こんなに頑張っているのになんで俺にはヒロインがいないんじゃー 作:夜遊
目が覚めた僕が最初に見たのはまたしても蛙によく似た医者だった。
「一日に二回入院した患者は初めてだよ」
「あれ?俺は……あ!!吹寄は?!」
「あまり騒がないでね…、彼女なら今アンチスキルに事情聴取を受けている、今は君の体を気にしなさい」
「あのあと何が起きたんです?」
「僕も詳しくは知らないけど君は彼女を救ってすぐに気絶して、そのあとは通報を受けてかけつけたアンチスキルにより保護、ここに搬送されたわけだ」
「そうなんだ」
気を失う前の事があまり記憶に無いのだが、何か恥ずかしい事を言っていなかっただろうか?
「けど君ここを抜け出してなにやっていたんだい?身体中にガラス片が食い込んでいたし、筋肉の疲労も限度を越えていたんだが」
この質問に僕は軽く考え、真実を完結に一言で言った。
「え~と…、戦っていました」
「彼女の為にかい?」
「いえ、自分の為にですよ」
その後の事を話そう。
斉藤誠は罪を認め、少年院に入れられる事になった。
吹寄は元々怪我を負っていなかったので事件前の様に元気に学校に通っている。
僕の犯した犯罪行為は一応お咎め無しになった。
どうやら子萌先生を筆頭に事情を知った何人かの先生達が頑張ってくれたみたいだ。
子萌先生と言えば事件解決後、
誰よりも速くかけつけ、僕と吹寄に泣きそうな顔で「なんで相談してくれなかったのですか!?」的な
実に和やかな説教を行った。
僕自身は今現在入院中である。
と、言ってもやはり人より治りが早いため、一週間のスピード入院なのだが。
その間、治療に専念、空いてる時間で子萌先生が持ってきたプリントをやるという、なんともつまらない単純作業を繰り返していた。
吹寄は毎日お見舞いに来てくれる。
ところで最近、吹寄がおかしい、なぜか顔を背け目を合わせてくれない事が多いのだ。
何故だろう?
その理由がわかったのは三日目の事だ。
昼寝をしていた僕は人の気配を感じ目が覚めた。
そこには目と鼻の先に吹寄がこちらを覗き込むように見ていた。
「うわぁ!?」
「キャッ!?」
瞬時に体をベットの隅に飛び移させる。
怖っ!?漫画だと女子が近くにいたらドキドキするシーンなのに、地味に怖い!!
吹寄の目力は一般的なそれを凌駕しているのも、恐怖心を加速するのに一役買っているのだろう。
「び、ビックリした!!なんだよ?」
「それはこっちの台詞よ、元気そうね?」
彼女は体を離したがなぜか見舞い客用のイスに座らず、ベットに腰かけた。
「まぁな、身体中カサブタだらけで痒いよ」
「そうか、ところで小野町、約束覚えているか……?」
約束?
はて?
何か僕は約束していただろうか?
「そ、そのあの時、私を助ける時に…」
あの時?
助けた時?
………………あ
「抱かせろってやつか!?」
「声がデカイ!!」
「わ、悪い」
見れば吹寄の顔が赤い。
その顔はまるで、なんといいますか、こう、見ていてムラムラする顔だ。
え、えぇ、え?
なにこの流れ!?
確かにあの時僕とんでもない事を言った気がする!!
べ、別に本心じゃないからな!!
あればそのモチベーションを出すために仕方なくだな…
つーか今まで完全に忘れていたよ!!
「そ、その、まだ心の準備ができてなくてな、だから……その……――ぐらいなら…」
「え?なんて?」
今吹寄は顔を更に真っ赤にし、小さい声で何かを言った。
「だから……触るぐらいなら……胸を……」
胸?
触る?
胸を触る!?
「ま、マジで!?」
「す、少しだけだぞ!!少しだけ……貴様にはそれくらい今回は世話になったのだから」
吹寄は胸を触りやすい様に僕に向けた。
ゴクリっ。
生唾を飲み込む自分の音がまるで他人の様に感じた。
「後悔しない?」
「しない」
「殴らない?」
「殴らない」
「………………………では遠慮なく」
なんた!?この幸運は?!まさか吹寄の胸を触れる機会が訪れるとは
最高のハッピーエンドじゃないか!!
僕は緊張で震える手をゆっくりと吹寄の胸に近づけ、そして、触っ――
「オース!!仁、お見舞いに来たぜ」
る前に、突然病室のドアが開き、親友上条当麻が入ってきた。
「遊びに来たぜ!!コノっちゃん!!」
「お見上げにこの前探していた写真集持ってきたでぇ!!」
3バカデルタフォース達の入室により僕と吹寄は一瞬で離れた。
それはもう尋常無いくらい素早く。
「お、おう!!ありがとうな」
ガァ!!こんなときに来てんじゃねぇよ!!
空気を読め!!
僕はこれから未知の世界にダイブする予定なんだから!!
「あれ?吹寄なんでいるんだ?」
「私も小野町のお見舞いよ」
「しっかし!!元気そうで安心したぜよ」
「まぁな」
あぁ…土御門、今なら僕はお前と対等に殴り合える自信があるぞ!!
「まぁ入院中退屈やと思って、コレ買って来たで」
青髪ピヤス……とりあえず吹寄の前でその参考書は出さないでいただこうか、うん。
吹寄が青髪ピヤスに制裁を与えているのを見ながら僕は当麻に話しかけた。
「やっぱりお前は凄いよ」
「なんだよ、いきなり」
今回の事件で自覚した。
人を守る辛さを、
正義の味方になる大変さを。
そして自分はどんなに頑張っても正義の味方側の悪人止まりだと言うことを。
そんな恥ずかしい事を言う訳がなく、僕はただ一言。
「別に何となくだ」
当麻は生まれながらの正義の味方なのだろう、今回の事件もこの男ならもしかしたらもっと簡単に解決できたのかもしれない。
しかし
それでも僕は正義の味方に憧れていくのだろう。
何故かその後、青髪ピヤスと共に僕ら三人も吹寄に説教を受け、四人で正座しながら反省をさせられた。
いつもの光景、全力で守った日常を実感しながら僕はそんなことを考えるのだった……。
吹寄編、完。
とりあえず一言。
終わったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
今まで読んで頂きありがとうございます!!
次回は番外編と言うことでぐだぐた設定資料らしきモノを話していこうと思います。
とりあえずお疲れ様でした。