こんなに頑張っているのになんで俺にはヒロインがいないんじゃー 作:夜遊
ではどうぞ!!
キャンピングカーを降りた僕達を迎えたのは潮風だった。
学園都市は地形的に海に面していない。では何故潮風が吹いているかというと、人工的に作られた海が横にあるのだ。
学園都市は様々な科学技術に置いて『外』と2、30年の開きを持っている。
その分野に当然『海域科学』も含まれている。
本来なら海の近くに研究所を設立すればいい話なのだが、学園都市は人工的に海を作ってしまったのだ。
だが海と言っても大きさはそれほど大きなものではない、精々巨大な湖程度だろう。
「コミヤン」
暫く歩いていると隣の土御門が話しかけてきた。
「そろそろ目的地だ、決心はついたか?」
テロリストの排除。
土御門の目的はそれだが、僕は違う。
「そっちがどんな目的でも僕は知らないよ、僕は僕の目的を果たすよ」
僕の目的。
それは情けない話だが、いつもと同じだ。
捕まった佐天涙子の救出。とその他。
「コミヤンはそれでいい」
「あぁ」
「まぁ、ぶっちゃけそれほどコミヤンの事は心配していないんだにゃー」
とんでもない事を言いやがった!?
「ちょ!?お前いくらなんでも薄情なんじゃねぇか!?相手はスキルアウトで武器を持っているんだろう!?そんな奴等相手に――」
「今のコミヤンが負ける筈がないだろ?」
「は?」
土御門はニヒルに笑っている。
本当に心配されていないみたいだ。
だが、それは薄情ではなく、それどころか全くの逆。
信頼されているからだ。
土御門は僕が化け物染みた能力を得た事を知っている。
この能力は強い事を知っている。
少なくても僕が目的を成し遂げる位の力はあると知っている。
だから、信頼してここに連れてきてくれたのだ。
対して僕は土御門の事は余り知らない。
現に先程まで彼が学園都市の裏側にいる事は知らなかった訳だ。
しかし、それでも彼は僕を信頼してくれている。
「だが、これだけは言っておくぜ、無茶するなよ?」
それは悪まで建前の言葉。
その裏の裏にある信頼。
「それはこっちの台詞だよ、お前も無茶するなよ?」
その信頼に僕も信頼するしかないじゃないか。
暗い道。
音は人工的に作られた海の波の音と僕らの足音。
そして暗闇の霧の中、それは現れた。
大型の貨物船。
スキルアウト『フロッグ』のアジトで誘拐された人が監禁されている場所。
特殊な武器を製造する場所。
そして、
僕達、二人の学生の戦場だ。
「ぐわっ!?」
男が倒れる。
「にしても簡単すぎじゃね?」
スキルアウト『フロッグ』。
土御門の話だと、形成人数は20人前後らしい。
船に潜入して30分、倒したスキルアウトはこれで16人目になる。
武器を製造していると聞いていたが、それらしき物は持っておらず、人より力強い僕や裏に通じている土御門の敵ではなかった。
まぁ殆ど土御門が簡単に素早く相手から意識を失わせていたのだが。
「にしてもどこで覚えたんだよ」
リアルCQC何て初めて見たぞ。スネークか?
「これでも手加減しているんだぜぇ、 必要なのは敵の頭だけだからな」
「えーと、長谷部差鉄って言ったっけ?」
「あぁ」
「今までのスキルアウトを見ていたらそいつも簡単なんじゃね?」
類は友を呼ぶって言うし、部下がこんなんじゃリーダーも大した事ないのではないだろうか?
「だといいがな」
一瞬土御門が苦い顔をした。
「それよりも土御門、涙子ちゃんがどこにいるか見当付くのか?」
「あぁ、ある程度の監禁場所は予測できるからな」
10分後、僕らは1つの扉の前に来ていた。
「ここは?」
「この貨物船の中でも広めの部屋だぜ、何せ人質はその子だけではないだろうから恐らく1つの部屋にまとめているはずだぜ」
「まぁ、開いて見ないとわからないよな……うわっ!?」
「どうした?」
「悪い、ドアのぶが濡れていてびっくりしただけだ」
気を付けて見ると扉だけではなく、壁や床の所々が濡れている。
海の水でも漏れているのだろうか?
「まぁいいか」
再び僕はドアのぶを掴み、ドアを開けた。
薄暗い、明かりは頭上の切れかけの電球が数個だけ。
しかし、それでも部屋の大まかな景色は確認できた。
貨物船の中のメインに当たる場所なのだろか?いくつものコンテナが積まれている。
その中、部屋の中央にあるコンテナ。
それだけは明らかに手を加えられている。
本来のドアを外し代わりに鉄棒を何本も取り付けて、それはまるで牢屋をイメージさせた。
そしてその中には
「涙子ちゃん!!」
捕まった少女達がいた。
もちろんその中には佐天涙子の姿も確認できた。
「じ、仁ちゃん!?」
まだ別れて4時間程しか経っていないのだが、彼女の姿を見ていくらか肩の荷が降りたようだ。
それがいけなかった。
「な、何で?」
「助けにきた、待っていてすぐに出すから」
もし、僕がこの時警戒をしていたら、もし、僕が鉄棒の1本1本に毛糸が巻かれているのに疑問を持っていたら、もし、僕がこの時部屋に風が吹き続けているのに疑問を持っていたら。
なんにせよ、僕は油断していた。
鉄棒を引き抜こうと、手を伸ばし、そして鉄棒に触れた瞬間。
突然、僕の手が燃え上がったのだ。
「ぐ、わぁあぁぁぁぁぁ!?」
僕の手が燃えている。
それは確実に皮膚を燃やし、次第に範囲を広げている。
いきなりの展開に狼狽してしまった。
「仁ちゃん!!」
「コミヤン!!火を消せ!!」
土御門のアドバイス通り近くの水溜まりに手を突っ込もうと僕は飛んだ。
だが
「!!違う!それは罠だ!!」
土御門の焦った声を聞いたが、残念な事に、飛び込んだ勢いは消せず、僕は手を水溜まりに突っ込んでしまった。
パシャンッ!!
水溜まりに手を入れた瞬間。
バンッ!!
水溜まりが爆発したのだ。
「ぐぅ!!」
ようやく、この段階で僕は理解した。
これは土御門の言う通りフロッグの罠だ。
先程からの異様なまでの水溜まり、や壁の濡れ具合。
その正体は
(オイル……オイルだ!)
ライターオイルが初めからこの部屋を中心にばらまかれていたのだろう。
ライターオイルは非常に火の付がいい。
そして引火の原因は
(毛糸……風……静電気か!?)
毛糸と指が触れた瞬間、静電気が起き、それが手に付いていたオイルに引火したのか!?
「くっ…そぉ!!」
僕は火の付いた上着を脱ぎ捨て、上着を勢いよく振るった。
上着からの強風で火を消す。
だが、火が消えてもヒリヒリと痛む手の火傷は消えなかった。
「はぁ…はぁはぁ…」
「その声、まさか本当に助けに来るとはな」
野太い男の声。
視線を上げると、物陰から男が姿を現した。
デカイ。
とにかく、デカイ。
190はあるのではないかと思う長身に筋肉質の肉体。
しかし無駄が一切ないスリムな身体。
頭は短く刈り上げ、顎にも短い髭がある。
その目付きは、獣の様に鋭い。
誰かと聞くまでもない。
「はしゃぎ過ぎだぞ、侵入者」
こいつがフロッグのリーダー。
長谷部差鉄だ。
いかがでしたが?
色々ツッコミが来そうな展開でしたね。
学園都市に人工的に作られた海があるのは完全な妄想です。
貨物船は海路から直接物資を輸出入する為に何隻もある。と考えて下さい。
ライターオイルからの引火の流れは実際に私が経験したことです。
私はジッポライターを持っているのですが、オイルを入れる際、手にオイルが付いた事に気が付かず、試しに火を点けたら手が燃えました。
いや、マジで…
あの時はパニックになりましたよ……、焦って火が点いたままのジッポを床に落とすわ、袖が焦げるわ、犬が吠えるわ、タンスの角に小指ぶつけるわ、幸い大事にならなかったからいいものの、その経験からより一層火の取り扱いに気を配る様になりました。
まあ、そんなドジな話は置いておいて、次回本格的な戦闘シーンを書こうと思います。
あ、あと私事で申し訳ないのですがこの度私は大学を卒業し、4月から社会人になります。暫くは更新が不定期になる事が予想されますので、気長に待っていて下さい。
では!次回!
ご意見、ご質問、ご感想、その他等々ありましたらどんどん書いて下さいね!!