こんなに頑張っているのになんで俺にはヒロインがいないんじゃー   作:夜遊

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長かったこの話も終わりです。

エピローグが一番長いってどうゆうことよ?


御坂妹編、エピローグ。それぞれのエピローグ

それぞれのエピローグ

 

さて、突然だが僕小野町仁は現在、非常に気まずい状況に陥っている。

 

「…………」

 

「…………」

 

あの後気を失った僕が次に目を覚ましたのはまたしても病室であった。

 

いつもと違うのは今回は個室ではなく二人部屋であり当然の事だが病室には僕の他にもう一人入院患者が居る訳だ。

 

問題はそのもう一人の患者である。

 

まぁ、考えてみたらコイツも全身がボロボロな状態だったみたいだから病院に入院していてもおかしく無いのだが、よりによって何故僕と同室にしたのかが酷く疑問だ。

 

「………何かの用か?小野町仁」

 

恐らく僕と同じ事を考えているであろう同室の入院患者、斎藤誠が酷く不機嫌に聞いてきた。

 

「別に」

 

「そうか」

 

「…………」

 

「…………」

 

はい、会話終了。

 

そもそも、コイツとはそれほど面識があるわけでは無いし、顔を合わせる状況では互いに互いの命を狙っていたから気まずいのだ。

 

そんな僕らに会話と言う高度なコミュニケーションが図れる訳が無いだろ?

 

よって現在、僕と斎藤誠が居る病室は酷く空気が重かった。

 

(ヤベー!!考えてみたらコイツ完全に僕を殺そうとしている節があるんじゃなかったか!?つーか!!加害者と被害者が同じ病室なんてあり得ないだろ!?あっちゃいけないだろ!?)

 

「………おい、小野町仁」

 

「な、なんだよ?」

 

「貴様に1つ確認しておきたい事がある」

 

突然の問い掛けに僕は面を食らった。

 

コイツが僕に質問?

 

しかし、当の本人はそもそも僕の回答がどうあれ質問を切り出したのだ。

 

「その……貴様と制理はどんな関係なんだ?」

 

「………はい?」

 

「付き合っていたりするのか?」

 

「……は?」

 

「別に、俺は制理が幸せならそれでもいい。だが、貴様は確実に制理を幸せにできるとは思えない、それは断言できる。貴様は人を幸せにできるとは思えないしな」

 

「おい、何で途中から罵倒に変わってんだ?」

 

「……俺は制理が好きだ」

 

「うん、ドン引きするくらい知っている」

 

「だが、俺は彼女を傷付けた、釈明の余地無くな」

 

「…………」

 

「謝っても彼女は許してくれないだろ、それでいい。だが、俺は彼女を守らなくてはならない、それがただ1つ残された罪滅ぼしだからだ、彼女が誰かと付き合って居るのならそれでいい。だが、その相手が彼女を幸せに出来ないと確信したら俺はソイツを殺すだろ」

 

とんでもない事を言い出しやがった。

 

コイツ、一周回って父親みたいな保護欲を出して居ないか?

 

「怖いこと言ってんじゃねぇよ、それに吹寄は誰とも付き合っていないぞ」

 

「そうか……なんだと?!付き合っていないだと!?」

 

「あ、あぁ。ほら吹寄ってそんなキャラじゃないだろ?むしろ『不純異性行為はダメだ』ってキャラじゃん」

 

「ふざけるな!!貴様!!あの制理が誰とも付き合っていないだと!?何をやっているんだ?!見る目無しか!?ああん!?」

 

「お前はどうしたいだよ?!」

 

「制理を幸せに出来る人間を探し彼女と付き合わせ、そしてそれを阻止したい!!」

 

「なんだよ!?その無茶苦茶な行動!?」

 

訳がわからない、コイツはどうしたいんだ?

 

「…………すまん、取り乱した」

 

「なぁ、その吹寄を幸せに出来る人間ってのはお前じゃダメなのか?」

 

もうめんどくさいから自分でその理想な彼氏になればいいのに。

 

「だから俺は彼女を傷付けた、謝罪しても許されない程にな」

 

「でも謝っていないんだろ?吹寄は何だかんだで許しちゃうと思うけどな、まぁ時間が掛かるとは思うけどな」

 

また今回の様な事を起こされてもたまらない。

 

そこで僕はある決心をした。

 

斎藤誠と吹寄を仲を取り持つ計画だ。

 

別に恋人にするわけじゃない、確かにコイツはどうしょうもないストーカーだ、だが、先にも言ったが吹寄は何だかんだでコイツを許すと思っている。

 

それには時間が掛かるだろうが、手始めにメールやら手紙やらで交流を持たせ、最終的には『恋人未満、友達未満の知り合い』程度の仲になれば両者納得するんじゃないかと思っている。

 

流石に、いきなり顔を合わせると言うギャンブルをするほど僕も馬鹿じゃない。

 

そうすればコイツに恩が売れるし、これまでのような敵意も少なくなるだろう。

 

そう思っていると、僕らの病室のドアが空き誰かが入って来た。

 

「小野町仁、お見舞に来たぞ」

 

瞬間、僕は病室の窓を開け飛び降りようとする斎藤誠を押さえつけなければならなかった。

 

その様子を、来訪者、吹寄制理は不思議そうに目撃したのだった。

 

 

 

 

 

『冥土帰しの日記』

 

『今日は大変な1日だった。

ここ最近入院と退院を繰り返している少年がまた問題を起こしたのだ。

今回は彼の友人が病室を無茶苦茶にし、何故か全身ボロボロな状態で倒れ混みその後2人とも病院から逃げ出してしまうと言う事態が発生したのだが、彼は以前にも似たような逃走を行った前科があるから前回と同じ様にここに運ばれて来るのだろうと予測していた。

それから一時的に(正確には34分間なのだが)学園都市全域で電力が止まってしまい、病院内はパニック状態に陥って僕も走り回っていた時である。

彼女を発見した。

彼女は顔面にまるで雷を受けたような酷い火傷を負い、気を失っい玄関に倒れて居たところを発見した。

すぐに応急処置を行った、顔面は焼けただれて、最早元の顔に戻すのは不可能な状態で、そもそも元の顔を知らないので、彼女が意識を取り戻したら別人の顔に整形手術する必要があると言わなくてはならない。

深夜、脱走した少年二人が再びこの病院に搬送された。驚いたのは入院中だった少年の傷跡がすっかりと完治していた事だ。一体彼らは外で何をしていたのだろう?

ともかく今日は大変な1日だった。

 

追伸、顔面に酷い火傷を負い倒れていた少女が目を覚ました。しかし、僕の説明を受けた瞬間、彼女はなにかを理解したかのように泣き出し、自分には記憶が無いと嘘を言った。僕はその嘘を聞くのは何だがいけない事だと思い、あえて追及しなかった。彼女は自分の名前だけを明かしてくれた。

彼女の名前は「バツコ」。

これは僕の予測に過ぎないのだが、バツコに火傷を負わせた誰かは彼女を新しい顔に変え、新しい生活を送らせる為に顔を焼いたのではないか、バツコを助ける為にあえて非道な行いをしたのではないかと予測した。

しかし、当の本人が語らない以上、僕に追及する資格はない。

僕はこのバツコがまともな生活を送れる様にこれからサポートするつもりだ』

 

 

 

 

 

窓の無いビル。

 

その内部にその人間は居た。

 

その人間を『人間』と表現するのは少し難しいかもしれない。

 

それは外の人々と違い、円形でガラス状の装置に並々と入った液体に体の上下を反転させ漬かっているからだ。

 

その人間は液体の中で漂いながらも、学園都市全ての情報を取得し、操作していた。

 

人間、アレイスター・クロウリー。

 

学園都市総括理事会会長。

 

科学の発展した街の頂点に君臨する人間。

 

そんなアレイスター・クロウリーは現在、液体とガラス越しからある映像を見ていた。

 

それは報告書だ。

 

今回の実験における2つの報告書。

 

それを眺めながら、アレイスター・クロウリーは何気なく、呟いた。

 

「そろそろ来ると思っていたよ」

 

アレイスター・クロウリーの視線は部屋の奥、暗がりに向けられている。

 

すると突然暗闇に変化が起きた。

 

暗闇は霞の様に歪み、その霞は人の形に凝縮し最後には一人の男がそこに現れたのだ。

 

男は長身で、黒いシャツに少しくたびれた黒いスーツ。

 

その全身からは、言い得ない雰囲気を醸し出し、あえて言うのならば『奇妙』と明記しておこう。

 

「こうして会うのは始めてだな」

 

「しかし互いに存在は確認していた」

 

アレイスター・クロウリーは言葉を区切り、男の姿が完全に目視出来るまでまった。

 

「そうだろ?夜遊我世」

 

男は、夜遊我世は頷き、言葉を発した。

 

「なら、我輩がここに訪れた理由もわかっている筈だ」

 

その言葉は全身を凍らせる様に冷たく、同時に心臓を業火で燃やすように熱かった。

 

「もちろん」

 

常人なら言い得ない不安を欲する言葉もアレイスター・クロウリーには気にしない。

 

「小野町仁……正確には『化け物』の話だろう?」

 

「そうだ、今回の実験の発案者は貴様だろ?」

 

夜遊我世の問いにアレイスター・クロウリーは返す。

 

「実験ではないよ、言うならばこれは選考だね」

 

「……選考?」

 

「私のプランは知っているだろ?そのプランを行うに辺り適応する人材を選らんでいるのだよ」

 

「……『幻想殺し』の事か?」

 

「そう、全てを打ち消す『幻想殺し』と全てを破壊する『化け物』。打ち消す力と破壊する力どちらもプランには必要不可欠だ、しかし、両方は要らない」

 

「納得しかねるな、そもそも少年は」

 

「偶発的に産まれた力」

 

夜遊我世の言葉を遮る様にアレイスター・クロウリーは言う。

 

「確かに初期の段階では『幻想殺し』をそのプランに加える事になっていた、しかし、酷似した『化け物』が現れプランの変更する可能性が出てきたのだよ」

 

アレイスター・クロウリーは科学者だ。

 

科学者は常に実験の最高値を求める。

 

アレイスター・クロウリーの言うプランの結果が更に良くなる可能性があるのならそれを試さなくてはならないのだ。

 

「その為に我輩に依頼したのだな?」

 

「君は実にいい働きをしてくれた『化け物の成長を促す為の相手』を見繕ってくれたのだから」

 

「斎藤誠に能力を与え、長谷部差鉄に製作書を売り、そして今回は本来ならあり得ない歩夢に力を振り込んだ」

 

「……」

 

「結果、『化け物』の性能は比較的に向上し擬似的に『奇跡と贄』が発現した、なおかつ所有者の精神向上に繋がったのも喜ばしい事態だ」

 

「……」

 

「よって私のプランは変更無く『幻想殺し』を使う事にする」

 

「……ほう」

 

「確かに『化け物』をプランに加える事は簡単だろ、しかし、彼の根本に問題がある」

 

「根本?」

 

「『正義の定義』だよ、小野町仁にはそれが些か欠如していると見ている。人を助けようとしない彼をコントロールするにはその点が非常に困難だ」

 

「確かにそうだな」

 

「だが、使い道はある」

 

「何?」

 

「君の本来の仕事を潰す為には『幻想殺し』よりも『化け物』の方が適任だろ?」

 

アレイスター・クロウリーの言葉に夜遊我世は僅かに眉を潜める。

 

「別に驚く事ではない、そもそもの話……君はそうなることを望んでいるのではないか?」

 

「何が言いたい?」

 

「私も『ヤツ』の存在は知っているさ」

 

「我輩は仕事をしただけだ、クライアントが望む物を提供する事が我輩の仕事」

 

「結果、私のプランを、破壊する事になってもかい?」

 

「その為に『化け物』を作ったのだろ?」

 

「『幻想殺し』は未だに消すだけの力、『ヤツ』に対抗出来るのは破壊する力を持つ『化け物』だけだからね」

 

「『ヤツ』は必ず『彼女』を無き者にしようとする、それを食い止める可能性があるのは『化け物』しか居ない」

 

人間と人間は互いに相手を見ながら、ここに居ない化け物の話をする。

 

「さて……これから忙しくなる。我輩は失礼するぞ」

 

夜遊我世は振り向き歩き出す。

 

アレイスター・クロウリーはそんな彼に問い掛けるのだ。

 

「これからどうしたらいいかな?」

 

学園都市の全ての表と裏を支配する人間の問い掛けに、夜遊我世は歩みを止めて最後にアレイスター・クロウリーを見て呟く。

 

「さぁ何せ我が輩は

『ここには居ない』

のだから」

 

瞬間、夜遊我世の姿が無くなった。

 

霧のように消えたとか、影が薄くなるとか、そんな前置きもなく、ただ突然と、最初からそこに誰も居なかったかのように、消えたのだ。

 

再び一人になったアレイスター・クロウリーは呟くのだった。

 

「さて……本当にどうしたらいいかな?『化け物』もクローン……いや、『ザ・ウォーカー』も……そして『夜遊一族』も」

 

「………まずは『化け物』を学園都市から追い出さなくてはいけないな」

 

 

 

 

 

気まずい!!

 

なんだこれ?!

 

なにこれ?!

 

なんなんだよ!?

 

吹寄の登場により、僕らの男子2人は完全に正気を失っていた!!

 

と言うよりも、斎藤誠がヤバかった!!

 

コイツ吹寄を見るや窓から飛び出ようとしやがるし、今も何故か布団を頭から被っていやがる。

 

「おい、なんのつもりだ!?出てこい!!」

 

「ふざけるな!!貴様!!あ、あ、あ、あ、あの制理が居るんだぞ!!俺は居ないもので扱え!!」

 

「テメェ!!こんな状況でなにしていいのかわからねぇよ!!」

 

「おい、貴様ら……」

 

「吹寄!取り合えず今日は帰れ!!」

 

「ふざけるな!!なんだ制理に対してその言葉は!!」

 

「だったらテメェは布団から出てきやがれ!!」

 

「おい」

 

「ふ、ふざけるな!!どうやって顔を合わせればいいかわからん!!」

 

「ピュアか!?ここに来て変なキャラ建て止めろ!!気持ち悪い!」

 

「お」

 

「止めろ!!制理の前で俺を侮辱するな!!何だが恥ずかしいだろ!!」

 

「知るか!!」

 

「いい加減にしろ!!この馬鹿ども!!」

 

「吹寄!?何で僕に拳を振り上げて……ゴフッ!?」

 

吹寄の拳が僕の頬に食い込み、そのまま僕は壁に叩き付けられた。

 

何で?

 

「貴様もだ!!いつまで布団に隠れている!!出てこい!!」

 

「せ、制理!!いや吹寄さん!!や、やめてくれ!!………ありがとうございます!!」

 

吹寄は斎藤誠を布団から出し、そして斎藤誠も殴り付けた。

 

殴られた事に対して感謝した斎藤誠が気持ち悪かったが気にしない事にする。

 

「貴様ら、正座しろ!!」

 

そして、僕らは仲良く床に正座する羽目になった。

 

……だから何で僕まで?

 

 

 

 

 

部屋をノックする音で俺は目が覚めた。

 

いつの間にか机で寝てしまったらしい。

 

「……入れ」

 

「し、失礼します、総理」

 

ドアを開け入って来たのは部下の……名前が思い出せない、名前を何度も聞くのは相手に失礼な事だ。

 

だから俺はこの名前を忘れてしまった部下の名前を聞く事はしない。

 

それが彼のためだからな。

 

「どうした?」

 

俺は眠気を覚ます為に目を擦りながら聞いた。

 

「く、件の少女が見つかりました!!貴方の娘さんです!!」

 

「………娘?……あぁ。本当か?」

 

一瞬、娘と言われてなんの事か疑問に思ったが、そう言えばそんな嘘を付いた事を思いだし、少し慌てた。

 

「えぇ!!え、衛生カメラや監視カメラの映像から特徴が酷似した人物が見つかりました!!ば、場所は――」

 

「学園都市周辺だろ?」

 

「え!?そ、そうです!!」

 

この時の俺の感情を言い表せるのは難しい。

 

長かった、本当に永い年月だった。

 

そして、俺はこの時を待っていたのだ。

 

「この件を知っているのは君だけだね?」

 

「え、えぇ、し、調べるチームにも詳細は知らせていません!!」

 

「そうか……よくやった」

 

俺は両手で部下の肩を叩き、労を労う。

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

「ありがとう……さようならだ」

 

そして

 

「え?総理?なにを―――――」

 

これは『平和の為』に『必要』な事だ。

 

『平和の為』、引いては『正義の為』、よってこれは『悪行ではない』。

 

すべては『正義の為』、この『世界の平和の為』。

 

俺は『正義』だ。

 

その為にこの残虐な行いを『後悔してはならない』。

 

それは部下の男の犠牲を『侮辱』する事になるからだ。

 

だからこの計画をすることに『後悔』はない。

 

彼女に手を掛ける事は『必要な事』だ。

 

「やっと会えるな……『禁書目録』」

 

全ては『正義』の為、犠牲は『平和』の為に。

 

 

 

 

 

「あの~僕は外に行きましょうか?」

 

「貴様はここに居ろ」

 

「そうだ、ここに居ろ!!いや、居てくれ!!」

 

嫌だよ……だってこの二人と同じ空間にいると胃に穴が空きそうなんだもん。

 

最近、病院の存在意義を疑いたくなってきた。

 

だってここに居るといつも怪我しているぞ。

 

「………斎藤誠だったな」

 

「……そうです」

 

「ふ、吹寄……その……」

 

「貴様は黙っていろ」

 

「……はい」

 

なにこの拷問?

 

居ろだとか、黙っていろだとか、この場面に僕は本当に必要なのか?

 

とにかく、この場には重々しい空気があった。

 

それを破ったのは、吹寄だ。

 

「何だか昨日、また、私は事件に巻き込まれていたらしな?」

 

疑問系なのは、吹寄には昨日の出来事に関しての記憶が無いらしい。

 

どうやら昨日僕を襲った吹寄を操る何者かが彼女の記憶を消したらしいのだ。

 

「私はまた助けられたらしい、小野町仁と……そして貴様に」

 

「………」

 

斎藤誠は黙っている。

 

「その事については礼を言わせてくれ、ありがとう」

 

「せ、……吹寄さん、俺は……」

 

「だが私は貴様に誘拐されたらしいな」

 

斎藤誠の言葉を吹寄が遮る。

 

………ん?『らしいな』?

 

「生憎、その時の記憶も抜けてしまっていてな……だから『もういい』」

 

「え?」

 

「……吹寄?」

 

「『あの時』の事は『忘れた』だから『もういい』」

 

その言葉の意味を理解するのに少し時間が掛かった。

 

その言葉の重みを受け入れる事は僕にはできなかった。

 

その言葉の真意は理解できた。

 

「…………」

 

斎藤誠は僕以上にそれらを考えている。

 

『その言葉』はどれ程の価値があるのか本人しかわからない、もしかしたら、望んでいないのかも知れない。

 

そして、斎藤誠は

 

「っ!!」

 

突然飛び上がり、窓を開け飛び降りた!!

 

「?!」

 

僕達は驚き、外を見たら叫び声を挙げながら走り去る斎藤誠の姿を見ることが出来た。

 

何で無事なんだよ?

 

ここ5階だぞ?

 

「変な奴だな」

 

「お前には言われたくないだろうな」

 

「うるさい」

 

「『忘れた』?ねぇーだろ」

 

「止めろ」

 

「まぁ……吹寄はそうだよな『何だかんだで許す』奴だよお前は」

 

「……小野町」

 

「何だよ?」

 

「殴る」

 

「はぃ!?何で?!」

 

「ムカついた、目を閉じろ」

 

「無茶苦茶じゃないですか!?」

 

「早くしろ!!」

 

こうして僕は何故かまた吹寄に殴られる事になってしまった。

 

酷くね?

 

なにこれ?

 

しかし、痛みを堪える為に目を瞑ったがいつまで経っても痛みがこない。

 

代わりに

 

僕の身体は何か柔らかい物体に包まれた。

 

「???!!!ふ、吹寄!?」

 

吹寄が僕に抱き付いている!?

 

何で?!

 

「……お願いだ……少しだけ……」

 

吹寄を引き離すのは簡単だ。

 

しかし、僕はそれをしなかった。

 

別に彼女の豊満な何かを楽しむ訳じゃないぞ!!

 

そ、それとは別に、

 

吹寄は震えていた。

 

彼女にとって斎藤誠を許す事は何を意味していたのだろう。

 

過去に自分を傷付けた人間を許す事はどれ程勇気がいることなのだろう。

 

僕ならば許さない。

 

一生許さない。

 

しかし、吹寄は許した。

 

それは何故か?

 

今回、斎藤誠は歪みに歪んでいたが、それでも全身がボロボロになりながらも、吹寄を救う為に頑張った。

 

その恩義が、彼女には伝わったのだろう。

 

それしかない。

 

誰かが言ったのかわからないが、もしかしたら、頭がいい吹寄の事だ、一人で真相にたどり着いたのかもしれないが、

 

彼女はその恩義の為に過去の過ちを許したのではないだろうか?

 

義理堅い彼女のことだ、十分にあり得る。

 

しかし

 

許したと言ってもまだ後悔しているのかもしれない。

 

人間は簡単に割り切れる生き物ではないのだ。

 

一言許したと言ってもまだ許さない思いもあるはずなのだ。

 

許したのに許さない。

 

そんな後悔やら戸惑いやらが今の吹寄には渦巻いているのだろ。

 

まぁ、そんなことはわからない。

 

僕は人の心を見る術が無いのだから。

 

だから、今僕の腕の仲で震えている女の子が落ち着くまでこのまま何もしないのが正しいと思ってしまう。

 

「小野町仁……これでよかったのかな?」

 

吹寄の言葉に、僕は答える。

 

「知らねぇよ」

 

「薄情者……」

 

「そうですよ~……でも……」

 

「?」

 

「僕は吹寄が笑えるのならそれでいいよ、笑えるまでは付き合うからさ」

 

これは、吹寄と斎藤誠の問題だ。

 

僕が答えを、僕の考えを押し付けていい訳が無い。

 

だから、僕が出来るのは彼女が納得するまで見守ることしか無いのだ。

 

「………ありがとう」

 

「その言葉を聞くのは2度目だな……今回は無報酬でいいぞ」

 

「バカ」

 

「最近、学校に行っていないから真面目にそうかも知れないなぁ」

 

「また勉強見てやるわよ」

 

「ヤダよ、スパルタだもん」

 

「……ふふ」

 

「ハハハ」

 

所で吹寄さんいつになったら離して貰えますかね?

 

もうね、ヤバイの。

 

何がとは言わないけど、ナニがね。

 

「……小野町仁、1つ聞きたい事がある」

 

「何だよ?」

 

「貴様はあの時なぜ私を助けた?」

 

昨日と同じ問い。

 

彼女を傷付けた答えの問い。

 

その問いに僕は答えなければならない。

 

 

 

 

 

この物語は正義と悪の物語。

 

しかし正義は無い。

 

あるのは自業自得の罪の物語。

 

しかし……。

 

それでも得るものは有った物語である。

 

ある者は過去の許しを得る。

 

ある者は一人の人間の未来を救えた結果を得る。

 

そして、僕は

 

「お前は僕の大切な友人なんだ、僕の為に頑張っただけだよ」

 

過去の失敗を帳消しにするチャンスを得た。

 

 

 

 

御坂妹編、完。

 

 

 

 

 

 

通知書。小野町仁殿。

 

貴殿の学園都市における問題の数々に対して、我々学園都市学業管理委員会は、貴殿をこれ以上学園都市に在籍させるのは困難だと判断しました。

 

よって貴殿を学園都市から退学する事を決定し、貴殿の学園都市の籍を剥奪いたします。

 

貴殿には今後、学園都市の外にある『地上ノ星学園』にて学業と調整を行います。

 

詳しくは付属の資料を参照してください。

 

貴殿の今後の学業がより豊かになることを願っています。

 

以上。

 

 

 

「………………………はい?!」

 

 

 

 

 

こんなに頑張っているのに何で俺にはヒロインがいないんじゃ、小野町仁の物語。

 

最終章『禁書目録編』始動。

 

 

 

 

 

 




少ししたらあとがきを書きますのでここでは今の思いを書かせてもらいます。

やっと終った!!

長過ぎだろ!?

それにグダグダの連続で何人もの人から指摘される始末!!
てでもこんな話でも見放さなかった方々、本当にありがとうございます!!

あとはあとがきで書きます!!

では!
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