こんなに頑張っているのになんで俺にはヒロインがいないんじゃー   作:夜遊

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今回は色々詰め込み過ぎて長いです。

どれくらい長いかと言うと、平均の2倍以上あります。

また、この話を読む前に鞠亜編を読み直す事をオススメします。
あと、今回メインは雲川鞠亜視点でお送りしますのでご了承下さい。

最後に告知をします。

ではどうぞ!


病院編、先生

私、雲川鞠亜は引きこもりだった。

 

理由はこの際どうでもいい。

 

この話は引きこもりだった私を救ってくれた、恩師の話だからだ。

 

彼が私の前に現れたら時、何かを感じた。

 

家庭教育で学校に行かなくとも勉強で遅れを取らないようにする目的とは別に、学校に行く様に説得する目的だと彼は初対面の私に説明した。

 

その説明を聞きながら同時に何かを感じた私は思った。

 

この人は他の人とは違う、と。

 

事実、それから少しして私は学校に行ける様になる。

 

それが彼がやり手の教師だったのか、私との相性が良かったのかは定かでは無いが。

 

なんにしてもその短い期間で私の中で彼は大きくなった。

 

恩師、尊敬、敬意、好意、感謝。

 

彼を語る上で様々な言葉が出てくる。

 

彼は私を理解してくれた、否定しないでいてくれた。

 

同時に私も彼を知りたいと、思った。

 

しかし、彼を理解する事は最後まで無かった。

 

彼は自分の生い立ちを話してはくれなかった。

 

そして、事件が起きたのだ。

 

久々の学校に向かう途中にそれは起きた。

 

どこにでも居そうな男の子が突然暴れ出したのだ。

 

男の子が私に向かって走り出した、その手に凶器を持ちながら……。

 

気が付いたら(無意識に目を背けていたのかも知れないが)辺りは赤く染まっていた。

 

暴れていた筈の男の子だったモノが地面に転がっている。

 

その傍らに彼はいた。

 

手には何処からか取ってきたのか園芸用のシャベルを握り、いつも着ていたスーツは赤黒く染まり、常に何かを考えているかのような表情はこんな時でも変わらなかった。

 

彼は色々な意味でヒーローだった。

 

ヒーローだった筈の彼がその後行方を眩ませた事は私にとって災厄の事件になる。

 

 

 

 

 

その後、私は姉の真似では無いが、学園都市の裏に精通するようになる。

 

理由は単純。

 

ヒーローだった彼を探す為だ。

 

 

 

 

 

それから、私は『学園都市の裏』に居ることが多くなっていた。

 

能力が開花し、力も知恵も付いた。

 

しかし、未だに彼は見つからない。

 

彼の内側に秘めた考えがわからなかった。

 

そんなある日、私の耳にある噂が入り込む。

 

中学生を中心にとある麻薬が売買されはじめている。

 

まだまだ、被害は少ないが無視をしたら確実に大事件になる話だった。

 

私は単身で調査を始めた。

 

理由は誰かを救いたい、とかそんな大層な動機ではない。

 

ただ、誰かを救うことで少しでも彼を知りたかったからだ。

 

麻薬の効力や販売ルートを調べ、売買している組織を見つける手段がわかった。

 

それは自分自身が麻薬を使わなければならなかった。

 

その事に恐怖や後悔、躊躇は無い。

 

私は麻薬を買った人間を探しだし、コンタクトをとり、ある日の午後に路地裏へ取引を持ち掛けた。

 

ここまでは順調だった。

 

そう、この時までは……。

 

問題が起きたのは取引の段階だった。

 

人通りは少なく無かったが、人目につかない路地裏へ取引相手達を連れて行き、交渉を始めた際に、取引相手のスキルアウトは値段の向上を持ち出し話はおかしくなった。

 

もしもこの時に、相手の言う通りの値段を承諾していたらあんなに時間は取らなかったと思う。

 

これは私のミスだ。

 

プライドを少し傷付ければすむ話だった。

 

とにかく、取引の時間が長引いた為に私は『彼』に出会ってしまった。

 

『彼』が私の前に現れたら時、私は昔、彼に抱いた感覚と同じモノを感じていた。

 

『彼』の名前は小野町仁。

 

彼と同じモノを持ったただの学生だった。

 

 

 

 

 

「何で殴ったの?」

 

どうしてこうなったのか、それは私自身わからなかった。

 

この小野町仁から感じた『彼と同じモノ』に興味を持ったからなのか?

 

この男を知れば彼を理解することができるかも知れないと思ったからなのか?

 

しかし、少し話ただけで、この男は彼と似ても似つかない人格の持ち主だと後悔していた。

 

(これは引き時かな)

 

そう思った私は『ただのナンパされたメイドさん』を装いもう会わないであろうこの男に別れを告げてその場を去る事にしたのだ。

 

しかし、またしてもここでミスを犯してしまった。

 

取引相手からくすねた麻薬が私のポケットから無くなってしまっていたのだ。

 

 

 

 

 

 

急いでハンバーガー屋に戻ったら案の定、小野町仁の姿はなく。

 

座っていた椅子の下には何もなかった。

 

考えられる場所はあそこしかなく、あの場に無かったと言う事は、つまりは、この小野町仁が発見し持ち帰ったと言う事だ。

 

私はすぐに小野町仁の住所を調べ、窓を割り室内に侵入した。

 

しかし……

 

「か、帰ってこない……だと!?」

 

何をしていたのか知らないが、約三時間、暇潰しを兼ねて掃除やら料理やらをして時間を潰していたがなかなか件の小野町仁が帰ってこない。

 

することが無くなると残るのは無駄な時間だけだ。

 

時間が有るとどうしても過去の事を考えてしまう。

 

「……先生」

 

私の恩師であり、教師であり、恩人であり、憧れである、彼を思い出す。

 

そこで、今まで考えた事がない考えが浮かんだ。

 

なぜ、あの時私は小野町仁から彼と同じモノを感じたのだろか?

 

わからない。

 

小野町仁はどこにでも居そうなただの学生だ。

 

少し会話しただけで彼とは違うとわかったのに。

 

そんな事を考えていたら、玄関から人の気配がした。

 

ようやく部屋の住人が帰って来たようだ。

 

私は『明るいメイドさん』を装い、玄関を開けたのだった。

 

 

 

 

 

「やっぱり持っているんだ、返して」

 

小野町仁の様子からやはり彼が麻薬を持ち帰ったとわかった。

 

彼自身、こんな面倒ごとに巻き込まれたくないはすだ。

 

だから、このまま私に麻薬を返せばどれ程楽かこの男でもわかりきっている筈なのだが……。

 

「やだね」

 

なぜがこの男はそれを拒否したのだ。

 

この時、なぜが、あの時の事件で彼に感じたモノを再びこの男に感じた。

 

しかし、それを強引に否定する。

 

どうせ、安い正義論や醜い保身の為だろう。

 

ここは少し強めに出るか。

 

「言っておくけどこれはお願いじゃないから、命令だよ」

 

「命令違反したら?」

 

「私のプライドを折らなくちゃならない」

 

これは、お願いや命令ではない、脅迫だ。

 

「何か理由があるのか?」

 

「理由を話したら返してくれるかい?」

 

理由を求められ、仕方なく私はこの事件の事を、自分がどれ程のデカイ事件に首を突っ込もうとしているのか理解させる為、わざと詳細に話た。

 

 

 

 

 

 

「それで私が実際に使って売人を探す計画だ」

 

全て話したあと、小野町仁は少し考えていた。

 

そして、顔をあげると言った。

 

「……よくわかった」

 

「そうかなら――」

 

「だけどクスリは返さない」

 

「な!?」

 

この男、今なんと言った?

 

麻薬を返さない?

 

(しまった!!深く話しすぎたか!?)

 

事が事の為に、私だけでは危ないと判断されてしまったのか?!

 

この男は次に話す言葉は想像できる!

 

危なすぎる。

 

危険だ。

 

アンチスキルに任せよう。

 

君も関わらない方がいい。

 

そんな安易なまるで教科書やマニュアルのような事を言うに決まっている!

 

しかし

 

小野町仁は私の想像を超えた事を言い出したのだ。

 

「このクスリを使うのは僕だ」

 

 

 

 

 

 

「…………は?」

 

私は思考、行動共に停止するのを感じた。

 

何を言っているんだ?このバカは。

 

使うのは自分?

 

麻薬を使って何をしたいんだ?

 

「ど、どういう事?」

 

「だから、このクスリを使ってその組織を見つけるって言っているんだよ」

 

「な、何で!!何でお兄さんがそんな事!?」

 

 

「え?そりゃお前……危なすぎるし、危険だし、本当はアンチスキルに任せた方がいいと思うけど、それじゃこのクスリを手に入れた経緯とか聞かれると面倒だし、とにかくお前は関わらない方がいい」

 

この男はバカだ。

 

何がバカって、本来なら正しい事がわかっているのに、それではダメだと理解して、それじゃダメだと理解して、消去法で、自分を犠牲にすることを選んだ事がバカだ。

 

しかも、その決断をあの短い思考で出した所がバカだ。

 

しかも、それではまるで……まるで……

 

(私を助けようとしているみたいしゃないか)

 

普通、今日会ったばかりの人間を助ける為に麻薬を使おうとするか?

 

いや、しない。

 

するはずが無い。

 

そんな事ができるのは正義の味方のような人間だけだ。

 

あの時の先生の様に……。

 

(…………っ!?)

 

瞬間。

 

私は気が付いてしまった!!

 

この男から感じた彼と同じモノの正体を!!

 

この男、小野町仁は、彼と同じなんだ。

 

この男は人を救うためならどんなこともやるタイプの人間だ。

 

あの時私を救うために、身を立場を犠牲にしてくれた先生の様な!!

 

「とりあえず、お前はもう帰れ、舞夏の話だとお前らの学校門限とか厳しいんだろ?」

 

小野町仁が何か言っているが、最早私の耳に届いていない。

 

お前が、

 

お前の様な人間が、

 

彼と、

 

先生と、

 

同じだと?

 

「……ふざけるな」

 

「え?」

 

「ふざけるな!!」

 

気が付けば私は拳を握り、小野町仁に襲い掛かっていた。

 

 

 

 

 

あれからどれだけの時間がかかっていたのだろ?

 

私は乱れた呼吸を整える間に、床に転がっている時計をみた。

 

まだ、10分も経っていない。

 

なぜ、床に時計が転がっているのか、いや、時計だけでは無い。

 

家具や、机、マンガ本まで散乱している。

 

この状況を作り出したのは他でもない私だ。

 

私は壁をみる。

 

そこに居たのは無惨にもボロボロになった小野町仁の姿が。

 

「……う……っ!!」

 

死んではいない、殺すつもりは無かったが、よくあれだけの攻撃を受けて意識を失わないものだと、感心してしまう。

 

「どう?お兄さん、考えは変わった?」

 

「変わったよ……。お前はか弱い女の子じゃ無いって事がな」

 

「じゃあ、あとは私に任せて――」

 

「でも、……救わないといけないって思った」

 

「え?」

 

小野町仁はボロボロになった体を無理やり起こし、私を見る。

 

間違ってもそれは、恐怖や軽蔑の眼差しでは無かった。

 

まだ、その目は、どこかに優しさを持った眼差しだった。

 

「お前は確かに強い……でも、それが助けちゃいけない理由にならない」

 

「ふざけないで!!私は助けを求めていない!!私はもう誰かに助けられたくない!!」

 

「その言葉『先生』にも言えるのか!?」

 

「え?」

 

な、何でこの男は彼を知ってるんだ?

 

「その顔……何でって顔だな……おいおい、お前人様の顔を攻撃する時に言っていたじゃないか…『お前は先生とは違う』『先生と同じなんだ』って」

 

「……」

 

「僕は、その『先生』って人がどんな人物なのか知らない……お前がどんな想いなのか知らない……過去に何があったのか知らない……だけどはっきりわかっているのは、僕はその『先生』じゃない!!僕は小野町仁はただ雲川鞠亜を救わないといけないんだ!!」

 

「っ!?」

 

私はもう動けなかった。

 

彼の言葉に心打たれたのではない。

 

100%彼を信用したわけでもない。

 

彼に任せようと決めたわけではない。

 

ただ気が付いてしまったのだ。

 

小野町仁の眼には私を見ていない。

 

いや、正確には私を助ける事は、ただの通過点であるかのように感じる目線だった。

 

小野町仁は自分の為に私を助けるだけなのだ。

 

そして、その目はあの時私を救ってくれた、先生と同じだ。

 

見付からなかった答えの端が見えた気がした。

 

どちらにしても、私はもう動けなかった。

 

「さてと……行くか」

 

小野町仁はボロボロになった体を動かして玄関に向かう。

 

私はその背中を黙って見ることしか出来なかった。

 

確信は無かったが、この事件は解決すると思う。

 

そう思うだけの雰囲気を小野町仁から感じられた。

 

「あ、出る時は鍵閉めとけよ」

 

彼はまるでコンビニに行くかのような、軽い言葉を残し私の前から去っていった。

 

 

 

 

誰もいない室内。

 

私は散らかった部屋を片付け、その後1枚の置き手紙を残した。

 

『ありがとね、お兄さん』

 

何がありがとうなのか、自分でもわからない。

 

この事件をなんとかしてくれた事にありがとうなのか。

 

私を救ってくれようとした事にありがとうなのか。

 

それとも、

 

少しでも先生を感じられた事にありがとうなのか。

 

私はもう一度考えて、やはり他に言葉が見付からなかったのでそのまま手紙を机の上に置き、部屋を後にした。

 

 

 

 

 

「と、まぁ……そんな感じだ」

 

「…………」

 

「ん?どうしたんだ。お兄さん」

 

き、気まずい!!

 

思いがけない、真面目話だったから、反応に困る!!

 

まさか、あの時の『先生』ってそんなに雲川にとってデカイ存在だったなんて想像できていなかったぞ!!

 

しかも、その『先生』と僕が似ている?

 

いやいや!!

 

違うだろ!!

 

僕はお前の大好きな『先生』なんかじゃないんだから。

 

ん?

 

「あれ?だったらやっぱりお前、僕の事好きなんじゃね?」

 

「ぶっ!?何でまたそんな話が出てくるんだ!?」

 

「いや、だって……お前その『先生』が好きだったんだろ?だったら似ている僕も好きになるんじゃないか?」

 

「……お兄さん、また殴られたい?」

 

「スミマセン」

 

一応、病院何で勘弁して下さい。

 

「……そうだな、うーん……」

 

「く、雲川さーん?」

 

何やら雲川が考え出した。

 

「お兄さん、さっきのは無し」

 

「はい?」

 

「さっきの『好きじゃない』は取り消すよ、あ!!でも『好き』じゃないから!!」

 

先に釘を刺された。

 

「なんだよそれ?」

 

「お兄さんの事はとりあえず、『保留』にしておくよ」

 

「保留?」

 

「うん、まずは私の目的『先生を見つける』事に専念する。先生と会って、私の疑問が解決したら……考える」

 

時刻は、雲川の話を聞いていた内に過ぎていて、窓からは明るい夕焼けが病室を同色に染めていた。

 

そのせいで、今の雲川の頬が赤くなっている様に見え、僕に顔を近づけ上目遣いで僕を見る彼女はまるで、初めからわかっていた事だが……

 

「それじゃ……ダメかな?」

 

最高に可愛く見えた気がした。

 

 

 

 




いかがでしたか?

今回は鞠亜編の補足的な話を書きたくて書きました。

設定として、この時の雲川鞠亜はまだ『先生』の事を引きずっていると考えて下さい。

あの時の雲川鞠亜はこんなことを考えていたんだぁ、ぐらいに思っていただければ幸いです。




あと、報告なのですが、次回からの話は修正箇所が見付かったのでまた少し時間を貰いたいと思います。

予定では来週位には再開するので、その時まで待っていて下さい。





そう言えば最近、このサイトで読者の皆様からオリジナルキャラの募集を行っている作者様をよく見ます。

そこで私も皆様にオリジナルキャラの募集をしたいと思います。

け、決してネタに困っているわけじゃないですからね!!

一応これでも新キャラの案はあるんだかね!!

オリジナルキャラの募集にあたり、失礼ながら注意点をいくつか。

・オリジナルキャラの立ち位置はあくまで『小野町仁の敵』。
・敵なので小野町仁との戦闘を行う。
・若干の修正、変更を加えてもよいものとする。
・できればオリジナルキャラの持っている『正義の定義』を附属する。
・オリジナルキャラの募集なので細かい物語の設定は申し訳ないが受け付けない。

まぁこんな感じですが、簡単な話、好きに書いて下さい。

また、受けとるだけでは申し訳ないので、他に小説を書かれている方、これから書こうと思っている方がいれば、この作品のオリジナルキャラ達を貸し出したいと思います。

貸し出しに対しても注意点を

・貸し出すキャラクターはこの作品のオリジナルキャラ(小野町仁、齋藤誠、長谷部差鉄等)である。
・使用する際はあらかじめ、『使います』と感想、メッセージ等で報告して貰いたい。
・使用するキャラクターはこの作品とは別世界のキャラクターであって欲しい。


以上です。貸し出す理由としては私以外の人が考えた彼等を見たいと思ったからです。

こちらも報告だけして貰えればあとは好きに書いて貰って結構です。


では今日はこれくらいに!

また次回!




この作品は皆様と共に作り上げたい。こんなに頑張ってるのに何で俺にはヒロインがいないんじゃー制作委員会。
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