「さて、いよいよ時間だ」
現在時刻は夜、アイリス達との約束の時間だ。しかも、女神が囚われているという写真まで流出してしまっている、こんな物が広まればシェアは下がってしまう。
「お前達にはこれから女神を救出してもらう、アイエフとコンパにも付いててもらうが………かなり危険だ」
「分かってます、でも………私は行きます」
「私もよ、このために今日一日訓練したんだから!」
「私だって、絶対お姉ちゃんを助ける!」
「私も、お姉ちゃん……助けたいっ!」
全員の決意を確認した後、微笑みながら順番に頭を撫でていった。
「アイエフ、コンパ、悪いがこの子達を頼む」
「はいです!」
「分かったわ、先生も気をつけてよね」
妹たちにしたように、2人の頭を撫でる。これで全て完了、あとは約束の場所に行くだけなのだが、そこでトウカの携帯が鳴った。アイリスからだ
「何の用だ」
「約束場所、離れ小島って言ったけど、予定変更して女神達が捕まってるところまで来て」
「構わんがなぜ急に?」
「寝ぼけて魔法弾撃ったら沈んじゃったの……」
トウカは最後までアイリスの話を聞かず通話を終了させた。こんな下らない理由で約束場所を変えられるとは流石に思ってなかったのだろう。
「どうしたんですか?」
「いや、決戦場所が離れ小島からネプテューヌ達の前に変わっただけだ。心配するな」
そう言ってトウカは部屋から出ようとした時、ネプギアが彼を呼び止めた。
「一つ約束してください」
「何をだ?」
「絶対………帰って来てください」
今にも泣きそうな顔でネプギアはそういった。彼女も薄々感じているのだろう、この戦いでトウカが居なくなってしまうかもしれないということを。
「………ああ、俺は先に行くぞ」
そう言って彼はテラスから飛び降り、瞬間的にネプテューヌ達が捕らえられている場所まで飛んだ。その姿をネプギアは心配そうに見ていた。
◆◆◆
「来たわね」
トウカがその場所に行くと、アイリスがアンチクリスタルの結界目の前に立っていた。そろそろ来る頃だと思っていたのだろう。
「女神候補生達は置いて来たのね」
「すぐに来るさ」
そう言いながらアンチクリスタルの結界を見上げるとネプテューヌと目が合った。何かを喋っているように見えるが何も聞こえない。
「ちなみに今結界の音声はミュートしてるから話しても聞こえないわよ」
「なるほど、それで?俺をこんな所まで侵入させて…雇い主に怒られないのか」
「倒せば問題ないわ」
彼女は何処からともなく一つのボトルを取り出し、グラスを一つトウカに投げて渡した。
「最後かもしれないんだから、一杯だけ付き合いなさい」
「珍しいな、お前がワインなんて」
「私だってもうお上品なお姉さまなのよ」
「お前がお上品?なら世の中の女は全員お上品だな」
「後でその舌引き千切ってあげるから覚悟しなさい」
そう言いながらボトルを開けてグラスにワインを注ぎ込んだアイリスとトウカはお互い地面に腰を落としてグラスをぶつけ合った。
「思い出すわね、戦場でいつも二人で飲んでた時のこと」
「ああ……よく覚えてるよ」
昔、戦が終わるとよく二人で飲んでいた時のことを思い出し懐かしい思いに浸りながら酒を飲む。その様子を見ていたネプテューヌとノワールが何やら騒いでいるが聞こえてこない。
「あら、ヤキモチかしらね?面白そうだから結界の音声出してみましょう」
そう言って何かを操作したアイリス、するとネプテューヌ達の声が聞こえてきたのだが、とてもうるさい。
「なんであんた敵とお酒なんて飲んでるのよ!?ていうかさっきから無視するな!」
「私たち放っておいてなんで呑気にお酒なんか飲んでるのさ!!さすがの私も怒るよ!気が長くて有名な私もいい加減怒っちゃうよ!?」
どうやらアイリスと仲良くお酒を飲んでいるトウカが気に入らなくて怒っているみたいだ。2人を見ているブランとベールは呆れたようにため息をついている。
「落ち着け、今は敵とはいえ久しぶりに会った幼馴染だ。少しくらいはいいだろう」
「それは……そうだけど……ていうかネプギアたちはどうしたの!?」
「安心しろ、あと少しで来るさ」
トウカがそう言った瞬間、近くで爆発が起きた。マジェコンヌが配備していた雑魚モンスターが次々にやられているみたいだ。
「おい!なぜこいつがここにいる!?お前は何をしていた!」
「瞬間移動でここまで来たから防ぎようがなかったの」
「瞬間移動だと………化け物め」
「お褒めにあずかり光栄だ」
「どうするッチュかババア、あんなのに勝てる気しないッチュ」
マジェコンヌとワレチューが結界前に駆けつけてくるが襲ってくる気配はない。トウカの威圧に気押されているようだ。
「貴方たちは女神候補生の相手をしなさい、私はこの男の相手をするわ」
「ふん、精々女神たちが死ぬまで時間を稼いでもらうからな」
そう言ってマジェコンヌとワレチューはネプテューヌ達を助けに来たネプギアたちの元へと向かい、再び結界前にはアイリスとトウカが残された。
「やっぱりあなたが育てただけあるわね…………自分の怖さの正体を知って女神化出来るなんて」
「誰の妹だと思ってる、ネプギアなら、いや……この女神たちの妹なら全員大丈夫だ」
「そう………さて、向こうも始めたようだし、こっちもそろそろやりましょうか」
「そうだな」
二人はワインを飲み込み空になったグラスを地面に置いた。その瞬間、お互いに地面を踏み込みお互いに剣を交えた。とてつもない剣戟により地面が陥没しえぐれてクレーターが結界前に発生する。
「うおおおおおおおおおおおおお!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
一回一回斬り合うたびに地面がミシミシと悲鳴をあげ、剣を振るった風圧によって近くにいたモンスターがどんどん消えてゆく。そして、アイリスの斬撃を防いだトウカはその隙を突いて炎の拳を腹部へと叩き込み彼女はその衝撃で遠くの壁へと激突する。
「タイラントラグルス!」
トウカは手の中にエネルギーを集めて巨大なビームへと変化させてアイリスへと追い打ちと言わんばかりに放つ。その衝撃により地面がえぐれアイリスがいた場所は木っ端微塵に吹き飛ばされていた。数分の戦闘でさえ、二人の戦いは地形を変えてしまう。
「どうした、その程度じゃないだろう」
トウカがそう言った瞬間、土煙の中から一つの剣が伸び彼の腹部を貫通する。そしてその剣は鞭のように変形していきUターンしてもう一度トウカの身体を貫いた。そのまま彼の体はぐんっと引っ張られ、アイリスの元へと強制的に移動させられた。
「敵を吹き飛ばした後に隙ができる、あなたの悪い癖よ」
アイリスはトウカの頭を掴みそこから高電圧の雷撃を発生させ、身体を麻痺させた後蹴り飛ばし剣を鞭のようにしならせてトウカの身体を連続で切り裂いてゆく。
「調子に、乗るなよ」
鞭のように襲いかかる剣の軌道を読んで自分の剣で防ぎ、躱した後アイリスが剣を集めようとしているのを見計らい手で刃を掴んで彼女の元へと近づき炎の拳を顔面へと叩きつけた。
「そのままっ!」
拳を叩きつけたと同時に踵落としを繰り出し、地面に手をついて身体を回転させて足払いで体勢を崩してそのまま剣で腹部を貫いて刃の部分を爆発させた。
「これで終わらせるっ!」
両腕が変化し赤黒い異形の腕へと変貌を遂げ、掌をアイリスに向ける。すると掌から巨大な炎のエネルギー砲が放たれとてつもない爆発と熱が辺りに広がる。
「はぁ、はぁ………」
「そろそろ体が温まってきた頃かしら!?」
「さあな!」
拳を振りかぶったトウカの腕をアイリスが手で弾いた後あらぬ方向へとへし折り、そのまま腹部へと膝蹴りを叩き込んだ後、彼の頭部へと向かい剣を振るう。とっさにその斬撃を躱すが完全に躱し切ることが出来ない。
「っ!?」
その様子を見ていたネプテューヌは思わず目を背けそうになると同時にこんな時に何もできない自分に対して怒りが込み上げてくる。
「ライトニングランス!」
そう思うネプテューヌをよそに戦いはさらに勢いを増していく。アイリスは空中に何本もの雷の槍を出現させ時間差でそれをトウカに向かい射出、うち数本が彼へと突き刺さった。
「思い出すわ、貴方と特訓した子供の頃」
「あの頃のお前はふわふわした女の子だったな」
「それ黒歴史だから言わないで」
へし折られた腕を戻し動くかどうか確かめるが、どうやら限定的にしか動かすことができないようだ。
「左腕、使えなくなったわね」
「いいハンデだろう?」
「そうね………子供の頃ならいいハンデになったかもしれないわ!」
アイリスは懐からナイフを投げつけ、トウカは剣を変形させ火花を散らし、刀身から炎を出しながら剣を上から下へと切り上げた。
「お返しだ」
瞬時に足元へと滑り込み、アイリスの右肩の付け根の部分を異形の足に変化させ炎を纏いながら渾身の力で蹴りつけた。アイリスの肩から鈍く嫌な音が聞こえ、彼女は右肩を庇うように雷で牽制する。
「はぁ、やっぱり貴方を相手にすると疲れるわ」
「俺も同じだ。こんなにボロボロになったのは何百年ぶりだろうな」
お互い剣を杖の代わりにして身体を支えている。
「でも、ここまで……私の勝ちよ」
「何を言って………」
アイリスはそう言うと結界を見るように促す、そこではもうすでにアンチエナジーの中に女神たちが取り込まれる寸前だった。
「ネプテューヌ!」
「トウカ!ベールとブランが!」
すでにブランとベールが体の半分以上アンチエナジーに飲み込まれてしまっている。
「もう遅いわ、アンチクリスタルは女神たちのシェアクリスタルとのリンクを邪魔するだけじゃない、行き場の無くなったシェアエナジーをアンチエナジーに取り込むことができる、さらに高濃度のアンチエナジーは女神をも殺す毒になるの」
「なんだと………くっそ!」
「やめなさい、あなたの力で結界を破壊すれば中にいる女神ごと木っ端微塵になるわよ」
現時点で結界を破壊できるのはトウカだけ、しかしそのトウカの力は強すぎる為直接攻撃すればネプテューヌ達ごと破壊してしまう。まさに八方塞がり、なす術がない。
「ハーハッハッハ!残念だったなお前たち」
女神候補生たちと戦っていたマジェコングが高らかに笑う、ネプギア達も突然の出来事に戸惑ってしまっている。
「トウカ!」
「ネプテューヌ!」
「あなたの相手は、私でしょ!」
ネプテューヌに気を取られた一瞬の隙をつき、アイリスは剣を伸ばし、彼の右目を貫いた。
「トウカァァァァァァァァァ!」
ネプテューヌの声は次第に小さくなり、そして姿が見えなくなった。完全にアンチエナジーに取り込まれてしまったのだ。
「ネプテューヌ…………………」
トウカはその場に膝をつき、うつむいて動かなくなってしまった。目の前で守ると約束したものが消えていったのだ、幾ら彼といえど辛くはないだろう。
「終わりよ」
アイリスはトウカに剣を向ける。
「これで、貴方が守るものはもう無いわ。貴方の生きる意味ももう無い。もう…………無理に生きていなくていいの、貴方を縛る枷はないんだから」
トウカのこの世に対する未練は今この時を持って全て断ち切られてしまった。確かに、彼の生きる意味はもうない。咎を背負って生きることも………罪に苦しみながら生きることももうしなくていいのだ。
「あなたの罪滅ぼしは終わったのよ、それともネプちゃんとあの子を重ねてたの?どちらにしても、もう終わったのよ………ナ」
アイリスは彼をトウカ、ではなく別の名で呼び、悲しそうに剣を振り下ろした。
「お前は幾つか勘違いをしている」
しかし、その剣をトウカは折れた左腕で掴んだ。
「あいつはまだ死んでない」
手から血が吹き出すことなど御構い無しと言わんばかりにトウカは剣を握りしめ足に力を入れて立ち上がる。
「あいつはこんな場所で死ぬわけないだろうが」
彼の目には光が失われておらず、むしろ光が強くなって見える。
「あいつはバカで、能天気で、サボり癖がひどくて、グータラで、そのくせ誰よりもプラネテューヌの国民の事を大切に想っていて、努力家で、底抜けに明るい……俺の一番大切な女神様だ」
微笑むことはあっても、決して笑う事のなかったトウカが、今………確かな笑顔でネプテューヌの事を話していた。
「そして何より………俺の………最高の教え子だ」
彼はいつになく誇らしげに話す。
「だから、あいつはこんな所で死んだりしない、必ず帰って来るさ」
そう言って、彼はアイリスの剣を握りつぶした。
「だから、そんな所で寝てないで早く起きろネプギア!そんな姿をお前はネプテューヌに見てもらいたいのか!」
彼の視線の先にはネプテューヌが消え打ちひしがれていたネプギアだった。しかし、今はもう違う、彼女は立ち上がり武器を構える。
「小賢しい、そんなことがあるわけがないだろう」
「良いか!自分たちの力が取り込まれるなら相手が取り込めないほどの力でねじ伏せろ、一人でダメなら仲間を頼れ、お前には大切な友達がいるだろう!」
「うん、そうだよね…………こんな所で負けられない!」
そして、ネプギア達の体がまばゆい光に包まれる。シェアエネルギーが限界以上に増幅しているのだ。
「本当に……しぶといわねあなたは」
「お前にだけは、言われたくない!」
アイリスとトウカ、武器を捨てお互いに顔面に向かい拳を放つ。トウカは炎を、アイリスは雷を纏った拳を放ち、お互いの体を吹き飛ばす。
「そろそろ終わりにしましょう、全てをね!」
「ああ、そうだな!」
そう言った二人はお互いに炎と雷を体に纏ってゆく。そして、体が異形の者へと姿を変えて行く。
「「ドラグーンインストール!!!」」
巨大な炎と雷が辺りを支配し、全てが治った時、そこには巨大な炎の翼を広げた人型の赤黒い竜と巨大な雷の翼を蝶のように広げた人型の青い竜がいた。
「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
お互いに手を天にかざし、そこから赤い円と青い円が出現しその中に巨大な炎と雷が出現した。巨大なエネルギーが二体の竜を中心に渦巻いてゆく。
「タイラントエクスプロージョン!!!!
「レイジングボルテクション!!!!!」
巨大な雷と巨大な炎とエネルギーがぶつかり合い、とてつもない爆発と閃光が広がった。
うーん、女神候補生たちの描写書いてないな………
あと、たくさんの感想本当にありがとうございます!
これからもたくさんの感想お待ちしております!