巻き込まれた放浪者   作:北河静

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第7話

話がある程度纏まったので、四人揃って珈琲を飲んで一息つく。

 

「………さて、このまま解散するのもやぶさかではないが、何か話しておきたいこと、聞きたいことはないかね」

「では、お互いが持っている力について共有するのは如何ですか?私達3人は互いの能力について把握していますが、緋峰さんについては何も知らないも同然ですから」

 

そちらにしても、同じことが言えますけど。

とローザ・シャルラハロートが提案してきた。

………成程、随分と理に適っている。まあこちらもメインで使う幾つかチカラを教えれば充分だろう。

 

「私としてはそれでも別に構わんが………紫耀と灰群蒼児はどうするかね?」

「あ?俺も問題ねえよ?そんな隠す程のモン持ってねぇしな………蒼児、お前は?」

「興味ない。僕の能力については勝手に話しといて」

 

そう言うなり、懐から携帯を取り出し、弄り始めた。

………えらい気難しそうな少年だな。共に活動するならば、扱いには細心の注意を払うべきかもしれんな。

 

「お前なぁ………もうちょい協調性ってもんを」

「別に他人にどう思われようと僕には関係無い」

 

紫耀が説得しようとしたみたいだが、取り付く島もないようだな。

 

「…………わかったよ、取り敢えず話だけでも聞いといてくれ」

「はいはい」

 

 

紫耀の言葉に、灰群蒼児は適当な返事で答えた。

 

「そんじゃ能力の説明会を開催しますかね。………誰のから話す?」

「言いだしっぺの私から始めましょうか?」

「私としては誰からでも構わんがね」

「じゃ、ローザから頼めるか?」

「わかりましたわ。………と言ってもそこまで特筆するようなチカラはないんですけど。能力はAA+の魔力、傷を癒すアイテムを渡されましたわ。デバイスは【ミッド式】のインテリジェンス・デバイスの【ワルキューレ】ですわ。ワルキューレ、ご挨拶を」

《初めまして、ワルキューレと申します。宜しくお願いいたしますね、緋峰様》

 

電子音声がローザ・シャルラハロートの胸元のブローチから聞こえてくる。

 

「…………アクセサリーが喋るとは、それがデバイスなのかね?」

「あ…そういやデバイスの説明忘れてたな。全部のデバイスが喋るわけじゃねぇんだけど、俺らの持ってるデバイスは全部喋るぜ。普段は持ちやすいようにアクセサリー状にしてるが、本来は武器の形をしてる」

「成程……中々興味深い代物だ。機会があれば、分解してみたいものだな」

「わ、私のワルキューレは渡しませんわよ!!?分解するなら蒼児か紫耀のにしてくださいな!!」

「おい!!さらっと俺の相棒売ろうとしてんじゃねぇよ!!」

「……………渡さないよ」

 

紫耀のリアクションはなんとなく予想はついたが、灰群蒼児までもがこちらを睨んで威嚇してくるのは予想外だった。

 

「………ちょっとしたジョークのつもりだったんだが」

「お前が言うと冗談には聞こえねぇよ……」

 

そのような印象を持たれるような行動はしていない筈なのだが………まあ気にしないでおこう。

 

「んじゃ次は俺だな。俺はデバイスと、魔力とはまた別の力の【氣】って代物を操る力を与えられた。氣は主に身体能力の強化に使ってる。デバイスの名前はベルカ式の【村正】だ」

《よろしくお頼み申す。緋峰殿》

「…………また随分と古風な喋り方をするんだな」

 

村正………ということは日本刀の村正がモチーフなのだろうか?おそらく誘拐の際に使っていたあの刀が本来の形なのだろう。

 

「で、最後に蒼児。こいつが得たのは、高度なシミュレーション能力と機械整備技術。デバイスはミッド式の【シェルティス】。こいつのはインテリジェント・デバイスじゃなくてアームドデバイスっていう純粋な道具だ。そんで、俺たちのデバイスの調整は蒼児に頼んでるんだ」

「………別にあんたらのためじゃないよ。元々機械弄りが好きなだけだし」

「ほう……灰群蒼児とは気が合いそうだな。私も時々ではあるがそのようなことをしている」

 

なんせ異空間に閉まってあるバイクやらは正規品ではないものばかりなので、自分で整備する他ないからな。

 

「…………へぇ、どうでもいいけど」

「おや、振られてしまったか」

 

しかしどうでもいいなどと言いながらも、こちらに向ける感情が幾分柔らかいものになった。

 

「……とまぁ俺たちの能力としてはこんなもんだ。次はそっちの番だぜ?」

「解っているよ。さて私の能力の一つは、紫耀には言ったと思うが、エイヴィヒカイトと呼ばれる魔術による超人的な身体能力と超常現象を操る事ができる」

「…………詳しい説明をしてもらってよろしいかしら?流石にそれだけでは詳細がわかりませんので」

 

取り敢えずエイヴィヒカイトについて概要を話したが、流石にわからなかったのか、ローザ・シャルラハロートが口を挟む。

 

「構わぬよ。さて、エイヴィヒカイトとは聖遺物と呼ばれるものを媒介にして、自らの魂を改竄し、魔人へと作り替える魔術だ。そしてその強度は4つの位階に分けられる。活動、形成、創造、流出となっていき、位階が一つ違うだけでも蟻が象に挑む程の力の差が生まれる」

「魂を改竄するって………つまり貴方は人間ではないということですか?」

「その通りだ。種族的には……魔人になるはずだ」

「………そんじゃ今のお前の位階は?確かこないだは創造とか呟いてたから少なくとも創造位階何だろ?」

 

紫耀が少し考え込むような仕草をしていたが、大方私が純粋な人間ではないと言うことについて考えていたのだろうな。………まあどうでもいいがな。

 

「………一応流出位階まで到達しているが、真の流出位階とは言えないのだよ」

「どういうことだ?」

「まず、エイヴィヒカイトの位階を上げるためには自分の内に秘めた渇望を認識する必要がある」

「………渇望、ですか?」

「そう。例えば私の知り合いは、幼い頃に死別した自分の親族二人を取り戻したいという気持ちを炎と定義し、『その情熱を決して消さず永遠に燃やし続けたい』という渇望を抱いていた。その者はその渇望を体現し、創造位階において『自分自身を炎に変える』という業を身に着けた」

「それはまた……凄いですわね」

「最も、その様な超常現象を引き起こすには創造位階にまで達する必要がある。活動位階では身体能力の向上、形成位階では聖遺物の具現化となる」

「そんで?お前が真の流出位階じゃないってのはどういうことだよ?」

「渇望にも種類があるのだよ。先ほど例に挙げた者の渇望は『〜になりたい』という求道型の渇望、それとは別に『〜だったらいいのに』という覇道型の渇望の二種類に分かれる。そして真に流出位階に到達できるのは覇道型の渇望を抱く者だけなのだよ」

「つーことはお前は求道型ってことか?」

「そういう事になる。流出位階とは文字通り、『自らの渇望を流れ出すことにより、世界をその理に染め上げる』事ができる。それが出来るのは覇道型の渇望を抱く者だけなのだよ。それに対して求道型は流出位階にまで到達することは出来るが、覇道型とは違い自らが【特異点】となり、世界から独立した存在となるのだ」

「つまり蓮夜は【特異点】ってことか?」

「ま、そう言う事だ」

 

思っていたよりも詳しく説明してしまったが、まあ別に構わんだろう。

 

「………一つ、気になったんだけど」

「何かね?灰群蒼児」

「……あんたの渇望って何?」

「私の渇望かね?」

 

その質問が来るとは思っていたが、まさか灰群蒼児から質問が飛んで来るとは思っていなかった。

 

「別にそこまで大したものではないよ。『今まで出会ったものとの記憶を忘れないでいたい』というその程度のものだよ」

「………マジで何の変哲のない渇望だな。てっきりもっと凄い渇望を抱いていると思ってたぜ」

「…………まあ私にも色々あるのだよ」

 

那由多の年月を放浪し続けた私にとって、思い出とは非常に大切な物になる。それ故に私の業はあそこまで反則的な物になるのだろう。

 

「さて、取り敢えずエイヴィヒカイトについてはこんなものでいいかね?」

「ん?おうよ、長々と説明させて悪かったな」

「それはお互い様というものだ。他にも色々あるのだが………まあ別に構わんだろう?」

「ああ、充分だぜ」

 

これで互いの情報を共有した訳だが、まあだからどうしたというほか無い。

私は何時もと同じく、この世界の危機を解決する為に動くだけだ。

 

「取り敢えず紫耀、暫くのあいだは貴様等に任せておけばいいのだな?」

「おうよ!まあ俺たちにドーンと任せとけって!!」

「そうですわね。多少とはいえ知識がある私達が動いた方が比較的スムーズに事が進むでしょう」

「………めんどいけど仕方ない」

 

3種3様のリアクションを見せる。………どことなく不安だが、まあ任せるとしようか。

 

時間が出来るのならば、今日届いた物の実験でもするとしよう。

ふと時計に目を向けると、12時近くを指していた。

 

「話し合いはこの辺で良いだろう。もう昼も近いし、このまま昼食にでも洒落こもうではないか」

「いいですわね。私は賛成ですわ」

「………異議なし」

「それもそうだな………うっし、じゃ翠屋にでも行くか」

「………くれぐれも昨日のような真似はするなよ?」

「わぁーてるよ」

 

そのような会話を繰り広げながら、部屋を出る。

 

 

 

 

この後、翠屋でローザ・シャルラハロートと紫耀が小競り合いを始めたので活動位階になって二人をのした私は悪くないはずだ。

 

 

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