こんなに頑張っているのになんで俺にはヒロインがいないんじゃー 作:夜遊
今回は戦闘回です。
時刻はすでに夜を迎え、学園都市はビルや街灯の明かりで、色鮮やかな夜景を生み出していた。
その中で一際輝きを出しているのは宇宙エレベーター『エンデュミオン』だ。
その入口の橋を歩く少年が1人。
少年は橋の中腹部でその足を止めた。
なぜならば、声が聞こえたからだ。
「ようよう、どうした?どうした?」
少年はエンデュミオン入口に目を向けると、夜景の淡い光を受け、こちらに向かい歩いて来る歩夢がいた。
「危ない危ない、ちょっとちょっと寄り道していただけなのに間に合わなくなるところだったぜ」
少年は何も返さない。
あるのは目の前にいる悪を睨む目だけだ。
「しっかししっかし、意外だな」
歩夢はそれを気にしない様子で続ける。
「てっきりルール無視して2人で来るかとばかり思っていたんだが、お前だけ?まぁ、あんなルール今さらだけどさぁ、それに実験は俺が誰であれ戦闘をすればいいらしいから別にいいんだけどさ、………ところで」
歩夢はここで始めて、自分を睨みつける目を真っ直ぐに見ながら聞いた。
「『オリジナル』はどこにいるんだ?」
その問いに、
少年は、
斎藤誠は答える。
いや
答えない。
彼は自分がここにいる目的のみを叫ぶ!!
「制理はどこだ!?クソ野郎!!」
こうして、クローンとストーカーの戦闘が始まった!!
「『W.A.L.1!』」
始めに動いたのは斎藤だった。
彼は技名を叫ぶと脳内のパーソナルリアリティに強制的にインプットされた能力、この場合は指先にある空間を加速し発砲する『W.A.L.1』を発動し放つ!
風の弾丸は真っ直ぐに歩夢に向かい弾丸の速さで進行していく!!
対して歩夢のとった行動は簡単だ。
確かに歩夢はクローンやら電力系の能力者やらその他諸々の大層な肩書きを持ってはいるが、そのスペックは普通の人間と大差なく、
特別頑丈ではないし、
特別痛みに耐えれる訳ではないし、
何が言いたいのかと言えば、
痛いものは痛いのだ。
よって歩夢は全力で、全身で風の弾丸を避けた。
歩夢の頬を風の弾丸が掠り、そのまま後ろに流れて行く。
だが、
しかし、
歩夢は腐っても、クローンで電力系の能力者で、その他諸々の大層な肩書きを持っている。
そんな彼がただ回避するだけで終わるわけがないのだ。
歩夢は倒れながれも、身体中に充電されている電力を右手を突き上げる事で放出する。
放出された電力は雷と同等の速さで、光速の速さで、真っ直ぐに、所々曲がりながらも、斎藤誠に向かい進行していた。
斎藤誠はストーカーで能力のレベルを持たない、異質で、異様で、イレギュラーな存在であるが、別にそんな肩書きが雷を回避する訳もなく、現に彼は歩夢の攻撃に気が付く事が出来ないでいた。
彼は雷を回避することは出来ない。
だけれども、
そもそも回避する必要事態がなかったのだ。
雷はなぜか斎藤誠を撃ち抜かずに、異常なほど急に曲がり、斎藤誠の隣の橋の手すりにぶつかったのだ。
「……はあ!?」
(なんだなんだ?雷があんなイレギュラーな動きをするなんて有り得ないまるで……)
歩夢の思考はそこで途切れた。
理由は斎藤誠の呟きがあったからだ。
「………忌々しい」
「?」
呟きはどんどん大きくなっていき、すでに叫びに変わったていた。
「あぁ忌々しい、忌々しい!!なんだ貴様!!驚く声!!驚く表情!!それによりにもよって!!まだ勝てると確信している心境!!何がなにまで!!なんであの男とそっくりなんだ!!」
「お、おい……?」
「死ね」
「はい!?」
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
ガクンッ!!
と歩夢の身体は突然きた重さに耐えきれずバランスを崩す!!
「がっ!?こ、これは?!」
「……『W.A.L.3』。そのまま潰れろ」
斎藤誠の能力、空間をガラス状に加速させ相手を潰す、W.A.L.3が歩夢の身体を容赦なく地面に押し潰す!!
「ち……くしょうがぁ!!」
歩夢も負けじと手から雷を放電する。
が!!
しかし!!
やはり、歩夢の雷は斎藤誠に届かず、あらぬ方向に霧散していくのだった!!
(なんなんだなんなんだなんなんだ!?)
その時である。
歩夢は目撃する。
街の明かりが妙な事に斎藤誠の回りだけぶれているのだ。
それはまるで、斎藤誠を中心に何が覆っているのかのように。
「く、空気の……玉!?」
斎藤誠の能力、回りに空気の弾丸を無数に作り出す、W.A.L.2だ。
W.A.L.2は本来は無数に作り出した空気の弾丸を一斉に放ち、W.A.L.1よりもより広範囲により連写的に攻撃を行う能力なのだが、それだけではない。
そもそも、空間加速とは風を一ヶ所に集め回転させながら、加速していく能力だ。
風とは詰まるところ空気。
詰まるところ、斎藤誠は無数に空気の層を作り出しているのだ。
こんな体験は無いだろうか?
走っている車の窓を開けると、窓から風が押し押せて来る経験は?
風は動く事により質量を持ち、更に回転させる事により更に質量を増加させる。
まさに目に見えない物体なのだ。
これが、小野町仁のBBや歩夢の雷を防いだ理由である。
そして、これが斎藤誠の能力の本性。
空間加速とは空気に質量を持たせる能力なのだ。
これにより空気の弾丸や空気の壁を作り出して相手を攻撃していた。
風を使う斎藤誠と雷を使う歩夢。
風と雷。
これまで相性が悪いモノはない。
逆もまたしかり
「な、舐めるなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
歩夢の身体から、雷が放電する!!
すると、彼を押さえ付けていたW.A.L.3が音もく、しかし確実に崩壊していった!!
「!?」
空気分解。
我々が吸っている空気は何も酸素だけで構成されている訳ではない。
二酸化炭素、車の排出ガスその他諸々……色々な物質で構成されているのだ。
そして、それらを分解できる代表的なものは『電気』である。
電気分解で分解してしまえば、いくら質量を持っている空気も、ただの酸素に変わるのだ。
歩夢が行ったのはそれに近い。
「はぁ……おいおいおいおい勝手な事言ってくれるじゃないの?やっぱあんた相当ぶっ飛んでるな」
「ふんっ!!貴様よりかはマシだ。クローン」
「まぁまぁ、ここにいるんだから大体の状況はわかっているわな」
「俺としては貴様の方が相当にヤバイと思うがな」
「いやいや、俺は簡単だよ、だって他にすること無いし、わからないんだから」
「わからない?」
「俺の製造目的は人類の進化だっけ?まぁまぁそこはいいんだよ。そんなのは知っちゃこっちゃないし、そもそも俺は人間じゃないわけだしな」
「だったら貴様の目的はなんだ!?なぜ制理を誘拐した!?」
「……生きたいからだよ」
「……なに?」
「俺は生きたい、勝手な理由で産まされたとしても!!生きていたい!!それが生き物の目的だろ!?こんな実験は興味はないが!!取りあえず実験していれば俺は生きている!!」
「……」
斎藤誠は歩夢の気持ちはわからなかった。
いや、そもそも普通に産まれた人間には歩夢の気持ちはわからないだろ。
これはクローン特有の『望み』なのだから。
学園都市第3位の遺伝子から産み出された妹達はそう言ったモノを初めから消されているが、歩夢はほぼ何も植え付けられていないし、消されていない。
完全無垢なクローン人間だ。
そんなクローンの考えなど誰が理解出来ようか?
「まぁまぁそんなわけだから、取りあえず実験に付き合ってくれや」
歩夢はただ単純に斎藤誠に向かい走り出した!
「っ!『W.A.L.2』!!」
斎藤誠は瞬時に風の玉の集合群を作り出し歩夢を迎え撃つ!!
しかし!!
「ダメダメ!!ダメだろ!!」
歩夢は再び身体から雷を放電し電気分解を行い、風の玉1つ1つを霧散していった!!
そして、
「クソッ!!『W.A.―――」
「させねぇよ!!」
風の玉の集合群と言う殻を強引に分解し剥き出しになった斎藤誠を、雷を放電し続ける右手で殴り付けた!!
斎藤誠の腹部に雷を放電する拳がぶつかった瞬間、彼の身体に文字どおり電流が流れ、
身体の内側から肉を焦がし、
斎藤誠の身体は本人の意思とは無関係に、
雷により痙攣した全身の筋肉の動きにより、
後ろに飛び退いた!!
歩夢は放電を止めると、ただ呟く。
「『オリジナル』風に言わせて貰うと、あれだあれ」
「俺にとって生きる事が正義なんだよ」
大体後5話位で終わらせるつもりです。
ではまた明日。