こんなに頑張っているのになんで俺にはヒロインがいないんじゃー 作:夜遊
始めに話しておこう、この物語は罪の話だ。
2人の少年達がそれぞれの罪に向き合う物語だ。
1人は愛する女性を傷付けた罪。
1人はある罪を解決する義務がある罪。
2人の少年達の罪は大勢の人を巻き込む事になる。
これはそんな物語。
出会いは突然やってくる。
よく聞く言葉だ。
そして僕はこうも思うのだ。
再会も突然やってくる。と。
僕は今、とある人物と再会していた。
「貴様……!!」
それが少なくとも僕にとってプラスになるとは思えない再会だが。
僕は現在、とあるストーカーと再会をはたしていた。
そのストーカーの名前は、齋藤誠だ。
(なんだ!?何が起きているんだ!?)
この数分で訳がわからない事がどんどん起きて、正直僕の頭は考える事を放棄したがっていた。
しかし、弱気な考えをしていても状況が変わる訳がないので取り合えず最優先の問題から解決することにした。
つまり
齋藤誠の迎撃だ。
僕は吹寄(を操る何者か)を脅す為に残しておいた右手の中指にあるBBを窓に立つ齋藤誠に向け、放つ。
会話は無い。
むしろ今の齋藤誠に言葉で会話する事は出来ないと理解していた。
放たれたBBは真っ直ぐに齋藤誠に向かい進行していた。
しかし、
BBは途中で何かに阻まれた。
「……はぁ!?」
よく見ると齋藤誠の周囲に何かがある。
大きさはビー玉程で半透明だ。
それが齋藤誠の周囲に無数に存在していた。
そしてその一つにBBが阻まれているのだ。
そして僕は思い出す。
齋藤誠の能力を。
(空間加速…!?)
そうだ!!
以前、この男は周囲の空気を集める能力者だった。
しかし、その時は手のひらにのみ空気を集めるだけだった筈。
こんな無数に、しかも範囲を拡大して能力は展開できていなかった筈だ!!
僕がそんなことを思っていたのが間違いだった。
「『W.A.L.2』!」
齋藤誠はそんな僕のスキを突いて次の攻撃を繰り出してきたのだ。
彼が行ったのは右手を振るう事だけだった。
それだけの動作で、齋藤誠の周囲に無数に存在していた空気の塊はまるで弾丸の様なスピードで僕に向かって来た。
「ちょ!?」
僕はとっさに病室を飛び出し、空気弾の嵐から逃れた。
ズガガガガ!!
空気弾の嵐は壁に当たり小規模だが弾け飛ぶ!!
(ぎゃぁあぁ!!なんだ!?何です!?何ですか!?)
どうして齋藤誠はあんなことができる?!
以前のヤツは人工的に鎌鼬を作る、それだけの能力だった。
しかし、現在進行形で齋藤誠の能力は基礎は変わらないがその攻撃手段は大きく変わっている!
(吹寄は!?)
空気弾の嵐は尚も続いている!
病室にいる吹寄はどうなった!?
まさか、あの攻撃に巻き込まれたんじゃ!?
「へぇ~ふぅーん……精神的に不安定でもこの体は傷付けないように調整はできるんだ」
不意に空気弾の嵐が止んだ。
理由は簡単だ。
吹寄(を操る何者か)の場違いな調子の軽い言葉があったからだ。
僕はドアから顔を覗かせ、室内の様子を伺う。
齋藤誠の攻撃により病室は無茶苦茶な惨状だったが、吹寄の回りは何もなかったかのように変わっていなかった。
齋藤誠は吹寄(を操る何者か)を睨み付けている。
「……小野町仁は確かに憎む相手だけど、それとは別に貴様もその対象なのはわかっているのか?」
「別にいいじゃない?なんなら助けてくれたお礼に抱き締めてあげましょうか?」
明らかに挑発的な言葉。
僕だけではなく、齋藤誠にも向けられた敵意。
その敵意を受け齋藤誠は、
「?!本当か!?よっしゃあぁぁぁぁぁ!!………あ」
「おい」
齋藤誠は全身で喜びを現すかのように全力でガッツポーズをした。
先程までのシリアスな空気が崩れた瞬間だった。
空気が凍り付いた病室で齋藤誠はすぐに己の失態に気が付き、あわてて取り繕う。
「べ、別に、き、貴様が操っている、か、彼女に抱き締められても、う、嬉しくなんか、な、ないんだからな!!」
「嘘つけ!!ぶれまくっているじゃないか!!」
僕は始めてこんなにキョドっている人間を見た。
「黙れ!!わかっているのか!?あの制理の口から『抱き締めてあげましょうか?』なんて言葉が出てきたんだぞ!?人間なら例えそれが嘘でも、喜ぶだろ!!」
き、気持ち悪い!
吹寄(を操る何者か)もこんな反応に無茶苦茶引いているじゃねぇか!
「状況を考えろ!!馬鹿!!」
「馬鹿とはなんだ!?馬鹿とは!?そもそも貴様が制理を脅していなかったらこんなことにはならなかったんだぞ!!」
「殺されそうになってたんだぞ!?」
「いいじゃないか!!あの制理に殺されるなら本望だろ!!」
「んなわけねぇだろ!?」
き、気持ち悪い!!
こいつこんなに気持ち悪い人間だったのか!?
「ねぇ?」
「大体何でお前がここに居るんだよ!?捕まっていた筈だろ!?」
「うるさい!!貴様に話す義理はない!!」
「ねぇてば」
「それくらい話せよ!!こっちは訳がわからない事がどんどん起きて、混乱しているんだから!!」
「黙れ!!下手人!!」
「下手人はそっち!!僕は被害者!!」
「……あ、あのー」
「「うるさい!!」」
「ひっ!!……ごめんなさい」
なぜだろう、齋藤誠と話すとどんどんこいつを嫌いになっていく。
「……じゃないわよぉ!!」
そして、なぜだろう?吹寄(を操る何者か)もイラついているのは?
吹寄(を操る何者か)はようやく自分のペースに持ち込めた事に喜びながら、話を始めた。
吹寄(を操る何者か)は吹寄の身体を操り、左手を腰に当て、右手を目元に持っていき、横にピースをして、舌を口端からペロリと出した。
「これからゲームをはじめまーす☆」
一瞬だが、吹寄の眼に星形の光が灯された気がした。
「……は?」
「ぐはっ!?」
そしてそのポーズに興奮したのか、隣にいた齋藤誠は盛大に鼻血を噴出したのだった。
斎藤誠のキャラは本来のこんな感じです。