淡い期待もむなしく、ヤツは包丁をこちらに向けてきた。俺→みかんの順で調理するつもりらしい。ヤツは俺を手に取り、皮を剥こうとしてる。
冷静に状況を判断しているつもりだが、実のところむちゃくちゃ恐い!!!さっきまでの度胸はどこへやら。いっそのこと覚悟があった時に終わってた方が…いやそんなことを思ってはいけない、生きていられるのはなによりありがたいことだ。てか、危機が迫ると案外思考はよくめぐるんだな。
包丁がかなり近付いてきた。りんごはみかんとは違い、手で皮を剥くことができないから、包丁で剥くしかない。いい迷惑である。只の斬殺処刑じゃないの。みかんはまだ痛みが少なく終わりを向かえるんだからいいよなぁ……そんなくだらない嫉妬を俺はした。自分の皮質をちょっと恨んだ。
包丁が、1cm 、1cm身に迫る。俺は果物だから実だけどね、なんつって。即席のどうでもいい洒落にちょっと悪寒を覚えた。なぜ俺は今洒落を考えた、それは置いといてっと。もう包丁は俺に触れそうだ。無意識に鳥肌が立っていた。本能的に危険を感じている証拠だ。
同じように生命《いのち》の危機が訪れ、
同じように“死”について思考をめぐらせているのに。
なぜ俺はさっきと違いこうも焦りと恐怖を感じているのか。1度助かっただけでここまで変わってしまうのか…?
まあ、運命だけではなく生きたい本能にも逆らえない、ということかな?いや、それなら死ぬことを受け入れて覚悟していたさっきとは少し矛盾してしまう。
生命が危ないのはやはりさっきと同じなのに、俺の思考はさっきのような平静ではなく真っ白になっていく。
そして
―――俺の身に、包丁がゆっくりと触れた。
俺の思考はそこで止まった。でも、思考の答えは出た。
運命だなんだと諦めていたのに、いつの間にか生き続けたいという思いにはっきりと変わっていたってこと。
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ヤツ(人間)side
目が覚めたら、たまたま夜中の3時だった。えらく中途半端な時間だったから二度寝しようかと思ったが、アプリのスタミナが満タンになっているだろうと思い返し、それを消費してる間に4時近くになった挙げ句、眠気もなくなった。
喉が渇いたのでリビングへ行った。机に目をやるとちょうどみかんがあった。水道水で喉を潤してもいいが、ここでみかんを食べずにおくとなんとなくこのまま食べずに終わるような気がしたので、食べることにした。みかんの隣にはリンゴもあったが、わざわざ皮を剥くのは面倒だから今は食べない。
手をのばしてみかんを手にとって皮を剥こうとする。しかしここで俺は手を止めた。なぜかって?せっかく食べるのにもっとうまい食い方はないのかと思ったからだ。あとトイレ行きたい。トイレ行きながらどうすっか考えよう。俺はリビングを一旦出た。
リビングに戻ってきた。トイレでぼんやり考えた結果、フルーツポンチにして食べることにした。みかんを手に取る。ついでにリンゴ、お前もだ。キッチンに向かい、包丁を準備。さぁて…じゃあ早速リンゴの皮を剥いて切るとしますか。
だが、いざリンゴに包丁を触れさせたところでまたもや考えが浮かんだ。ミックスジュースにしても悪くないんじゃないかと。むしろポンチより楽じゃね?あー、どっちにしようかな。我ながら優柔不断だと思うが、1度なんか浮かぶとちゃんと選びたくてね。うむむ………。
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りんごside
…あれ。皮が剥かれない。またヤツの気が変わったのだろうか。俺の皮を剥かずに何か考え込んでいる。包丁は俺の身にしても触れたままなので横をガン見すると恐い。もうやだ。突然調理止めたりとかしないかなー…
考えがまとまったのか、ヤツはふっと顔を上げた。そしてなんと、俺から包丁を下げたのである。
「(!?)」
驚いた。まさか本当に調理を止めるのだろうか。ヤツはかがんで戸棚を開け、包丁をしまった。が、それだけではなかった。何かをがさごそと取り出している。ヤツの動きがまた止まった。俺は息を飲んで見守っていた。どうやら目的の物を見つけたようだ。ヤツは立ち上がって、その取り出した物をどすんと俺の前に置いた。
俺は絶句した。
「(ミキサーァァァァ!!??)」
そういえば昨日スクフェスでのんたんイベが終わりましたね。次のイベは誰になるんだろう?そんなことを考える今日この頃。それではまた次回、アディオス。