少し原作からして変な所はありますがご容赦を
違和感を感じ続けていた日常は崩壊し、非日常が姿を現した。用具倉庫への入り口から繋がる迷宮。私の指示に従い戦う人形。己が何者か、その答えが知りたくて奥に進み、今敗れ去った。起き上がった誰かの人形によって私の人形は倒れ、鋭利な手足の一撃で私の命を刈り取る。見れば周囲には事切れた他の生徒達の姿。もうすぐ私もこの仲間入りをする……。
嫌だ! ああ私は未だ自らの意思で戦っていない。このまま無意味に消えるのは嫌だっ! 弱いままでも、何も知らないままでも構わない。だから、この全身を襲う激痛にも耐えてみせるっ!
「……そうだね。さあ、立ち上がろう。僕が力になるから」
僕は正義の味方になりたかった。困っている人全てを救える正義の味方になりたかったんだ。でも、それはただの夢。人の夢と書いて儚いって言うけれど本当だったようだ。世界から争いは消して無くならないし、人の本質は決して変わらない。だから僕は英雄を憎んだ。何れ程力が有っても、何れ程持て囃されようとも、彼らに戦争はなくせない。いや、英雄という存在が居るからこそ若者は戦いに憧れる。英雄達が戦いを高潔なものだと思わせているんだ。
だから僕は聖杯に救いを求めた。後で世界を救うのだからと大勢を見殺しにし、大勢をこの手にかけた。愛する妻も娘も全て見捨てた。じゃないと僕は何の為に……。
聖杯は役に立たないもので、僕の夢は叶わないもので、今まで出してきた犠牲は無駄だった。
僕が起こしてしまった地獄、愛する妻を犠牲にして呼び寄せてしまった地獄。其処から救え出せた唯一の希望。彼の存在だけが僕の救いだった。
「大丈夫。爺さんの夢は俺が形にしてやるから」
ああ、叶う事ならば―――この子が僕とは別の道を歩む事を……。
やれやれ、皮肉な事もあるものだ。まさか僕が嫌っていた英霊になるなんて。まぁ、”数多く居る名も無き正義の味方の代表”だそうだけど。……クラスはアサシンか。実に僕らしいよ。
「僕の真名? そうだね。僕は真名が知られていても特に困る程大した存在じゃない。……キリツグと呼んでくれるかい?」
ああ、僕はなんて未練がましいのだろうか……。
この聖杯戦争は一体一のトーナメント方式。余計な横槍が入らない、逆に言えば戦っている隙を突く事が出来ないという事だ。正面からの戦いよりも奇襲や狙撃が得意な僕からすれば不利だけど、この子に僕の戦い方を見せなくって良かったかもしれない。
「おや。私の顔に見覚えがあるのかね? これは困った、私はAIに過ぎないのだがな
……所で言峰綺礼が居たけど本当に大丈夫か? 流石に上級AIを敵に回すのは悪手だが、出来れば消しておきたいな。
「ヨロシクね、おねえちゃん! わたし、ありす!」
僕達の最初の相手は幼い女の子。小さい小さい無邪気な子供。だけど、この子を殺さないと先には進めない。僕が消えるのはいい。だけど……。
……侮っていた。あの子と、あの子によく似た英霊。まさか相手の存在を消す固有結界を使うなんて。何処か浮かれ、弱くなっていたみたいだ。もう、油断はしない。世界を救えなくたっていい。だけど、今度こそ僕は……。
英霊同士の戦いが始まればマスターには防壁が張られる。だけど、戦いを始めなければ攻撃が通じる。
「また会ったね、お姉ちゃ……」
姿を現すなり肝臓と心臓、そして額に銃弾を撃ち込む。小さい体はクルクル回ってその場に倒れ、僕達の勝ちが決定した。……どれだけ侮蔑されても構わない。ただ、守り抜く事が出来れば……。
「オタクさぁ、なーんか気に入らないんだよね」
次の相手は綠衣の男。彼は僕の同類だった。アリーナに入るなり放たれた矢。矢を打ち落とす技術など持ち合わせていない僕は避けるしかない。だが、それが正解だった。一本目の影に隠されて放たれていた二本目の矢、しかも床に刺さったそれを見れば先端が錆びており、毒が塗られている様だった。
協力者になってくれた少女によって知る事が出来た相手の真名ロビンフット。小さな村の住民の為に一人で戦い続けた弱者の味方。大勢の為に少数を犠牲にした僕とは反対に極小数の為に国を敵に回した彼。似ている様で正反対の僕と彼の戦いは誇りある騎士の存在で一気に展開が変わる。
「アーチャーよ。もう外道に落ちる事はないのだ」
誇りを捨てて卑劣な真似をし続けた彼と、理想の為と言い訳をして卑劣な真似をし続けた僕。そして最後には彼は誇り高い騎士の言葉によって真っ向からの戦いを望み、僕はそんな彼に対して……。
僕へのマスターからの信頼は最悪・・・になると思っていた。
「大丈夫。キリツグが私を守ろうとしている事は分かってるよ」
僕は年甲斐もなく泣き崩れ、小さな其の手が僕の頭を撫でる。もう僕は迷わない。この子を絶対に生き残らせよう。
……そう。迷わない、そのはずだった。
「……そんな。爺さんなのか……?」
ああ、直ぐに分かってしまったよ。彼が誰なのか。例え姿は変わっても、彼は間違いなく僕の義息子の…衛宮士郎だ。そして、どういう存在かも分かってしまった。
「人の役に立つという生き方が綺麗だったから憧れたっ!」
ああ、僕は……。
「この身は誰かの為にならなければと強迫概念に突き動かされ、傲慢にも走り続けた!」
僕はなんて……。
・「だが、所詮は偽物だ。そんな偽善では誰も救えない。・・・・・私は正義の味方などになるべきではなかった!」
僕はなんて物を背負わせてしまったんだ。どれがどういう物か知っていたのに。其れを大切な個に託して、のうのうと安心して死んでいったっ! 僕はあれから何一つ変わっちゃ居ないっ!
これが自分勝手だなんて分かっている。エゴだなんて分かっているんだ。でも僕はっ!
「そうか.爺さん、それがアンタの選択だなんだな。じゃあ、俺は何も言わない。ただ、これだけ言わせてくれ。……頑張れよ」
ごめん、ごめんよ士郎……。
それから僕達は様々な対戦相手を倒した。たった一人との約束だけが全てになった殺し屋に真なる神を求めし求道僧。僕は彼らを殺して殺して殺して殺して、殺し続けた。
最後の相手は実質的に地上を支配する一族の長。大の為に小を切り捨てる管理社会を絶対とする生まれながらの王。何処か僕の考えに共通する物がある世の中。
だけど僕は負ける訳にはいかない。
たとえ結果的に大勢の命が失われても、マスターが偽りの存在だとしても……。
「君は確かに優秀なマスターの様だ。それはこの決戦術式が証明している。だけど……」
起源弾。僕の宝具にして切り札の前では無駄だ……。
そして戦いは終わり、少女は己の願いの為に聖杯に身を投じる。その結果、消滅が待っていると知っていても。
僕は彼女と一緒に居たかった。その頭を撫で、もっと遊んでやりたかった。僕の大切な……可愛い
「有難う。キリツグが一緒に居てくれて私嬉しかった。だって、お母様は居ないけど家族一緒に居られたんだもの」
一緒に消えいく中、最後に聞こえたのは都合の良い幻聴か。それとも……。
どっちだったかはご想像にお任せします