こんなに頑張っているのになんで俺にはヒロインがいないんじゃー   作:夜遊

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小野町仁編、何故なんだ?

初春飾利は混乱した。

 

自分が追われていたのは人質にするためではなかった?

 

『小野町仁』に眠っている『化け物』の解除コード?

 

何の事だ?

 

確かに初春はプロフィールを見た。

 

だが、それはハッキングを仕掛けた敵が見たものと同じ物だ。

 

知らない。

 

初春は知らない。

 

考え付かなかった。

 

問題はそれではなく、解除コードを知っていると勘違いされていることだ。

 

『……どうした?何を考えている?この瞬間で「知りません」なんて嘘を言うなよ?お前は今逃げているんだ。それは知っているからではないのか?単に人質になるのを恐れていたら逃げる必要は無いんだからな』

 

それは違う。

 

本当に初春は人質になるのを恐れて逃げていたのだ。

 

と、考えたが、それも違うと初春は思う。

 

そうだ。

 

逃げたのは初春の意思ではない。

 

あの時、小野町礼儀が逃げろと言ったから初春は逃げたのだ。

 

つまり、逃げた事で初春は弁解のチャンスを逃がしてしまっていたのだ。

 

(れ、礼儀さーん!?)

 

初春はここにいない礼儀に、不服を漏らした。

 

考えろ‼

 

考えるんだ‼

 

初春は必死に思考を巡らせ、この状況を何とかできないか考える。

 

その時、

 

『仕方ない……やれ。赤沙汰』

 

電話の言葉に赤沙汰朱は素直に従った。

 

悲鳴。

 

それは誰のモノなのか、初春は知っていた。

 

振り向くとそこに居たのは踞る佐天の姿が。

 

彼女の首筋には周りで悲鳴を挙げている被害者たちと同様の刺青が彫られていた。

 

「や、止めてください‼」

 

『ならば言え。解除コードを言わなければその女の子が苦しむことになるぞ』

 

冷酷な言葉に初春は恐怖する。

 

どうすれば?

 

どうすればいい?

 

そんな質問が繰り返し、頭に響く。

 

その時、

 

「リーダー。不味いことになった」

 

今まで何も言わず、ただ従っていただけの赤沙汰が報告した。

 

「あの女が居る。こっちになにかを仕掛けている」

 

初春は赤沙汰の視線の先を追って気が付いた。

 

花吹雪の外に居る女性に。

 

女性はこちらを指差す様にしていた。その指先には血液が弾丸のような形に精製されていている。

 

BB-G

 

彼女の能力である血液の弾丸で、被弾した物体を好きに調整する能力。

 

彼女は、小野町礼儀はそれを赤沙汰に向け、発砲したのだった。

 

 

 

 

 

発砲音に似た音を響かせながらBBは花吹雪をもろともせずに真っ直ぐに進んでいく。

 

しかし、

 

「くっ‼」

 

BB-Gは着弾した。

 

それは赤沙汰ではなく、先程まで手に持っていた携帯電話にだ。

 

BB-G事態には破壊性能はない。

 

あくまでもそれは調整するだけの能力であって、壊すことには向かないからだ。

 

しかし

 

着弾した携帯電話は弾けとんだ。

 

まるで内際から膨張したかのような弾けかただった。

 

そして、急な攻撃により、赤沙汰の集中力が切れたのか花吹雪が止んだ。

 

礼儀はただ漂う花びらに当たらない様に気を付けながら歩き出す。

 

「!!『調整』する能力!それに『血の弾丸』!まさか本当に小野町礼儀なのか!?」

 

「その様子だとオレの自己紹介はいらないみたいだな?彼女を解放しろ。それからお前たちのリーダーの所に案内して貰おうか?」

 

小野町礼儀は初春の側に立つと、再び指を構えた。

 

「BB-Gはどんな物体も『調整』できる。先程は携帯電話だったが、次は無いな。美しいモノを壊すのは良心が痛むんだ。だから抵抗するな」

 

赤沙汰はそんな礼儀に対して、

 

微笑んでいた。

 

 

 

 

 

「……なんなんだ?」

 

「何がだ?」

 

赤沙汰の顔にもはや驚きの表情はない。

 

あるのは、戸惑い。

 

「私は『小野町仁』の資料を読んだ。『人魚の涙事件』。あの実験の事をだ」

 

礼儀は黙ってBB-Gを構えている。

 

「『人魚の涙事件』。アレはただの調査だった。『とある生物』の調査だった。間違っても『小野町仁』の非人道的な人体実験ではなかった。なんだ?私は予想した。『小野町仁』は実験で『化け物』になったんではないと、『化け物』になったから実験をしたんだと」

 

「……え?」

 

初春は驚きの声をあげる。

 

それに答えるように赤沙汰は続けた。

 

「『化け物』の正体は『ウィルス』だ」

 

ウィルス。感染。

 

感染するのは肉や内臓ではない。

 

最も『ウィルス』が潜みやすいのは『血液』だ。

 

考えてみればそうなのだ。

 

『小野町仁』の『BB』は血液を媒体にしている。

 

『小野町仁』の身体能力は言い換えれば血液の循環がもたらす産物だ。

 

『小野町仁』の回復力は血液の中に含まれる血小板の異常繁殖が起こす物だ。

 

『ウィルス』は内臓を包み、内臓を徐々に変えていった。

 

それが『小野町仁』が宿す『化け物』の正体。

 

「そこは問題ではない。おかしいと思わないか?」

 

「何がです?」

 

「聞くな‼」

 

礼儀が叫ぶ。

 

同時に彼女の指先からBB-Gが放たれた‼

 

ブワッ‼

 

BB-Gは花びらの束により阻まれてしまう。

 

「そこにいる小野町礼儀はなぜ弟である『小野町仁』を助けずにいた?」

 

「……え?」

 

初春は混乱した。

 

確かに矛盾している。

 

小野町礼儀と過ごした時間は少ないが、それでも彼女が『小野町仁』を助ける為に全力を尽くしているのは理解した。

 

だったら何故?

 

何故、目の前で非人道的な人体実験を行われている『小野町仁』を助けなかったのか?

 

答えは赤沙汰が出した。

 

「助けなかったではない。助けられなかった。小野町礼儀、お前は……死亡した筈だ。何でここにいる?」

 

赤沙汰は繰り返す。

 

「死んだ人間が何故ここにいる?」

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