「ん?」
私の目の前には黒く、人1人余裕で入れるほどの禍々しい謎の穴のようなものが開いていた。覗き込んでみると、その中は真っ暗で一寸先すらみえない。
少しだけ穴の中に手を入れてみると紫の稲妻のようなものが走り私の全身の力が少しだけ抜けた。
抜けたというより吸収されたと言った方がいいのだろうか。いずれにせよ私の力が何処かへ飛ばされたのは確かだった。
「竜華、この穴が何かわかる?」
竜華ーー唯一無二の友であり、名付けの親でもある私の大切な大切な存在だ。
今の私があるのは恐らく竜華のおかげである。竜華がいなければもうこの先生きてはいけないだろうというほど、私は彼女に依存していた。私は竜華を死ぬその瞬間まで友として見るだろう。たとえ竜華に殺されることになろうとも……
「んー……別世界へと繋がっているように見えるが……」
「竜華の能力でもわからない?」
「私の能力ではちと力不足のようじゃ」
竜華の能力は『この世界の全てを知る程度の能力』だ。
この能力は文字通りこの世界の全てを知ることができる。が、逆にいえばこの世界以外の世界のことは知ることができないということだ。ゆえに『程度』なのだ。(私には能力はないようだ)
その竜華の能力でもわからないとなるとつまりこの穴は別世界へと繋がっているということになる。
つまりこの穴は某猫型ロボットでいう別世界へと渡るためのどこでもドアということになる。
「ふーん……」
興味がわいた。別世界には何があるのか、どんな光景を見ることができるのか。
知りたくて知りたくてどうしようもない。
「竜華、ちょっと別世界に行ってくるわね」
「おう、待っとるぞ」
そんな軽いやりとりをした後、私は穴に飛び込んだ。体の力が体感で3割ほど抜け、視界に霜がかかったようになる。体の感覚が消え、意識が消えるのは時間の問題だろう。
私はそれに逆らうことなく、静かに意識を手放した。
体が重い、呼吸がつまる。風邪をひいたときのような気だるさが私の意識をゆっくりと浮上させる。
意識が定まってくると私の目にはある光景が写っていた。
夜のように暗い空に大陸のようなものがいくつも浮遊している。
重い体に鞭打って無理やり状態を起こす。
私が寝ていた場所には紫色の花のようなものが潰れていた。
植物だーーこの世界で初めて見た植物だ。
私の胸は感動の文字で埋まった。
周りを見渡すと紫の花が光を花粉のように吐き出し続けている。言葉にできないほどの感動、私が求めていた生命の神秘がそこにあった。
私がその光景に見とれているとーー
「魔界へいらっしゃい」
ーー背後から声が聞こえてきた。
たい焼き
菊の花
なすび
びーむ
むとう
うま
またみてね