こんなに頑張っているのになんで俺にはヒロインがいないんじゃー 作:夜遊
「よう……『オリジナル』」
歩夢は突然現れた小野町仁の姿を睨み付けながらも、どこか、安堵の感情を抱いていた。
そう、これでなくてはいけない。
歩夢は『生きる』事によりその存在が確定されると信じている。
そして、絶対の強さを示さなければ生きていられないと考えていた。
もしも、自分のベースである小野町仁が臆病風に吹かれてこの場に現れなければ、そのクローンである歩夢もそうであると思われソレが揺らいでてしまう。
そしてこの実験とは違い、歩夢には別の目標が挙げられていた。
それは、『オリジナル』である小野町仁の撃破。
『オリジナル』が居なければ、自然と自分が唯一の『小野町仁』になれる、と考えていた。
だから、今の歩夢の状況は絶望的だった。
先の斎藤誠との戦闘で、歩夢の体内に残された電力は残り僅になってしまっていた。
(まずは充電だ)
歩夢の特性『充電』。
学園都市人工衛星、『ツリーダイヤグラム』。その補助2号機。
歩夢はそこから膨大な情報と電力をワイラレスで充電するのだ。
現在、小野町仁はこちらを気にしながらも斎藤誠と会話していた。
それはなぜか?
決まっている。
油断だ。
斎藤誠にはすでに、電力が少なくなっている事は伝えていた。
そこらか、歩夢が弱っていることは簡単に予測できるだろう。
そこから来る油断だ。
小野町仁と斎藤誠は具体的な充電の方法は知られていない。
それに、資料には歩夢の充電には第3者、ミサカ××××号改めバツコの補助が必要とされていたが、
現在、歩夢の脳はその補助が必要要らない程に成長していた。
彼等が最も注意しているのは、充電する際に呼ぶであろうバツコが来るかいなかだ。
そして、そのバツコが現れない所から、まだ歩夢は充電しない、出来ない、と予測していたのだろう。
そこが、油断だ。
歩夢は充電を開始する。
「アイツは今弱っている」
斎藤誠はそう言った。
確かに、資料には、なんだっけ?あぁそうそう妹達とか呼ばれる人間が必要だと記載されていたっけ?
その妹達とか呼ばれる人はまだ姿を見せて居ない。
ならば、奴が充電しようとするのはまだ先の筈だ。
だから、今はやるべき事をやる。
「貴様……今までどこに居て何をやっていたんだ?」
「宇宙エレベータの中で色々とね」
「!!せ、制理は!?」
「居なかった」
「……なに?」
「だから上の方には居なかったんだ」
「ならば……どこに?」
「多分……下の……地下とかじゃね?」
ここに居るのは間違いない。
だったら地下とかだ。
上に居ないのなら、下だろ。
「くそっ……地下でもアイツを何とかしなくてはならないのか」
「大丈夫じゃね?弱っているし」
「馬鹿か貴様、ヤツにはまだ充電と言う切り札があるんだ」
「だから大丈夫だって」
「………妙に根拠があるな?」
「当たり前だろだって―――」
その時である。
「な、何でだ!?」
驚き、困惑。
そんなモノが色々混ざったような声を出したのは、歩夢だった。
「何で……『充電出来ないんだ』!?」
「ぷっ!!」
おっといかん。
ついつい、吹き出してしまった。
「いやーまさかこんなにもうまくいくなんて、ついつい笑うしか無いな!」
小野町仁がなぜこんなにも笑っているのか、歩夢には理解できなかった。
ありえない、
今までこんな事はなかった。
なぜ、充電が出来ないのか?
先の斎藤誠との戦闘で充電機能が壊れたのか?
違う。
充電は言わば歩夢にとって命綱だ。それが壊れたのなら真っ先に気付く。
ではなんだ?
…………決まっている。
小野町仁だ。
この男が何かしたに違いない。
そう考えると、当たり前の疑問が出てくる。
そもそも小野町仁はなぜこのタイミングで、ここに居る?
吹寄制利を救う為?
小野町仁にとってそれは重要な事だ。
だが、違う。
小野町仁は総合的に見れば悪だ。
確かに助け出す事は重要だが、その動機はあくまでも、自分自身の為。
間違っても、ヒーローのような誰でも助ける事はしない、出来ない。
そう考えると、がらりと事柄が変わってくる。
人質を助ける事を優先するのなら、この場には現れない。そのまま吹寄制利の、捜索を続ける筈だ。
だが、違う、この男はこの場に居る。
それはなぜか?
決まっている。
確実な目的の為だ。
目的とは、吹寄制利を救う事。
それを達成する為に、例え吹寄制利を見付けたとしても、その場は見逃す筈だ。
ならば、奴がここに居るのは、その障害になる、歩夢自身を無力化する為。
無力化するには……。
「……まさか!?」
そこで歩夢は気付く。
小野町仁と共にこの場に現れた、大きな機材の存在。
それは、ボロボロで、最早原形を止めていないが、間違いない可能性。
「大変だったぜ?何せ道具なんて無いんだし、頑張って拳で殴り付けるしか手が無かったんだから」
ほらっ、と小野町仁が両手を見せる。
彼の両手は皮膚が裂け血が流れ出ていた。
「貴様!?試作機第2号を破壊したのか!?」
「あったりー!お前はコイツしか充電する術が無かったんだよな?妹達?ワイラレス?関係無いね!!面倒だから充電機その物を壊させたもらったんだよ!!」
そして、と小野町仁は言葉を繋げる。
繋げながら、歩夢に歩み寄る。
「お前は果たして動けるのか?無理だな!!BBを防げるか?無理だな!!だったら簡単だよな?僕はこうやってゆっくり近づいてお前の眉間にBBを1発撃ち込めばお前は死ぬんだよな?そうだよな!!」
すっ、と小野町仁が右手の人差し指を伸ばす、その先には当然ながら拳が裂けた事により出血した血液で形成された弾丸が1発。
「く……」
こんな結末は望んでいなかった。
「く……」
歩夢が望んだ結末は勝敗がどうあれ拳と拳がぶつかり合う『戦闘』だった
「卑怯だとか言うなよ?僕は完全に巻き込まれただけなんだから、付き合ってやっているだけでも、良しとしやがれこの野郎」
「くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
発砲音によく似た音を轟かせながら、小野町仁の指先からBBが発砲された。
それは真っ直ぐに、歩夢の眉間に向かい、皮膚を破り、脂肪を焦がし、頭蓋骨を破壊し、脳を破損させながら、歩夢の身体を後ろに倒れさせたのだった。
こうして、小野町仁のクローン。
歩夢は……死んだ。
クローンID『ayumu』ノ心配停止ヲ確認……
同時ニ脳器ノ破損ヲ確認……
第1計画『人工化ヶ物育成計画』ノ継続不可能……
第2計画『The・Walk』ノ継続可能……
第1計画ヲ破棄……
第2計画ヲ実行申請……
……………申請受理確認……
第2計画『The・Walk』発動……
コレニ伴ウ学園都市ノ被害予測……
The・walk活動中ノ学園都市ノ全テノ電力供給ノ停止……
コレニ伴ウ学園都市ノデメリット……
……………………………………………………………………………学園都市ノ崩壊………
「さぁ……実験の始まりだ」
ここまで、この小説を読んで頂いた読者様はわかっていると思いますが、小野町仁は悪である立ち居ちを嫌っていながらも、それを平然とやってのける卑怯者なんです。
それを踏まえて言わせて下さい。
小野町仁超卑怯(笑)!!
そして当然ながら、卑怯者に勝利などあり得ません。
次回、学園都市が崩壊します。
では!
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