こんなに頑張っているのになんで俺にはヒロインがいないんじゃー 作:夜遊
「しかし、あれだな、吹寄って頭いいんだな」
「何を言ってるの、日頃から予習、復習をしっかりやってたらこんなの普通よ」
放課後、私は図書室で小野町仁と勉強を一緒にしていた。
今は帰宅するために、薄暗くなった廊下を二人で歩いている。
そして、会話に困ったのか彼が私を誉め始めた。
「顔は綺麗だし」
「おだてても何も無いわよ」
互いに冗談とわかった上での会話。
「真面目だし」
「それはありがとう」
常にまともな行動を心がけている身としては、それほどの誉め言葉は無い。
「え~と……髪は綺麗だし」
「ネタが無くなったのね」
美容師みたいな事を言い出した。
本当にネタが無くなったのか、少し考え込む小野町仁。
そして、閃いたかのように言った。
「あ!!可愛いオデコ!!」
「それは宣戦布告と受け取っていいわ
ね?」
拳を握り締める私。
「待って!今のは無し!!」
小野町仁は両手を振り、また考え込む。
何だろう?
今日はコイツとよく一緒に居る事が多かった。
別に普段全く交流が無いわけではない、しかし、こうして一緒に歩いて話をする事ははじめてだ。
それが楽しい。
胸の奥がホカホカと暖まる様だ。
コイツとクラスメイトでよかった。
友達でよかった。
「え~と……あ!やっぱりデカイ胸!!」
「やっぱりって何よ!!」
やはり、コイツは色々残念な男だ。
「まったく!!あの馬鹿が!」
私はセクハラをした小野町仁を殴り倒し、一人で下駄箱にいた。
そして、靴箱を開けた。
開けてしまった。
「なにこれ?」
靴箱の中には私の靴の他に手紙らしき物が入っている。
(ま、ま、ま、まさか、ら、ら、ら、ラブレター?!)
私も女だ。
まだ、恋をしたことは無いが、年相応の興味がある。
私は、喜びからか、驚きからかわからないが震える手で手紙を持ち、中身を見た。
見てしまった。
「………なに……これ?」
それは疑うことなくラブレターだった。
しかし、
『イツモミテイルヨ』
中には写真が、入っている。
「……っ!?」
写真を見たとき全身が震えた。
写真には私が写っている。
しかし、私以外の人間の顔が赤々と塗り潰し消されていた。
これが、事件の始まり。
そして、私の中で小野町仁と言う存在が変わった出来事の切欠だ。
結果的に話すと、小野町仁は私をストーカーから救ってくれた。
その事は感謝している。
彼はボロボロになりながら、戦い、勝利し、私を助けてくれた。
しかし、それは本当に結果的な話だ。
あの事件が終わり、私の中で1つの疑問が芽生えてしまう。
彼はボロボロの体を動かし、犯人に最後の一撃を放った際の言葉が感謝しかない筈の心に一本の楔を打ち込んでいた。
『一回抱かせろぉぉぉぉぉぉ!!!!!』
彼はそう叫んでいた。
抱かせろ、とはどういう事なのだろう?
抱く
私は年相応な高校生の女だ。
その意味がわからないとは言わない。
つまり
性行為だ。
あの場所で、あのタイミングで、そんな事を要求する精神を疑いたくなるが、問題はそこではない。
彼は
小野町仁は
何の為に戦ったのだろうか?
私の為?
それなら、この上ない喜びだ。
だが、先の言葉がそれを受け付けない。
あれでは
あれではまるで
まるで
私の体目当てだったのでは無いかと疑ってしまう。
考えてみたら小野町仁は前から私にセクハラをしてきた前科がある。
なら
私を助けた訳は、
あの事件に便乗して、見返りに私の体を?
嫌だ。
そんな事を考えてしまった私が嫌だ。
しかし、彼はそんな人間ではない。と否定出来ない。
結局、彼は私をストーカーしたあの男と同じタイプの人間ではないかと思ってしまう。
けど、信じたかった。
私の恩人がそんな薄汚れた考えを持つはずがないと、否定したい。
否定して欲しい。
そんな考えで、私は彼に聞いたのだ。
「貴様は何故私を助けたのだ?」
と。
そして、少しの沈黙の後、彼はこう答えた。
「イヤーー、実はこの機会にお前と親密な関係になりたくってさぁ」
その言葉を聞き、私は、何も考えられなくなってしまった。
私は彼になんと言って欲しかったのだろうか?
お前の為だよ、と言って欲しかったのだろうか?
しかし、
現実は違った。
彼は結局、彼自身の為に私を救ったのだ。
胸が苦しい。
嫌だ。
そんな事を言って欲しくなかった。
私の沈黙により、小野町仁は不思議そうな顔をしている。
それが当たり前だ。
彼は結局、他の人と変わり無い人間だ。
こっちが勝手に理想を作り上げ、勝手に幻滅しただけだ。
そんな我が儘に付き合わせてしまったんだ。
「ふ、吹寄?!」
小野町仁の言葉でようやく私は、自分がどれほど沈黙していたのか気が付いた。
何か言わないと。
「あ……はは…えーと…」
言葉が続かない。
次第に私の目には涙が溜まり始めた。
「……は?」
怪訝そうに眉を潜める小野町仁。
当たり前だ。
変な質問をされて、答えたら、相手が泣き出しそうになったのだから。
「ご、ごめんなさい!!」
たまらずに、私は病室を逃げるように飛び出してしまう。
後ろから呼び止める声が聞こえたが、今の私にはそれに応じるほどの余裕がなかった。
私はそのまま病院の廊下走り―――、
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「あらあら?心の隙間が大きいわね?これなら簡単に入り込めそう☆」
まぁ、今回の章は次回で終わらせる予定です。
今回の問題は小野町仁は本当に自分の為だけに吹寄を救っており、彼には嘘をつく理由は何もない所ですかな?
今後の小野町仁の行動を楽しみにしていて下さい。
最後に出てきた人は皆様が知っているあの人です。
では!