ネプテューヌの保護者的な感じの男   作:煉獄姫

16 / 84
第5話完結!長かったなぁ


泣き顔スマイル

ネプテューヌが目をさますと、そこは暗い暗い闇だった。体には力が入らず、何も出来ない。

 

(私……死んじゃったのかな?)

 

自分が死んだのか、そう思いながら闇の中で漂い続ける。あたりに人影はない、自分一人……まるで昔の様な孤独に苛まれる。

 

(やだなぁ…………怖いよ)

 

孤独、それはネプテューヌが一番恐れるものだ。彼女は友達や妹たち、そして国民の皆がいるからこそ存在していられる。

 

(トウカ………………)

 

彼女は心の中で一番大切な人間の名を呼ぶ。今まで自分のそばにずっといてくれた人。親代わりであり、自分に全てを教えてくれた師でもあり、心から愛している存在だ。

 

(大丈夫………なのかな)

 

彼女が最後に見た彼の光景は目を貫かれるという衝撃的なものだ。今、トウカがどうなっているか分からない。

 

(トウカ…ネプギア……みんな……)

 

トウカを昔から知っている彼女だからこそ、トウカを心配してしまう。彼は放っておくと勝手に消えてしまう、だからこそ放って置けないのだ。ネプギアも、まだまだ子どもで甘えん坊だから………自分が見ていないといけない。だが、ネプテューヌ自身も甘えん坊ではないといえば嘘になる。未だに、彼女はトウカにずっと甘えてしまっている。

 

「終わりよ」

 

不意に声が聞こえてくる、するとそこにはトウカとアイリスがいて、彼女は彼に剣を突きつけていた。ネプテューヌは必死に体を動かしトウカの元へと行こうとするが動かない。

 

「これで、貴方が守るものはもう無いわ。貴方の生きる意味ももう無い。もう…………無理に生きていなくていいの、貴方を縛る枷はないんだから」

 

貴方を縛る枷、その言葉を聞いた瞬間ネプテューヌの胸が苦しくなる。自分はトウカの重りになってしまって居たのだろうか。自分が居るから………トウカはいつまでも辛い思いをしながら生きているのだろうか。自分は、トウカにとって何なのだろうか。それが、ネプテューヌには分からなくなってしまった。

 

「あなたの罪滅ぼしは終わったのよ、それともネプちゃんとあの子を重ねてたの?どちらにしても、もう終わったのよ………ナ」

 

あの子と重ねて居た。ということは自分はトウカにとって誰かの代わりなのだろうか。そう思うと涙が出てきそうになる。自分は、トウカにとって不必要な、邪魔存在なのではないか………そう思っていた時だ。

 

「お前は幾つか勘違いをしている」

 

トウカの声が聞こえてきた。その声はいつものような穏やかな声ではなく、はっきり聞こえる凛とした声だった。

 

「あいつはまだ死んでない」

 

そう言ってトウカはアイリスの剣を掴みながら立ち上がる。

 

「あいつがこんな場所で死ぬわけないだろうが」

 

その手からは血が噴き出すが、トウカは剣を握ったまま立ち上がる。

 

「あいつはバカで、能天気で、サボり癖がひどくて、グータラで、そのくせ誰よりもプラネテューヌの国民の事を大切に想っていて、努力家で、底抜けに明るい……俺の一番大切な女神様だ」

 

その時、ネプテューヌは見た。

 

「そして何より………俺の………最高の教え子なんだから」

 

かつて、自分が女神になった日に向けられた、いつものトウカからは考えられない、トウカの華やかな笑顔を。その笑顔を見た瞬間、すべての心配や不安は拭い去られた。先ほどの孤独などない、暖かい何かが胸の中に感じる。そして、今ならわかる。自分は一人ではなく、ノワールやブラン……そしてベールが近くにいることを。

 

「だから、あいつはこんな所で死んだりしない、必ず帰って来るさ」

 

そうだ。こんな所で死んで居られない。

 

(絶対………帰るんだ、みんなのところに!)

 

 

◆◆◆

 

トウカが目を覚ますと、そこには焼け野原が広がっていた。辺りには誰もいない、空を見上げるとネプギア達がアイエフとコンパを抱き上げて飛んでいた。

 

「はぁ……………ボロボロだな」

 

制御したとはいえこれほどの爆発、もしアイエフたちが巻き込まれてたらと思うと怖気がする。自分の甘さを痛感した。

 

「俺が生きてるということは、お前も死んでないんだろう?」

「えぇ、なんとか生きてるわよ」

 

トウカが倒れているはるか前方にアイリスもズタボロになりながら倒れていた。

 

「ようやく分かったよ………お前がどうしてこの仕事を受けたか」

 

ずっと気にはなっていた。アイリスは強い心を持っている、さらに今では一騎当千の力を持っているのだ。気に入らない仕事は受けないだろう。

 

「本当は………俺を殺して自分も死ぬ気だったんだろう?」

「………ふん、お見通しってわけね」

 

アイリスは引き捨てるように言いながら立ち上がる。

 

「俺を殺す事によって、俺を罪から解放しようとしてくれてたんだろう」

「話だけ聞けばただのヤンデレじゃない」

 

クスッと、二人は笑う。アイリスは苦悩を背負って生きているトウカの人生を終わらせることによって苦しみから解放しようとしていたのだ。普通の人間が聞けば正気の沙汰ではない、だが………この二人だからこそこの理屈は通る。

 

「もう許されてもいいじゃない、何百年引きずってるのよ。あんたも悪い、国民も悪い。それで、手を打ちましょう?」

「だが……………俺はあの子との約束を破ってしまった。それが、一番辛い」

 

彼は一つ、幼馴染の女の子と約束を交わしていた。それは、その子がまだ国民から愛されていた時のことだ。

 

「「俺に何かあったら、俺の代わりにプラネテューヌを守ってくれ」」

 

二人はその約束を同時につぶやいた。その記憶は、今もなお2人の記憶に鮮明に残っている。

 

「その約束で苦しみながら生きてるあなたを………見てられなかった」

「なんで苦しんでるって分かったんだ?」

「ネプちゃんたちを助けに来た時、目を見た瞬間に分かったわ。心の中で、ずっと苦しんで来たんでしょう?」

「ふう、隠し事はできんな」

 

自傷気味に苦笑するトウカはふらふらと立ち上がった。

 

「私だって、少しだけ悪いかなって思ってるのに………誰よりも優しいあなたが苦しんでないわけないじゃない」

 

その微笑みは、昔見た彼女のものと変わりはなかった。長い時を生き、いろんな経験をしても、どれほど捻くれてようと、何も変わりはしなかった。

 

「ありがとう………心配してくれて」

「貴方も貴方でおかしいわよね、殺そうとした相手に感謝するなんて」

 

自分のことを心配してくれている、それを分かっているからこそトウカはアイリスに感謝の言葉を掛けられる。

 

「だが、ただ殺されるわけにはいかないんだ」

「そう、ならどうすればいいか分かるわよね?」

 

二人はすっかり平坦になってしまった地面へと足を延ばす。そして、それと同時にアンチクリスタルで出来た結界が破壊された。

 

「お姉ちゃん!」

「上よネプギア」

 

ネプテューヌの声が上から聞こえてくる。すると、そこにはネプテューヌだけでなくノワールやブラン、ベールの姿があった。

 

「ほらな、あいつがあんな所で死ぬわけがないだろう?」

「ほんとね………さすがはあなたの一番の教え子だわ」

 

二人は女神たちを見てそう呟いた。ネプギア達はネプテューヌたちに駆け寄って泣き出しながら抱きついていた。その光景を、トウカは目に焼き付けている。

 

「本当に帰れると思うの?あんな平和な所へ」

「さあな………帰れなくてもいいさ」

 

そして、トウカはアイリスへと言い放つ。

 

「俺はあの子達の笑顔が見れたらそれでいい」

 

普段見せない、いつも見てた、いつまでも見たかった笑顔がアイリスの目の前にあった。だが、アイリスは同時に胸を締め付けられる。結局、トウカは自分の幸せを考えてなどいない、人の………ネプテューヌ達の幸せしか考えてないのだ。

 

「結局………あなたはっ!」

 

アイリスはトウカへ向かい駆け、残った左腕で顔面を殴りつける。しかし彼は倒れず残った右腕でアイリスの腹部を殴る。

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」

 

2人の拳が交差し、お互いの頰へとぶつかり、戦いの火蓋が再び切られた。

 

◆◆◆

 

トウカたちの戦いをネプテューヌ達は少し離れたところで固唾を呑んで見守っていた。

 

「おいっ!手伝わなくていいのかよ!」

「そうよ、もう手負いなんだからみんなでやれば……」

「ダメよ………手を出しちゃダメ」

「ネプテューヌの言う通りですわ、ここは黙って見守りましょう」

 

ノワールとブランはトウカの戦いに加勢しようとするがベールとネプテューヌがそれを止める。

 

「ここはトウカさんに任せた方がいいと思います。きっと、お互い譲れないものがあると思うから」

 

ネプギアも心配そうに見つめるが、加勢しようとは一切しない。必ず帰ってくるという約束を守ってくれると、信じているからだ。

 

「トウカはきっと………帰って来てくれるわ」

 

ネプテューヌは信じて彼の帰りを待つ、トウカが信じてくれたのだ。それならば自分も信じなければならない。自分はトウカの最高の教え子なのだから

 

◆◆◆

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

トウカは下から放たれた拳をバックステップで躱し右足を軸にして裏拳を叩き込むがアイリスは吹き飛ぶ途中でトウカの顎を蹴り上げ、受け身を取り腹部を殴りつけ吹き飛ばした。

 

「私があなたの一番嫌いな所を教えてあげるわ!」

 

アイリスの蹴りがトウカの足を捉え地面へ倒し、そのまま馬乗りになって顔を殴り続ける。

 

「何でもかんでも自分のせいにして!一人で全部抱え込んで!何も相談しないで一人で苦しんで!自分の幸せなんて一切考えないで人の幸せだけを願うそんな所が一番大嫌いなのよ!」

 

トウカはアイリスの拳を防ぎ頭突きで馬乗り状態から脱出し、腹部に蹴りを繰り出して吹き飛ばすが、それに屈せずもう一度トウカの元へ駆け出し殴り合う。

 

「それは違うぞプルルート」

 

トウカは彼女のガードを崩し

 

「あの子達が幸せであることが、俺の幸せなんだよ」

 

彼女の頰へと全力で右ストレートを叩き込んだ。

 

「ふざけないでよ………………ふざけないでよ!」

 

彼女の目から涙がとめどなく溢れて行く。

 

「そんなの………………そんなの、あなたが救われない!報われないじゃない!」

「それで良いんだ」

 

トウカの目は先ほどまで戦った強い目ではなく

 

「報われなくても、救われなくてもいい。ただ……俺のような男が居たと、ほんの少し頭の片隅に覚えてくれていればそれでいい」

 

親友に向ける優しい眼をしていた。既にもう、トウカはアイリスを敵とは思っていないのかもしれない。

 

「………やっぱり、私はあなたの考えが気に入らないわ」

「なら、やる事は分かってるだろう?」

 

二人はお互いは微笑み、残った腕でお互い炎と雷が纏われる。

 

「お互い、考えることは一緒みたいね」

「あいつの技をこんな事に使ったと知れたら絶対に怒られるがな」

 

そうお互いに言い合った後、同時に地面を蹴り駆け出す。お互いの想いをかけ、己の想いを放つ。

 

「「夢幻粉砕拳!!」」

 

炎の拳と雷の拳、剣のように伸びたお互いのエネルギーは二人の腹部を貫いた。

 

「終わりだ………………」

「そうね……………私はまた………」

 

そして、二人は地面へと倒れる。身体中ズタボロになり、傷口から血が溢れ出しており、普通ならば出血多量で死んでいるだろう。そんな二人の元へとネプテューヌ達は駆け寄る。

 

「トウカ、トウカ!」

「遅かったな………ネプテューヌ………」

 

目を少しだけ開けながら優しく右手でネプテューヌの頰へと優しく触れる。その手は血だらけでネプテューヌの頰を赤く染めるが、彼女はそんなことを気にせず彼の手を優しく包み込んだ。

 

「頑張ったな………みんなと一緒に………」

「それは……トウカの声が聞こえたから、だから私……頑張れたの……」

 

ボロボロと大粒の涙を流しながらそう言うネプテューヌの言葉を、トウカは優しく否定する。

 

「それはお前の、お前たちの力だ。俺の力じゃない」

「それはそうかもしれないけど、それはトウカが勇気をくれたから、だから……だから」

 

そう言い終わる前にトウカはネプテューヌの頭を優しく抱き寄せる。その胸に顔を埋めながらネプテューヌは声を殺して泣く。

 

「もう泣くな、お前に涙なんて似合わない」

 

優しく頭を撫でながら、慈愛に満ちた声でネプテューヌに語りかける。

 

「お前にはずっと……笑ってて欲しいんだ」

 

その言葉を聞いたネプテューヌは、ゆっくりと顔を上げてトウカへと言い放つ。

 

「怪我が治ったら、一杯甘えるから…覚悟しなさい」

 

普段の笑顔ではない、涙を流しながら微笑むその笑顔を見たトウカはゆっくりと目を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の笑顔を見られただけでも、自分が頑張った甲斐はあったのだと。




次回からようやく……ようやく日常パートを書ける。シリアスモードはもう疲れた……
たくさんの感想お待ちしております!全ての感想に必ず返信いたしますのでよろしくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。