憑依した先はCGS一軍の隊員でした。   作:ホアキン

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 久しぶりに前回から二週間以内で更新出来ました。
シリーズが放送されていると二期の方の話も考えてしまったり、調子出てきたのだろうか・・・とりあえずラディーチェ&ガランはタヒね。明日の放送が待ちきれない。


足跡のゆくえ

「ビスケット、僕はちょっと離れた所にいるから」

「え?」

「付いて来ておいて今更だけど、人数多いと警戒されちゃうかもしれないからさ。一旦距離をとって、頃合いを見て合流するから」

 

 そう言ってベンチに座るビスケットとアトラから離れ、クランクさんと一緒に物陰に隠れると、鉄華団のジャケットを脱いでリュックから取り出した防弾コートを着込み、ジャケットをリュックに入れると二人の様子を伺う。

 

「何故隠れる必要がある?」

「さっき説明した通り、相手側に警戒させない為です。特に僕とクランクさんはちょっと・・・」

 

 僕の行動を訝るクランクさんに詳細は明かさず簡単な説明をする。

原作だとビスケットの兄サヴァラン・カヌーレは最初は一人で来て、ビスケットと一緒にいるアトラをクーデリアと勘違いして拉致の為に仲間を呼んだ。もし僕とクランクさんもいるのを知ったら呼び寄せる人数を増やすか別の手段に出る可能性がある。ここは原作通りの流れに誘導した方が先を読み易いと考えた。

 そうして少しの間待っているとスーツを着た男性がビスケットに近付いてきた。ビスケットが立ち上がり、言葉を交わす。どうやらあの男性がサヴァランらしい。

 サヴァランはビスケットとアトラを伴って近くの公共端末ボックスに向かうと何処かに連絡をしている。

 ビスケットとクーデリア(と誤解しているアトラ)を拉致する為に仲間を呼んでいるのだろう。

 サヴァランがボックスから離れてビスケットとアトラと一緒に歩き出した。僕もクランクさんを促して尾行する。

歩いて暫くすると、サヴァランが大通りから外れた道に入ろうとしている。

 

「行きますよクランクさん」

「なっ、おい!」

 

クランクさんに声を掛けるとビスケット達に駆け寄り、そして大声で呼び掛ける。

「アトラ!ビスケット!」

「トウガさん?どうしたんですか?」

「いや、ちょっとね。アトラ、僕が渡した物はちゃんと持ってるかい?」

「え?ええ、ちゃんとポケットに入れてますけど?」

「アトラ・・・だって?」

 

アトラを見るサヴァランの顔に戸惑いが浮かぶ。わざとらしくアトラの名前を強調したからな。人違いに気付いただろう。

 

「兄さん?アトラがどうかしたんですか」

 

ビスケットが怪訝な顔でサヴァランに声を掛ける。

 

「か、彼女は、クーデリア・藍那・バーンスタインじゃ、無いのか?」

「え?どうして兄さんがクーデリアさんの事を・・・?」

「何言ってるんですか?この子はアトラ・ミクスタ、うちの炊事係ですが?」

「なっ!?炊事係!?・・・そんな・・・」

「んん?何をそんなに狼狽えているんですか?」

 

 狼狽するサヴァランを素知らぬ振りをしながら煽ってみる。

 

 そこに1台の車が滑り込むように僕達の前に停車して中から大柄な男達が二人出てきてアトラとビスケットに手を伸ばした。

僕はすぐさま男達を1人は脛を蹴りつけ、もう一人の手をはたき落とす。

 

「ぐあっ!」「つっ!コイツ!」

 

そうする内に反対側のドアから更に二人出てきて僕達の背後に回った。だがその男達の背後を見て僕はつい口元が弛む。ナイスタイミングだ!

 

「貴様ら何をしている!?」

 

僕に遅れてこちらに来ていたクランクさんが男の一人を体当たりで吹き飛ばし、もう一人を腕を捻りあげて取り押さえた。

 

「なっ!?まだいたのか!?」

 

 クランクさんだけ少し距離が開いていたから視界に入らなかったのだろう。嬉しい誤算だ。

 僕はコート裏のポケットに入れていた特殊警棒を伸ばすと男の一人の腕を打ち、それで出来た隙を突いて下顎に警棒を打ち付け、更に脳天に振り下ろして、気絶させた。

 

「きゃあ!」

「アトラ!」

 

悲鳴の聞こえた方に目を向けると、もう一人の男がアトラに襲いかかり、アトラを庇うビスケットと揉み合いになっている。最近は専ら頭脳労働担当で白兵戦はご無沙汰なビスケットは体格差もあって押されている。更にクランクさんが体当たりした男もそちらに迫っている為、僕はそちらの対応に向かいながらアトラに指示を出した。

 

「アトラ、スプレー使って!」

「え!?は、はい!えい!」

 

 咄嗟の指示だがアトラは直ぐに僕の指示を理解して暴漢撃退スプレーを出すとビスケットと揉み合う男の顔に吹き付けた。

 

「ぎゃあっ!?」

 

激しい目の痛みに悲鳴を上げた男。そうする内にもう一人を叩き伏せた僕はクランクさんの傍に結束バンドの束を放り投げる。

 

「そいつらの拘束お願いします!」

 

そして目の痛みに苦しみながらもビスケットと揉み合っている男の頭を警棒で殴り付け、倒れた所で結束バンドで両手の親指を後ろ手に縛りつけた。

 

「さて、あとは・・・逃げんな!」

「うわっ!」

 

 その場から逃げだそうとしていたサヴァランの脚を狙って警棒を投げつける。バランスを崩して転んだサヴァランを地面に押さえ付ける。

「兄さん!?」

 

 ビスケットが悲鳴のような声を上げたが、今はフォローする余裕は無い。

 

「そうやって逃げようとするという事は、コイツらはアンタの差し金か。どういうつもりだ!?」

「え・・・!?兄さん、どうしてそんな・・・!?」

「くっ・・・お前達こそ、スラムの連中に武器を渡してどういうつもりだ!?」

「武器って、何の事です?」

「お前達の仲間がドルト2に運び込んだ荷物の事だ!」

「あ・・・あれはテイワズから依頼された物で・・・って、あの中身が!?」

「そうか、お前達も利用されただけ、か。クーデリア・藍那・バーンスタインに・・・ぐあっ!」

 

サヴァランの勘違い発言にイラついたので押さえていた腕を捻る。仕方無いのは解っているのだけど・・・。

 

「クーデリアさんの顔も性格も何も知らない癖に知ったような口きくなっての。まあ話は移動しながらにしましょう。いつまでもこうしてはいられないですし、オルガ達とも連絡をとりたい。アンタにも一緒に来てもらおうか」

 

 サヴァランの手を結束バンドで拘束すると強引に立たせる。

「くっ、離せ!」

「先に僕達に牙を剥いたのはアンタの方だ。落とし前もつけずに解放するわけにはいかないんですよ。さあ歩け」

「ちょっ、トウガさん、あまり乱暴にしないでください」

「これでも優しいつもりだよ。この人が君の兄さんでも、現時点では敵視せざるを得ないからね」

 

 そして公共端末ボックスのある所まで移動して、オルガに連絡する。

 

「あ、オルガ?ちょっと・・・」

「トウガか!?アンタ今何処にいる!?」

「えっと、ドルト3の公共端末ボックスから・・・どしたの?」

「アンタ達が襲われたって、こっちに情報が入って来て、今しがたミカにも伝えた所だ!」

「え・・・じゃあ三日月は?」

「アンタ達を探して動いてる筈だ。こうやって連絡寄越したって事は無事なのか?」

「うん、大丈夫。なんとか凌いで、襲ってきた連中の頭を捕まえたよ」

「そうか。ミカと行き違いになると面倒だ。あまり動き回らないでくれ。俺らももう少ししたらそっちに向かう」

「ああ、了解」

 

 オルガの指示にそう返して通話を切った。

 

「オルガは何て言ってましたか?」

「向こうにも僕達が襲われた事は伝わってるらしい。三日月がこっちに向かってるからあまり動くなって」

「三日月が?じゃあ、クーデリアさんは?」

「三日月だってクーデリアさんの安全を確保した上で動いてると思うけど・・・」

 

 原作だと三日月が離れている間にマッキー仮面のせいでフミタンもクーデリアもホテルを出てしまったしなあ。

 

「とにかく下手に動き回ると三日月がこっちを見付けにくくなる。オルガのいう通り動かない方が良いだろう。とはいえここじゃ人目に付きすぎる」

 

 一先ずビルの間の細い路地に入る。人目には付きにくいけど三日月なら見付けてくれるだろう。

 

「さて、サヴァランさん、アンタはクーデリアさんが狙いで僕達を襲った、クーデリアさんを捕まえてどうするつもりだった?」

「・・・彼女がスラムの連中を煽動し起こそうとしている武装蜂起の首謀者としてギャラルホルンに引き渡して交渉しようと考えたんだ・・・」

「そんな!?どうして兄さんがそんな真似を!?」

「お前達の運んできた武器を手にした組合員が暴動でも起こしてみろ!この機会を待っていたギャラルホルンは大義名分を掲げて鎮圧に乗り出すぞ‼そうなれば血を流すのはお前も暮らしていたスラムの住人だ!それで良いのか!?」

「くっ・・・」

 

サヴァランの言い分に返す言葉を失うビスケット。彼の心情もわかるけど・・・。

 

「アンタの考えはまあ解った。で、それはクッキーとクラッカの将来を犠牲にするだけの価値があるのか?」

「何・・・?」

「クーデリアさんを地球へ送り届ける。この仕事には桜さんの農場の未来も、クッキーとクラッカの将来も懸かっている。それを邪魔するって事がどういう意味か、解ってんのか?」

 

 サヴァランに対し、言葉に怒気を込めて問う。彼は彼で自分の身近な人達を守ろうとしているのだろうけど、ビスケットや桜さん、クッキーとクラッカの将来の妨げになる行動だ。それは許せない。

 

「く、組合員達の、大勢の命がかかってるんだ、見せしめの虐殺を回避する為なら充分・・・」

「ふざっけんなあっ!!」

 

サヴァランの首を掴み睨み付ける。

 

「アンタビスケットとクッキー、クラッカの兄貴だろうが!?兄貴が弟の仕事を潰すってのか?妹達の将来を犠牲にすると言うのか?ビスケットの給料で何とか回ってる桜農場を潰すのか?クッキーとクラッカを学校に入れるっていう、ビスケットの目標を踏みにじるとぬかすか?ふざけるな、ふざけるんじゃないぞ‼兄貴は弟妹を守ってナンボだろうが!!」

「ちょっ、トウガさん!」

「おい、落ち着け!」

 

ビスケットとクランクさんが僕をサヴァランから引き剥がす。

 

「ふーっ・・・大体暴動が起こりそうな程労働者達に不満が溜まってるって事は、ドルトの経営に問題があるって事だろうが!そこを改善しない限り同じ事はまたすぐに起こる。アンタがやろうとした事は一時しのぎの誤魔化しでしか無いじゃないか!」

 

「今回の事を何とか出来れば改めて本社側と交渉する時間を稼げる。そうすれば・・・」

「誘拐未遂犯の言葉なんか信用出来るか!さっきから手前勝手な事ばかり、自分達の至らなさのツケを、通りすがりの人間に押し付けるな‼」

「だから落ち着け!!そもそも話の前提条件に食い違いがあるだろう!?そこから正さなければ話が成り立たんだろう」

「う・・・すいません、その通りでした」

 

 クランクさんが僕の肩を掴み諌める。久し振りにブチキレたせいで話の根本を放り出してしまっていた。落ち着け、そもそもの話、だ。

 

「そもそもクーデリアさんがスラムの人達に武器を贈ったなんて与太話、何処から聞いたんですか?」

「与太話!?・・・・組合のリーダーのナボナさんだ。革命の乙女クーデリアが火星以外でも反抗の狼煙を上げようと呼び掛けている。その為の武器を、鉄華団に運ばせるとクーデリアの代理人から連絡を受けたと」

「はあ・・・革命の乙女、ねえ。そんな大仰な言葉を使い、クーデリアさんの代理人を騙って武器を送る、か。そんな事をするのは大方ノブリス・ゴルドンあたりだろうな」

「ノブリスって・・・!?でも、どうしてそんな!?」

「クーデリアさんを、いや僕達鉄華団もかな、利用して何か企んでいるんだろう。大体武器を贈って武装蜂起させたって、戦闘のド素人の労働者達じゃギャラルホルンに返り討ちが関の山。本気の支援なんかじゃないのは明らかだ」

「武器を渡したのはクーデリアの意志では無い?・・・いや、そんな事は重要じゃない。革命の乙女の身柄を押さえればギャラルホルンも満足するだろう、今ならまだ間に合う、クーデリアを引き渡してくれ。もう時間は僅かしか残されていないんだ!」

「兄さん・・・」

「アンタなあ、クーデリアさんをギャラルホルンに売ろうとか、やろうとしてる事はこの前僕達を襲ってきた海賊達と変わらないじゃないか。アンタを尊敬していたビスケットに、恥ずかしいとは思わないのか?」

「もう手段を選んではいられないんだ!!」

「ビスケットやクッキー、クラッカすらどうなろうと構わない、と。ならば敢えて言おう。ビスケットはどう思うか知らないが、ここの労働者達がどうなろうと、僕達の知った事では無い。武器を運び込んだ事も、荷物の中身に送り主が虚偽の記載をしていた以上僕達だって騙された被害者だ。責任を負う謂れはない。武器を手にした労働者達が武装蜂起してギャラルホルンに皆殺しにされようがそれは労働者達が自分で選んだ行動の結果だろうし、そう言う無謀な行動に彼らを追い詰めたのはドルトの経営陣の怠慢だ。何故僕達が仕事を放り出さなきゃいけない?」

「なっ、トウガさん!いくらなんでもそれは・・・」

「そうだよ!ビスケットの気持ちも考えて!」

 

僕の非情とも思える言い様に、ビスケットとアトラが非難の声を上げる。

 

「ならここでクーデリアをギャラルホルンに売り渡すと?」

「それは・・・」

「そう、そんな事出来る訳が無いだろう。今まで何人も仲間が死んだ。この仕事を投げてしまえば彼らの死は無駄になってしまう」

「トウガさん・・・それは、確かにそうですけど・・・」

 

 ビスケットにとっては故郷の事だから、割り切れないのは当然だろう。

 

「あ、ここに居たんだ。皆大丈夫?」

「三日月!」

「ん?その人は?」

「ビスケットのお兄さん、なんだけど・・・」

「ちょっとトラブって、拘束しなきゃいけなくなった。オルガと相談しないといけないけど、それよりクーデリアさんとフミタンはどうしてる?」

「大丈夫、ホテルに隠れてる」

「クーデリアがホテルに!?なら・・・むぐっ!?」

 

何か口走ろうとするサヴァランの口を押さえる。

 

「三日月の前でさっきみたいな事は言わない方が身のためですよ。彼は身内に危害を加える者に容赦ないから」

 

 殺されちゃうぞ、とは言わないけど。

 

「ならそのホテルに急ごう。どうもキナ臭い事になってるみたいだし、早くこのコロニーを離れたい。三日月、案内よろしく」

 

 そうして早足でホテルに向かって歩いていると、僕達の少し前に、荷台にパンの絵の描かれた幌のかかった軽トラックが停車し、荷台からオルガが顔を出した。

 

「ミカ!全員無事か!?」

「オルガ!」

「えっ?」

「乗れ!急ぐぞ!」

「了解!クランクさん、サヴァランを!」

「あ、ああ」

「せーのっ!」

 

先にサヴァランをクランクさんと二人で抱えて荷台に乗せる。

 

「ぐあっ」

「おい、誰だコイツ?」

「ビスケットのお兄さん、詳しい説明は後で。出して!」

「おうよ!」

 

「待ってくれ!このままじゃドルト2は・・・ビスケット!!」

「兄さん・・・兄さんには感謝しています。父さんと母さんが死んだ後必死に俺達を養ってくれて。今の俺があるのは兄さんのおかげだから」

「だったら・・・」

「でも!今俺は鉄華団の団員なんです。仲間を裏切る事も、仕事を投げ出す事も出来ません。クッキーとクラッカの為にも、それは出来ないんです・・・!」

「!・・・ああ・・・すみませんナボナさん、俺は・・・」

 

ビスケットにも拒絶され項垂れるサヴァランをよそに、シノの運転する軽トラはクーデリアがいる筈のホテルに向かった。

 だが・・・。

 

「クーデリアがいない!?急がねえと組合の連中が始めちまうってのに・・・」

「クーデリアさん・・・どこに行っちゃったの?」

 

 やっぱりこうなっていたか。基本的には原作通りの状況を作り先を読みやすくする。そして先回りで対策を講じて被害を可能な限り避ける。そう言う意味ではいつも通りの筈で、どう動くべきかも解っているのだけど・・・僕は理由の判らない焦燥感を感じていて、今すぐホテルを飛び出したい衝動を抑えながらオルガ達を見ていた。

 




 オルフェンズ二期のガンプラ、バルバトスルプスが一番安いみたいですね。グシオンリベイクフルシティ(長い・・・)や獅電、レギンレイズはルプスよりちょっと高かったです。

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