落ちこぼれ魔法師が異端の力を手に入れて世界最強になっちゃった   作:高巻柚宇

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問題発生

 セイヤが目を覚ますと、目の前に白い天井が広がっていた。周りを見ると、ところどころに医療器具などが置かれ、セイヤは自分がベットの上に寝ていたことを理解する。

 

 どうやらリタイヤしたセイヤは保健室に運ばれたらしく、周りを見るとザック達も寝ていた。

 

 「あっ……」

 

 セイヤは先ほどの自分の行動を思い出し、ザックたちを起こさないように静かにベッドから出て保健室を出る。

 

 保健室から出たセイヤは時計を見て、時間を確認した。すると訓練開始からちょうど一時間が経過したところで、まだ実践訓練をやっているであろう時間だった。

 

 セイヤは乾いたのどを潤すために学園内に設置されている売店へと向かうことにする。

 

 売店は訓練所や体育館などがある棟にはないため、一度教室などがある本棟に戻らなくてはならない。

 

 魔法学園は施設がしっかりとしている分、校舎も大きく、棟の移動も一苦労だ。セイヤは五分ほどかけて、本棟に戻り売店へと到着した。

 

 「あれ?」

 

 疲労回復効果があるエナジードリンクを買おうとしたセイヤだったが、あることの気づく。セイヤのポケットに入っているはずだった財布がないのだ。

 

 いったいどこに行ってしまったのかとセイヤは考える。

 

 実践訓練時には確かにポケットにあったため、可能性としては保健室のベッドの中。

 

 「そんな……」

 

 自分の失態に気づき絶望するセイヤ。

 

 保健室にはザックたちがいる。しかし財布を取り戻さないことには今晩の夕食が買えない。セイヤは迷った末、ザックたちがまだ寝ていることを祈りつつ保健室へと向かう。

 

 保健室に戻ってきたセイヤはザック達を起こさないように、そーっと保健室の扉を開けた。

 

 幸いザック達はまだ気を寝ているようで、安心したセイヤは自分の寝ていたベットの中を探す。

 

 しかし財布の姿はベッドの中にはなく、慌ててベッドの下まで探すセイヤ。そんな時、セイヤの背後からとても低い声が聞こえた。

 

 「アンノーン。探しているのはこれかぁ?」

 

 セイヤは「しまった……」と、思いながらも、ゆっくりと後ろへと振り返る。するとそこには、案の定セイヤの財布を持ちながら気持ち悪いぐらいの笑みを浮かべるザックがいた。

 

 その周りでは意識を取り戻したのであろうシュラとホアも、気持ち悪い笑みを浮かべている。どうやら三人はすでに意識取り戻したらしく、セイヤが戻ってくるのを待っていたようだ。

 

 「アンノーン聞いたぜ。ザックのこと刺したらしいな?」

 「やるね~。アンノーンくせに~」

 

 三人の顔を見たセイヤはすぐにこれから何をされるのかを悟った。逆らえば制裁と言う名の暴力を受け、財布も返してもらえないだろう。

 

 「これを返して欲しかったら、大人しく着いて来いアンノーン」

 「わ、わかったよザック君。だから財布は返して」

 「なんだその態度? 着いて来たらって言ってるだろ」

 

 ザックの機嫌はセイヤの見てきた中で過去最大で悪い。

 

 それもそのはずだ。ザックはセイヤが中級魔法師一族になるためにエドワードと密会したと誤解し、先ほどは背後から不意を突かれて初級魔法師最底辺であるセイヤに刺されたのだ。

 

 

 

 

 

 セイヤはザック達に連れられて学校の敷地外にある路地裏まで引っ張られた。

 

 この路地裏は人通りも少なく、なかなか人目につかない場所である。ましてや今は授業時間内。当然ながら魔法学園の関係者は学園にいるため、まずここには人が来ることはない。

 

 そんな路地裏で、セイヤに対する暴行が始まった。

 

 「おらっ! アンノーンさっきはよくを俺を刺してくれたなぁ」

 「アンノーンの分際で中級になろうなんて生意気なんだよ。調子に乗ってんじゃねーぞ」

 「あれ~どうしたのアンノーン? なんか言ってみたら~?」

 「ゲホッゲホッ……」

 

 体中を蹴られ、踏まれ、傷を負うセイヤ。

 

 ここには訓練所のように結界などあるわけもなく、肉体に傷が残る。セイヤは腹や胸などを重点的に踏まれ息ができなくなる。

 

 「おいアンノーン。まだまだ終わらないぞぉ? 調子に乗ったんだからちゃんと責任取れよ。おらぁ! お前みたいな雑魚が中級魔法師一族になろうなっておこがましいんだよ」

 「そうだ! 学園長に媚びを撃ってまで俺たちの上に立ちたいか? ふざけるな! そんなの実力をつけてからしろよ」

 「そうだぞ~。お前みたいな最弱は一生初級の底辺にいればいいんだ~」

 「ウッ……」

 

 三人は誤解したままセイヤに暴行を続けるが、セイヤはすでに誤解を解く気にもなれなかった。どうせ真実を話したところで、三人が信じるわけもなく、暴行も終わるわけではない。

 

 逆に反抗したと言われて、さらに暴行を受けてしまう可能性だってある。それならこのままおとなしく暴行が終わるのを待てばいい。そんなことを考えていたセイヤ。

 

 「このクズ魔法師が!」

 「悔しかったら正々堂々と戦いやがれ」

 「そうだ~そうだ~」

 

 いったいどれだけ蹴られただろうか。

 

 セイヤはそう考えたが、脳がそれ以上考えることをやめてしまい、次第に意識が遠くなっていくような感覚を覚える。セイヤの顔には切り傷や痣がたくさんできていて、それは服の中も同じだった。

 

 (まだ終わらないのか……)

 

 セイヤは暴行の時間をいつも以上に長く感じる。

 

 いつもは訓練時間のため、肉体にダメージは来ないが、今は違う。蹴られた分だけ体には傷が残り、負担がどんどんのしかかる。

 

 そしていつも以上に長い暴行がさらにセイヤの心に負担を与える。

 

 精神と肉体への同時の負担は、想像以上だった。

 

 (痛い……痛いよ……誰か……誰か助けて……)

 

 急に目頭が熱くなり始めるセイヤ。それは自分の心の奥底に眠る弱いセイヤだ。セイヤはクラクラする頭で必死に祈る。

 

 (誰でもいいから……助けて)

 

 セイヤがそう思った直後、涙目になりながら揺れる視界に人影を捉えた。

 

 この惨状を見つけた街の人が止めに来たのか? そう期待したセイヤだったがすぐに違うと確信する。そして同時にとてつもない悪寒がセイヤのことを襲った。

 

 複数の男たちが路地裏へと入って来るが、その雰囲気は平和とはいいがたく、彼らの手には拳銃が握られていた。

 

 魔法のあるこの世界で拳銃は存在するが、使う者は非魔法師の闇組織しかいない。魔法師にとって拳銃など脅威に値せず、非魔法師の人々は何かあったら教会に依頼するため、まず拳銃など使う文化はほとんどない。

 

 セイヤは拳銃を本で見たことがあるだけで、本物は今回初めて見た。しかし一目で男たちの手にする拳銃は危険だと確信できた。

 

 ザックたちはセイヤに暴行を加えることに集中しており気づいていない。

 

 セイヤは三人に後ろから危険が迫ってると伝えようとするが、胸を踏みつけられたままのためうまく声が出ない。

 

 「うっ……うし……」

 「ああん? 聞こえないな~」

 「うぅっ」

 

 どうにかしてザックたちに後ろから迫る脅威を伝えようとするが、ザックたちは聞く耳を持たず、さらにセイヤの胸を強く踏みつぶす。

 

 胸が圧迫され、セイヤはうまく呼吸をすることができない。そんなセイヤの視線の先では男たちがザックたちに向けて拳銃を構えていた。

 

 拳銃の引き金を引いていく男たち。

 

 パスッパスッパスッ

 

 直後、拳銃を持った男たちがザック達に向かって次々と発泡し、ザック達は被弾すると意識を失う。男たちは三人の気絶を確認すると路地の入口に向かって叫んだ。

 

 すると、新たな男たちが姿を現す。

 

 「捕獲完了だ」 

 「よし馬車に乗せろ。研究室まで運ぶぞ」

 「ああ」

 

 セイヤは男たちの手際の良さを見て、すぐに魔法師を狙った人攫いだと理解する。そしてセイヤはラミアが朝に言っていた事件を思い出しながらどうにか手掛かりを残そうと考えた。

 

 (何か手掛かりを残せば聖教会が……)

 

 パスッ

 

 しかしセイヤも拳銃で撃たれてしまい、そこで意識を失った。

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