「セイバー着替え終わったか?」
「はい。終わりました」
セイバーと共に夜、一歩手前の時間に町に繰り出したが流石にドレスの上からコートだけで歩き回るのはあれなので服屋で服を購入し普通の格好をさせた訳だが…………凄く可愛い。
ただのカッターシャツによくあるミニスカートとよくあるソックスの上に普通にコートを着ただけだけなのにまるでただの少女だ。
中身はあのアーサー王なのにな。
「どうかしましたか? マスター?」
「いや、何でも……さぁ行くぞ。セイバー。とりあえず通り魔がいそうな場所を探そう」
とりあえず町を移動しよう。今は夕方だ。夜になったら公園とか裏路地とかを重点的に探す。
発見できなくても発見されたら接触してくるだろうし。
いないならいないで今夜はホテルに泊まろう。普通に家に帰るのは危ないし…………ホテルなら襲ってこないだろう。
襲ってきても逃げるなら逃げやすいだろう。まぁまさかマトモな奴は人混みの中に入った魔術師とサーヴァントを攻撃しないだろうし。
この五次の聖杯戦争で切嗣じみた真似をする奴はいないだろう。慎二は分からんがそこまでバカじゃないと思いたい。
まぁ大丈夫だろう。
「わかりました。シロウ」
あ、これ端から見たらデートだな。生憎、楽しむほどの余裕は無いけども。
―――――――――――
こうして町を下見して歩いている訳だが俺は何とも言えない顔をしながらセイバーを背において歩いていた。
なんと言うか何のおと沙汰もない。
セイバーに何かあったら言ってくれとは言っておいたが特に何も感じないらしい。
ふー。何というか疲れた。休憩しよう。腹へったし…………と、思っていたら狙ったかのように公園がありその中にたい焼き屋があった。
買うか。
「セイバー。ちょっとそこのベンチで待っててくれ」
「? わかりました」
と言う訳でたい焼きを幾つか買いベンチでちょこんと座るセイバーがの元に向かいたい焼きを手渡した。
「食べていいぞ?」
「ありがとうございます。…………では」
おおー。頭からカプッといったな。しかし真顔なのに何故にこんなにも美味しそうに食べているとわかるのか。
さて、俺も食べるか。……これは隣に座らんとな。
コミュニケーションだ。何せ初めてあった時に家の説明しながらお前の真名を知っているアピールしかしてないしな。
食事はとってもらったが感想も美味しいですの一言だけだったし。
俺はセイバーと仲がいいのか? わからん。セイバーずっと真顔だし。
「なぁ。うまいか? たい焼き」
「はい」
話。終わったな。
て、はえーな。俺の語彙の無さにビックリだ。
むなしい。そんな事を思いながらたい焼きをかじる。夕暮れの消えた空が自分の行く末を暗示しているかのようだ。
「マスター? 貴方に聞きたい事があるのです」
!! 何!? 急に! 何が!? 食べ終わったたい焼きじゃあ満足できなかった!?
「お、おう。なんだ?」
どもったわ! 悪いけどたい焼きは俺とセイバーで一つずつしか無いぞ?
「貴方に聖杯に掲げる望みは聞いていませんでしたから。気になったのです」
え? は? たい焼きじゃないのか。
聖杯の願いだな。いや無いな。だってその聖杯、壊れてるし…………。
もしも壊れて無かったら…………俺はどうするんだ? 前世の両親に会う? いや、あっても仕方ないな。俺もよく想いが会っても記憶は会っても顔、覚えてないし。
金とか? いや欲しくないな。欲しいが浴びるほど貰っても仕方ないし。盗られそうだ。
正義の味方になる? 魅力的かもだが必死になる理由じゃないな。
根源に至る? 駄目だな。興味がない。
つうか俺ってある意味、根源に至ってるよな。
俺は次元移動に生まれ変わりまでやってるんだから。
理由は解らないが確かに俺は前世の自分は居たと断言できるし記憶はある程度はしっかりある。
しかし俺はどうしてここにいるんだ? 俺は特別か? いや、人並みだな。これと言って何も無いな。
俺は何処に向かって行くんだろうか? 俺は人生二回目なのに何の楽しみもないな。
俺の人生に意味はあるのか? 衛宮士郎なのに衛宮士郎の人生も辿れない。自分の在りかたも人生も定まらない。
ただ決まっていた運命とやらから目を逸らして逃げて傍観していただけだ。
自分からも他人からも目を逸らして…………。
……………………俺は。
「俺は…………」
「マスター……サーヴァントの気配です! 私達を視ています!」
「え!?」
何!? 何処だ? 急に?
「こちらに!」
セイバーは慌てたようにベンチから立上がり俺の手を握り走り出した。
その足は速く俺は共に走ると言うより一方的に引っ張られる様な感じだ。
こうして俺達は道を曲がり曲がり人が全く通らないであろう道を走り続ける。
「おいおい! 本当にいるのか!?」
俺は焦って言葉を投げ掛ける。
それにセイバーは冷静に
「はい。ギリギリの距離を保ちながら此方を視ています! アサシンかも知れません! 偵察か挑発でしょう! 誘っています!」
……………………あ、あさしん? いや、それはあり得ない。
アサシンは山門から動けない。
キャスターか? いや、流石にセイバーを自分から挑発しには来ないし偵察なら使い魔を使うだろう。
アーチャーか? 違う。千里眼がある。見つかる無様は犯さないだろう。
誘うにしても遠距離からの狙撃を狙うだろう。伊達にアーチャーじゃないしな。
ライダーか? だが慎二ならそんな事、しないだろう。慎二なら公園の中にいたたい焼き屋の店主を殺して「やぁ」って感じで現れるだろう。
神秘の隠匿に対して基本、無頓着だろうしな。アイツは…………学校に結界をはるような奴だし。
まぁ学校を吹き飛ばした俺が言うことじゃないけどな!
って事はまさか…………まさか…………。
バーサーカーか!? だ、だがイリヤを抱えてるしアイツに偵察も挑発もできないだろう!
あり得ないよな! あり得ない筈だ!
あ! ってここは廃工場か? セイバーに引っ張られて走ったがここでやる気か?
開けているから問題ないがバーサーカー相手なら遮蔽物が無いと!
「出てこい。いるのだろう」
そんな俺の思考を無視してセイバーは風を纏い鎧を造り透明の剣を構えを戦意を飛ばす。
「へぇ。あんなところで遊んでやがるから対した奴じゃないと思ったんだがな。気のせいか? 楽しめそうじゃねーか!」
その戦意を受け答えるように光を放ちながら青い髪の美しい獣を思わせる美青年が禍禍しい雰囲気の朱槍を持ってセイバーに負けない程の戦意を放ちながら現れた。
その姿に俺は咄嗟に叫ぶ。
「ランサーか!?」
釣れたのはランサーかよ!