憑依した先はCGS一軍の隊員でした。   作:ホアキン

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遅くなりました。名瀬さんとの会話シーンは何度も書き直ししてました。あとオルフェンズて時間の流れが1回観ただけでは解りづらく、トウガをどう絡ませるか悩みました。


寄り添うかたち

 ハンマーヘッドに帰っていった2機の百錬を見送った後、さっき手放したライフルを回収する。

 

「イサリビから結構離れたな・・・昭弘、自力で戻れる?」

「おう・・・問題ねえよ・・・」

「そう。悪いけどこっちは背部のブースターが壊れてるから自力で帰艦出来るか不安なんで、連れて帰ってくれない?」

「・・・ったく、イマイチ締まらねえなアンタ」

「たはは、面目ない」

 

 でも出て良かったと思う。タービンズのパイロットは皆腕利きだ。その実力をシミュレータでは無く実戦で身をもって知る事が出来たから。自分がまだまだだって事も痛いくらいに実感出来た。こんなのじゃあ、この先の戦いで『奴』の足止めすら出来ずに潰されてしまうだろう。

 そう考えつつ、昭弘に引っ張ってもらいながらイサリビに帰艦した。

 

「お疲れ様ですトウガさん」

「大丈夫かよトウガ兄ちゃん?」

 

コックピットから出るとタカキとライドが出迎えてくれた。

 

「僕は大丈夫だよ。機体は見ての通りだけど」

「結構やられたなあ、背中のブースターはもう駄目じゃね?」

「そうだね。昭弘のグレイズ用のパーツと他の鹵獲グレイズから取ったパーツを使って修理しないといけないかな」

 

パーツ自体は替わりがあるから良いんだけどね。

 

「は~、MSが増えて、戦力が増すのはいいけどさ、その分面倒も増すんだなあ」

「こらライド!そんな事言ったらトウガさんに悪いだろ!」

「いや、ライドの言う事も正しいよ、戦力としては強力でも維持運用には手間も金も掛かるのがMSってもんだからね」

「でもトウガさんも、三日月さんや昭弘さんと一緒にイサリビを守って戦ってくれたのに・・・」

「ありがとうタカキ。そう言ってくれるだけで充分だよ。ライドもごめんね、こんなに壊して君達の手間を増やしちゃって。出来るだけ僕も手伝うからさ」

「い、いや別に大した事じゃねーし!トウガ兄ちゃんに謝って欲しかったわけじゃねーから・・・」

「そっか。それじゃこの話はここまで。で、今の状況はどうなってるの?」

「今は団長がビスケットさんとクーデリアさんと一緒にあっちの艦に交渉に行ってます」

「そうか、上手くまとまれば良いんだけど・・・」

「これからどうなるんだろうなあ~?」

 

大体原作通りみたいだし多分大丈夫だと思う。ていうか駄目だったら詰みだし、考えても仕方ない。

・・・ていうか腹へったな。三日月と昭弘誘って食堂行こう。

 

「三日月~!昭弘~!メシ行こ~!」

「うん」

「おう」

 

そして食堂。

 

「良かった、皆無事で・・・」

 

僕たちが飯食べてる側でアトラが安堵の表情を見せる。そういえばアトラは戦闘中ブリッジで見てたんだよな。

 

「トウガと昭弘のおかげだよ。やっぱり良い腕してる」

「ボロボロにされちまったがな」

「僕は昭弘に比べたら大した事できてないよ」

「俺の方がよっぽどひどかった・・・」

「?」

「三日月、相手を倒しきれなかった事気にしてる?」

「うん。バルバトスもボロボロにしちゃったし」

「あ~、バルバトスの方はともかく、今回に限っては相手を倒さなくて正解だよ。今回は相手に鉄華団の実力を示して交渉に持ち込むのが目的だったんだし、こっちはもちろん、相手側にも死人が出てたら上手く交渉に持ち込めたかわからない。こっちもあちらも死者ゼロで済んで結果オーライだよ。三日月、君はちゃんと自分のやるべき事をやれた。それでも今回の戦闘に自分で納得出来ないなら、その反省を次に活かせば良いじゃないか」

「次、か・・・」

 

そう呟くと三日月は席を立つ。

 

「あ、三日月、おかわりは?」

「いや、いいや」

「え?まだ何時もの半分ぐらい・・・」

 

その時、タカキが食堂にやって来た。

 

「三日月さん!団長達が帰って来ましたよ、今ブリッジにいるって・・・」

「俺、ハンガーでおやっさん手伝ってくるから、そっちは任せるって言っといて」

「え、でも・・・」

 

三日月はそのまま食堂を出ていってしまった。

 

「良いよタカキ、今は三日月の好きにさせてあげよう。今回は相手が手強かったから、思うところがあるみたいだ」

 

そう言ってスープの残りを飲み干すと僕も席を立つ。

 

「ごちそうさまアトラ。僕はブリッジに行くね」

 

 ~その後、ブリッジ~

 

「と、いうわけで、テイワズのボス、マクマード・バリストンさんと交渉する事が決まりました!」

 

ビスケットの発表におおー、と、ブリッジにいるメンバーの感嘆の声があがる。

 

「慌てんな、まだテイワズの傘下に入れると決まった訳じゃねえ」

 

オルガが湧き立つ面々に釘を刺す。けどまあ、少し前までテイワズに渡りをつける当ても無かったのだから、大きく進展したと言えるだろう。

 

「これから俺達は、タービンズと一緒に歳星に向かいます」

「歳星?」

「テイワズの本拠地になっている大きな船だって。今近くにいるらしいんだ」

「へえ~」

「団長さん、火星と繋がりました」

「じゃあ、こっちの状況を伝えるんで・・・」

「その前にあちらからメールが来ているようですが」

 

 

「火星の方は収入が殆ど無くて、運転資金が目減りする一方だなんて・・・」

「そう長くは保ちそうにねえか・・・」

「ギャラルホルンに目を付けられてちゃまともに商売なんて出来ないもんね。早くなんとかしないと・・・」

「1軍の奴等の退職金削減しても焼け石に水だったかあ・・・」

 

畑の方はダンジがなんとかやってくれてるらしく、食費は少し抑えられてるらしいが、それも微々たるものでしかないようだし。

 

「ビスケット、火星でギャラルホルンから鹵獲した戦利品とこないだ僕が回収したグレイズ2機分のエイハブ・リアクター、それを売却すれば当座は凌げると思うけど?」

「あ・・・でも、CGS時代からの業者じゃ扱いきれないんじゃないですか?」

「なら扱える業者を探せば、いや、ちょうどそういう業者に伝手のありそうな組織と縁が出来たじゃない」

「タービンズに仲介を頼もうってか・・・」

「もちろん仲介料は払わなくちゃいけないけど、出来ない事は無いと思うよ。リアクターは機体を解体して用意しないといけないから、少し時間がいるけど、他に方法も無いでしょ」

 

 それから10日程、グレイズ2機を解体して、リアクター以外のパーツは修理用に残して、他の鹵獲品とリアクターをまとめてリストアップして、その合間に三日月と昭弘と一緒にハンマーヘッドでシミュレータ使って訓練したりして過ごした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「なあ~、まだ歳星ってのに着かねえの?」

 

 食堂で窓から外を見ながらライドが焦れたような声をあげる。その近くのテーブルにタカキとヤマギが座っている。

 

「そろそろって聞いたけど」

「ちぇ~、昨日もそれ聞いたぜ~。一体いつ着くんだよ?」

 

ヤマギの言葉にも飽き飽きしたように顔をしかめる。

 

「ねえ、三日月さんて最近見ないよね?」

「ああ、トウガさんと昭弘さんと一緒に、あっちの艦でシミュレータ使って特訓してるって聞いたよ。今日はトウガさんは団長とビスケットさんと一緒にあっちに話に行ってるらしいけど」

「え?特訓?」

「すげえよなあ、三人ともあんなに強えのにまだ頑張って、トウガ兄ちゃんは他の仕事もしてるし。・・・に引き換え・・・」

 

 そう言いながらライドが目を向けた先には、テーブルに突っ伏したシノとモロコシ粥を掻き込むユージンがいる。

 

「あんなに女がいるのに、一人も靡かねえってどういう事だよお・・・」

「けっ!どーでもいいわ、んなもん!」

 

 タービンズの女性達を口説こうとして、全く相手にされなかったらしい。

あちらの女性達は全員名瀬を強く慕っているし、名瀬とシノを比べてしまうと男としての器の大きさが違い過ぎるので、当然の結果である。

そもそも、他人の女に手を出そうとしている時点で如何なものかという話だが。

 

「ほんと、少しはあの3人を見習えば良いんじゃね?」

 

シノとユージンをジト目で見ながら呆れたように呟くライドだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 ~ハンマーヘッドの応接室~

 

「ん?初めて見る顔がいるな」

「あ、はじめまして、トウガ・サイトーと言います。一応パイロットやってます」

「ははあ、お前か、アミダが言ってた妙なのってのは」

「は・・・はい?」

「攻撃に殺気が感じられないわ、ワイヤーばらまくわ、アジーの機体に抱き付くわ・・・百錬に巻き付いたワイヤー外すのが面倒だってメカニックの女達もぼやいてたぜ」

「うっ・・・すいません」

「まあそんな事はいい。で、何だ?改まって話ってのは?」

 

名瀬さんに促され、ビスケットが鹵獲品のリストが入った端末を差し出し、売却先の業者を紹介して欲しいと頼む。

 

「もちろん、仲介料はお支払いします。お願いできないでしょうか?」

「できなかねえがよ、お前ら、そんなに金に困ってんのか?」

「そ、それは・・・」

「正直、困ってます」

「CGSの資産の内現金は殆どマルバが持ち出してしまってましたし・・・」

「なら、何で俺が仕事紹介してやるって言った時に断った?」

「えっ・・・あ、いや、だって、あの話を受けたら、俺達はバラバラになっちまうって・・・」

「なっちゃいけないのか?」

 

名瀬さんの問いに、オルガは少し考える様子を見せて口を開いた。

 

「俺らは、離れられないんです。」

「離れられない?気持ちわりいなあ、男同士でベタベタと」

「何とでも言ってください。俺らは・・・、鉄華団は離れちゃいけない」

「だから何でだよ?」

 

名瀬さんの語気が強くなる。理由の説明になってないから、苛立つのも無理は無い。

 

「それは・・・」

 

オルガはまた少し黙考して、口を開いた。

 

「繋がっちまってんです。俺らは」

「はあ?」

「死んでいった仲間の流した血と、これから俺らが流す血が混ざって、鉄みたいに固まってる。だから・・・だから離れらんねえ。離れちゃいけないんです。危なかろうが、苦しかろうが、俺らは・・・」

「マルバに銃を突き付けた時、お前言ってたよな?アンタの命令通りに、俺はアイツらを・・・」

 

立ち上がりながら名瀬さんが口にしたその言葉にオルガが息を呑む。

 

「アイツらってのが、その死んでいった仲間の事か?」

「・・・」

「離れられない、そりゃ結構。だがな、鉄華団を守り抜くってんなら、これからは誰もお前に指図しちゃくれねえ。お前の命令ひとつでガキどもが死ぬ。その責任は誰にも押し付けられねえ。オルガ、団長であるてめえが、一人で背負えんのか?」

 

 ソファから立ち上がった名瀬さんはオルガに指を突き付けた。組織の長としての覚悟を問うているのだろう。それは前線で戦う兵士としての覚悟とは全く別物で、誰も肩代わり出来ないものだから。

 

「・・・覚悟は出来ているつもりです」

「ほう~?」

「仲間でも何でもねえ奴に訳のわからねえ命令で、仲間が無駄死にさせられるのはごめんだ。アイツらの死に場所は、鉄華団の団長として、俺が作る!」

「オルガ・・・」

 

 オルガが立ち上がる。

 

「それは俺の死に場所も同じです。アイツらの為なら、俺は何時だって死ね・・・ぐあっ!」

「お、オルガ!?」

 

名瀬さんにデコピンを喰らって倒れたオルガに、ビスケットが悲鳴のような声をあげる。

 

「てめえが死んでどうすんだ?指揮官がいなくなったら、それこそ鉄華団はバラバラだ」

 

 僕はオルガを助け起こしながら、名瀬さんに視線を向ける。

 

「確かに団長としての責任はオルガだけのものです。けどその重さを少しでも軽くする為に僕がいます。他の皆もただオルガについていくだけじゃありません」

「てめえ、見た所オルガより歳上だろ?歳下に重い役目を背負わせてその下に甘んじてる奴に何が出来るってんだ?」

 

痛い所を突いてくるなあ。口を挟まない方が良かったかな?でももう退けない。僕も意地の張り所だな。

 

「戦闘、整備、炊事、その他色々。どれも正直うちじゃ二の線て所ですけどそこそこやれるつもりです。それと・・・オルガ達の弾除け」

「!?」

 

オルガが驚いた顔で僕を見ている。顔は見えないがビスケットも動揺した様な気配を感じる。

 

「てめえ、オルガの為に死ねるってのか?」

「少なくとも、マルバやCGSの1軍の奴らの為よりは万倍死に甲斐があると思ってます。だからこそ、火事場泥棒だって解った上でCGS乗っとりに荷担しました。マルバ社長への恩義を捨てても、オルガ達が自分達の意思で前に進む助けになりたいって思ったんです。だからオルガを信じて、鉄華団を守る為に命を張る覚悟は出来ています。それがオルガに団長という重い役目を背負わせた、指揮官になる力が無い僕なりの責任の取り方です」

 

 名瀬さんと僕は睨み合うような形で向き合う。

 

「トウガさんは、CGSの時から僕達の為に色々してくれてた人なんです」

「俺らを使い捨ての駒ぐらいにしか思ってねえ奴ばかりの1軍の中で、たった一人俺らに味方して、体を張って俺らやもっと小せえ奴らを庇ってくれた奴なんです。コイツや他の仲間達が任せてくれた団長って役目、その責任から逃げるようなカッコ悪い奴には、俺はなりたくねえんです」

 

「・・・ったく、青臭え事ばっかり言いやがって。ケツが痒くなっちまうぜ・・・」

「うっ・・・」

 

名瀬さんは呆れたような顔をしている。・・・マズったかな?

 

「まあでも・・・血が混ざって繋がって、か・・・そう言うのは仲間っていうんじゃないぜ」

「え?」

「家族だ。・・・まっ話は解ったよ」

「え?あの・・・」

「悪いようにはしねえからよ」

「よろしくお願いします」

「あ、お願いします」

「お願いします!」

 

応接室を出ていく名瀬さんを見送った後で自分達も応接室を出るとオルガはしゃがみこんで頭を抱えた。

 

「あぁ~!・・・しくじったあ・・・」

「そう?考えてくれるって言ってたじゃない?」

「問題はそこじゃねえ!商売の話はあくまで対等にしなけりゃなのに、あんなガキ扱いされて・・・」

「ぷっ、くくっ、はははっ」

「ふふっ、ふふふ・・・」

 

ビスケットと僕の口から笑い声がこぼれる。珍しくオルガの可愛い所が見れたなあ。

 

「何だよ?」

「ははっ、大丈夫、何があっても僕達はオルガを信じてついていくから」

「そーいう事」

「・・・おう・・・」

 

そう言って立ち上がり、歩き出す。僕とビスケットも後を追う。

 

「いやあ、それにしても珍しいものが見れたねえ、オルガの落ち込む姿とか、ユージンが見たら何て言うか」

「なっ、テメエ!言うなよ!言ったらアンタが恥ずかしいから秘密にって言ってた話バラすからな!」

「おおっと、それは困るな。解ったよ、ここでの事もこの3人だけの秘密ってことで。いいねビスケット?」

「わかってますよ、他の皆には話したりしません」

 

 そうして3人でイサリビに戻って少しした頃、歳星が確認出来たとハンマーヘッドから連絡が来た。

 さ~て、後々の為にもあそこにいられる間に色々調達しときたいんだけど・・・。

 

 




テイワズ編はオルガ以外の団員も結構かわいい所が見れますね。ライドとかいじらしくてもう。
 ユージンとシノはおバカというか・・・あれはあれで良い子達なんだけど、公式でお金持っててもロクな使い方しないとか言われちゃうしなあ。あの年相応のおバカさ加減は微笑ましくもありますが。

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