目覚め
気がついたらそこにいた。
私が以前何をしていたかも、何故ここにいるのかも知らない。しかし戸惑いや困惑といった感情は湧かない。
ふと頭の中に何かが流れ込んでくる感覚が広がる。それはティッシュに水がしみ込んでいくような、不思議な感覚だった。
「え……っと」
頭の中に流れ込んできたものは私の存在に関わるものだった。容姿、身長、体重、様々な肉体的情報や性格などの私のありとあらゆる全てがパズルのように当てはめられてゆく。
そして理解した 私はどうやら〝鬼〟になってしまったらしい。おまけにこの世界で一番最初に地に足をつけた生命体にもなった。
確かこの地球で一番最初に生まれた生命体は単細胞生物だった気がするが、これはどういうことだろう。
「さて、どうしたものか」
意識が覚醒すること数分ーー私は暇になった。
本来ならこの世界の情報や私の存在の解明など、山のようにすることがあるのだろう。
しかしこの世界の情報を集めようにも地面と海しかない。というか生き物がいない。
私自身を知ろうにも既に頭に叩き込まれている。畜生……なんで私のやるべきことを潰しにかかってくるんだ。暇すぎてもう、なんか、頭がおかしくなりそうだ。
ふと上空に飛び交っている流星や隕石が目に入った。そしてそのうちの一つがはるか遠くに落下していった。地響きがここまで伝わってきた。一体どれくらいの衝撃があるのだろうか。
そうだ、体を鍛えよう。
隕石が落ちてそれに潰されて死亡ーーそんなことにはなりたくない。
とりあえず生物らしきものが生まれるまで体を鍛えてみよう。時間は腐るほどあるから、焦ることはない。
さて、まずは腕立て1000からーーーー
大体一週間が経った。相も変わらず生き物のいの字もない。
3日前くらいから1日の修行を思い返すべく瞑想というものをやっている。効果があるかないかは置いておいて、私は結構これを気に入っている。
さて、今日は何をしようかな。
「おや? あれは……」
遠くに人型の生き物らしきものが見える。
それは長く美しい白髪や背中に生えている2対の翼、額から伸びた龍のような角が特徴的な全裸の美女だった。
しかしその目に一切の生気はなく、まるで電源ボタンを押す前のロボットのようであった。
私は彼女に興味が湧いた。別に百合とかそんなのではなく、ただ単純に彼女の正体に興味が湧いた。
ここは地球の超古代、おそらく先カンブリア時代の最初、始生代だ。
そんな生物が到底生きていられるとは思えない環境に生まれたままの姿で傷一つなく立っている彼女(生死は不明)。
こんなもの、興味を持つなと言われる方がおかしい。
私は彼女の方へと一歩一歩を噛み締めるように歩き出した。
おやすみなさい。