巻き込まれた放浪者   作:北河静

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第9話

はーい呼ばれて飛び出て電撃バチバチ☆

みんなの戦乙女、ベアトリス・キルヒアイゼンでございまーす☆

 

…………無いな。うん、無い無い。

模倣した思考に引きずられるまま、口に出してみたがこれはない。私のキャラではない、遥か昔に同じ様な真似をした気もするが気の所為だ。ああそうだ気の所為に決まっている。この私がそのような真似をする筈がない………!!!

 

………失礼、取り乱した。まあ今の私は気配を消して魔法少女二人の闘いを見ている。

いやぁ中々に面白い見世物だ。ここ数億年血と臓物に塗れていたからか、こういった死の気配を感じない闘いは私にとっては見世物の域を出ない。確かデバイスには非殺傷設定とやらが搭載されているとか何とか。ダメージは残るらしいが、そんなものはまやかしに過ぎないだろう。

 

おや、もう闘いは終了かね。金髪の少女がなのは嬢を打ち倒し、小さな宝石のようなものを手に持っている。………確か【ジュエルシード】とか言ったかな?あれは。このまま見逃すのも、悪くはないのだが……フェイトとか言ったか、彼女の意志を見て見るとしよう。なのは嬢と同じくらいの年頃なのに彼女よりも戦い慣れているのは気になるしな。

 

 

 

 

なのは嬢とフェイトとやらの闘いはフェイトの勝利に終わる。なのは嬢がいくら魔導師の素質に溢れているといえど、同じ素質を持ち、その上修練を積んだフェイトに勝てないのは自明の理というものだ。

 

「…………ジュエルシードは貰っていくね」

 

フェイトは冷たくなのはに言い残す。本来であればこのまま去るつもりだったのだろうが、それを食い止めるように私が言葉を挟む。

 

「すみませんが、それを持ち帰らせる訳には行かないんですよ」

「ッ!!?誰……!?」

「名乗らない人物に名乗る必要性を感じないのですけれど、まあ聞かれたからには答えてあげましょう」

 

これも大人の女の余裕ってやつです、と呟く。私は本当は女ではないが、これもまた演出だ。

 

「古代遺産管理・調査部隊、聖槍十三騎士団黒円卓第五位、ベアトリス・ヴァルトルート・フォン・キルヒアイゼンです。仲間内では戦乙女(ヴァルキュリア)と呼ばれていますね」

「古代遺産管理・調査部隊………?」

「おや、ご存知ありませんか?裏ではそこそこ有名な部隊なんですけどね〜………特に、貴女みたいな人達には」

 

…………自分で言っていてなんだが、よくここまででまかせが言えるものだ。多少の信憑性を持たせるために黒円卓の名を借りてはいるがこの世界にはそんな組織が存在しないことは確認済みである。

 

「………………」

「おや、だんまりですか。別に私は構わないですけどね………その手に持っているものを置いていけば、ね」

「あ、何なんだいあんた!!いきなり出てきて勝手な事ばっか言って!」

 

フェイトの横に立っていた橙色の狼が口を挟む。…………狼が言葉を喋るのは私にとっては別段珍しくもなんともないが、中々奇抜な毛色だな。もしや使い魔とか言う存在なのだろう。主人思いの良い存在だ。

 

「まあ貴女方からすれば勝手な事を言っているようにも聞こえるのでしょうけどね、こちらとしても引き下がる訳にも行かないんですよ。………これが最後通告です、その手に持っているものをこちらに渡しなさい。今ならまだ、怪我をさせずに見逃してあげます」

 

言葉と共に聖遺物【戦雷の聖剣(スルーズ・ワルキューレ)】を具現化し構える。この時点で既に形成位階、如何に魔法を扱う才能が有ったとしても私には通用しない。

 

「……………………………」

 

少女は無言でデバイスを構える。その目には闘志が溢れている。

 

「……………やれやれ、交渉は決裂ですか。あまり気が進みませんが、仕方ありませんね」

「さっきから何なんだアンタは!!上から目線で偉そうに!!!」

 

咆哮と共に、狼が突っ込んでくる。………随分と堪え性のない奴だな。

 

「上から目線で偉そう………?当然でしょう、私は大人で、彼女は子供です。そして何より………」

 

狼の突進を軽くいなし、その首元に戦雷の聖剣を当て、電撃を流す。

 

「ぐあああああ!!!?」

「アルフっ!!!?」

 

………ほう、この狼はアルフと言うのか。まあ覚える気はサラサラないのだがな。

そのアルフだかは電流を流されたことにより気絶し、私の足元に転がる。それの首元に足を置き、改めて少女に剣を突きつける。

 

「何の脅威にもならない存在に対して、同じ目線で接する馬鹿が何処にいますか。現に貴女だってそうでしょう?そこで転がっている少女が、自分にとって何の脅威にもならないから、そうやって見下しているんでしょう?」

「………ッ!!?違う!!私は……」

「同じですよ。どれだけ高尚な理由でお膳立てしても、行動に貴女の浅ましさがにじみ出るんですよ。この狼にしたってそうです、大方貴女の使い魔なのでしょう?貴女が使役する以上、使い魔というものは何処か主人に似てくるものです。この狼にしてもそう。相手の実力も把握出来ないくせに無謀にも突っ込んで来て、こうやって私の足元に転がって、生殺与奪を私に握られている。…………正直、呆れてものも言えません」

「黙れっ!!!貴女に私の何が解るっ!!!?アルフを離せ………!」

 

少女は激昂し、私に鎌状になったデバイスを向けてくる。使い魔を思う心意気は見事だが、まだ彼女の本音が見えんな。………もう少し、いたぶって見るとしよう。

 

「貴女……状況解ってます?貴女が私に指示出来る立場にあるとでも思ってるんですか?もうその発言だけで浅ましさが透けて見えますね。…………ですが、良いでしょう。格の違いというものを見せてあげましょう」

 

そう言い放ち、狼を彼女の方へと蹴り飛ばし、詠唱を紡ぐ。

 

 

War es so schmählich,――(私が犯した罪は)

ihm innig vertraut-trotzt’(心からの信頼において) ich deinem Gebot.(あなたの命に反したこと)

Wohl taugte dir nicht die tör' ge Maid,(私は愚かであなたのお役に立てなかった)

Auf dein Gebot entbrenne ein Feuer;(だからあなたの炎で包んでほしい)

Wer meines Speeres Spitze furchtet, (我が槍を恐れるならば)durchschreite das feuer nie!(この炎を超すこと許さぬ)

 

Briah―(創造)

 

雷速剣舞・戦姫変生(Donner Totentanz――Walküre)

雷速剣舞・戦姫変生(トール・トーテンタンツ・ヴァルキュリア)』。

軍人として大戦を駆けたベアトリスの「同胞たちが道を見失わないよう、戦場を照らす閃光になりたい」という渇望のルールを具現化した求道型の創造。

能力は『自分自身を雷へと変化させる』という至極単純な能力。だが、それに強力な代物である。

 

「どうぞ?先手は譲ってあげます。せいぜい足掻いてください」

「……………ッ!!!!!バルディッシュ!!!」

《Photon Lancer Phalanx shift》

デバイスから機械的な音声が響き、少女の周りに魔力で出来た球体が幾重にも展開される。その総数38基、そこから放たれるのは魔力でできた槍。それが何度もこちらに向かって放たれるその総数1064発。普通の人間ならば、防御しなければ例え非殺傷設定とやらが機能していたとしても擬似的な痛みでショック死しそうなものである。しかも物理攻撃では無いので、雷化による攻撃の透過も叶わない。………だが那由多の放浪の中で蓄えた魂魄による私のエイヴィヒカイトの霊的装甲の前にはそのどれもが意味を成すことなく霧散する。

 

「………ハァ………ハァ……や、やった……?」

「そんな訳無いでしょう?ですが中々に素晴らしい攻撃でしたよ」

「な……あっ!!!!?」

「貴女にも譲れない気持ちがあるのは今の攻撃でよくわかりました。ご褒美に苦しませずに倒してあげます」

 

そう呟いた瞬間には雷化による光速移動で少女……いや、フェイト嬢の横に移動し雷撃を浴びせる。

 

Auf Wiederseh'n(さよならです)

「あっ…………」

 

電撃に対して耐性でもあったのか、少し強めに電流を流さなければ気絶しなかった。

 

「さて、バルディッシュ………とか言いましたか?主人を殺されたく無ければ、先程の宝石を渡しなさい」

《…………Put out》

「確かに。素直でよろしい……そこの狼、もう目を覚ましているでしょう?さっさと御主人を連れてここから去りなさい」

「くっ………どういうつもりだよ、アンタ」

「どういうつもりも何も、最初から私の目的はこの宝石だと言っているでしょうに。ほら、今のうちにさっさと行ってください」

「ちっ………アンタ、匂いは覚えたからね」

 

そう言うなり、狼は犬耳の生えた女性へと姿を変え、フェイト嬢を担ぎ、この場を去っていった。

 

さて、このまま去っても構わんのだが1つ余計なお節介を焼くとしようか。

 

「貴女にも一応通告しておきます。もうこれ以上この件に首を突っ込まない方が良い。今回は私だったから良かったものの、私の同僚だったら今頃殺されてますよ?」

「え……?」

「何を惚けているんです?さっきのを見ていなかったんですか?貴方が今足を踏み込んでいるのはそういった世界なんです。何かしらの決意も持たずに、居ていい場所じゃないんですよ」

 

これは紛れもない私の本音だ。まだ年端も行かない子供が闘いに関与する必要などないのだ。

 

「……………嫌です」

「なんですって?」

「嫌って言ったんです!私、ユーノ君と約束したんです!どんなに危険でも絶対に辞めません!!!!」

「……………………………」

 

そう叫んだなのは嬢の目はやり遂げるという意志に満ち溢れていた。こういった目をする者には何を言っても無駄だ。

 

「ハァ………偶にいるんですよね、こういう人の好意を無下にする子が」

「え、えっと………」

「良いですよ、そこまで言うのならもう止めません。………但し、普段通りの生活を送れなくなることを覚悟しておく事です」

 

そう言ってなのは嬢に背を向け、そのまま雷化してその場を去る。…………しかしあのフェレットがなのは嬢に魔法の力をもたらしたのか。何にせよ、これでなのは嬢も何の為に闘うか改めて考えるだろう。ロストロギアのサンプルも手に入ったことだし万々歳だな。

 

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