俺がリーンボックスに着いた時、そこにはネプギア達女神候補生、そしてアイエフとコンパが居た。
「トウカ!無事なんですか?」
「ああ………………」
何も言う言葉がない、言葉が見つからないのだ。保護者などと言われながらいざという時何もできてない。
「すまない……………」
「やめましょ、こんなこと言ってても仕方ないわ
「ごめんなさい……」
ネプギアが全員に謝った。ネプギアが悪いわけではない、だから謝る必要なんてないんだ。
「私が買い物のとき拾った石、あれがきっとアンチクリスタルだったんです………あの時……なんで目眩がしたか考えておけば……お姉ちゃんたちに知らせておけば……」
アンチクリスタル………そんなものがあったとはな。だが、あいつがいた以上アンチクリスタルが有ろうと無かろうと結果は同じだっただろうな。
「ネプギアのバカ!私のお姉ちゃんは強いのに………あんたのせいで………ネプギアが代わりに捕まればよかったのよ!」
「やめろと言ってるだろうが!!!!」
全員が俺を見る、声を荒げてしまった。
「すまん、だがそんなことを言い合っていても仕方がない。そもそも、アイリスが居る以上アンチクリスタルが無くても結果は変わっていないだろう」
「なによ!居なかったくせに!いつも保護者面してるくせに肝心な時にいないじゃない!それなのに………偉そうにしないでよ!」
そう言ってユニはどこかに行ってしまった。強く言い過ぎただろうか、全て………あいつの言うとおりだ。
◆◆◆
「あーもう暇〜!ゲームしたーい!」
「ちょっとネプテューヌ」
「私たちは今捕まってるのよ」
トウカ達が対策を練っている頃、ネプテューヌ達は相変わらず捕まっている。
「おい貴様!きちんと辺りを警戒しろ!高い金払ってるんだからな!」
「うるっさいわね…………そもそも私の契約は女神を捕まえるところまででしょ?それを勝手に延長したのはあなた、お分かり?」
「延長料金払ってるだろうが!」
「だから、私はあなた達が化け物って呼んでるあの男担当、女神候補生の小娘たちはあなたがなんとかしなさい」
そう言ってアイリスは地面に横になりながらあくびをしていた。不真面目極まりないが仕事をしているのでマジェコンヌは何も言えない。
「ふん、あの小娘どもが助けに来る訳ないだろう」
「来るわよ………あいつが育ててるのだから、それくらいの度胸はあるわ」
アイリスはどこか期待するような、そんな顔をしていた。
「…………むぅ」
「どうしたのよネプテューヌ」
「自分よりトウカさんのことを知ってる方が出て来たからやきもちを焼いているのではありませんか?」
「だって、私が一番だと思ってたのに!私にとってはあんなのポッと出の新キャラだよ!?それなのにトウカの事を語られたくないよ!!」
「うるさいわねぇ、寝れないじゃない…………」
ネプテューヌが怒っていると、警備そっちのけで眠っていたアイリスが目を覚ました。
「今何時だと思ってるのよ……良い子はもう寝る時間よ」
「うるさいよ!誰のせいでこうなってると思ってんの!?」
「私に負けた自分たちのせいでしょ?最近の女神って弱いのね」
その言葉を聞いた瞬間、四人全員が顔を顰める。自分が弱いと言われて腹を立てない人は居ないだろう。しかも、目を覚ましたのか懐から雑誌を読みながら言われてるのだから余計に腹が立つ
「っていうかお姉さん、もしかしてそれジ◯ンプ?」
「そうよ、今週号まだ読んでないのよね………」
「あー!そういえば私もまだ読んでない!後で貸してよお姉さん」
「嫌よ、自分で買いなさい」
「えぇー!良いじゃん!」
「ネプテューヌ、あんたいい加減にしなさい……」
敵に漫画雑誌を借りようとするネプテューヌにいい加減に腹を立てたノワールはこめかみをピクピクと動かしていた。しかし、そんなネプテューヌもついに聞きたいことをアイリスに問いかける。
「ねえ、お姉さんはトウカの何を知ってるの?」
「何でもよ、私と彼はずっと一緒に育って来たもの」
「じゃあトウカの好きなものは!?」
「甘いもの全般ね、何かを研究してる時の飲み物はガムシロップ、普段はイチゴミルクをよく飲んでるわね」
「くっ、じゃあ嫌いなものは!?」
「長い話と虫、食べ物は特にないわね」
完全に当てられてしまったネプテューヌは他に何かないかを考え始めた。自分が一番トウカのことを知っている、それだけは誰にも譲れない。
「じゃ、じゃあとっておき!トウカのほくろは何個!?そして何処にある!?」
「目の下の泣きぼくろ、耳、それから小さいホクロが股にあるから計3個ね」
「なんて3つ目知ってるのさ!!一緒にお風呂に入ってる私しか知らないはずなのに!!」
「だから、一緒に育ったって言ってるでしょう?お風呂だって当然一緒に入ってたわよ」
そんなバカな………そう呟いて縛られてもなお打ちひしがれるネプテューヌ、しかし彼女は諦めない。
「じゃあ逆に聞くけど、あなたは彼の何を知ってるの?」
「それは………い、色々だよ!!」
「聞かせて、一つ一つゆっくりでいいから」
ネプテューヌは悔しがりながら一つ一つ話していった。
「トウカは厳しいフリして本当はすごく優しくて、本当はすごく強いのにすぐ自分のことを卑下にする根暗で、無表情で、自分の感情を伝えるのが下手くそで、自分の事なんて何一つ大切にしないくせに………私や他のみんなのことばっかり考えて………何に苦しんでるのか全然話してくれなくて…………私たちの問題は勝手に背追い込むくせに自分の問題は私たちに何も背負わせてくれない………」
段々ネプテューヌの顔が暗くなって行く、よく考えてみれば自分はトウカの苦しみを何一つ理解できていないのかもしれない。
「私は………トウカにずっと笑ってて欲しいのに………トウカにも幸せになって欲しいのに、トウカは私が笑ってくれていればそれでいいって、何も話してくれない」
「ネプテューヌ………………」
ノワールは普段見ないネプテューヌの落ち込んだ顔を見て自分も自然と顔が険しくなる。
「きっとトウカさんは私たちに心配をかけたくないんですわ、それでも………もっと私たちを頼って欲しいですけど」
「私たちを大切に思ってくれているのはわかるわ、でも………私たちはいつまでも守られていたくない」
ベールとブランも、ネプテューヌとノワールと同じ気持ちのようだ。自分たちはトウカに敵として立ちはだかったことがある、しかし負け、トウカは守護女神戦争でネプテューヌの秘書、本当ならノワールたちの命を取ってもおかしくないのに、彼はそうしなかった。それほどトウカは優しい人間なのだ。
「ねえお姉さん、お姉さんはトウカが何に苦しんでるのか知ってるの?」
「ええ、知ってるわ」
「それは………トウカが不老不死になったことと関係ある?」
ネプテューヌは女神のため歳は取らないのはわかる、しかし人間であるトウカが歳をとらないことを流石に不審に思っているのだ。本来、トウカはネプテューヌよりもはるかに年上のはずなのにどうして今もなお20代の姿をしているのか、ネプテューヌは不思議で仕方がなかった。
「ええ、あいつと私が不老不死になったのはあいつ自身が産み出した物を使ったの」
「それは、なんなの?」
「聞いてどうするつもり?」
「私は、トウカの助けになりたい。私じゃ力になれない?」
「無理よ」
アイリスは迷うことなくネプテューヌの問いを否定する。否定されたネプテューヌは、否定されることを予想していても、面と向かって言われればさすがに辛い。
「あなたじゃ、いえ……あなただけじゃないわ。この世で彼の咎を背負うことができる人間は………もう私しか残ってないのよ」
◆◆◆
「…………………はあ」
「ここだったか」
「トウカ………」
夜、部屋の中に居られずテラスでリーンボックスの街並みを見ていたネプギアの元にトウカが現れた。
「あの、ユニちゃんのこと、怒らないであげてください」
「怒ってなんかないさ。むしろ、あいつが言った通り、俺は何もできなかった」
トウカは俯きながらそう言った。ネプテューヌを守れなかった事が相当こたえているらしい。
「あのアイリスって人……知り合いなんですか」
「ああ、前に話しただろう?」
「幼馴染の人……ですか」
「そうだ、一緒に育って、一緒に死線を潜り抜けた女だ」
トウカは遠い昔を思い出しながら話す、そんな彼の姿をネプギアは心苦しそうに見ていた。
「ネプギア、一つ頼めるか?」
「何ですか?」
トウカは、ネプギアを見ながら言葉を紡ぐ。
「今回、俺はきっとネプテューヌ達を助ける余裕はない。だから………お前達にネプテューヌを任せたい」
「私には……そんな事……」
「出来るさ」
トウカはネプギアをギュッと抱きしめる。
「お前はネプテューヌの妹で、俺の教え子だ。必ず出来る、自分を信じろ」
「でも……私変身も出来ないんですよ?」
「それは、お前が怖がってるからだ」
その言葉を、ネプギアは理解することができなかった。
「怖がってるって、モンスターですか?」
「いいや、もっと別のものだ」
「何なんですか?教えて下さい!」
「バカ、いつまでも俺に頼るな」
ネプギアの頭部にコツンッと軽いゲンコツが落とされる。
「そんな事までいちいち教えてられるか、それぐらい自分で気づけ」
「そんなの、分かりませんよ」
「はぁ、なら一つだけヒントを出してやる」
トウカはネプギアの目をまっすぐ見据えながら言った。
「お前がどれほど強くなろうと、お前がネプテューヌの妹であることに変わりはない、俺の教え子であることに変わりはない、だから………安心して強くなれ」
トウカは、微笑みながらネプギアにそう言った。その姿は夜空に照らされて神秘的な光景で、ネプギアは一瞬トウカの姿に目を奪われてしまう。
「ほら、早く!」
「わかってるわよ!」
誰かの声でハッと我に返ったネプギアは後ろを見てみると、ラムとロムに押されながらこちらに来るユニの姿であった。
「ユニちゃん………」
「仲直り、しよ?」
ロムがネプギアに手を差し伸べ、ネプギアはその手を取る。そしてユニやラムが手を合わせた。
「いい………過ぎちゃった。ごめんね?」
「ううん、いいよそんなの」
ネプギアは優しく、ユニのことを許す。
「トウカも、ごめん………ごめんなさい………」
「お、お前が謝ることなどないさ、全て言う通りなんだから」
珍しく慌てるトウカは必死にユニを泣き止まそうとするが、ユニの涙はさらにこぼれていく。
「本当はわかってる………二人のせいなんかじゃないって……わかってるのに!」
「もういい」
トウカが肩を支える。その顔は普段見せない、優しい顔つきだった。
「うん、もういいよ。気持ち、分かるから」
「泣きたい時は泣けば良いんだ、我慢なんてする必要はない」
「うう、うあぁぁぁぁぁぁ!!」
ユニはトウカの胸に顔を埋めて泣き出してしまった。トウカはただ泣きじゃくる少女の体をずっと抱きしめていた。
◆◆◆
泣き止んだユニはトウカから離れ、それを確認したトウカは教会の中に戻り、テラスにはネプギアたち女神候補生だけが残された。
「私………お姉ちゃんより強い人なんてトウカしか居ないと思ってた………トウカとお姉ちゃんさえ居れば心配無いって、そう思ってた」
「私もだよ、私もトウカとお姉ちゃんが居なきゃ何もできない、今だって何をすれば……」
「そんなの簡単じゃない!!」
ラムが明るい声で自分たちが姉を助ければいいと言い放った。ロムも、変身できないのであれば覚えればいいと、笑顔で言った。
「お姉ちゃんがね、私が変身出来ないのは心にリミッターを掛けてるからだって言ってた」
「心の、リミッター?」
「例えば、何かを怖がってるとか、そういう事よ」
ユニの言葉を聞いた瞬間、ネプギアの脳裏に先ほどトウカに言われたことがよぎった。
「トウカにも、同じこと言われた………何を怖がってるのか、それは教えてくれなかったけど、お前が変身出来ないのはお前が怖がってるからだって」
「トウカも同じことを…………」
「私………モンスター怖い」
「私も………………」
「でも、トウカはモンスターを怖がってるわけじゃないって」
「じゃあなによ」
「分からないけど………」
トウカに言われた言葉を心の中で何度も反復するが全く見当も付かない。自分は何を怖がっているのだろうか
「とりあえず……モンスターを倒す、練習しよ?」
「ロムの言う通りよ!みんなでモンスターが恐く無くなるように特訓しましょ!」
「いえ、モンスターじゃダメよ」
ユニが口を挟む、その顔は深刻そうだ。
「トウカも苦戦する相手よ、モンスターなんかじゃ無理よ」
「じゃあ、どうするの?」
ネプギアはすこし嫌な予感がしていた。こういう時のユニはなかなか無茶なことを言い出すのだ。
「居るじゃない、モンスターなんかよりも敵に回したら怖い相手が」
◆◆◆
「そういう訳だ、頼む」
「分かりました………」
教会内部に戻った後、トウカはイストワールに一つお願いをしていた。
「止めないんだな」
「止めたら勝手にリミッターを破壊して力を引き出しかねませんからね」
全てお見通しか、とため息をつきながらソファに腰掛ける。
「トウカさん、貴方が行ったことは確かに許されません、しかし貴方だけが悪いなんて、思わないでください」
「………いや、俺が悪いんだ」
「やり過ぎですが、貴方の怒りは当然の物です、私だって………怒ってないと言えば嘘になります」
イストワールは悔しそうに小さな拳を握り締める。あの時何もできなかった自分に、イストワールはトウカ同様苦しんで来たのだ。
「
「災厄の7日間を引き起こしたのは、赤黒の竜は俺自身から生み出された化け物だ」
「トウカさん!」
「どれだけ言葉を取り繕うと、あの災害を引き起こしたことに変わりはない。プラネテューヌの歴史から、俺の罪が消えることは
イストワールの瞳には女神を圧倒する強い男ではなく、いつか見た贖いきれない罪を課され、今にも消えてしまいそうなただの少年の姿が写っていた。
次回で第5話の内容まで行けるといいな………