「ねえねえヒッキー。対象を取る効果と取らない効果の違いがよく分かんないんだけど、教えて?」
「……『選択』する効果は発動する前に対象のカードを決めて、『選んで』って書いてある効果は発動してから対象のカードを決める……って感じだと思うぞ。まあ、厳密には少し違うんだが、テストに使うならこのくらいの理解で充分だ」
「ほぇー……。あ、じゃあじゃあ他にも聞きたいんだけど、《メンタルマスター》と《イレカエル》の違いって何?同じ事書いてあると思うんだけど……」
「カードが違います」
「えっ」
「……」
「……カードが違うってどういうこと?」
「カードが違うということです」
「……」
「……」
※現在メンタルマスターはエラッタされています。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「「決闘(デュエル)!!」」
その掛け声と同時に、決闘開始を告げるブザーが鳴り響いた。
「俺の先行だ!ヒキタニ君、遠慮はしないよ!」
まずは葉山の先行。
……というか本当に先行後攻ってディスクが勝手に決めるのな。いきなり『あなたは後攻です』とか言われてビックリしたわ。
って、そんな事よりデュエルに集中だ。
この世界の平均的な決闘者の強さがわからなかったから、取り敢えず持ってる中で真ん中くらいの強さのデッキを使ったんだが……。
果たして葉山のデッキからは、鬼が出るか、蛇が出るか……。
「俺は《青き眼の乙女》を召喚!」
女の子が出ました。
・《青き眼の乙女》
星1/光/魔法使い族/攻 0/守 0
チューナー
(効果)→自身が効果の対象、または攻撃対象に取られた時にデッキor手札or墓地から青眼を特殊召喚できる。
「……なるほど、【青眼】か」
「ふふ、それが分かって、君はどう戦う?更に俺は《竜の霊廟》を発動!」
・《竜の霊廟》
通常魔法
デッキからドラゴン族モンスターを墓地に落とす。それが通常モンスターなら更にもう一枚落とせる。
「俺は《青眼の白龍》を墓地に送る。……当然ブルーアイズは通常モンスターだ。もう一枚、今度は《伝説の白石》を墓地に送る」
・《青眼の白龍》
星8/光/ドラゴン族/攻 3000/守 2500
通常モンスター。
・《伝説の白石》
星1/光/ドラゴン族/攻 300/守 250
チューナー
(効果)→墓地に送られた時、デッキから青眼をサーチする。
「《伝説の白石》の効果発動。ブルーアイズを手札に加える。……まあ、最初はこんなもんかな。カードを二枚伏せて、ターンエンド」葉山手札4→2
……ふむ、乙女を出して何もせずそのままターンエンド、か。
「……葉山、お前それ本気のデッキじゃねえだろ」
「……どうしてそう思う?」
「今のカードプールで先行で何もしない青眼とかよっぽどの事故でもない限りありえん。魔導のカードもEMのカードも使ってない所を見ると……、そのデッキ、【ストラク青眼】か」
「……御名答」
・【ストラク青眼】
早い話がただの純【青眼】。
ストラク三つで組めるので財布に優しくそれなりに強い。
基本戦術は乙女の効果を自分から能動的に使い、《蒼眼の銀龍》をシンクロ召喚し、その銀龍の効果でどんどんブルーアイズを展開していく事。
高打点のモンスターが大量に並ぶため、その圧力はかなりの物。
また、劣勢でも《サンダーエンドドラゴン》をエクシーズ召喚する事で一発逆転が狙えるデッキである。
弱点は乙女を引かないと回し辛く、乙女が来ても自分から対象に取れるカードがないとあまり意味がない事。
また、打点3000を超えるモンスターを相手に出されると一気に辛くなる。
「まあ何にせよ、お前が『力』だとするなら……俺は『技』だ。……ドロー」八幡手札5→6
「『技』……?まさか……!」
葉山が俺の言葉に何かハッとした顔をする。
やはり、この世界の人間はある程度の『ネタ』は通じるようだな。生きやすい世の中になったもんだ。
「俺は《H・C強襲のハルベルト》を特殊召喚」
・《H・C強襲のハルベルト》
星4/地/戦士族/攻 1800/守 200
(効果)→相手のみモンスターがいる時手札から特殊召喚可能。また守備貫通効果を持ち、相手にダメージを与えた時『H・C』カードをサーチできる。
「ヒッキーのあのモンスター……。じゃあ、ヒッキーのデッキって【H・C】?」
「そうとは限らないよ、結衣。ハルベルトは汎用性の高い効果とレベルを持ってるから、いろんなデッキに出張できるの。だから、まだヒキタニ君のデッキはわからない……」
「……つっても、お前には予想ついてんだろ?葉山」
「君が自分からバラしたんじゃないか……。そんな事は良いから、早くしてくれ。ヒキタニ君のターンだよ?」
「言われなくても……。俺は《ガガガマジシャン》を召喚」
・《ガガガマジシャン》
星4/闇/魔法使い族/攻 1500/守 1000
(効果)→1〜8までの任意のレベルになる事ができる。
「そして……、レベル4のハルベルトと、同じくレベル4のガガガマジシャンで……オーバーレイ!!」
俺が高らかにそう叫んだ瞬間、二体のモンスター達が光り輝く球体となり、空中へ舞ったかと思うと、いつの間にかできていた地面の穴へと同時に落ち、爆発した。
うおぉ……!これが近場で見るエクシーズ召喚の演出か!め、滅茶苦茶派手じゃねえか……!
「あ、現れろ!ランク4!《ラヴァルヴァル・チェイン》!!」
TUEEEEE!!!
・《ラヴァルヴァル・チェイン》
ランク4/炎/海竜族/攻 1800/守 1000
(効果)→素材を一枚切ってカードをデッキから墓地に落とすorデッキトップ操作。
「《ラヴァルヴァル・チェイン》かぁ……。ねえねえ、このカードって強いの?効果は墓地送りとデッキの一番上を変えるだけっぽいし……」
「いやいや結衣、このカードの凄さを知らずに良く決闘者やってるね……。いい?チェインの墓地肥やし効果は一見ではわからないくらいの汎用性を秘めているの。様々な状況で役立つ効果で……」
「この場合、代表的な使い方の一つ、『大型モンスターを墓地に叩き落とす』だな」
俺は《ラヴァルヴァル・チェイン》の効果を発動。
《ブラック・マジシャン》を、墓地に落とす。
・《ブラック・マジシャン》
星7/闇/魔法使い族/攻 2500/守 2000
通常モンスター。
「……やっぱりね。君の言い回しで何となくわかっていた。『力』がブルーアイズなら、『技』の代表はブラック・マジシャン。……そして君のデッキは、【ガガガブラマジ】だね?」
「……御名答、って返せば良いのか?」
・【ガガガブラマジ】
ガガガモンスターのレベル変動効果を使い、他のデッキでは出し辛いランク7の《幻想の黒魔導師》を召喚し、ブラック・マジシャンを展開していくデッキ。
と言っても強力なランク7モンスターは他にもいるため、状況によってドラゴサックで防御&除去、ビックアイでコントロール奪取なども可能。
また、ガガガのレベル変動効果を使えばランク7に留まらず様々なエクシーズモンスターが使用可能なので、マシュマックワンキルからビヨンドで一網打尽、フェルグラントで制圧などとにかくできることが多い。
弱点は、ブラマジを入れているが故の手札事故と、ガガガマジシャンが墓地にいないとろくに回らない事。
「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」八幡手札4→2
俺の場はチェイン一枚に伏せ二枚。このまま葉山にターンを渡すのは少し不安だが、まあ純青眼ならこれでも多分生き残るだろ。
と、思っていた所で。
「残念だがそれは甘いよヒキタニ君。……俺はエンドフェイズに入った時、《竜魂の城》を発動する」
「……ほう」
・《竜魂の城》
永続罠
1ターンに一度自分のモンスターを対象に取り、墓地のドラゴン族を除外する事で攻撃力を700上げる。
また、このカードが墓地へ送られた時、除外されているドラゴン族一体を特殊召喚できる。
「俺は乙女を対象に効果を発動。墓地の白石を除外し、攻撃力を700アップ!」
「……ちっ!」
乙女攻撃力 0→700
正直、この場合の乙女の攻撃力はあまり問題ではない。元々攻撃力が0のモンスターなのだ、700上がった所で大した脅威じゃない。
しかし、《竜魂の城》が『対象を取る効果』なのがマズイ。
これで、彼女の効果のトリガーが引かれてしまった。
「この瞬間、《青き眼の乙女》の効果発動!デッキにいる《青眼の白龍》を特殊召喚する!現れろ!ブルーアイズ・ホワイトドラゴン!!」
葉山の声と共に、俺の視界が光に満たされる。
あまりの光に目がくらむが、薄目を開けて視界を確保すると、そこには見慣れたつもりの、しかし初めて見る伝説の龍の姿があった。
「……おぉ……!!」
俺はつい数歩後ずさってしまう。
リアルソリッドビジョンでもないただの立体映像の筈なのに、その圧力は。
その強大な体躯は。
鋭く研ぎ澄まされた爪は。
獰猛に食いしばられる牙は。
確かに俺の身体を貫いていた。
……これが、ブルーアイズ!
「……ビビってる暇は無いよヒキタニ君!俺のターン!ドロー!」葉山手札2→3
「俺はフィールド魔法、《竜の渓谷》を発動!」
・《竜の渓谷》
フィールド魔法
手札を一枚捨てデッキからドラゴン族モンスターを墓地に落とす。
ドラグニティサポート?知らんな
葉山がフィールド魔法を使った瞬間、ソリッドビジョンに包まれた教室の風景が変化し始める。
無機質な床は砂利が混じる土の模様へ。
低く閉じた天井は赤く燃え上がる広大な空へ。
そして、俺と葉山の間には、深い深い渓谷の溝が大きく走っていた。
……なるほど、この世界でのフィールド魔法の演出ってこんなに凝ってんのか。
こりゃフィールド魔法使うデッキはとにかく使いまくりたくなるな……。
と、俺がデュエルに関係ない事を考えている間にも、葉山のターンは進んでいく。
「俺は手札のブルーアイズを捨てて、デッキから《ダークストーム・ドラゴン》を墓地へ送る!」
・《ダークストーム・ドラゴン》
星8/闇/ドラゴン族/攻 2700/守 2500
デュアルモンスター
(デュアル効果)→自分の表側表示の魔法罠カード一枚を墓地に送る事でフィールドの魔法罠を全て破壊する。
ダークストーム・ドラゴン。竜魂の城と相性が良いカードの一つだが、この場合のこいつの使い道は恐らく、ただのコストだ。
「俺は墓地のダークストームを除外し、《竜魂の城》の効果をもう一度乙女に使う!そしてこの瞬間、乙女の効果が発動!墓地の二体目のブルーアイズを、特殊召喚!!」
『ガァァァァァァァァァァァァァ!!!!』
葉山のフィールドに二体目のブルーアイズが現れる。
二体の白龍は共鳴するかのように雄叫びをあげ、俺のチェインを威圧した。
「バトルだ、ヒキタニ君!《青眼の白龍》で、《ラヴァルヴァル・チェイン》を攻撃!滅びのバーストストリーム!!!」
うおお、それ本当に言うんだ。
……なんて言ってる場合ではなく、当然守備力1000のチェインはあっけなく戦闘破壊される。
そしてまだバトルフェイズは終了していない。
もう一体、ブルーアイズは残っているのだ。
「もう一体のブルーアイズと攻撃力の上がった乙女で、ダイレクトアタック!」
「くっ……!」LP8000→4300
……繰り返すがこれはただの立体映像なので、苦そうな声を出す理由は無いのだが、ダメージを受けるとなんだかつい呻いてしまう。これが決闘者の性……!
「す、すげーよ隼人君!一気にブルーアイズ二体召喚して、ヒキタニ君のライフめっちゃ削ったし!これそのまま勝ちムードじゃね?」
「ふふん、さっすが隼人!」
「な、なんで優美子が得意げなの……?」
おのれ、戸部……!いやまあ、そりゃ俺が応援されるとか思っていませんけどね?
って、こんな事気にしている場合じゃなかった。集中集中。
「さて、ヒキタニ君。当然これで終わりじゃないぞ。……メイン2、俺はレベル8の《青眼の白龍》に、レベル1の《青き眼の乙女》をチューニング!!」
……そう、青眼デッキの厄介な所はここからなのだ。
これがストラク青眼の真の切り札……。
「シンクロ召喚!《蒼眼の銀龍》!!」
・《蒼眼の銀龍》
星9/光/ドラゴン族/攻 2500/守 3000
(効果)→このカードが特殊召喚されたターンから次のターンの終了時まで、自分フィールドのドラゴン族モンスターは効果の対象にならず、効果で破壊されない。
また、自分スタンバイフェイズ時に墓地の通常モンスターを蘇生できる。
「銀龍の効果でフィールドの銀龍自身とブルーアイズは耐性を得る。これでヒキタニ君がブラックホールを引いたとしても突破はできないよ」
「……ご丁寧に銀龍は守備表示か。ま、普通そうだろうがな」
葉山の場は青眼一体と銀龍一体。
モンスター2体だけだと少なく感じるかもしれないが、一枚一枚が高打点の最上級モンスターなのだ。その圧力は計り知れない。それに、強力な耐性も持ち合わせている。
しかし、はっきり言って恐るるに足らず。
一体今まで、俺がどれだけのピンチ(一人デュエル)を乗り越えて来たと思っているのだ。
一体今まで、俺がどれだけの難しい布陣(詰めデュエル)を突破してきたと思っていやがるのだ。
こんなフィールド、屁でもない……!
「俺はこれでターンエンド」
「おぉっと待て。エンドフェイズ時、俺は伏せていた《永遠の魂》を発動する」
「……やっぱり伏せていたか」
・《永遠の魂》
永続罠
①1ターンに一度、手札or墓地から《ブラック・マジシャン》を特殊するか、《黒・魔・導》または《千本ナイフ》をサーチする。
②このカードが表側表示でフィールドにある限り、自分の《ブラック・マジシャン》は相手の効果を受け付けない。
③このカードがフィールドから離れた時、自分フィールドのモンスターを全て破壊する。
「このカードの効果で、墓地の《ブラック・マジシャン》を蘇生!」
「《永遠の魂》……。強力なブラマジサポートカードだね。あれがある限りヒキタニ君は毎ターン、ブラマジを召喚し続けられる」
「つってもブラマジの攻撃力って2500っしょ?隼人君の二体のモンスターにはどっちも勝てねえじゃん!」
「それはそうなんだけどね。でも、ヒキタニ君の【ガガガブラマジ】は、もう既に準備が終わってる。……次のターン、きっと動くよ。ブラマジで守るだけじゃ絶対に終わらない」
「俺のターン。ドロー」八幡手札2→3
「俺は《永遠の魂》をもう一度発動。《黒・魔・導》をサーチする。……そのまま発動」
・《黒・魔・導》
通常魔法
自分フィールドに《ブラック・マジシャン》がいる時に発動できる。
相手の魔法罠を全て破壊する。
「お前の竜魂の城と伏せは破壊だ」
「伏せカードは激流葬……、まあ良い。取り敢えずこのタイミングで、《竜魂の城》の効果を発動させてもらうよ」
竜魂の城の効果。墓地へ送られた時、除外されているドラゴン族モンスターを特殊召喚する。
「《ダークストーム・ドラゴン》を特殊召喚!!」
「これで葉山君のフィールドにまたもう一体大型モンスターが……」
「ヒッキー……!」
「さあ、どうするヒキタニ君。まさか諦めてサレンダーなんてしないよね?」
「は、馬鹿かお前。どこの世界に『勝てる勝負』を諦める決闘者がいるんだよ。……むしろ俺から言ってやる。葉山、サレンダーなんてしないよな?」
葉山の表情が少し険しくなる。
「……どういう意味だ?」
「これから教えてやる」
俺はそれだけ言うと、デュエルディスクにカードをセットした。
「《ガガガシスター》を召喚!」
・《ガガガシスター》
星2/闇/魔法使い族/攻 200/守 800
(効果)→召喚時、ガガガ系魔法カードをサーチできる。また、フィールドのガガガモンスター1体を選択し、お互いのレベルをこのカードと選択したカードのレベルを合わせた数値に変更する事ができる。
「攻撃力200!?いやー、ヒキタニ君!それは自殺行為すぎんべ!!」
「馬鹿戸部。……あいつの効果をよく見な」
「え?あいつの効果?」
「……《ガガガシスター》の効果発動。《ガガガリベンジ》を手札に加える」
・《ガガガリベンジ》
装備魔法
墓地のガガガモンスターを蘇生し、装備させる。
また、このカードが墓地に送られた時、フィールドのエクシーズモンスターの攻撃力を300上げる。
「俺の墓地には既にガガガマジシャンがいる。もう分かるな?……《ガガガリベンジ》を発動!《ガガガマジシャン》を蘇生し、装備!」
「そしてガガガシスターの効果を使えば、レベル6のモンスターが二体……!」
「気づいたみたいだな。その通りだよ、葉山。……《ガガガシスター》の効果!シスターとマジシャンのレベルを合わせた数値に、お互いのレベルを変更する!!」
《ガガガシスター》レベル2→6
《ガガガマジシャン》レベル4→6
「俺は二体のレベル6のモンスターで……オーバーレイ!!」
二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!!
「現れろ!!《NO.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》!!」
・《希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》
ランク6/光/戦士族/攻 3000/守 2500
(効果)→このカードの召喚時、相手モンスターの攻撃力を全て0にする。
他の効果についてはこのデュエルで使わないので省略。
「くっ……!」
「ああ!隼人君のモンスターが!」
《青眼の白龍》攻撃力3000→0
《ダークストーム・ドラゴン》攻撃力2700→0
《蒼眼の銀龍》攻撃力2500→0
葉山のモンスター達の威圧感がどんどんと萎んでいく。
これであの大型モンスター達は全てハリボテ同然となった。
「で、でも!隼人の銀龍は守備表示でしかも守備力3000!ビヨンドの攻撃力と一緒の数値だから、どっちにしろヒキオに隼人の布陣は突破できない!」
「それがそうでもないんだなぁ。……この瞬間、《ガガガリベンジ》の効果発動」
「……っ!」
《ガガガリベンジ》の効果。墓地に送られた時、フィールドのエクシーズモンスターの攻撃力を300上げる……!
《NO.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》攻撃力3000→3300
「銀龍の守備力を……」
「越えた……!」
「……バトルだ」
俺はビヨンド・ザ・ホープで銀龍を攻撃。
そして、ブラック・マジシャンで攻撃力が0となったブルーアイズに攻撃。
「『ブラック・マジック!!』」
「ぐっ、うぅ……!」LP8000→5500
これで葉山のフィールドには、攻撃力が0になったダークストームのみ。
「これで銀龍で青眼を蘇生する作戦もパァだ。そしてお前の手札は次のドローを合わせても二枚。伏せカードも無い。……まあ、これで俺はターンエンドだ。せいぜい頑張れ」
「……っ!ドローッ!」葉山手札1→2
鬼気迫る様子でカードをドローした葉山だが、カードを確認瞬間表情が少し和らいだ。
……何か良いカードでも引いたか。
「俺は、《死者蘇生》を発動!」
「……なるほど、良い運だ」
・《死者蘇生》
通常魔法
墓地のモンスター1体を蘇生する。
「俺は墓地の《青眼の白龍》を蘇生!!……これでレベル8のモンスターが二体!!」
「来るよ、ヒッキー!」
「来ねーよユイトラル」
俺はブルーアイズが出た瞬間、リバースカードをオープン。
「《王者の看破》、発動!」
「なにっ!?」
・《王者の看破》
カウンター罠
自分フィールドにレベル7以上の通常モンスターがいる時のみ発動できる。
モンスターの召喚、特殊召喚、魔法罠の発動のどれか一つを無効にする。
「お前の相棒にはもう一度墓場に帰ってもらう」
「くそっ……!俺はカードを一枚伏せて、ターンエンド……!」
大方レベル8二体でサンダーエンドでも呼び出そうとしてたんだろうが、残念だったな。何故わざわざ事故率を上げてまでガガガデッキにブラマジを入れてると思ってやがる。
「隼人……!」
「はーやとくーん!負けんなー!!」
クラス中から葉山を応援する声が聞こえる。
当然その中に俺を応援する声は混じっていない。それで良い。それでこそ俺のアイデンティティ。だから……。
「八幡、頑張れー!」
「ひ、ヒッキー!」
お前らの声がクラスメイトにバレる前に、とっとと終わらせねえとな。
「俺のターン、ドロー!」八幡手札2→3
「待った!ヒキタニ君のスタンバイフェイズ時、俺は伏せていた《リビングデッドの呼び声》を発動!」
・《リビングデッドの呼び声》
永続罠
墓地のモンスター1体を蘇生する。
このカードが破壊された時そのモンスターも破壊し、そのモンスターが破壊された時もこのカードを破壊する。
「俺は《蒼眼の銀龍》を蘇生!」
「おお!これで銀龍の攻撃力分隼人君のダメージが減るから、このターン生き残れんべ!」
「……どうかな、それはわからないよ?」
「……え?」
「ヒキタニ君のターンは、まだ始まったばかりだから」
「葉山、そりゃプレイングミスだ。そういう事は、相手が慢心してバトルフェイズに入ってからやる事だぜ。……まあ、俺はどっちにしても油断しねえけどな。……俺は、《ガガガマジシャン》を召喚!そのまま効果を発動する。レベルを7に変更!」
「レベル7のモンスターが二体……!」
今度は来るよユイトラル!
「エクシーズ召喚!!《幻想の黒魔導師》!!」
・《幻想の黒魔導師》
ランク7/闇/魔法使い族/攻 2500/守 2100
(効果)→1ターンに一度、素材を一枚切ってデッキから魔法使い族の通常モンスターを特殊召喚できる。
また、自分の場の魔法使い族の通常モンスターが攻撃する時、相手の場のカード一枚を除外できる。
黒の衣服に身を包んだ魔導師が、闇の中から這い出してくる。
黒魔導師の放つ力強い眼光が、銀龍を貫いた。
「凄い、あれが……」
「ヒッキーの、エースモンスター……?」
「おいおい勘違いするなよ。こいつば別にエースなんかじゃない。……ていうか、そもそもこのデッキ5軍だし」
「「「「5軍!?」」」」
俺が言うと、クラスの連中の大半が驚いた顔をしていた。
「え!?って、って言うことは、そのデッキはヒッキーが持ってるデッキの中で5番目ってこと!?」
「いや、決闘者なら複数のデッキを持つのが基本だろ。葉山も一軍デッキじゃないみたいだしな」
「そ、それはそうかもだけど……!」
え?決闘者ならデッキの一つや二つや五つや十つ持ってるのが普通じゃないの?俺だけ?いやそんな筈は……。
ま、まあ、いつまでも外野を気にしてるわけにもいかない。さっき自分で早く終わらせようと考えたのではないか。
「《幻想の黒魔導師》の効果発動。デッキからブラックマジシャンを特殊召喚する。……さあ、お前のライフを数えろ!」
「俺の残りライフは、5500……!」
「そして俺の場の総打点は2500+2500+3300=8300。お前の銀龍の攻撃力を引いても……!」
「……っ!」
「隼人ぉ!!」
三浦の悲痛な叫びが聞こえる。
悪いな三浦、好きな奴の負ける姿なんて見たくもないだろうが、俺も決闘者として、初陣で負けるなんて耐えられん。
「まず一体目。《NO.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》で、《蒼眼の銀龍》を攻撃!!」
ビヨンドの六つの剣が一つの大剣へと纏められ、銀龍を両断する。
「ぐうっ……!」LP5500→4700
「二体目、《幻想の黒魔導師》で、ダイレクトアタック!」
「ぐあぁっ!!」LP4700→2200
「……これでラストだ。三体目ぇ!!《ブラック・マジシャン》で、ダイレクトアタック!!」
……瞬間。葉山の表情がほんの少しだけ強張り、……そしてふっと柔らかく笑った。
それは諦めなのか、呆れなのか、よくわからない笑顔。
何にせよ、俺はこの瞬間、葉山が負けを認めたのだと理解した。
「『黒・魔・導(ブラック・マジック)』!!!」
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」LP2200→0
ブラックマジシャンの攻撃が葉山を包み込むと、デュエル終了を告げるブザーが鳴り響いた。
D・ゲイザーの見せていたデュエル空間のポリゴンが消え、元の教室の風景へと世界が戻っていく。
そんな中、葉山がD・ゲイザーを外しながら髪を掻き分け、はぁとため息をついた。
「参ったな。まさか『6軍』のデッキとは言え、ヒキタニ君に負けるとはね」
「……はん、負けず嫌いさんめ」
俺と葉山はお互い皮肉な笑いを浮かべ、決して強くはない力で握手をした。
これにて、俺の初めての他人とのデュエルは、無事俺の勝利で幕を閉じたのである。
× × ×
「……もしもし?俺だよ、隼人。……え?俺からかけてくるなんて珍しいって?はは、確かにそうだね。初めてかもしれない」
『……』
「要件はね、俺としてもまだ信じられない事なんだけどさ、……聞きたい?」
『……』
「わかったわかった。言う、言うよ。……実はね、今日、ヒキタニ君……いや、比企谷とデュエルをしたんだ。……負けたよ。完敗だ」
『……!?……っ!?……!!』
「はは、動揺してるね。うん、まあ、気持ちは分かるけど。俺としても正直、デュエルを申し込んで受けてもらえるとは思えなかった」
『……!?……!!……!?……っ!?」
「……うん、どうやらかなり焦ってるみたいだから、電話じゃなくて会って話すよ。……それにしても、まさか彼が俺とデュエルするなんて、本当に思わなかった」
「……ずっと前から頑なに、陽乃さんと『しか』デュエルしてこなかった彼が……」
どういう心境の変化なんだろうね?
俺はそれだけ言い切ると、携帯をしまい歩き出す。
彼女との集合場所は、後でメールでも送れば良いだろう。
しかし、あの比企谷がデュエルを受けるのも驚いたが……。
あれほど『弱く』なっている事にも、驚いたな……。