こんなに頑張っているのになんで俺にはヒロインがいないんじゃー 作:夜遊
小野町礼儀は壁を殴る。
(油断した!)
彼女は自分の楽観さを悔やみながらも物陰から初春と侵入者の少女、(正確には少女らのリーダーだが)とのやり取りを見ている。
(油断した!油断した!油断した!油断した!油断した!油断した!油断した!油断した!油断した!)
小野町は繰り返す。
狙いは人質ではなかった。
そもそも、人質なんていらなかった‼
狙いは『小野町仁』だ。
正確には『小野町仁の化け物の力』だ。
そこには『小野町仁』は必要なかったのだ!
本当に必要だったのは『化け物』だ。
『化け物』の産み出す破壊こそ奴等が欲しがっていたモノだったんだ!
と、そこまで考えて小野町礼儀は考える。
さて、考えよう。
今回の事件は一体何だ?
弟、愚弟、愛する弟、愛おしい弟である『小野町仁』が狙われている。
それは間違いない。
うん、間違いない。
で、何でだ?
考える。
決まっている。
『化け物』
それしかない。
弟とか、知り合いとか、そんな事を抜きにして考えてみると『小野町仁』個人にはそれほど価値がある人間ではない。
だったら欲しいのはそれしかない。
『化け物』がもたらすメリットはなんだ?
考えた。
破壊……そうか。
破壊だ。
ありとあらゆる、万物を全て壊す破壊だ。
ん?
何をだ?
何を破壊するんだ?
待て待て。
そこじゃない。
何を破壊するかは、知らない。
そもそも、敵の情報なんて知らないし、会った事のない組織の目的なんて予想すらできないではないか。
だから、その問題は置いておく。
ここで考えなければならないのは、『何を破壊する』のではなく、『どうやって破壊するのか』だ。
オレは『化け物』の破壊を見た。
壊すとか、破るとか、裂くとか、それら全てをごちゃごちゃにして、無茶苦茶にした『破壊』。
アレはそう言うモノだった。
ではなぜ『小野町仁』はそれをしなかった?
違う。
出来なかったんだ。
知らなかったんだ。
何かが『化け物』を押さえている。
それはなんだ?
『鍵』だ。
間違いない。
学園都市が『小野町仁』の『化け物』に『鍵』をかけたんだ。
………それが狙いか‼
敵の狙いはそれだったんだ‼
敵は気付いた‼
初春飾利が狙われたのは『人質』ではなくなっていたんだ。
学園都市の書庫にハッキングしたのは、初めは『小野町仁の仲間を人質にするため』だった。しかし、今は変わった。
敵は気付いたんだ。
『化け物』を縛る『鍵』。
それはどんな物か?
人間のリミッターを開けるには物理的な物は必要ない。
非物理的な物。
それはなんだ?
『言葉』だ。
特定の『言葉』が『小野町仁』を『化け物』に完全に表に出させる『鍵』になるんだ‼
学園都市はその『言葉』をどこに隠した?
データ?
『化け物』は公は愚か他の裏にいる人間にも知られてはならない物だ。
ご丁寧に最高級の警備データに置いてはいけない。
ならばどこだ?
プロフィールに有ったんだ。
恐らくプロフィールに『言葉』を隠したんだ。
初春はそれを見た‼
あー……無いな。
うん。
あり得ない。
百歩、いや、それ以上妥協して『データ』がプロフィールにあるとして、初春飾利がそれを見たのか?
隠されているんだから見たかもしれないが、それが初春飾利には知る筈がないのだ。
あーよかった。
………間違いだった。
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………あれ?
そもそも、今回の敵って間違えてばっかじゃないか?
「馬鹿な敵だなぁ‼」