こんなに頑張っているのになんで俺にはヒロインがいないんじゃー 作:夜遊
「好奇心、探求心は『美しい』」
街乃木礼子はにこやかに初春を見る。
「街乃木さん……『街乃木礼子』?」
初春は思い出す。
『バラバラに壊して作り直す』
街乃木の言葉だ。
街乃木礼子。
マチノギレイコ
マ チ ノ ギ レ イ コ
コ ノ マ チ レ イ ギ
コノマチレイギ
小野町礼儀。
「……え?」
「気付いたようだな……改めて自己紹介しようか。オレは小野町礼儀。お姉ちゃん、又は御姉様とでも呼んでくれ。あぁ姉ちゃんはダメだそれは弟の特権だからな」
街乃木……いや、小野町礼儀は微笑みながら言うのだが、その軽やかな態度が逆に初春には恐怖に感じた。
「偽名を使っていたのはとある事情があったからだ、ん。安心しろ別に君に名前を教えたくなかった訳じゃないからな」
「あの……」
「何か言いたそうだね?」
「えーと……街乃木……じゃなくて小野町さんはどうしてここに?確かあの喫茶店に居るって……」
「事情が変わったからだ」
「事情ですか?」
「『それ』だよ」
礼儀は初春の前に置かれたパソコンの画面を指さした。
「簡単な話。『奴等』が1枚上手だったのさ」
「『奴等』?」
『奴等』とは今回のハッキングの犯人の事だろうか?
「オレは思い違いをしていた、正直に話すと『そういう』のは苦手でな、とにかく『奴等』の狙いから間違っていたんだ」
初春は礼儀の言葉を繰り返し頭に浸透させる。
確か『奴等』の狙いは『小野町仁のプロフィール』だ。
それが間違っていた?
つまりはどう言う事だろうか?
「狙いは弟じゃない。『小野町仁の仲間』だったんだ」
「どう言う事なんです?」
「弟は最近『無敵』になった。それに書いてあるだろ?『化け物』になったって」
「具体的にはっきりして無いですよ『化け物』が『無敵』になるんですか?」
「『化け物』は能力の名称じゃない。『無敵』って言ったののもそれが一番しっくりくるからだ、じゃあ『無敵』って具体的にどう言うものなのかわかるか?」
無敵。
つまりは敵が無いことだ。
どんな相手にも勝てる力があることだ。
「正解……じゃない」
「え?」
「どんな相手にも『勝てる』じゃない『負けない』って事さ。弟は『化け物』になってどんな相手にも『負けない』能力を手に入れた」
「何が違うんです?」
「じゃあ『負けない』ってどう言うものなのかわかるか?『負けない』とは敗北は無いこと。格闘ゲームで言えばHPが常にマックスな状態になるのか?弟はそれ以上にヤバイ」
「何がです?」
「また格闘ゲームで例えるならばそうだな……。『基本スペックが高くて、ダメージを受けないチートキャラ』って言えばいいのか?とにかくそれぐらいヤバイやつなんだ」
「基本スペックが高い?」
「そうだ、弟はビルから落ちても平気だし、その気になれば車と同じくらい速く走れて、コンクリート程度ならば殴れば破壊できる位の身体を持っている」
「……流石に嘘ですよね?」
「本当だ」
「言ってしまえば嘘臭いですよ、そんなのただの憶測じゃないんですか?」
「真実だ」
「何を根拠に……」
「実験されたからな」
「……え?」
「君も見た筈だ『人魚の涙実験』。あれは最終的に弟、小野町仁の非道な人体実験を行うものになったからだ」
「じ、人体実験?!」
「……話はここまでだ。待たせるのも悪いしな」
小野町は話を切り上げると入り口に目を向けた。
つられて初春もそちらを見ると同時に入り口のドアが開き誰かが入って来た。
小野町は言うのだ。
「『奴等』が来たぞ」