Dream Trigger   作:handsome

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矢澤にこ①

 

 

俺は今ボーダー本部に向かう電車の中だ。結局乗り換えの関係などで浅見くんたちとは15分遅れで到着となる。このままだと間に合うかどうかはギリギリだ。

 

電車を降り、自転車を全力で漕ぎ、警戒区域に入る。この調子ならなんとか間に合うな。

 

ーーボーダー本部ーー

 

到着するとそこには5人いた

みんな集まっちゃってる…時間はちょうど集合時刻の14:00だ。

近づくにつれ5人目のシルエットがはっきりとしてきた。

あれは…矢澤にこ先輩だ…

 

矢澤先輩はB級隊員だ。チームには入ってないけどスコーピオンはマスタークラスで個人ランキングでは上位の方に名前がある。矢澤先輩の戦い方はスコーピオンの二刀流での奇襲。手数が多く小柄で俊敏で相手としてはかなりやり辛そうだ。

俺は矢澤先輩を真似してスコーピオンの二刀流を基本的な形とした。だから矢澤先輩が過去に所属していたチームのランク戦のログは何度も見直した。矢澤先輩の戦い方は見ていて楽しかった。

 

「阿部くん…遅かったわね」

 

強い視線を向けながら絢瀬先輩が言ってくる。怒られるとは思ってた…

 

「それは教えてもらう側としての態度としてどうなのかと思うのだけれど…」

 

「絵里ち、時間には間に合ってるし、後輩の指導に熱が入って遅れてしまったらしいから今回は大目にみてあげよ」

 

東條先輩がなだめてくれると矢澤先輩が出てくる

 

「ダメよ。この私を待たせるなんて何様のつもりよ!そもそもなんで私がこんなやつの面倒見なきゃいけないのよ!」

 

矢澤先輩と実際会うの初めてだけど性格きっついな!画面で見るのと全然違う。いきなりこんなやつ扱いされたし。

 

「すいません…」

 

「にこっち、そんなこと言わんといて。阿部くんには教えてくれる人がいないんだよ。しかも今までずっとひとりで寂しいって…」

 

そんなことひと言も言ってない。事実だけどさ…その言われようはとても惨めになる。

矢澤先輩も憐れみの視線を向けてくる…

 

「それに、阿部くんはにこっちの大ファンなんよ!」

 

それも言ってない…実際好きだけど。

 

「え⁉︎そうなの?…ま、まぁにこの魅力に逆らえないのは仕方ないわよね」

 

矢澤先輩なんだかまんざらでもないような顔をしてる。すると東條先輩がこっちをチラッと見てくる。今がチャンスらしいな。

 

「そうなんです!毎日矢澤先輩の写真におはようございますとおやすみなさいの挨拶は欠かしません!」

 

絢瀬先輩と東條先輩がドン引いてる…。おい関口、お前は引くなよ。

 

「…しょうがないから弟子にしてあげてもいいわ」

 

よかった、矢澤先輩は引いてなかった。それにしても東條先輩はいろんな人の扱いがうまいな。

 

「ありがとうございます!」

 

「その代わり私は厳しいわよ。しっかりついてきなさい」

 

矢澤先輩が真剣な表情で見つめてくる

 

「はい!」

 

 

「訓練、始めていきましょうか」

 

絢瀬先輩が言い、それぞれ分かれた。

 

 

ーー仮想空間ーー

 

仮想空間に入ってすぐに矢澤先輩は怒鳴り始める

 

「まずあんたは隊員としての心構えからなってない!その心構えから変えていくわ」

 

「はい」

 

「じゃあ私の後に続いて言いなさい…にっこにっこにー!」

 

「…は?」

 

どういうこと?

 

「は?じゃないわよ!私の後に続いて言うの!もう一回…にっこにっこにー!」

 

「にっこにっこにー」

 

とりあえず復唱した。

 

「あんたやる気あんの⁉︎振りもちゃんとつけなさい!もう一回」

 

「すいません、これなんですか?」

 

いきなりにっこにっこにー!とか言われてもきつい。男に振りもつけてやらせるとかもはやパワハラ。

 

「キャラ作りよ。アイドルでもボーダー隊員でも重要なのはキャラ作り。そのための練習よ。じゃあもう一回いくわ」

 

「いや、キャラ作りアイドルに必要だとしてもボーダー隊員には関係ないですよね?」

 

睨んできた

 

「関係あるわ。口答えする暇があったらさっさと従いなさい」

 

何を言っても無駄な気がしたので従うことにした。

 

「「にっこにっこにー!!」」

 

 

結局30分やらされた。心身ともに削られた。

 

「休んでる暇なんてないわよ!次は実戦よ、かかってきなさい。あんたの力見極めてあげるわ」

 

そう言ってスコーピオンを両手に構えた

なので俺もスコーピオンを両手に構える。これ以外使おうとは思わなかった。純粋に自分がお手本にどれだけ近づけているかを測りたいからだ。

 

「じゃあいきます」

 

そう言って一歩踏み出す。まずは当たり障りなく打ち合いをする。

 

「どうしたの?そんなもんじゃないでしょ?遠慮しないで最初から全力できなさい!」

 

俺は遠慮しているわけではない。攻めるのが苦手なんだ。相手の攻撃をいなして隙を突くのが基本的なスタンスだ。だから自分から打っていくのが得意じゃない。ひと息入れるため一度大きく離れる。

矢澤先輩は追ってこない、追って打ってきてくれればよかったんだけど。

 

「どうしたの?打ってきなさい」

 

困ったな…攻め方を変えるか。

 

もう一度矢澤先輩へと踏み込む

両手のスコーピオンでの突きで攻める。だが矢澤先輩もそれを払う、けど少しやりづらそうにはしてる。

 

「…やるわね」

 

耐えかねたのか打ち込んでくるようになった。俺が受けにまわる。

 

「矢澤先輩、遠慮しなくていいんですよ」

 

挑発して言う。本当は結構きついけど。

 

「言うじゃない…後悔しても知らないわよ」

 

矢澤先輩の攻めがさらに鋭くなる。さすがに厳しいので距離をとりスコーピオンを収める。そしてスコーピオンの出し入れを利用し突きを繰り出す。すると向かってくる矢澤先輩の足が止まる。そこで傷をつけることに成功する。また矢澤先輩が受けにまわる。

ここが攻め所だ。突きながら距離を詰め、詰めたところで足払いをかける…が見切られた。

そこで右足が切断された。しかし俺の右足を切った矢澤先輩の右腕を手首から切断する。そして左手からスコーピオンを伸ばしトリオン器官を狙う…

 

「思ったよりやるじゃない」

 

ニヤニヤしながら見下ろしてくる。

俺はそれを見上げていた。

やられた…完全に首が切断された。最後の一振りがわからなかった。完全に仕留めたと思ったのにな…

 

 

俺の身体が元に戻ったところで矢澤先輩のお話が始まる

 

「あんたなかなか動きはいいわね」

 

まあ矢澤先輩の真似してるだけだけど。

 

「だけどそれだけよ」

 

厳しい口調になる

 

「しかもその動きもB級で戦っていけるレベルではない」

 

身体能力と反応には自信があったんだけどな…でもこれまで戦えてないのも事実か。

 

「ま、安心なさい。にこがあんたを戦えるレベルにしてあげるわ」

 

俺は落ち込んだ表情になっていたんだろう。矢澤先輩の口調は変わらないが表情は心配してくれてるみたいだった。本当は面倒見がいい人なのかもしれない。

 

「ありがとうございます!」

 

「にこが指導するからには強くならないと承知しないわよ!」

 

「はい!矢澤先輩!」

 

「にこよ」

 

「にこよ?」

 

「にこって呼びなさい。私は有希って呼ぶわ」

 

下の名前とか小学生の時以来だよ…。あ、そういえば今日南さんをことりって呼んでた。てか俺自己紹介してないけど名前知っててくれたのか。

 

「にこちゃん?」

 

「さすがにその呼び方は抵抗あるわね」

 

「じゃあにこちゃんって呼びます」

 

「あんた私の話聞いてた⁉︎」

 

怒られた。怒ってるとこもかわいいな。

 

「ちょっと聞いてんの⁉︎」

 

にこ先輩は楽しい。思ってた感じとは違ったけど。でもにこ先輩となら頑張っていけると思った。

 

 

 

「聞いてますよ、にこ先輩!」

 

 

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