【5年前・都立西が丘病院】
奈都の母「たすけてください、うちの子を、助けてくださいっ!!」
医者「どうされました!?」
奈都の母「高熱が出たっきり、倒れこんでしまったんです。気を失ったみたいに反応がなくて・・・・・・。どうしていいか、もう・・・・・・!」
医者「わかりました。お母さんはひとまずあちらの椅子に。ストレッチャー持ってきて!」
看護師「はい!」
奈都の母「奈都・・・・・・! 私が、私の育て方が悪かったの・・・・・・? どうして・・・・・・」
医者「お母さん、ちょっとこちらによろしいですか」
奈都の母「先生! 娘は・・・・・・」
医者「こちらで説明させていただきます・・・・・・」
医者「娘さんの症状は、どの感染症や病状ともそぐいません。各種検査も、異常ありません。現在は、高熱への対症療法をとるほかありません」
奈都の母「そんな・・・・・・っ」
医者「お気を確かに持ってください! 落ち着いて、ここ最近で、娘さんになにか変わったことはありませんでしたか。よく思い出してください」
奈都の母「そんなこと・・・・・・!」
医者「なにか、思い当たられたんですか?」
奈都の母「・・・・・・ひと月前に、亭主と別れたんです。あのままでは、娘の今後に差し支えると思って」
医者「大変聞きづらいですが、それは具体的には・・・・・・」
奈都の母「変な宗教に手を出したみたいで・・・・・・。もともと、会社でもうまくいかない人で、なにか逃げ道を見つけると、すぐそこに逃げ込むような、弱い人でしたから。でも、なんだかうさんくさいところでしたので、何度も行かないでと頼みました。ですが、あの人の目は日に日に虚ろになっていき、あるときから、娘を連れて、その団体のもとを訪ねるようになっていました。・・・・・・もう、無理だったんです! あの人と同じ家で、この子を育てていくことには、不安しかなかったんです・・・・・・」
医者「・・・・・・、それは、なんという宗教団体だったのでしょう」
奈都の母「さあ・・・・・・。あの人も、その名前は知らなかったみたいです。所在地なども一切教えてはくれませんでした」
医者「そう、でしたか・・・・・・。じつは、娘さんと同じような症状で苦しんでいる女の子が、あと二人いるようなんです。医療ネットの中で昨日より話題にはなっていたんですが、はて、この街でも患者が出ようとは・・・・・・」
奈都の母「その子たちは、近くに住んでいないんですか?」
医者「どうやら、一人はキョウト、もう一人はトウキョウにいるようなんです。日本ではなく、ジャパンアイランドの中での発症というのが、何かありそうなんですが・・・・・・」
奈都の母「・・・・・・だから、ジャパンアイランドなんかに行きたくなかったのよ! あの人が、会社で左遷されたからって、私たちもついていかないといけないことは、なかったのに・・・・・・」
医者「過去のことを悔いても、取り返すことはできません。私たちも精一杯力を尽くして、娘さんを救う手立てを探しますから、どうかお母さんも、娘さんのためにもしっかりしないといけませんよ。これからどうするか、です」
奈都の母「ああっ、あああ・・・・・・っ!」