お待たせしてすいません。そして待っていてくれてありがとうございます。
前回トウガをイサリビと別行動にしたため今回が書くの難しくなってしまいました。
あと先に白状しますと、僕は剣道、剣術はド素人です。なのでその辺りの描写がおかしいかもしれません。本当にどうしてこうなった。
朝夕素振り五千回がスタートラインって何かピンク髪のおき太さんが言ってましたが・・・。
歳星から出港するイサリビとハンマーヘッドを見送る三日月とおやっさん、そして僕。・・・いやなんでさ。
「行っちまったな」
「うん」
「何だあ?仲間と離れちまって寂しいってか?」
「うん。寂しいよ」
「ふっ、バルバトスの整備が済めばすぐに追っ付けるじゃねえか」
「まあね」
三日月とおやっさんが話していると、テイワズの整備長がやって来た。
「おーい、三日月君。阿頼耶識のシステムチェック始めるよ」
「うーっす」
呼ばれた三日月は返事を返すと歩いて行った。
「で、何で僕も残らされてんですかねおやっさん?」
「俺も知らねえよ。テイワズのメカニックから伝言頼まれただけだしよ」
「オマケに、僕のグレイズも降ろしてるし。イサリビ追いかけるのどうするんですか・・・」
今歳星のファクトリーにはオーバーホール中のバルバトスだけで無く、何故か僕のグレイズもハンガーに固定されている。
原作ではバルバトスはクタン参型に積載しておやっさんがクタンのコックピットに乗って、三日月がバルバトスのコックピットから操縦してイサリビを追いかける形だったが、僕のグレイズはどうするのか。
「だから俺に聞くなって。心配しなくても、テイワズの方で何とかしてくれるだろ」
「はああ・・・やりたい事色々あったのに・・・ってえ!?」
バシッと言う音と同時に頭に衝撃が響く。
「ったく、ブツクサ言っとらんでさっさと来んかい。時間はあまり無いからな」
振り向くと後ろに、竹刀を持った稲葉先生が立っていた。
「稲葉先生?何でここに?」
「MSの方が終わるまでお前はワシの預かりじゃ。時間の許す限りではあるが、みっちりしごいてやる」
「ええ?じゃあ僕が居残りになったのは・・・」
「ワシが話を通した。ちっと素振りしただけでは意味無かろう?駆け足になるが少しは実戦的な稽古をつけてやる。わかったら早く行くぞ」
「あ・・・はい、わかりました!」
戦闘に役立つ技が教えてもらえるならありがたいと思い直し、稲葉先生の後を追って道場に向かった。
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イサリビでは、タカキを中心とした年少組の子供達が、テイワズから輸送を委託された工業コロニーへの貨物の整理作業を行っている。
「おいそこー!クレーンに近付き過ぎだぞー!」
タカキはいつになく張り切っており、クレーン操作が少し荒かったライドや危険な位置にいる子供達に注意したりと積極的に行動している。
「タカキさーん!このコンテナなんすけど~・・・」
「どうした?」
「ナンバーがリストと合わないんす。積み込む時に間違えたんじゃ・・・」
「ええ!?もう歳星から大分離れちゃったぞ、どうしよう・・・」
そこにヤマギがやって来た。
「ああ!やっぱりこっちに紛れてた!ゴメンタカキ、それこっちの資材だ。積み込みの時にそっちと一緒になってたみたいだ」
「え?そっちのって・・・」
「トウガさんが歳星で買い付けた資材のコンテナなんだ。ほら、トウガさん急にグレイズと一緒に歳星に居残りになったから、バタバタしてて確認出来なかったんだよ。おやっさんもいないし俺も手が離せなくて・・・」
「そうだったのか・・・じゃあそっちで任せて良いのか?」
「うん、昭弘さんのグレイズの整備は終わったし、直ぐに移動させるから」
「オーケー。にしても、一体何を買ったんだろう?」
「俺も詳しくは・・・。何か手伝って欲しいって頼まれてたんだけど、トウガさんが戻ってくるまでは保留かな」
「ふーん、まあ良いか。トウガさんのする事だし」
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「よし、素振りはもう良い。体も暖まったろう。ワシが相手をしてやろう」
そう言って稲葉先生が木刀を手に歩いて来る。
「え・・・でもまだ素振り500しかやってないですけど・・・」
「細かく丁寧に教える時間は無い、そもそも剣術は素人でもお前傭兵じゃろ?しかも実戦経験ありならそれなりの体さばきは出来て当然。違うか?」
「む・・・おっしゃる通りです。ではよろしくお願いします」
そう言われたら否定は出来ないな。僕にも少しは意地ってものがある。
「うむ・・・一瞬たりとも気を抜くなよ、ワシも加減はしてやるがお前が気を抜けば良くて大怪我、下手すると死ぬ事もあるからな」
「はい!」
そうして稲葉先生に相手をしてもらったが、本当に一瞬でも気を抜けない。こちらが先に動いても先生の方が僕の体に木刀を当ててくる。全く歯が立たない。
恐ろしく思ったのは腹に木刀を当てられた時、叩きつけるのではなく切り裂くように木刀を滑らせていた事だ。腹に痛みはほとんど無いが、これが真剣ならと思うと・・・背筋が寒くなる。
それにしても、三日月がバルバトスの太刀を早く使いこなせるようにと思いついての行動から、意外な展開になったもんだ・・・。
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トウガや三日月を歳星に残し、タービンズと共にイサリビで先行するオルガ達は、火星からのメールで火星の本部がとりあえず資金難を免れた事を知った事による安堵やらテイワズからお目付け役として派遣されたメリビット・ステープルトンの存在やらに僅かに緊張が緩んではいたが、特に事故やトラブルも無く、タービンズの案内で地球を目指し航行していた。
そんな中、昭弘は暇を見つけてはハンマーヘッドでラフタやアジーにシミュレータでの訓練を受けていた。結果としては負けてはいるが、着実に実力を着けていた。そしてそんな現状を好ましく感じてもいた。
「そういえばさあ、トウガって昭弘や三日月よりここで訓練するの少ないよね?」
「え・・・ああ、アイツ俺達より器用になんでも出来るから・・・あっちこっちで仕事してる分暇が少ないんすよ」
「へえ・・・でもさあ、MSなら昭弘や三日月の方が上じゃない?アタシが相手した感じだと、何と無くそんな感じがするよ」
「ああ、MWの模擬戦ならアイツ三日月には負けてたな・・・俺は勝った事ねえけど」
「だったら今度、アイツと勝負してみたら?MSだったら今は昭弘の方が強くなってるかもよ?」
「・・・そうっすね」
「うんうん、そんじゃ、アタシとアジーで鍛えてあげるよ」
「おう、お願いします!」
そうして昭弘はまた訓練に励む。三日月へのライバル心とは別に、今まで勝てそうで勝てなかったトウガに勝てるかもしれないという期待も後押しになっている。トウガもまた違う形で鍛えられている事を、昭弘は知らない。
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バルバトスのオーバーホールが完了したという報せが来た事で、僕の稽古は終わりとなった。
「ふー、本当はまだまだ足りんが、とりあえず卵から孵ってヒヨコにはなった、という所じゃな」
「はあ・・・やっとヒヨコですか」
「時間が足りんからな。本当ならこの程度で送り出すのは不本意じゃが、仕方ない。船に合流したら基本的な稽古は毎日しとけ。でないとすぐに鈍るぞ」
「はい、ありがとうございました」
そこに河内先生が来る。
「稽古道具を一式、コンテナに載せて輸送機に積んである。それとこれを持って行け」
そう言って手渡されたのは一振りの日本刀と、黒く塗られた、重みのある金属製の棒状の物。
「これは・・・特殊警棒、ですか?」
「護身用にな。まさか常に刀を持ち歩く訳にもいくまい」
伸ばしてみると、渡された日本刀と同じくらいの長さになった。
「強度も充分、腕次第で銃弾も弾ける」
「それは・・・稲葉先生ならできそうですけど」
そして今度は日本刀を鞘から抜いてみる。思えばこの一振りを手に入れようとしたら剣術の稽古を受ける事になったんだよな。
・・・鍔や柄、鞘には特別凝った意匠が施しているわけでもない、言ってしまえば地味な造りだがそれで、否それが良い。
飾り気の無さが実用性を重視した戦場刀らしさを感じさせる。
それでいて刀身は美しいと思わずにいられない。銃やナイフもそうだが人殺しの道具、紛れもなく凶器だというのに、惹き付けられてしまうのは何故だろう。
刀を鞘に戻すと、河内先生に頭を下げる。
「ありがとうございます。刀と警棒、どちらも大事に使わせていただきます。所で、この代金の方はいかほどでしょうか?」
最初から買うつもりで来たのだから、そこはちゃんとしないと、そう思って値段を聞くと、二人の先生は顔を見合わせて、稲葉先生が苦笑混じりに口を開いた。
「代金はもう貰っとる。マクマードからな。鉄華団に対する先行投資の内じゃと」
「え?・・・でもそれじゃあ僕は刀だけじゃなくて稽古までつけて貰って、それをタダでは・・・」
幾らなんでもそれはマズイというか、僕の気が済まないというか。
「ふむ、ならこうするか。今の仕事が終わったらまたここ(歳星)に来い。地球の酒でも持ってな。で、一杯付き合え」
「え?それって・・・?」
「じゃからそれまで死ぬな。また稽古してやるから生きてまたここに来い、と言っとるんじゃよ。解ったか?」
ああ、これはつまり、僕を激励してくれてるのかな?生きてまた会いに来い、と。でも・・・
「重ね重ねありがとうございます。でも、必ず、とはお約束できません。僕達鉄華団の地球への旅はきっと危険な物になります。そして鉄華団は僕より年下ばかりですから、僕は彼等より自分の命を優先する事はしたくありません。ですから・・・それでも生き延びる事が出来たら、その時は、地球で良い酒を買って、ここに来ます」
別に死にたい訳じゃない。自分の命は惜しい、けどもし、我が身を惜しんだ結果犠牲が出たら、三日月が、オルガが、ビスケットが、昭弘が、シノが、タカキやライドが、皆の中の誰かが自分のせいで死んでしまったら、きっと自分を許せないだろう。であれば、いっそ彼等の盾になって死んだ方がまだマシかもしれないと思える。
「それで良い。卑怯者になれとは言わん、だが命を粗末にはするな。人の命は本質的には皆等価よ。それぞれの立場や信条で優先順位が違うだけじゃ。それを解らず命の価値に上下を付けたがる阿呆共には呆れるばかりだがの」
「僕達はその阿呆共に下の方扱いされてましたけど、それでも自分の命も、仲間の命も大事です。だから、僕にとって大事な命を奪おうとする者の命は、必要とあれば切り捨てます。今までも、これからも」
「うむ。剣は抜かずに済めば無事泰平、とは言うが、抜くべき時には躊躇うな。さもなくば・・・いや、それは身に染みているようじゃな」
「はい」
ええもう本当に、身に染みてます。
「MSの方も少しばかり手を加えさせてもらった。勿論これもマクマードに話を通してある」
そう河内先生が言うのでファクトリーに向かうと、僕のグレイズは確かにその姿を変えていた。
頭部センサーカバーは昭弘のグレイズ改と同じ形だが、後頭部には大型のアンテナが二本追加されている。
そして背部はこれまたグレイズ改のと同じ単発式の大型ブースターの側面にノーマルグレイズが背部とリアスカートに選択で装着するブースターユニットが左右二基、計四基追加されている。そしてサイドスカートのバトルアックスを懸架する部分に、別の何かを懸架する為と思われるパーツが付けられている。
肩のアーマーは以前鹵獲したバズーカやシールド用のラックに換装されていて、その両方にやはり鹵獲品のシールド、そのシールドの裏側に箱の様な物が二つ取り付けてある。内一つはスラスターのノズルが付いているので、推進装置だろう。
左腕にはバルバトスから撤去したシュヴァルベ・グレイズのワイヤークローが装着されている。
そして機体のカラーリングが、宇宙で目立ちにくい暗い紫から鮮やかな青色に塗り替えられている。
「色はお前の所の整備士、雪乃丞と言ったか、あの男から聴いてな、青く塗らせといた」
河内先生がそう説明するが、僕にはそれより気になる所があった。
「ガスの消費量が多そうですね・・・」
「まあ、な。一応タンクも増設してはあるが、正直焼け石に水というやつだ。だがMS戦は遠距離より接近戦が重要、となれば敵に素早く接近して斬る。そういう方向性の改修だな。装甲の強化も考えたが、ガスの燃費が更に悪くなるから断念した」
成る程もっともだ。推力が増した分扱いは難しくなるだろうけど、素のグレイズのままだとこの先苦しくなるだろうし、少し尖った位の方が良いかもしれない。
そして僕のグレイズはバルバトスとは別のクタン参型に格納する形で歳星を出発した。まさかクタン参型をもう一機貰えるとは、至れり尽くせりでちょっと怖い位だなあ。
おやっさんは原作通りバルバトスを積んである方のクタンに乗っている。ハンマーヘッドとイサリビの航路データはテイワズに届け出がされているので、そのデータに従えば良いし操縦は三日月にお任せだと気楽な様子のおやっさんの声を通信越しに聴いて苦笑いせずにいられなかった。気い抜いてると後で大変だよ・・・。
で、今のグレイズの機能を確認しながら移動して、やっとこさイサリビに追い付くという所で、イサリビのさらに前方に複数のエイハブ・ウェーブの反応をキャッチした。その内一つは波形パターンで昭弘のグレイズ改と解った。となると他の反応は・・・ブルワーズのマン・ロディだろう。
「おやっさん、このまま突っ込む」
「はあ!?おめえ何言って・・・」
おおよその状況を把握すると、直ぐに三日月がクタン参型を加速させる。
「これのコントロール、そっちに返すね」
「ちょっ、待ておい俺は操縦なんて・・・ぐわあっ!!」
そして速度を維持したままバルバトスをクタン参型から発進させ、昭弘(と多分タカキも)の救援に向かった。
いきなりクタンの操縦を振られたおやっさんはうろたえているが、僕も今はおやっさんより昭弘達の救援を優先しなければならない。僕はグレイズをクタンから分離しないまま昭弘達の所へ向かう。昭弘のグレイズ改に接近したとき、ちょうどバルバトスがマン・ロディの胸部装甲の隙間に太刀の切っ先を突き込んだ所だった。
昭弘の窮地は間一髪の所で三日月が助けた。しかしマン・ロディは他にもいる。未だ状況は危険なままだ。どうする?
こっちの話が進まなかったので鉄血のオルフェンズBlu-ray6巻買ったのにまだ観てません。とりあえず鉄血日和だけ見ましたが、毎回伊藤先生はやってくれますね。しかし、敢えて言うなら、折角フミタンの水着姿を描くんならもちょっと大きい尺で・・・いえ失礼。煩悩が漏れた。とりあえずフミタンやっぱりスタイル良いですね。
今回でテイワズ編が終了、次回からブルワーズ編です。