こんなに頑張っているのになんで俺にはヒロインがいないんじゃー   作:夜遊

50 / 78
ようやく一段落つきそうです。


御坂妹編、これは『正義』と『罰』の物語。

斎藤誠は身体中が優しく包まれる感覚を感じていた。

 

暖かい。

 

安心する。

 

そんな感覚を繰り返し繰り返し感じているのだ。

 

「約束守ってよ?」

 

後ろから声が聞こた。

 

大村義の声だ。

 

斎藤誠は大村義により能力を調整されていた。

 

その為かわからないが、現在2人は誰もいない室内で、詳しく説明すると小野町仁の部屋で上半身を裸に大村義が後ろから斎藤誠を抱きしめている。

 

因みにこの部屋の本来の住人である筈の小野町仁は部屋の鍵を奪われた後、別行動を強制され、この場にいない。

 

研究所から資料を強奪した3人は、ようやく、事の真相にたどり着いた。

 

斎藤誠の能力限界の向上の為の実験。

 

小野町仁のクローン。歩夢の進化の為の実験。

 

2つの狂気染みた実験が起こした今回の事件。

 

それはそろそろ終盤を迎えようとしていた。

 

いや

 

少なくとも斎藤誠と小野町仁は終わらせるつもりだった。

 

そして、吹寄制理奪還の準備をしているのである。

 

準備と言ってもそれほど大掛かりな事はない。

 

小野町仁にとっては身体1つだけあれば事足りるし、斎藤誠は大村義の調整を受ければいいだけなのだ。

 

だが、その調整が問題あった。

 

大村義は個人的に吹寄制理と面識があるわけでもなく、ぶっちゃけ彼女がどうなろうと知ったことではないのだ。

 

ではなぜ、現在斎藤誠に調整を施しているかと言えば、ある条件を提示された他ない。

 

大村義と言う女子はどちらかと言えば、自分に得する事のみ動く人間だ。

 

そもそもこの実験に協力する動機には斎藤誠の存在が大きい。

 

しかし、斎藤誠が大村義と出会ったのはこの実験が開始される時、つまりまだ1日も経過していないのだ。

 

それでも、大村義は斎藤誠の味方をした。

 

果たしてそれは彼女にとって何が『得』になるのか?

 

その答えを知っているのは当然ながら大村義本人しかわからない。

 

 

 

 

 

そして、斎藤誠はそんな目的がわからない大村義に現在、命を預けているのだ。

 

彼女の気持ち1つで斎藤誠の能力はその真価を発揮するかどうかが決まる。

 

これから起こるであろう戦闘でそれは命に関わる問題だった。

 

しかし、それでも一切の不安を感じずに斎藤誠は大村義に命を預けているのだ。

 

斎藤誠にとって最も大切な事は、今までに何度も話しているが、吹寄制理の平和だけである。

 

彼女が現在囚われの身になっているのならどんなことでもやってのける。

 

斎藤誠と言うストーカーはそんな人間だ。

 

しかし、その行動の動力源にあるのは、何も吹寄制理に対しての大きすぎる愛情だけではなかった。

 

大半は確かに愛情が占めているのだが、もう1つ彼が動く動機がある。

 

それは

 

(……『罪』だ)

 

(これは俺の『罪』『赤印』『後ろめたさ』『償い』それら全部だ)

 

彼は何も初めからこんな異常者ではなかった。

 

初めはただ人に恋するどこにでも居る少年だった。

 

好きな人がいるだけで心が踊った少年だった。

 

好きな人と話せるだけで幸福な気持ちになる少年だった。

 

しかし、

 

何かが狂ってしまった。

 

狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って

 

少年は好きな人を事もあろうに深く傷付けてしまった。

 

逮捕された時に斎藤誠の心にあったのは罪悪感と後悔のみだった。

 

斎藤誠は確かに異常者であり、異常なストーカーだ。

 

だが、それでも彼はまだまともな精神を持ち合わせていた。

 

それが彼にとって不幸な事だった。

 

もしも、そんな後悔やら何やらの思いが無ければ彼はまだ前を見ていられただろう。

 

だがしかし、

 

彼は完全な異常者になりきれていなかったのだ。

 

(彼女を……救う!!それが俺の『罪』そして『罰』!)

 

斎藤誠に吹寄制理が心開く事はこれから先あり得ないだろう。

 

斎藤誠は吹寄制理を傷付けた、そんな人間がいくら後悔しようと、心入れ替えようとも、もはや彼の想いが彼女に届くと言う幸せな未来などない。

 

少なくとも斎藤誠はそう考えている。

 

ではなぜ、吹寄制理を救うのか?

 

簡単だ。

 

例え異常者になっていても、

 

例え自分に振り向かなくとも、

 

斎藤誠は吹寄制理に幸せになって欲しいからだ。

 

例えその幸せの中に自分がいなくても、吹寄制理には笑っていて欲しいからだ。

 

例えその幸せに自分がいなくても、彼はただ彼女を救う為に戦う。

 

それが斎藤誠に残された愛情表現であり、罪滅ぼしなのだから。

 

だから、彼は自分が死ぬ事になっても構わなかった。

 

もしも、大村義が裏切り、彼の能力を調整しなくとも、この腐り切った実験から刺し違えても、相討ちになろうとも、最終的に自力で大切な人を救う覚悟があるのだから。

 

 

 

 

 

斎藤誠と大村義。

 

出会ってまだ1日も経過していない2人の関係はそんな事で繋がっているのだ。

 

 

 

 

 

そして、もう1人。

 

正義の味方側の悪役も、とある覚悟を決めて、戦場に向かっていた。

 

 

 

 

 

これは『正義』と『罪』の物語。

 

しかし、そこに『正義』は無く、あるのは自分勝手な悪達が自業自得に招いた『罪』のみが蠢き、打つかり合う。

 

そんな物語。

 

そして、その物語はもうすぐ終わりを迎えようとしている。

 

 




これでようやく一段落です。

彼等の胸の内には正義があり、罰がある。そんな彼等の中で女神が微笑むのは果たして誰なのか?

次回はもう少し待っていてください。

大体2来週頃には再開します!!

では!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告