【BUS官舎・1101号室】
奈都「あんなこと言って飛び出してきちゃった・・・・・・。今頃みんな、心配しているかな。でも、誰も連絡してこないってことは、そんなに大きな話にはなってないよね。今日はもう、官庁に戻らなくてもいいかなあ。
この部屋、14歳になってから単身での部屋割りになってから住んでるからまだ日が経っていないけれど、何もないからこそ落ち着くような気がする。心まで無になって、そのまま消えてしまえそうなくらいに。よく紗貴と百合子が来て騒いでくれるけれど、2人が帰ってしまった後のこの部屋は、いつにも増していっそう静かな空間になる。こんな私でも、耐えられないくらい。
もうそろそろで、日勤帯の退勤の時間かな。そしたら、紗貴と百合子が様子を見に来てくれるかな。
早く2人に会いたい。会ったら、この弱った気持ちが少し落ち着く気がする。でも、こんなに2人や周りの人に揺れ動かされてばかりの自分も、もう嫌なんだ。そのことも、2人に一番に相談したい。早く。早く。早く・・・・・・」
【奈都の夢の中】
奈都「・・・・・・はは、ゆめ、見ちゃったんだ・・・・・・」
奈都の母「・・・・・・」
奈都「何を言いたいの、お母さん。いくら白で姿を塗りつぶされていても、私にはお母さんがわかるよ。でも、何が言いたいの、それが私にはわからないよ。いつもそうだったじゃない。ねえ、お母さん・・・・・・」
奈都の母「・・・・・・」
奈都「私がアミスタを発症したとき、汚いものを見るような目だったね。風邪か、感染症か。どっちにしたって、うつされるのは嫌だよね、しょうがなかったよね。ごめんね、お母さん。アミスタ病なんかにかからなければ、うまくお母さんとつきあっていけていたのかな・・・・・・」
紗貴「・・・・・・つ、なつ!」
奈都「だれ・・・・・・」
百合子「・・・なつ、な・・・」
奈都「私の世界に、お母さん以外にだれがいるの・・・・・・」
【BUD官舎・1101号室】
百合子「おい、奈都! しっかり自分を持て!」
紗貴「アンチワールドにひとりで行ったら、私たち許さないよ!」
奈都「うっ・・・・・・いたい」
百合子「・・・・・・お帰り、奈都」
紗貴「私たちの帰りの時刻を遅らせるつもりだったのかしら、この子はぁぁぁ」
奈都「紗貴こわい・・・・・・」
百合子「心配していたからな、仕方ない。甘んじて受けとめるのがせめてもの償いだろうな」
奈都「えええ、そんなぁ」
紗貴「こんなことだろうとは思ったけれど! 退舎してすぐに私たちのピッチに大杉さんから連絡が来たから、まさかってね」
百合子「私が、心配していた紗貴を止めてしまったから、遅くならなくてよかったってほっとしているよ」
奈都「・・・・・・わたし、どうなってた?」
紗貴「ベッドの上で寝ていたから、ヒートして倒れただろうけど大丈夫だったって感じね。でも、まだまだ高熱ねー。寝てなさいっ」
奈都「高熱なんて慣れっこだけれど、慣れたからこそ気付いて休むことが一人じゃ難しいのは、アミスタ病の問題点のひとつだよね」
百合子「アンチワールドには行っていないみたいだったが、また母君と会っていたのか」
奈都「みたい。まあ、ここに来るときに顔や姿を忘れさせられちゃっているから、いつも通りの白塗り姿なんだけどね。・・・・・・声も聞こえなくなっちゃったよ。大好きなはずのお母さんの声なのに」
百合子「・・・・・・奈都は、その、」
紗貴「その話、今じゃなくていいから。さ、奈都ももうちょっと休めば、大好物くらいは食べられるくらいに回復してるかなー?」
奈都「え? え? なになに?」
百合子「だな。この匂いで当てられるか、私たちのお土産が」
奈都「んんん、なにかな~」
紗貴「・・・・・・もう、大丈夫みたいね」