憑依した先はCGS一軍の隊員でした。   作:ホアキン

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 お久しぶりです。前回から遅くなってしまいました。待っていてくださった方々本当にすいませんでした。


還るべき場所へ

 ギャラルホルンからクーデリアと鉄華団の引き渡し勧告が来た事を蒔苗からの連絡で知ったオルガ。

 一方ビスケットは雪乃丞に自分の感じている不安を話し、助言を受けた事で気持ちの整理をつけ、オルガと改めて話し合う事を決意した所でオルガからの伝言を伝えに来た三日月に呼ばれ、オルガとクーデリア、フミタンの4人で蒔苗の邸宅に向かった。

 蒔苗とクーデリアを交えた話の末、オルガは蒔苗とクーデリアを連れての脱出を決断。鉄華団は総出で迎撃作戦の準備に取り掛かった。

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 既に日付が変わり徐々に夜明けは近付いている。追加の推進剤タンクや海上移動の為のホバーユニット(グレイズより旧世代の機体のオプション装備らしい)を含め地上戦闘に合わせたシュヴァルベの調整も終わり、手持ち無沙汰なせいか焦れったい感覚に突き動かされ、ノーマルスーツを着たままモンターク商会の社員に声を掛けていた。

 

「ミレニアム島はまだ見えませんか?」

「衛星の監視網を避けて航行している事もありますが・・・潮の流れが良くないそうです。どうにも速度が上がらないと」

「そうですか・・・」

 

 まずいな。もし間に合わなかったら取り返しがつかない。

少し前から起動状態にしてあるシュヴァルベ・グレイズのコックピットに乗り込むとモニタに機体データを表示する。シュヴァルベの腰背部ホバーユニットの性能データ、追加された推進剤タンクの容量とそれを装備した状態で出せる速度、タンクが空になるまでの想定時間のデータと、ここからミレニアム島までの距離を計算してみる。

 島に着いた後の戦闘の事を考えると少し心許ないな・・・あと少しだけ待ってそしたら船を出て一人でミレニアム島に向かおう。

機体から降りると商会の人に考えを伝え、またコックピットに乗り込む。2、30分くらいならもう乗っていた方が良いだろう。

 確かコーリス・ステンジャの指揮する艦は夜の内に島からも見える所まで来てるんだったか。カルタとお供の連中が降りて来るのは明るくなってからだったが・・・。

 出撃の時間を待ちながら原作での戦闘の流れを思い出す。この30分の待機が悪い結果に繋がらないよう願いつつ・・・。

 

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 夜が明けてミレニアム島の近くに待機していた地球外縁軌道統制統合艦隊所属太平洋方面防衛部隊の艦隊が島へ砲撃を開始した。ギャラホルンお決まりの弾薬の消費を惜しまぬ飽和攻撃である。

「始まった・・・」

「急げよ三日月」

 

 三日月はエーコ発案で脚部を地上戦向けにセッティングし両腕に90mm機関砲を装備したガンダム・バルバトス第5形態地上戦仕様(原作と違いシュヴァルベのスラスター有)に乗り込み武装の積まれたコンテナを見下ろす。

 いつものメイスは軌道上でのキマリスとの戦闘の時に手放したものが最後だったらしくコンテナには太刀しか無かった。

 

「あれ使い辛いんだよな・・・」

 

 ドルトの一件の後、地球降下の準備の合間にトウガが上手く使えばMSの装甲を切り裂く事が出来る筈だと言っていたが、やはりメイスのような叩き潰す武器の方が感覚的に使い易く、太刀の他に何か無いかと他のコンテナに目を向け・・・。

 

「良いのあるじゃん」

 

モンターク商会から提供されたコンテナ内にあった物を掴んで先に出ていたシノの流星号に合流した。

 

「何だそりゃ!?」

「もらったコンテナの中に入ってた」 

 

 シノがバルバトスの手に握られたそれ、レンチメイスの異様に驚きの声を上げた直後、砲撃が飛んできた。

 

「好きだねえ、お手本通りの飽和攻撃」

「MSには意味無いってのに、無駄撃ち大好きだよね、金持ちってさ」

 

MSにとっては脅威では無い攻撃に、シノが、そして海岸の護りについているラフタが苦笑混じりにぼやく中、オルガの指示を受け昭弘がグシオンリベイクの両手に装備した滑腔砲で敵艦への砲撃を行う。しかし宇宙と違い大気や重力の影響を受けた砲弾は狙いを逸れ海面に着弾した。

 

「ちっ、外した・・・」

「ちゃんと狙えバカ!そんなんじゃ姐さんにどやされるよ!」

「あっいや、だって・・・」

「地上では大気の影響を強く受ける。データの修正急いで!」

 

 ラフタの叱咤とアジーの指示に戸惑う昭弘だったが、三日月の助言を受け感覚で照準を修正し、今度は敵艦の一隻に命中させる事が出来た。

艦からMSが発進して来るとラフタとアジーの漏影が迎撃する。

 

「こりゃ俺達の出番は無えかも・・!?何だこりゃ!?」

「上か?あれは・・・」

 

シノの流星号のライフルが爆発し、三日月が上空を見上げると、落下してくる複数の物体が見えた。大気圏降下用グライダーに乗ったグレイズリッター、そのまま数5機。

 グシオンと流星号の砲撃はグライダーに防がれ、グレイズリッターは次々と着地し整列する。

 

「我ら!地球外縁軌道統制統合艦隊!!」

「「「「面壁九年!堅牢堅固!!・・・ぐあっ!?」」」」

 

カルタ機の中央に並び立つ5機のグレイズリッター。しかしその内1機の頭部装甲が吹き飛びのけぞる。グシオンリベイクの砲撃が当たったのである。

 

「射って良いんだよな・・・?」

 

 あまりに隙だらけだった敵の様子に、砲撃した当の昭弘が戸惑いの言葉を漏らす。

 

「当たり前じゃん」

 

直ぐに三日月が返答を返した。

 

「何と無作法な!!」

 

 顔を歪め怒りの声を声をあげるカルタ。戦場は彼女達が行ってきた式典や訓練等とは違い、彼女が思う様な礼儀作法など無いという現実を、彼女はまだ正しく理解出来ていなかった。

 

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「げ、もう始まってる!あれが敵の母艦か」

 

 船から出撃して数時間、グレイズに比べピーキーなシュヴァルベの操縦性に手こずりながらも何とか扱いの感覚を掴めてきた所でやっとミレニアム島と戦闘の煙、そしてギャラルホルンの艦が見えてきた。艦二隻の内一隻は既に沈みかけている、原作通りなら昭弘のグシオンの砲撃による物だろう。

 健在なもう一隻はこちらに気付いているだろうか?まあどちらにしても・・・。

 

「素通りって訳にはいかないよね、お互いに!」

 

ショートバレルのライフルを構えるとホバーユニットとスラスターを噴かして跳躍し、艦の上に着地すると目についたのから片っ端に砲塔やミサイルランチャーに向け発砲。完全に破壊とまでいかなくても火器を潰しておけばこちらへの攻撃は防げるだろう。時間が惜しいので攻撃はそこそこに、離脱して島に向かう。

 海岸に近付くと数機のグレイズとそれを相手取る2機の漏影が見えた。

 漏影の一機が倒れたグレイズにクラブを振りおろす。もう一機の漏影もグレイズと格闘しているが、その隙に一機が突破しようとしていたのでそのグレイズにライフルで攻撃した。

 被弾したグレイズが一瞬、注意を逸らした隙をついてスラスターとホバーユニットを噴かしてタックルして押し倒すと胸部装甲の隙間に太刀を捩じ込みコックピットを潰して無力化した。

 

「ふう、よし次は・・・うわ!?」

 

 周囲を確認しようとした瞬間、クラブを振り下ろそうとする漏影の姿が見え、慌ててスラスターを噴かし、砂を蹴って飛び退く。漏影の振り下ろしたクラブは倒れたグレイズの胸部を叩き潰した

 

「ちょっ!ラフタ?それともアジー?味方だよ味方!」

 

 阿頼耶識の反応速度とシュヴァルベの性能が無ければもろに喰らってた・・・危なかったなあ。

 

「は?味方って・・・」

「・・・もしかしてトウガ?あんた無事だったの!?」

「すいません、その話は後で!オルガや三日月達は?」

 

残りのグレイズに牽制射撃をしながら状況を問う。

 

「後で、ちゃんと説明してよね!」

「上から降りて来た敵を相手してる。あの子らなら大丈夫と思うけど・・・っ」

 

 ラフタとアジーはそれぞれグレイズを相手取りながら答えた。

 

「そっちに向かいますんで、ここお願いします」

 

 そう言い残し、海上移動中に最大出力で酷使していたホバーユニットををパージするとホバーに比べ温存していたフライトユニットとスラスターを噴かして跳躍、空中から島を見下ろすとバルバトスとグレイズリッターが見えた。そしてバルバトスの後方にMWが一台、オルガとビスケットだ。間に合ったか!?

バルバトスとMWの間を目指して急ぎ降下する・・・が。

 

「あっ?」

 

 

丁度機体の脚が地に着くか否か、という時に、バルバトスと交戦中だったグレイズリッターが突っ込んで来て激突。互いに縺れ合い、地面を抉りながら転倒した。

 

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 バルバトスと交戦していたグレイズリッターのパイロット、カルタ・イシューには接触通信でバルバトスのパイロットへの通信が聞こえていた。同時に、バルバトスの後方のMWから上半身を晒した男の姿を視認していたカルタは、あのMWに乗っているのが賊の頭目だと察知した。あれを潰せば、と判断するや、バルバトスの武器に挟まれている腕部装甲をパージすることで拘束を逃れるとMW目掛けてグレイズリッターを走らせた、だが丁度その瞬間、目前に割り込んできた青いMSと衝突し、明後日の方向に倒れ込んだ。

 

二機のMSが地面を抉り、砂塵を巻き上げながら転倒する轟音を、オルガ・イツカは全速力で走行するMWの車上で耳にした。 同時に飛んできた石が彼の肩を掠め、振り返ると砂埃の中に動く影が見えた。

 

「だああっ!!何でこーなるかなあもー!?」

 

 叫び声と共に、青いMSが砂埃を振り払うように立ち上がった。

 

「あ!オルガ、ビスケット!!無事!?生きてる!?」

 

 聞き覚えのあるその声に、オルガの胸中に何とも言い難い複雑な感情が起こっていたのは、恐らく仕方のない事だろう。

 

 

 

 




 おかしいな・・・ビスケットの死亡フラグをブレイクするはずが一緒に別のものをブレイクしてしまったようです・・・。カルタの事含め戦闘の決着については次回でちゃんと書きますので。
以下今回の補足です。

 シュヴァルベグレイズ改
 ドルトの戦闘で剥ぎ取った背部スラスターを追加で装備、さらにゲイレールのホバーユニットを腰背部に装備しています。
カラーは今は青一色になってますが、後で色を足す予定です。
 武装は今回は太刀とグレイズ用ショートバレルライフルのみ。


 グレイズリッター
 軌道上で殿に残ったトウガを狙った時にグリムゲルデの攻撃で機体パイロット共に傷を負ったのが2名いたため、原作と比べ数が7機→5機に減っています。それでも戦闘の流れがほぼ原作通りなのは残りの面子が欠員分を埋めようと頑張ったから、ということで。

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