こんなに頑張っているのになんで俺にはヒロインがいないんじゃー   作:夜遊

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小野町仁編、うん、まぁ、チラリと?

小野町仁はどこにでも居るような普通の男子だった。

 

化け物だとか諸々聞いていた初春やそれ以上の情報を持っている筈の赤沙汰でさえそう思うのだ。

 

だが、異常だった。

 

小野町礼儀の連絡を受けショッピングモールに赴いたり、佐天の頼みでこの場に来た事を彼女らは知らない。

 

そして、小野町仁もまたこの状況を全く知らないのだ。

 

それでも、小野町仁は行動した。

 

それは一瞬。

 

初春が認識出来た時には、小野町仁が急に目の前に現れ、赤沙汰が後ろに下がった時。

 

小野町仁は迷うことなく、赤沙汰朱に攻撃したのだ。

 

そして、彼はこう言った。

 

「『花畑の頭にピンクと白のシマシマ』うん。間違いない!君が初春だな!」

 

一瞬、初春は何を言われたかわからなかったが、その意味を理解して、痛みを忘れて顔を真っ赤にした。

 

「み、見たんですか?!見えたんですか?!」

 

「うん、まぁ、チラリと?」

 

小野町仁は悪びれもせず、物凄くいい笑顔を見せるのだった。

 

 

 

 

 

 

「小野町仁……!!」

 

赤沙汰は混乱していた。

 

なぜこのタイミングで小野町仁が出てきたのだ?!

 

計画ではこの男は登場するはずがなかった!

 

誰かが呼び出した?

 

でも誰が?

 

「…っ‼小野町礼儀‼」

 

そうだ、そうに決まっている‼

 

赤沙汰の脳内に小野町礼儀の意地の悪い笑顔が浮かぶ。

 

それだけで頭の中でアドレナリンが駆け巡るのを感じた。

 

赤沙汰はそれを払いのけ、目の前の小野町仁を睨み付けた。

 

(そうだ、何にしてもターゲットがのこのこ現れたんだ!この場で拘束してリーダーの所に連れていけば問題ない‼)

 

大量の花びらが舞う。

 

それらは大きな波のように形を変え、猛攻と、小野町仁に襲いかかった!

 

対して小野町仁が取った行動はシンプルだ。

 

彼は初春の腰に手を回し、砲丸投げのように、軽々と彼女を花びらが及ばない範囲まで投げただけだった。

 

瞬間、小野町仁の身体は花びらの大群が襲う‼

 

それだけで、赤沙汰は勝利を確信した。

 

だが!

 

「痛ってえぇぇぇぇぇぇ!!何?!何なの?!これ‼クソっ痛い‼何なんだよ?!」

 

花びらの中から小野町仁が飛び出したのだ‼

 

『押花刺繍』は激痛を産み出し、動きを阻害する術だ。

 

それなのに、小野町仁は痛みを受けながらも、喚きながらも、動き立ち上がったのだ‼

 

この異常事態に赤沙汰は狼狽した、そしてそれが彼女の命取りになったのだ‼

 

「テメェも食らいやがれ!」

 

そう叫ぶと、小野町仁は自分の手の甲にかぶり付く‼

 

皮膚が破れ、そこから血が噴き出すが赤沙汰はそれが何を意味するか知っている。

 

血の弾丸、BB!

 

そして、進化系のBB-V!

 

対アユム戦において終止符を打った小野町仁の能力、その効果は相手に自身が負ったダメージを問答無用で押し付ける能力‼

 

すでに小野町仁の右手の人差し指に吹き出した血液が集まり弾丸の形に精製されている‼

 

「グァッ‼」

 

小野町仁は自らの左腕に弾丸を発砲するが、変化はすぐに訪れた!

 

小野町仁の全身から正確には『押花刺繍』で出来た刺青全てから黒い渦が噴出し始め、次第に着弾した左腕の弾痕に集まった、渦が動いた後には刺繍は綺麗サッパリ無くなっている‼

 

「喰らえっ‼」

 

とうとう小野町仁が黒い渦を赤沙汰に向け投げるかのように振るった!

 

黒い渦は地面に落ちるが、動きを止めない‼

 

這うかのように、生き物かのように、赤沙汰に向かって来たのだ‼

 

だが、赤沙汰には対抗策があった!

 

「は?」

 

赤沙汰は走り出した!

 

向かう先は、

 

黒い渦に向かって‼

 

(自分のダメージを相手に擦り付けるなんてなんて自分勝手な能力だ、だが!だからこそ‼私には無意味なんだよ!)

 

黒い渦が赤沙汰のつま先に触れた瞬間、彼女の身体を這い上がり、胸の辺りまで来たところで、弾ける‼

 

ゾワッ‼

 

感覚がガラリと変わるのを赤沙汰は感じた!

 

自身を見ると、身体中あちこちに刺青が彫られてしまっている。

 

それを確認した瞬間、身体中を激痛が襲う‼

 

「がぁ……あぁぁぁぁぁぁ!」

 

叫び声を挙げる赤沙汰。

 

だが、それだけだった。

 

「なんだよ?自分には効きませんってオチ?――」

 

小野町仁が眉を潜めながら言った言葉は半分正しい。

 

この魔術を使う事を前提に置いていたから、この魔術の恐ろしさを誰よりも知っていたから、

 

赤沙汰はあえて小野町仁の能力を受ける覚悟をしたのだ。

 

わかりやすく言えば毒を武器に使う人間がその毒の解毒薬を懐にしまっておくのと同じ事だ。

 

赤沙汰は『押花刺繍』の対抗魔術をすでに発動していた。

 

だが、それでも『押花刺繍』の効力を半分以上受けてしまったのは、小野町仁の『化け物』の力が付属していたからだろう。

 

何にしても、赤沙汰は耐えきった!

 

あとはこの場で小野町仁の手足を縛るなりして、動きを封じ、もう一度能力を使えなくすれば、この戦いは勝てるのだ‼

 

「――そんなことだろうと思ったよ」

 

「……え?」

 

ドンッ‼

 

何かが赤沙汰の脚に触れた。

 

赤沙汰は視線を下に向ける。

 

その先は、

 

黒い渦が這い上がっていた。

 

「な、なんだと?!」

 

「なんかあんた僕に似ている、何を犠牲にしても何かを得ようとする姿勢とかな。だから僕は考えた、それで気付いたんだ、どうせ対抗策を隠しているって――」

 

ありえない‼

 

小野町仁の能力は発動前提にダメージを受けていなければならない筈だ‼

 

一度能力を発動してしまったら、完全に自身のダメージは無くなるのだから‼

 

「――あんたが何でBB-Vの事を知っているのかとか知らないし興味はないよ?でもさ、情報不足だったんじゃないか?――」

 

「クソっ‼取れろ‼お願い!取れて‼」

 

赤沙汰は這い上がり続ける黒い渦を払おうともがくが、変わらずに黒い渦は進行を続けた。

 

「――誰が能力は僕だけにしか使えないって言ったんだよ?――」

 

(まさか?)

 

赤沙汰は小野町仁を見た。

 

正確には小野町仁の後ろ、

 

そこには、

 

初春飾利が無傷で立っていたのだ‼

 

(この 黒い渦は初春が受けたダメージ?!)

 

「――さて、確かに一発目は耐えたな、で?『二発目』は耐えられるのか?」

 

黒い渦が弾ける‼

 

瞬間。

 

赤沙汰は本来受ける痛み以上の激痛を味わい、気を失った!

 

 

 

 

 

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