こんなに頑張っているのになんで俺にはヒロインがいないんじゃー   作:夜遊

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今回は歩夢視点の話になります。



御坂妹編、考えて、考えずに、彼は行動した

宇宙エレベーター建設地点。

 

完成を間近に控えたそこの下腹部に小野町仁のクローン、歩夢はいた。

 

下腹部と言っても最上階が宇宙であるエレベーターであるため周りのどのビルよりも高い位置にいるのだが。

 

「…………」

 

歩夢は窓から夜景を眺めながらを何かを考えていた。

 

しかし、そんな事をお構いなしに彼に近寄る女性が一人。

 

「また考え事ですか?とミサカ××××号は貴方に問いかけます」

 

彼女のナンバーは××××号、とある事情で歩夢の補助を任された為に彼女の同個体の本来の製造目的であるはずの事柄から、強引に引き離されたシスターズである。その為に本来なら付けられる筈のナンバリングが無く『××××』と言うナンバリングがつけられているのだ。

 

他の個体と違うのは何もその存在理由だけだは無い。

 

学園都市が誇る演算装置、『ツリーダイアグラム』の補助の為に開発された『試作2号機』。

 

そこから膨大な量の情報や電力を受信している歩夢だが、その膨大な量故にいかに歩夢といえどダイレクトに受信し続ければ脳が耐えられない。

 

その解決策としてミサカ××××号を変圧器として代用し、彼女を通して歩夢は様々な恩恵を受信しているのだ。

 

その為にミサカ××××号は他のシスターズと違い脳の発達が必要であり、外見年齢が高校生に近いものとなっていた。

 

「ん~、まぁな」

 

「『心理掌握』が離脱しました、とミサカ××××号は貴方に報告します」

 

「あの巨乳ちゃんの準備は?」

 

「そちらは問題ありません、事前に拘束後意識をシャットダウンしましたので、これから8時間は何が起きようとも目は覚めないとのことです、また、今回の実験開始の前1時間程の記憶は消したとも言っていました、とミサカ××××号は『心理掌握』に言われた事を簡易的に貴方に報告します」

 

「りょーかい……りょーかい」

 

「あと、伝言が1つ、とミサカ××××号は『心理掌握』から貴方に向けて言われた事を、付け加えます」

 

「?」

 

「こほん。『目的は果たしたし、何かつまらなくなったから私は帰るぞ☆』とミサカ××××号は今度は一時一句間違いなく、貴方に伝言します」

 

「はいはい」

 

「ジィー……」

 

「……何?」

 

報告を終えたミサカ××××号は歩夢をじっと見ている。

 

「何を考えているのですか?とミサカ××××号は今後の実験に支障がないか確認を取ります」

 

「別に別に、対した事じゃないよ」

 

「ほら話してみなさい、とミサカ××××号は貴方の言葉を無視して回答を求めます」

 

「いや……だから」

 

「ほら、とミサカ××××号は貴方に近づき再度問いかけます」

 

「逆に聞くけど、何でそんな聞きたがるの?」

 

「それはミサカは貴方の身の回りの世話から、能力補助まで様々なサポートを任されているからです、とミサカ××××号は巷で言うところのおねぇさんキャラ的な事を言います」

 

「あっそう」

 

「で?とミサカ××××号は……」

 

「わかったわかったから何度も聞くなよ『ねぇちゃん』」

 

「!!な、なんでしょう?今胸がキュンとしました!!これがいわゆるブラコン!?とミサカ××××号は驚愕します!!」

 

「いや……違うと思うぞ?」

 

「も、もう一度!もう一度だけ『おねぇたん』と言って下さい!とミサカ××××号は貴方にお願いします!!」

 

「そんな事は言っていない、……はぁ、あんたらの事を考えていたんだよ」

 

「ミサカ達の事ですか?とミサカ××××号は『おねぇたん』と言われなかった事に落ち込みながら、首を傾げます」

 

「俺はお前たちの開発システムを利用して作られたクローンだ、その目的は『生きる事』。じゃあお前達の目的はなんで『死ぬ事』なんだ?」

 

「それはミサカ達の本来の実験目的である『レベル6シフト計画』の事ですか?とミサカ××××号は聞き返します」

 

「うんうん、そもそも、お前達死ぬのが怖くないの?」

 

「別に、としか答えられません、とミサカ××××号は本心を口にします」

 

「……そんな考え方は俺は持っていねぇや」

 

「何が言いたいのです?とミサカ××××号はこの会話の真意について問います」

 

「いや、特に意味は無い、だけど」

「だけど?とミサカ××××号は答えを渋った貴方に回答をつづけるよう要求します」

 

「スゲーグイグイくるのな?」

 

「当たり前です、とミサカ××××号は速答します。ミサカの役割は貴方のサポートですから、とミサカ××××号は回答します」

 

「本当にそれだけ?」

 

「……そ、そうです、とミサカ××××号は……」

 

「お前って嘘が下手なんだな」

 

「ギクッ、とミサカ××××号は意外に鋭い指摘に驚きを隠せません」

 

「なんだよ?」

 

「そうですね……さみしいから、とミサカ××××号は一番答えに近い回答をします」

 

「さみしい?」

 

「先程研究機関から連絡があり、貴方の脳の成長を視るにもう『試作2号機』からの受信に耐えられるまで変化している事がわかった為、ミサカを本来の実験に戻すとの事です、とミサカ××××号は貴方に通達します」

 

「……てっことは、お前は死にに行くの?」

 

「はい、そうです、とミサカ××××号は回答します」

 

「……………」

 

歩夢は自分の胸に芽生えた『何か』がわからなかった。

 

しかし、彼はあくまで科学的に作られた人工な人間である為に、その事を深く考える程、道徳心は持ち合わせていない。

 

先程から考えている、シスターズが持つ、いや、持っていない『死』に対する恐怖心はなんなのか?そもそも『死』とはなんなのか?その問題も短い会話で答えを得られる筈もなかった。

 

しかし、

 

それでも、

 

歩夢は行動した。

 

考えて、考えずに、彼は行動する事しかできなかった。

 

「話は変わるけどさ、その『××××号』って言いにくく無い?」

 

「?いきなりなんですか?とミサカ××××号は急な話題の変化に驚きます」

 

「いやいや、正直あんたが構わなくてもさ、こっちは言いにくいわけよ」

 

「はぁ……とミサカ××××号は貴方の曖昧な言葉に曖昧な回答しかできません」

 

「でさでさ、アダ名つーの?名称つーの?そんなのを考えた訳よ」

 

「別に好きに付けて構いません、とミサカ××××号は答えます。で、なんですか?とミサカ××××号はちょっと興味を持ちます」

 

「バツコ」

 

「…………はい?」

 

「だから『バツコ』だって!!『××××号』『×が4つ』『×掛ける4』『×4』『×子』『バツコ』よくない?」

 

「えぇ……とミサカ××××号は………」

 

「ノンのん!!バ・ツ・コ!」

 

「………バツコは貴方の残念なネーミングセンスにがっくりとうなだれます」

 

「少なくてもさ俺の前だけでもいいから、今日からお前はバツコだ、はい!!決定」

 

「まぁ、しょうがありません、と……ば、バツコは仕方なく承諾します」

 

「でさ、バツコ、まだ実験には時間かかるよな?」

 

「そうですね……予測している時間には確かにまだ余裕がありますね、とバツコは答えます」

 

「そーか、そーか」

 

歩夢はバツコに近寄り、その顔に手で触れた。

 

「何しているのですか?とバツコは貴方に問いかけます」

 

バツコの問いに今までに無いぐらい簡単に、淡々に歩夢は答える。

 

「今からお前の顔を『焼くから』」

 

「はい?とバツコは――」

 

ミサカ××××号改めバツコの言葉が途切れた、理由は簡単だ。

 

バツコの顔に触れていた歩夢の手が高電圧を帯び、バツコの顔を焼き出したからだ。

 

叫びもなかった。

 

ただただバツコは気絶に近い感覚で意識を奪われ、顔面を焼かれたのだ。

 

歩夢は肉が焦げたような嫌な臭いに顔をしかめる。

 

「……まぁまぁ、こんな時はこう言うんだよな?いままでありがとう『ねぇちゃん』」

 

歩夢はバツコの身体を抱えると、歩き出した。

 

歩夢の中で何がどうなって、こんな所業をしたのか?

 

それは歩夢本人にもわからない。

 

彼はただ何となく「こうした方がいい」と思い、行動しただけだ。

 

それを直感だと言う人もいるだろうが、そんな推考なものではない。

 

あえて言うならば、ただの「気紛れ」に過ぎないのだ。

 

果たして歩夢の気紛れはバツコを「救った」のか「救わない」のか、その「結末」を語るのはまだ早い。

 

「結末」を語るのは決まって最後になるからだ。




またしてもオリジナルキャラ、御坂妹改めバツコの登場です。

彼女がどうなったのたのか、それはエンディングで。

歩夢は歩夢で小野町仁とは違う正義を持っているのかも知れないです
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