こんなに頑張っているのになんで俺にはヒロインがいないんじゃー 作:夜遊
それは間違いなくまともとはかけ離れたラブレターだった。
「………」
暗くなった下駄箱の前に僕らは黙ったままだ。
「小野町……」
吹寄は何かを期待するように僕を見ている。
「そんな顔すんな、イタズラだよ」
「そ、そうよね!!それじゃ私帰るわ」
「………」
僕は帰る彼女の後ろ姿を黙って見送るしかなかった。
次の日、吹寄は学校を休んだ。
「………」
やはり昨日のラブレターが原因なのか?
昨日はイタズラと言ったがあれはそんなもんじゃ無い気がする。
まさか今日休んだのは何かあったんじゃないか。
そう思い、気が付くと彼女の部屋の前に僕は立っていた。
流石に女子の部屋に行くのは抵抗があったが、彼女の性格だどうせラブレターの話は僕にしかしてないだろ。
インターホンを鳴らすと聞き慣れた声がした。
「……どちら様ですか?」
「吹寄俺、小野町」
「こ、小野町!?どうした!?何で私の家に!?」
「どうしたはこっちの台詞だ、昨日の今日で心配になったから様子を見にきただけだよ」
「ま、待て!!今開ける!!」
ドアが開き私服姿の吹寄が姿を現した。
いつもは制服だけあって私服はなんとも新鮮だ。
「よう」
「わざわざ来てくれたのか、まぁ入れ」
「いや、ここでいいや、さっきも言ったけど別に様子を見にきただけだし」
「……また来ていた」
「………本当か?」
「昨日家に帰ったら郵便受けに入っていたんだ」
「やっぱりお邪魔していいか?」
彼女に送られてきた手紙は昨日下駄箱に入っていた物と同じピンク色の便箋だった。
中にはピンク色の手紙に写真が一枚。
手紙には
『ムカエニイクヨ』
と一文しかなく。逆に不気味さを出していた。
写真の方は更に不気味で彼女が下校中の姿を隠し撮りしたものでやはり昨日と同じく彼女以外の人間の顔を赤いインクで塗り潰したものだ。
「先生に相談したらどうだ?」
「小萌先生に余計な心配をかけたくない……」
しかし、この手紙の差出人は明らかな異常者だ。
僕達にはてに終えない。
「私、どうしたらいいんだ?」
彼女は確実に弱っていた。
普段は強気にしていても、やはり正体不明の相手に不安を隠せていない。
そんな彼女に僕は何もしてあげられないのか?
彼女の性格だ、こんなに弱った自分の顔は誰にも知られたく無いだろう。恐らく僕にも知られたく無いだろうが偶然、本当に偶然目の前に僕しか居なかったからこうして相談したのだろう。
そんな彼女に僕は何が出来る?何をしてあげられる?
僕は手紙に視線を落とす。
『ムカエニイクヨ』
ムカエニイクヨ、むかえにいくよ、迎えに行くよ。
明らかに犯人は彼女を狙っている。
今、彼女を一人に出来ない。
一人に……そうか!!
「そう言えばさ吹寄」
ある妙案が浮かんだ。
「来週小テストがあるんだ」
「………は?」
「実は俺今回のテストで当麻達と賭けをしていてな、絶対に勝ちたいんだ、だから、その…………住み込みで勉強教えてくれないか?」
言って思った。
馬鹿だ、僕は。
そして後々後悔することになる。
僕はMじゃ無いかと本気で後悔している。
あの日から吹寄は僕の部屋で勉強を見てくれている。
若い男女が同じ部屋で夜を共に過ごす。
なんともうれしいシュチュレーションだろうか!!
とか本気で思っていたのは最初だけだった。
「だから、この問題は――」
「あの吹寄さん…」
「どうした小野町仁、何か質問か?」
「もう三時間以上勉強しているのですが、そろそろ終わりにしてよいのでは?!」
三日目の夜の出来事である。
共同生活は何故か思い描いたものとは全く違う、別物に変質していた。
いちいち書くのはトラウマが蘇るのでダイジェストでお送りする。
「お邪魔しま――なんだ!?この部屋は!?よくこんな汚い部屋で暮らしているな!!えーい!!掃除機並び清掃道具全て出せ!!」
「ギャー!!」
「腹へった…」
「お疲れさま、夕飯を作ったぞ」
「わーい!!………あの……」
「どうした?」
「凄く緑が多いのですが……」
「貴様今まで偏った食生活を送っていたみたいだからな、これを気にしばらくは野菜生活をしよう」
「ギャー!!」
「そろそろ寝るか」
(キター!!フッフッフ!!覚悟しろ吹寄!お前が無防備になった瞬間、念願のそのザ・チチを堪能してやる!!つーか!!)
「何故か縛られてる!?」
「貴様は油断出来ないからな、保険をかけておいて損は無い」
「ギャー!!」
「グゥ~……グゥ~…んん~胸……巨乳……ご、ごめんなさい……最悪だ……」
「どんな寝言だ……?」
「………ありがとう」
これが後に僕の中で『吹寄先生完全監修、ドキドキ!!(僕が)共同生活!!ホロリッもあるよ!(僕の涙が)』の一部である。
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