巻き込まれた放浪者   作:北河静

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第8話

紫耀達と情報交換をしてから早数日。

私は変わらず翠屋でのバイトと、送られてきた物の性能確認に励んでいたのだが、紫耀達の方はなかなかに大変なようだ。

高町家の末っ子、高町なのは嬢が無事(?)デバイスとやらを入手し、件のロストロギアとやらを回収しているようだ。それと時期を同じくして、なのは嬢がフェレットを飼い始めた。名をユーノと言うらしいが、魂の形を見るにあれは姿を変えた人間だ。なのは嬢に危害を加えるつもりかとも思いはしたが、紫耀らが動いていないので問題は無かろう。なのは嬢が学校に行っている間は、翠屋のマスコットとなっている。

 

そんなこんなで私は今、翠屋にバイク【サイドバッシャー】で向かっている。なんでも連休を利用して、高町家、バニングス家、月村家の三世帯で温泉街での慰安旅行をするそうなのだが、私もそれに誘われたのだ。断ろうかとも思ったのだが、紫耀曰く、そこになのは嬢が回収しているロストロギアがあるとの事なので、迷惑をかけない程度に介入してみようと思い、参加を決めた。

………というのは建前で単純に私が温泉が好きなだけだ。温泉はいい。疲れた体だけでなく、心も癒されるものだ。

 

これから向かう温泉について思考に耽っていたが、翠屋が見えてきたので思考を辞める。

翠屋の前には既に高町家、バニングス家、月村家、そして紫耀達が集まっていた。………何故紫耀達がいるかと言うと、これから向かう温泉街にもロストロギアとやらが有るかも知れないとのことで、ついてくる事となった。勿論旅費は自分達で捻出してもらったがな。

 

「すまない士郎殿。遅れてしまったかな?」

「いやいや、みんな早めに集まっただけで時間には十分余裕があるよ………にしてもサイドカー付きのバイクとは随分派手だね」

「そうかね?幾つかバイクを所持しているのだが、短期間の旅行などではサイドカー部分に荷物を積めるから重宝するのだがね」

 

他にも日常ではほぼ使わない機能があるのだが、ここでは割愛する。

 

「それじゃあ少し早いが皆集まったことだし、出発するとしようか」

「了承したよ、士郎殿」

 

そう言いつつ、士郎殿は車へと向かう。この団体は乗用車四台、サイドカー付きバイク一台の集団になっている。………こうして見ると、私だけ浮いているがまあそんなことを気にするような精神は遥か昔に捨てたから何の問題もない。

 

そんなことを考えている間に士郎殿の運転する車が出発する。その後ろをバニングス家、月村家、紫耀組と続く。私は一番後ろになるが、万が一何かしら問題が起きたとしても私が何とかできるだろう。では暫しドライブを楽しむとしよう。

 

 

<キングクリムゾン!!

 

時間が消し飛んだ感覚がしたので、辺りを見渡して見ると、見たことのあるヒョウモンダコのような髪の男を見つけたが、『運悪く』バナナの皮を踏んで足を滑らせて頭を打ち、そのまま動かなくなった。おそらく死んだのだろう…………まだ奴は真実に辿りつけていないのか。ジョルノもいい加減解除してやればいいと思うのだが、まあ奴がやったこと故に自業自得とも言えるので如何せんともし難い。

 

まあそのような些事はその辺に捨て置くとして、私達は宿泊予定の旅館の前に佇んでいる。子供組は無邪気にはしゃいでいるが、一人だけ顔にほんの少し陰りが見える。

高町なのは嬢、紫耀達によれば今彼女はとある問題に直面している様だが……私には関係無い、というよりも関わる資格がないと言える。彼女が自らの家族や親友に魔法のことを明かしていないのだ。つまり自らの一番信頼出来る者たちに自分の行っていることを明かしていないのだ。それなのに実家でバイトをしているだけの胡散臭い男に何を言われても聞き入れはしないだろう。

いくらなのは嬢が心優しい少女とはいえ、現状を明かしていない以上自分だけでどうにかするつもりなのだろう。であれば私は彼女の意志を尊重しつつ、彼女の命が危機に晒された場合のみ介入することにするとしよう。

 

………とまあ長々と語ったが結局は今まで通り過ごすだけだ。今優先すべきは温泉だ、温泉。女性陣はローザ・シャルラハロートに任せるとして、こちらはこちらで楽しませて貰うとしよう。

 

また暫し時が過ぎ、現在は夕刻。我々男性陣は少し早めの風呂を楽しんでいる。

 

「ああ〜温泉入るのも久し振りだけど、やっぱ気持ち良いな〜」

「確かにな。何と言うか……こう、家の風呂とはまた違ったものを実感出来るというか」

 

紫耀と恭弥が何か爺臭いことを言っているが、その意見には異論が無いので黙っておこう。………にしても、だ。やはり温泉は素晴らしい、心が浄化されていくようだ……。最も、浄化されるような考えなど持ち合わせていないのだがな。

 

「しかしあれだね。紫耀君は裏でそれなりに有名だったけど、まさか蓮夜君まで武術の心得があるとは思ってなかったよ」

「護身術の域を出ないがね。まあ旅をしている都合上、トラブルに巻き込まれることも少なくないのでな」

 

実際には護身術等という生易しいモノではなく、殺戮を想定した物であることは黙っておくとしよう。

 

「私としては士郎殿が裏の世界で名を馳せた人物だというのが未だに信じられんのだがね」

「ははは、昔の話さ。今はしがない喫茶店のマスターでしかないよ」

「士郎さんは凄かったぜ〜?俺が裏の世界で仕事するようになってまず最初に言われたことが『御神の剣士が関わる件には関与するな』だったからな。裏じゃ今でも伝説の存在だぜ?」

「そういうお前こそ裏では名が知れ渡っているだろうが。……確か、『請け負った仕事は必ずこなす居合術の使い手』だったか?」

「おいばかやめろ。俺は自分で出来る仕事だけを引き受けてるだけだっつの」

 

恭弥がニヤニヤしながら紫耀に話題を振る。恭弥が随分と楽しそうだが、何時もの意趣返しかねぇ?

 

「なんだ紫耀。貴様抜刀術の使い手だったのか?それにしてはあの時は普通に刀を振るっていたようだが」

「お前は抜刀術で人を傷付けないで無力化出来んのか?」

「………………………ああ、成程」

 

頭の中から無傷で鎮圧すると言う考えが無かった故に紫耀が言っていることの意味がイマイチ理解出来なかった。私にとって無力化とは手足の一本は潰すものだからな。

 

「何か随分間が合ったんだが………?」

「気にするな。少し認識の違いを確認していただけだよ」

「…………これは突っ込まない方がいいんだよな?」

「…………さあ?俺にはわからん」

 

………紫耀と恭弥が小声でボソボソ話し合っているが、気にしないでおこう。士郎殿も苦笑いしているが、こればっかりは如何せんともし難い。

 

「さて、私はそろそろ上がるが皆はどうする?」

風呂から立ち上がり、三人に問い掛ける。本来ならもう少し浸かっていたいのだが、先程から頭の中から警鐘が鳴り止まないのだ。私には予知能力の類は無いが永い時を生きたことによる今までの経験から、身体が何らかの事象に反応しているのだ。

早い話が、虫の知らせと言うやつだな。

何度かこれで危機を免れている故に、信頼性は抜群だ。

 

「んじゃ俺も上がるとすっか。あんまし長く浸かり過ぎても身体がだるくなっちまうしな」

「僕はもう少しのんびりしていくことにするよ」

「俺ももう少し浸かっていく。先に上がっといてくれ」

 

紫耀、士郎殿、恭弥の順で返事が返ってくる。高町親子は残るか、ある意味都合が良いな。

 

「了承した、ではまた後ほど。紫耀、いくぞ」

「おい!!ちょっとは待てよテメェ……」

 

紫耀が文句を垂れているが、無視して、脱衣所へ向かう。奴は多少扱いが悪い方が輝いている。俗に言う弄られキャラと言うやつだ。

 

着替え終わり、割り当てられた部屋へと向かう途中、紫耀へと声を掛ける。

「ところでだ、紫耀。改めて確認しておきたい事があるんだが……構わんか?」

「あ?なんだよ急に」

「先日言っていた此処にロストロギア……だったか?を狙っている第三者などは居るのかね?」

「おう……金髪の少女と橙色の狼のコンビが狙ってる。そいつらも俺達やなのはちゃんと同じ魔導師だ」

「成程……では一度顔を拝みに出向くとするかね」

「…………介入するのは構わねぇけど、頼むから五体満足で帰してやってくれ」

「何か事情でもあるのかね?」

 

私としては、腕の一本ぐらいは貰い受けるつもりだったのだが。

 

「まあ色々と複雑なんだわ。何より、なのはちゃんがフェイト……ああ、金髪の嬢ちゃんの名前な。その子と友達になろうとしてんだよ」

「成程……それでは仕方あるまい」

 

敵対しているものと友になろうとするとは………幼さ故の無謀というか、なんというか………

 

 

「………ッ!!蓮夜、介入するつもりなら今直ぐ向かった方がいい。魔力反応だ、場所はそう遠くない」

「ああ、こちらでも結界だったか?それを検知した。少し覗いてくるとしよう」

 

そう言いつつ、私の持つ特殊なチカラの一つで、自らの姿を『化けさせる』。

 

私の体が一瞬輝き、周りを白く塗りつぶす。光が納まれば、その体はもはや『緋峰 蓮夜』ではなく、金髪の長い髪をポニーテールにし、黒い軍服を纏った少女の姿になっていた。その状態からさらに『彼女』に関するものを口調から何から模倣する。

 

そうすることによって生まれるのは、この世界には存在しない人間『ベアトリス・ヴァルトルート・フォン・キルヒアイゼン』だ。

 

 

「……………………はぁ!!!?」

「………ふう、久々の思考までの完全模倣はやっぱり疲れますね〜。それじゃ紫耀、ちょっと行ってきますね〜☆」

 

そう言い残し、エイヴィヒカイトにより上昇している身体能力にものをいわせ、結界が張られている場所に向かう。

紫耀が間抜けな顔を晒していたのをコッソリ写真に納めてからだがな。

 

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