問題児たちにチートが紛れ混んだそうですよ?【リメイク版】 作:夜叉猫
修学旅行から帰ってきたばかりの夜叉猫さんですっ!!(>_<)
意外と疲れがたまっているのですが、ついつい書いてしまいました(笑)
それでは本編の方をどうぞ♪(*´ω`*)
Side 夜鶴
「水平に廻る太陽と……そうか、【白夜】と【夜叉】……。
あの水平に廻る太陽やこの土地はお前自身を表現してるってことか」
「如何にも……。
この白夜の湖畔と雪原。永遠と沈むことなく世界を薄明に照らす太陽こそ、私が持つゲーム盤の一つだ」
白夜叉ちゃんが両手を開くと空に浮かぶ雲が裂け、薄明の太陽がその全貌を現した。
……なるほど……【白夜】と【夜叉】ね……。
確か【白夜】はある経度を持つ地域のみで見られる太陽が沈まない現象のことだったはず……。
そして―――――【夜叉】。
こっちは知らないね……。
仕方無い……【
】しようか……。
俺は 眼を閉じて静かに自分の【中】に存在するある場所から【知識】を取り出す。
【夜叉】―――――夜叉には男と女があり、
男は【ヤクシャ(Yaksa)】女は【ヤクシー】もしくは【ヤクシニー(Yaksni)】と呼ばれる。
財宝の神【クベーラ(毘沙門天)】の眷属と言われ、その性格は仏教に取り入れられてからも変わらなかったが、一方で人を食らう鬼神の性格も併せ持った。
ヤクシャは鬼神である反面、人間に恩恵をもたらす存在と考えられていた。
森林に棲む神霊であり、樹木に関係するため、 聖樹と共に絵図化されることも多い。
―――――また、水との関係もあり、【水を崇拝する(yasy-)】 といわれたので、yaksyaと名づけられたという語源説もある。
後に仏教に取り入れられ、護法善神の一尊となった。
大乗仏典では薬師如来の十二神将や、般若経典を守護する十六善神などが夜叉である。
これはなかなか興味深い内容だね……。
【白夜叉】という名前からすると、白夜が本質かな?
夜叉は神格として取り入れたと考えるのが妥当だね。
「参った、やられたぜ……。
――――降参だ白夜叉」
「ふむ?それでは決闘ではなく試練を受けるということでいいのかの?」
「あぁ、これだけのもんを見せてくれたんだ。
……今回は黙って試されてやるよ……『今回は』、な……」
十六夜は吐き捨てるかのように白夜叉ちゃんに言った。
なんとも可愛い抵抗を示す十六夜。
白夜叉ちゃんは十六夜の言葉を高らかと笑い飛ばした。
「く、くく………して、他の童達も同じか?」
「………ええ、私も試されてあげてもいいわ」
「……右に同じ」
悔しそうにそういった久遠さんたち。
まぁ、これだけされればどれだけ格が違うのか分かるだろうから当然といえば当然だね。
白夜叉ちゃんはひとしきり笑い終えると俺にも聞いてくる。
「夜鶴、おんしも【挑戦】で良いな……?」
当たり前のように【挑戦】を提案してくる白夜叉ちゃん。
俺はそれに対して柔らかに笑うと、自らの考えを口にする。
「―――――いいや?……俺は【決闘】を選ぶよ?」
「……ほう……」
白夜叉ちゃんは目を細めて俺を見つめた。
その眼は俺の思惑を見通そうとしているようにも見える。
しばらく無言で見つめ合っていると黒ウサギが間に割り込んで来た。
「も、もう!お互いもう少し相手を選んで下さいっ!!
【
……それに白夜叉様が【魔王】だったのはもう何千年も前の話じゃないですか!」
「……なに?それじゃあ元・魔王ってことか?」
「……はてさて……どうだったかな?」
白夜叉ちゃんがそういってはぐらかしていると、山脈の方から今まで聞いたことの無いような獣の声が聞こえてきた。
そこにいたのは前世では決して見ることの出来なかったであろう―――――獣だった。
「……嘘っ!?グリフォン!?本物?!」
珍しく春日部さんが声を上げる。
その声にはグリフォンに対する驚きと同じぐらい、歓喜が混ざっているように聞こえる。
「いかにも。
あやつこそ鳥の王にして獣の王……【力】【知恵】【勇気】の全てを兼ね備えた【ギフトゲーム】を代表する幻獣だ」
地に降り立ったグリフォンは白夜叉ちゃんに近寄るとゆっくりと頭を垂れた。
「おんしらにはこのグリフォンによって【力】【知恵】【勇気】を試させて貰うとしよう」
白夜叉は何処からともなく光輝く羊皮紙を出現させ、それをこちらに見せる。
そこには今回行われる【ギフトゲーム】の内容が書かれていた。
『ギフトゲーム名 【鷲獅子の手綱】
・プレイヤー一覧
逆廻 十六夜
久遠 飛鳥
春日部 耀
・クリア条件
グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。
・クリア方法
【力】【知恵】【勇気】の何れかでグリフォンに認められる。
・敗北条件
降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
宣誓
上記を尊重し、誇りと旗印とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
【サウンドアイズ】印』
「あ、あれ?白夜叉様、夜鶴さんの名前が無いですよ……?」
黒ウサギが冷や汗をダラダラと垂らしながら白夜叉ちゃんに言った。
「当然じゃ。そやつは私との【決闘】を望んだのじゃからな」
扇子で口元を隠しながら楽しそうにしかし真剣に白夜叉ちゃんは言った。
「し、しかし!!「大丈夫だよ黒ウサギ」……夜鶴さん?!」
「俺だって黒ウサギたちの役に立つっていうのをそろそろ証明したいしね。
大丈夫。白夜叉ちゃんだって命までは取らないよ」
俺がそういうと黒ウサギは耳を垂れさせながら渋々という様子だったが分かりました、と口にする。
「――――そのゲーム私がやる」
はっきりとした通る声が春日部さんから聞こえた。
短い間しか一緒に居ないが、大人しい印象の春日部さんには珍しいことだと思う俺。
おそらく十六夜もそうなのだろう。
意外そうに春日部さんを見ている。
「……OK、先手は譲ってやる。失敗すんなよ?」
「気をつけてね、春日部さん」
「応援してるよ。落ち着いてね?」
「……うん、頑張る」
そういった春日部さんの目はグリフォンに釘付けにされていた。
よほど動物が好きなのだろう。
そしてまた、幻獣などの架空の生物と言われたグリフォンに興味津々なのだろう。
春日部さんは目をキラキラさせながらグリフォンに近づいていく。
「……え、えーと。始めまして、春日部 耀です」
『!?』
俺にはグリフォンが何を言っているのかは分からない。
別にそういった能力を創っても良いのだが、今は止めておこう。
「ほう……あの娘、グリフォンと言葉を交わすか……」
白夜叉ちゃんは感心したように扇を広げた。
「私を貴方の背に乗せ……誇りを掛けて私と勝負をしませんか……?」
グリフォンは驚いた表情をしていたが、すぐにそれを無くし、何かを答える。
それを聞いた春日部さんはまた口を開いた。
「貴方が飛んできたあの山脈。
あそこを白夜の地平から時計回りに大きく迂回し、この湖畔を終着点と定めます。
貴方は強靭なその翼と四肢で空を駆け、湖畔までに私を振るい落とせば勝ち。
私が背に乗っていられたら私の勝ち。
………どうかな?」
春日部さんは小首をかしげる。
すると、またもグリフォンは春日部さんに何かを言ったようだ。
すると、春日部さんは迷うことなく、真剣な眼差しで即答する。
「―――――命を賭けます」
それを聞いた黒ウサギと久遠さんは驚きの声を上げた。
「だ、駄目ですっ!!!」
「か、春日部さん!?貴女本気なの!?」
「……貴方は誇りを賭ける。
私は命を賭ける。
もし転落して生きていても、私は貴方の晩御飯になります。
私あんまりスタイルが良くないけど………それじゃ駄目かな……?」
自らの身体をペタペタと触りながらそう言う春日部さん。
そんな様子に慌てる黒ウサギたちを白夜叉ちゃん、十六夜そして俺が制した。
「……双方、下がらんか。これはあの娘から切り出した試練だぞ……」
「ああ。白夜叉の言う通りだ。
お前ら無粋な真似はやめとけ」
「春日部さんなら大丈夫だよ。
仲間を信じてあげよう?」
「そんな問題ではございません!!
同士にこんな分の悪いゲームをさせるわけには……」
「夜鶴の言ったとおり、私は大丈夫だよ」
春日部さんの瞳には勝算しか無いと言ったような光が宿っていた。
そして、ゆっくりとグリフォンに跨がると何かを呟く。
それと同時に、グリフォンは駆け出した。その強靭な四肢を十二分に使い、空を踏みしめるように走る。
山頂近くになると突然スピードを上げ、容赦のない、頂からの急降下。
そのスピードは始めのスピードの優に数倍はくだるまい。
更にグリフォンは旋回までも加え、春日部さんを本格的に振り落としに掛かった。
―――――しかし、春日部さん負けなかった。
下半身が空中に投げ出されたのにも関わらず、手綱は決して離さない。
グリフォンはそんな春日部さんを見て、最後の激しい旋回を始めた。
縦横無尽に動くグリフォン。
それに伴い振り回される春日部さんであったが、やはり手綱は離さない。
そして遂に―――――春日部さんとグリフォンとの攻防が、終わりを告げる。
―――――グリフォンは今までの激しい動きが嘘だったかのように、残る距離はただ純粋なスピードで直線的に指定された道を駆け抜けていく。
その背には勿論、春日部さんの姿があった。
ゴールを示す場所を駆け抜け、春日部さんの勝利が決まった瞬間、気が緩んだのか春日部さんの手から手綱が離れた。
「春日部さん!?」
グリフォンから滑り落ちた春日部さんはそのまま真っ逆さまに落下していく。
それを見て助けに行こうとした黒ウサギの手を十六夜が掴んだ。
「十六夜さん!?は、離し「待て!まだ終わってない!」……えっ……?」
十六夜の言葉を証明するように、ふわりと春日部さんの体が翻り、落下の勢いを殺していくのが見えた。
そして、春日部さんの体に風が纏い始め―――――
―――――空をしっかりと踏みしめる。
「なっ……?!」
黒ウサギは驚愕の表情を浮かべた。
しかし、十六夜は予想していたのか、ゆっくりと降りて来た春日部さんに話し掛けた。
なかなか良い【恩恵】を持ってるみたいだけど……誰か気づいてるのかな?
「……やっぱりな、お前のギフトは、他の生き物の特性を手に入れる類だったんだな」
十六夜は自信ありげにそう言った。
だけどね十六夜、それは違うんだよ。
春日部さんの【恩恵】はそんな『手に入れる』だなんて野蛮なものじゃ無いんだ。
しかし、十六夜は賢いね……。
たった少しの情報でそこまで予想するなんて。
「……違う、これは【友達になった証】。
……けど、 いつから知ってたの?」
「あぁ……お前、黒ウサギと会った時に『風上に立たれたらわかる』って言ってただろ?
そんな芸当人間にはできねぇ。だから春日部のギフトは【他種の生物とコミュニケーションがとれる】だけじゃなく、【他種のギフトをなんらかの形で手に入れるもの】なんじゃないかと推測したわけだ。
……まぁ、あの速度に耐えられる生物は地球上にはいないから……それだけじゃなさそうだけどな」
十六夜は、春日部さんにそういうと、お疲れ様だな、と労いの言葉を口にして、離れていった。
「―――――いやはや大したものだこのゲームはおんしの勝利だの。
………ところで、おんしの持つギフトだがそれは先天性か?」
十六夜の次は白夜叉ちゃん。
春日部さんに向かって拍手を送りながら近寄っていく。
「……違う。
私は、父さんに貰った木彫りのおかげでみんなと話せるようになったの」
「木彫り?」
「ほほう……彫刻家の父か……。
もしよければ、その木彫りというのを見せてくれんか?」
春日部さんは頷いてペンダントにしている木彫りを服の中から取り出し、白夜叉ちゃんに渡す。
丸く、大きさはそれほど大きく無いが、かといって小さくもない。そしてそこには複雑な模様が彫られていた。
それを見て白夜叉ちゃんは急に顔を驚きに染める。
「これは複雑な模様ね、なにか意味があるの?」
「意味はあるけど知らない。
確か父さんに昔教えてもらったけど忘れた」
「……これは」
その模様は【系統樹】を示したモノ。
しかもかなり高度な技術で造られている。
「素材は楠の神木……?
神格は残っていないようですが……。
この中心を目指す幾何学線……そして中心に円状の空白……もしかしてお父様のお知り合いには生物学者がおられるのでは?」
黒ウサギまでもいつの間にか春日部さんの木彫りに魅入っていた。
「うん、私の母さんがそうだった」
「生物学者ってことは……やっぱりこの図形は【系統樹】を表してるのか白夜叉?」
「おそらくの…ならこの図形はこうで……この円状が収束するのは……。
……いや、これは……っ!?こ、これは凄いっ!
本当に凄いぞ娘!!
本当にこれが人造ならばおんしの父親は神代の大天才だ!
まさか人の手で独自の系統樹を完成させ、しかも【ギフト】として確立させてしまうとは!
正真正銘【
興奮した声を上げる白夜叉ちゃん。
それに対して、春日部さんはかなり不思議そうだ。
「【系統樹】って、生物の発祥と進化の系譜とかを示すアレ?
でも母さんの作った系統樹はもっと樹の形をしていたと思うけど」
「うむ、それはおんしの父が表現したいモノのセンスがなす業よ。
この木彫りを態々円状にしたのは生命の流転、輪廻を表現したもの。
再生と滅び、輪廻を繰り返す生命を遂げて進む円の中心、即ち世界の中心を目指して進む様子を表現している。
中心が空白なのは、流転する世界の中心だからか、生命の完成が未だに視えぬからか……。
それともこの作品が未完成の作品だからか……」
白夜叉ちゃんの眼がキラキラと輝いて見えた。
あの十六夜ですらも少し引き気味な程に……。
「うぬぬ、凄い……凄いぞ!!
久しく想像力が刺激されるぞ!
実にアーティスティックだ!!!
おんしさえよければ私が買い取りたいぐらいだの!
私に売ってくれんか?!!」
「ダメ」
白夜叉ちゃんから木彫りを取り上げる春日部さん。
物凄く残念そうな顔をする白夜叉を見た十六夜は小声で子供みたいだなと呟いた。
「うむむむ……残念じゃな……」
「……それより白夜叉ちゃん。
俺とのゲームはまだかな?」
その言葉に白夜叉ちゃんはピクリと反応し、俺と向き合った。
「そうじゃったな。
……では、行うとしようか」
白夜叉ちゃんは先程よりも引き締まった顔をして光輝く羊皮紙を取り出した。
『ギフトゲーム名 【沈まぬ太陽との決闘】
・プレイヤー一覧
不知火 夜鶴
・クリア条件
白夜叉との決闘による打倒。
白夜叉に認められること。
・クリア方法
【力】により白夜叉を打倒する。
白夜叉を楽しませ、その【力】を認めさせる。
・敗北条件
降参もしくはプレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
宣誓
上記を尊重し、誇りと旗印とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
【サウンドアイズ】印』
「な?!!白夜叉様?!
これはどういうことですか?!」
黒ウサギが慌ながら白夜叉ちゃんに言った。
「なんのことじゃ?」
「これは白夜叉様が【魔王】として活動していたときのゲームのひとつじゃ無いですかっ!!!」
「「「なっ?!!」」」
黒ウサギの発言を聞いた十六夜たちの息を飲むような声が聞こえた。
「そうじゃったかな?私は覚えておらぬよ」
「いえ!!このゲームは白夜叉様「黒ウサギ大丈夫だよ」……夜鶴さん?」
俺が間に言葉を挟んであげると、黒ウサギがこちらを心配そうに見つめてきた。
「これは俺が望んだゲームだよ?
それなら相手の選んだゲームで戦うのが筋ってものだよ」
「ふはははは!!!夜鶴おんしは本当に面白いな!!」
白夜叉ちゃんは扇子を開き、俺を見て高らかに笑った。
「そうかな?
……そして、黒ウサギ?」
「何ですか……?」
「そんなに不安そうな顔で見ないでよ。
……これから俺は示してあげるよ
黒ウサギたちを助けることが出来るのを。
そして―――――俺が誰にも敗けないことを……ね」
俺は黒ウサギ、そして十六夜たち問題児に不敵に笑った。
Side Out
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
Side 三人称
「待たせたね白夜叉ちゃん」
「良いよ。
……しかしおんし言い切ったな」
白夜叉はその手に持つ扇子をたたみ、夜鶴を指しながら口を開く。
「【誰にも敗けない】……か。
おんしはそんな奴では無いと思っていたのじゃが……」
眉をしかめて残念そうな表情となる白夜叉は、夜鶴の発言に頭を痛めていると言ったふうに口にする。
しかし、その声音からは何処か楽しそうな雰囲気を感じさせた。
「まぁ、良い。
その言葉が誠か、それとも嘘なのか……」
一瞬顔を伏せた白夜叉は、次に夜鶴を見た時には獰猛な笑みを浮かべていた。
「―――――私が見極めれば良いのだからな!」
その言葉を合図に白夜叉は動き出した。
夜鶴との距離をたった1歩の跳躍でゼロまで縮め、その小さな体躯を利用して懐へと潜り込む。
そして、流れるような体捌きで拳を叩き込まんとした。
……しかし、その攻撃は夜鶴にとっては愚鈍。
「……遅いよ白夜叉ちゃん」
「ッッ??!!!」
繰り出された白夜叉の拳を半身でかわすと、夜鶴は白夜叉の体に合わせるように片方の手の平を添えた。
「―――――
添えた手に力を入れて白夜叉の身体を軽々と宙に浮かせると、残る片手を手刀とし、白夜叉の腹部を穿つかと思わせるほどに突く。
「ガハァッッッ?!!!」
白夜叉はその攻撃をどう対処することも出来ずに喰らい、身体をくの字に折り曲げ吹き飛ばされる。
「ぐうぅ……っ!」
吹き飛んだ白夜叉は、宙で体制を整えると夜鶴から逃げるように距離を取り、後ろに下がった。
「……おんしなかなかやるな……」
腹部を押さえながらニヤリと笑う白夜叉。
その表情は今まで強者に飢えていたと言わんばかり。
「ふふふ……まだまだこれからでしょ……?
ほら、早く構えて?
―――――次……行くよ?」
次は夜鶴から白夜叉に近付いて行く。
その速度が―――――『異常』。
「なっ……?!!!」
最早それは移動ではない。
視界から消えて、いきなり目の前に現れる。言わば『転移』と言ったものだろう。
「不知火式……無刀……【
突進の勢いのまま白夜叉の頭を鷲掴みにすると、そのまま地面に叩き付けようとする。しかし、夜鶴の業がその程度の訳がない。
白夜叉の両の足が地から離れ、浮いた所を見極め、手を離し、胸部を蹴り下ろす。
その後は分かりきったもので、白夜叉は蹴られた方向―――――つまりは地面に勢いよく体全体が叩きつけられた。
「ガァァア……ッッ!!!?」
地面には亀裂が走り、土埃が舞い上がる。
止めをさすために白夜叉の体を掴もうと近づこうとする夜鶴だったのだが、そう簡単には終わらないらしい。
白夜叉の回りに白く燃える焔の塊が漂い始めた。
夜鶴はそれを感知した途端に距離を取る。
「……夜鶴。おんし、誇るが良い……。
私にこの力を使わせた奴なぞ片手で数える程しかおらぬ。
―――――故にここからの私は本気じゃ……。
本気で……【白き夜の魔王】としておんしを叩き潰してやるぞ!!!」
立ち上がった白夜叉の回りには先程の白く燃える焔の塊そして紅々と燃える焔が漂い白夜叉を囲んでいた。
「それが白夜叉ちゃんの本気かい?」
「うむ。私自身この力を使うのは数千年ぶりだ……」
白夜叉は、懐かしげにそう語った。
「そっか……なら、まだ楽しめる……っ!」
夜鶴がそういうと白夜叉は再び獰猛に笑う。
「それは私のセリフじゃ!
この力を使うのだから……簡単に沈んでくれるなよ?!夜鶴ッ!!」
白夜叉の言葉が終わると同時に、その白い焔塊は密度を高め、球体を成し、夜鶴に向かって飛来して行く。
流石の夜鶴もそれを素手で迎撃するのは悪手と理解しているのか、周りの地形を利用して立体的に躱す。
「ほれほれ!!
逃げるだけでは私には勝てぬぞ!」
「そうだね……俺も逃げるのは趣味に合わないんだ!」
そう言った夜鶴は動くのをやめ、白い焔球を真正面で捉えた。
「―――――非常に強力な焔……『だからこそ』かき消せる」
言って、夜鶴は白い焔球を『素手』でかき消した。
「んなっ?!!
そ、そんな馬鹿な!?
その焔は私自身を司るモノじゃぞ?!
熱は優に摂氏1600万度を越える!!
そ、それを素手でかき消してしまうとは……おんし、何をした?!」
目の前で起きたことが信じられない、そう言わんばかりの白夜叉。
そんな白夜叉に対して、夜鶴は仕方なさげに口を開く。
「確かにそんな高温の焔を素手で触ったりなんかしたら火傷所か溶けてなくなりそうだね。
そう考えると負けるのは必然。絶対に勝利できない」
顎に手を当てながら頷いて話す夜鶴。
しかし、次の瞬間、夜鶴はにっこりと笑って舌を出した。
「―――――『だからこそ』勝てる。
高温の焔を素手で消すことなんて不可能―――――『だからこそ』消せる。
焔を触って溶けないことなんて有り得ない―――――『だからこそ』無傷」
夜鶴の口から出された舌には【逆】という一文字が書かれていた。
「これが俺の能力のひとつ……いや、此処では【恩恵】のひとつと言うべきかな?」
夜鶴の言葉に白夜叉はその【恩恵】を見極めようと頭をフル回転させる。
……が、しかし。
如何せん情報が少なすぎる。
白夜叉も思い当たるものが無かったのだろう。悔しそうにしながらも今はどう夜鶴を攻略するかという方へと思考をシフトさせた。
「また面白い【恩恵】を使うのぅ……」
「ふふふ……そうかい?」
2人はそう話しながらいつでも飛び出せる様な体制を取っている。
「何にせよ……そろそろ決着と行こうではないか」
「そうだね……こういうのはダラダラ続けるより、楽しいうちに終わらせるべきだよ」
互いの意見の一致。
にやりと笑う仕草までも一致させ、決着へと向かう。
互いの距離は一瞬で詰められるものではないほどに開いている。
ならば遠距離攻撃を行える白夜叉の方が有利。
そう考えたからこそ、白夜叉は夜鶴よりも先に、今度はかき消せないほどの焔を叩き込むべく動いた。
―――――先に動いたのは白夜叉
「喰らえ……ッッ?!!」
―――――その筈だった。
「……一瞬で詰められるものではない―――――『だからこそ』詰められる……」
「ッッ!!」
白夜叉は此処に来てやっと理解した。
夜鶴の【恩恵】がどんなものなのかを。
しかし、それよりもこの間合いは致命的。何とかバックステップで離れようとするが……それは叶わなかった。
むしろ、その場で後ろに倒れてゆく。
「な……ッッ?!!」
「読んでるよ?」
白夜叉の足が、夜鶴に踏まれていた。
そして、白夜叉は後ろに倒れゆく中で悟った。
―――――自分の敗けだと。
しかし、ゲームを終える気は白夜叉には無かった。
敗者は敗者らしく、その一撃を素直に喰らおう、そう考えたのだ。
夜鶴は後ろへと倒れる白夜叉の腹部に両手を添える。そして、全力で、突いた。
「不知火式……無刀……【
「が……ッッッ!!!!??」
【天月】の時同様に身体をくの字に曲げ、苦しそうな表情を浮かべる白夜叉。
しかし、今回は、地面に、
白夜叉はそれ以降一言として喋ることも、動くこともせずに、その意識を完全に飛ばした。
「―――――俺の勝ち、だね」
夜鶴の呟きはやけに響いた。
本編の方は如何でしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪(*´ω`*)
さて、今回の話ですが、リメイク前の作品とは大幅に変更してみました!!(>_<)
これが楽しんでいただけたのか心配です……(苦笑)
それでは今回はここまで!
また次回お会いしましょう♪(*´ω`*)