こんなに頑張っているのになんで俺にはヒロインがいないんじゃー 作:夜遊
「武器はある?何を言っているのんだ、コミヤン!!」
土御門が肩を掴み問いかける。
わざわざ負傷している肩を掴んだのは痛みで僕の考えを改めさせる為か。
だが、刺す様な痛みは逆に僕の決意を確実なモノに変えた。
僕は再び同じ事を言う。
「聞いてくれ、僕が囮になるから、お前は人質の子達を見付けて脱出させてくれ」
「……」
「頼む」
数秒の沈黙の後、土御門はため息と共に頷いた。
「……わかった。コミヤン無茶はするなよ」
一見無謀な作戦に思えるが客観的に考えるとこれが一番ベストな作戦なのだ。
僕にはこの船がどんな構造をしているのか、予想も出来ない、ましてやどこかに監禁されている女の子達の居場所などわかる筈がないのだ。
逆に土御門なら大方の予想も可能性の高い監禁場所も簡単に推測できるはずだ。
僕は僕にできる事をする。
他のスキルアウト達は大方片付いた。
残りは長谷部差鉄のみなのだから。
だが、
この状況。
正直、かなりピンチだ。
長谷部差鉄の武器、ペットボトルボムは単純な構造故に威力は確実、更に奴は常に一手先を見る事ができる。
こちらがもしペットボトルボムを回避しても、そこから生まれてしまう隙を確実に捕らえて来るのだ。
こちらの武器は土御門が持つ拳銃一丁だけ。
だが、『僕の武器』を使えば活路を切り開く事は難しくとも、裏を欠く事はできる。
しかし、
(出来るのか?)
正直に話せば『僕の武器』は過去にあの化け物がやってのけた事だ。
やり方は大体理解できる。
いや、正確には『出来る』。
それは手を動かす事と同じように、息を止める事と同じように簡単に出来る。
はずだ。
確定では無い。
例えるのなら、見よう見まねの領域。
頭で理解しても、実際に体を動かすと極めて困難な事と同じだ。
それに、
もし、『僕の武器』を使えたとしよう。
『僕の武器』を一度使ってしまったら、僕はどうなる?
『僕の武器』はそっくりそのまま『化け物の武器』だ。
つまり
僕は化け物である証明になってしまう。
心の中で僕は人間だと防衛線を張っていた。
化け物の力を持ってしまい、人間では無くなる事を恐れたからだ。
そう考えなければ、僕は化け物である真実に押し潰されてしまうかもしれない恐怖があったからだ。
その防衛線を僕は僕の意志で壊し踏み込まなくてはならないのだ。
もし、このまま真っ直ぐに走り去ってしまえばどれ程楽だろう。
佐天涙子の事、土御門元春の事、長谷部差鉄の事、全てを投げ出せば僕は僕の事を救える。
少なくとも、真実から目を背ける事はできる。
それはどれ程楽だろう。
楽で、
幸せで、
なんて残酷なんだろう。
『助けて…仁ちゃん』
不意に佐天涙子の声を思い出す。
救いを彼女は僕に求めた。
だが、それが僕の戦う動力源になることはない。
吹寄の時と同じだ。
僕は正義の味方側の悪役であり、他人の為には力が出せない。
自分の為にが大前提にならなければ力は出ないのだ。
それは、化け物であるが故に起きる考えではないのか?
僕は知らない内に心まで化け物になっていたのではないのか?
(違う)
否定の言葉。
否定しないと途端に真実と言う濁流に巻き込まれて戻れなくなってしまう。
だから否定する。
(僕は……僕は……人間だ!!)
真実を否定する。
真実を認めない。
真実を拒絶する。
その為に、
真実を拒む為に、
僕は、
真実を受け入れなければならないのだ!
僕は隠れていた物陰から飛び出した。
目の前には若干驚いた表情の差鉄が。
「ほう……無駄な抵抗だと悟り出てきたか?それとも何か秘策を思い付いたか?」
「いや、違うね、覚悟を決めたのさ」
「どちらでもいい」
差鉄は手に持っていたペットボトルボムを点火し放り投げた。
差鉄の考えはわかる。
ペットボトルボムの爆発範囲は精々1メートル弱。
それを知っている人間だったら、凡人でも回避可能な距離だ。
しかし、
(差鉄は更に一手先を見る!!)
僕が回避しても、その位置に拳か更なる隠し武器かわからないが、とにかく次の手を攻撃して来るのだ。
それをわかっているのだが、その場合の対処が出来ない。
ペットボトルボムを避けた時点で僕は次の攻撃を受ける事が確定してしまう。
ボンッ!!
ペットボトルボムが爆発する音。
だが、
次の手は来ない。
それどころか、僕はその場から動いていなかった。
ペットボトルボムは放物線上の途中で爆発したのだ。
「な、何故だ!?」
次の手が来ないのは差鉄が事態を飲み込めていない為。
「何故、ペットボトルボムは狙撃されたのだ!?」
差鉄は常に一手先を見る。
見る、とは考える事。
確かにその一手先を見る事は脅威になるが、逆に弱点にもなるのだ。
理解の範疇を越えた出来事に遭遇した時、人間はまず理解する事に専念する。
専念する瞬間は体の動きは無意識に鈍くなるのだ。
常に一手先を見る差鉄も例外に漏れず、むしろ人より理解しようと専念する為、その鈍さは長い。
ほんの一拍、二拍の僅かな差だが、それでも土御門が動く時間は稼げた。
土御門は僕の横を走り抜け別の扉に飛び込もうと飛んだ。
「まて!!」
ここで差鉄が動くが、
「ッ!?」
差鉄の顔面スレスレに、『僕の武器』が飛び壁に穴を開けた。
差鉄の足が止まる。
土御門がドアの向こうに消えて行った。
「頼むぞ……土御門」
僕はここで差鉄を倒す。
能力の説明は次回やります。
結局の所、この主人公は自分の為にしか力が出せない卑怯者と言う事ですね。
では、次回、小野町仁vs長谷部差鉄!!をお楽しみ!
ご意見、ご感想、等々ありましたら下さい。