟むとマジで話進まねぇから」

「その評価については異論を挟みたいところですが、確かに交渉事は貴方が一番向いていますものね」

「さっさと帰れるならどうでもいい」

「蒼児はほっといても別にいいか。じゃ、早速説明と行こうか。何から話せばいい?」

「まず協力を要請する原因になるものがこれから起こるのだろう?まずはその説明からだ」

「オーライ。まあ端的に言って………地球が滅びるくらいの事件が今年中に二回起こる。それの阻止を手伝って欲しいんだ」

「そのうちの一回は昨日言っていた件だろう?それ以外にも起きるというのか?」

「今んとこは可能性だけどな、まあほぼ間違いなく起こると考えて貰っていい」

「それはまた、災難なことだ」

 

どんな並行世界でも、世界規模の危機が起こっていることを鑑みるに地球は魔窟と評して差し支え無いのではなかろうか?

 

「つまり紫耀、私はそれの解決に手助けすればいいのかね?」

「そのつもり……だったんだけどな。昨日ふと思い出したことがあってよ」

「なんだね?」

「お前……【デバイス】って持ってる?つか知ってる?」

「何だねそれは?………何処かで聞いたこともあるような気もするが」

 

確か赤龍帝と出会った時だったか、人をモブキャラ扱いする糞生意気な餓鬼がデバイスがどうのこうの言っていたような気がする。よりにもよって我が友の姿を模していた為、塵も遺さず滅した筈だ。………嗚呼、思い出しただけでも腹が立つ。

 

「マジで?まあ一応説明しとくと、魔法を発動する為の機械だな。種類は色々あるんだが……まあここでは割愛するわ」

「ふむ、聞き捨てならない単語が聞こえたがいいかね?」

「おうよ、ドンとこい!」

 

何故か胸を張る紫耀。そんなに誇ることなのか?

………おそらくは私が知らぬことを自分が知っているという矮小な自尊心に満たされているのだろうよ。

至極どうでもいいが、紫耀が嬉しいのならそれで良いだろう。

 

「では遠慮なく。先程この世界において魔法を使うための道具だと言っていたが、この世界では魔法が認知されていないようだが?」

「ああ、それな。この世界は【次元世界】って概念があって、その中に【ミッドチルダ】って場所で使われてるものなんだよ。地球には普及してない筈だ」

「…………つまりなにか?そのデバイスとやらがこの世界に流れ着くとでもいうのかね?」

「あー………間違ってはねぇんだけど厳密には違う。【ロストロギア】っつー代物がこの世界に流れ着くんだ。それを追ってきた奴等がこの世界にデバイスを持ち込むって感じかねぇ……?」

「なんだそれは……はた迷惑な奴がいるものだな」

「うん、まあそいつらだけで何とかしてくれるんだったら問題は無ぇんだけど………」

 

と、そこで紫耀が言いよどむ。……なんだ一体、気色が悪いな。

 

「なんだ紫耀、何か言いにくいことでもあるのかね?」

「………実はなのはちゃんが追ってきた奴等が持ってるデバイスを使って首突っ込んじまうんだよ。

というか、この世界の物語の名前が【魔法少女リリカルなのは】なんだよな……」

「…………成程。貴様が言い淀んだ理由が解った」

 

どう考えてもこのことを知ったら間違いなく恭弥が暴走するだろうな。

 

「まあそれはいざとなったら私が半殺しにしてでも止めるとして、結局私は何を手伝えば良いのだ?」

「話を振っておいて気が引けるんだが………正直、前半は手を出さないで欲しい。蓮夜に動いて貰うのは、【時空管理局】っていう組織が介入して来てからだな」

「時空管理局……?なんだ?そのいかにも頭の悪そうな名前の組織は」

「………あー、一言で言うと超ブラック組織?」

「なんだそれは」

「いや、才能が有れば年齢二桁いってない餓鬼でも組織に組み込もうとするような組織だし」

「………………ほぉ、なかなか愉快な組織なようだなぁ。出会う時が待ち遠しいな」

 

幼子を組織に組み込もうなどとは、今迄最低の悪だと思っていた奴等ですらそこまで屑な真似をしなかった筈だ。これは、それなりの理由を聞かせて貰わんとなぁ……!!!!

 

「れ、蓮夜………?少し落ち着こうぜ、殺気が漏れてるぞ………?」

「あ゛?………ああ、すまない。少し取り乱してしまったようだ」

「あ、あれが少し取り乱したという規模なんですの………?」

 

そう呟くローザ・シャルラハロート。

その顔はかなり青ざめている。口には出してはいないが、灰群蒼児も顔を青くしているようだ。………私の殺気に当てられてしまったのか?少々精神的な鍛練が足らんのではなかろうか。その証拠に紫耀は大して気にしていないように見える。まあこいつは一度私の殺気を受けているから耐性が出来ているだけだと思うが。

 

「まあ言いたいことは理解した。その管理局とか言う屑が来るまで日常を過ごしていればいいんだな?」

「おう。もしかしたらその前に力を借りることになるかも知れねぇがそんときはまた連絡すっわ」

「わかった。まあ気軽に連絡してくるといいさ」

 

本来なら私が積極的に動くところなのだが、紫耀達には何か考えが有るようだから任せるとしよう。

暇な時間は管理局とやらへの制裁でも考えるとするかね……

 

 

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