ベールとユニを躱したトウカたちだが、建築現場から外に出ることはしなかった。もうすでにほかの皆が集まってきているからだ。今逃げても後ろから迎撃されてしまう可能性があるため、あえて待ち伏せして各個撃破しようと考えたのだ。
「さてと、これからどうするの?優勝者は二人までって言ってたけど」
「まあ、ゲームでは負けたくはないだろう?」
「もちろん♪」
そう言ってトウカとアイリスは拳を突き合わせてそれぞれの担当場所へと向かう。トウカはヘビースナイパーライフルを構えて屋上、アイリスは先ほどベールの持っていたアサルトライフルを構えて2階部分で待機だ。
「トウカ、地上から車に乗って二人よ。多分ノワールちゃんとブランちゃんね」
「そうか…………こっちは異常無しだ。手伝うか?」
「いいえ、大丈夫よ」
アイリスは2階部分からノワールとブランに話しかける。
「あら、珍しいコンビね?」
「まあな、お前らだけには負けられねぇ」
「そういう訳だから………勝たせてもらうわ!」
「へぇ、山岳地帯で山から落っこちた女神と描写もされなかった女神のコンビ……どこまでやれるかしらね?」
「「言うな!!」」
メタ発言をするアイリスに向かいノワールはライトマシンガンを発砲する。しかし彼女の射撃スキルは0、反動が大きいマシンガンなど当たるはずがない。
「射撃スキルはGTAでは必須なのよ!」
そう言って発砲が終わった瞬間、カバーしてたところから体を出してアサルトライフルを彼女たちに向かい撃とうとするが、そこにはノワールしかいない。
(ブランちゃんは…………)
アサルトライフルを発砲しながら考える。たしか二人の射撃スキルは0、それゆえ長距離攻撃はして来ないだろう。そうなれば近接攻撃しかない、ならば近づかなければならないだろうが………
(待って………じゃあなんのためにノワールちゃんは私に射撃を…………はっ!そういう事!?)
アイリスは危険を感じ後ろに銃を構えるが既に遅い、後ろにはもうブランが近接武器を構えながらこちらに向かっていた。
「危なっ!」
「ちっ!」
何とか避けて距離を取り弾幕を張って間合いに近づかせないようにする。
「そう言えばブランちゃんもステルス70だったわね」
先ほどのノワールの射撃はフェイク、全てはブランをアイリスの元へ届けるのが狙いだったのだ。
(油断したわね……まさか私たち以外にもこういう戦法を取ってくるなんて)
まさかさっき行った作戦をもう一度違う形でぶつけられるとはさすがに思ってはいなかった。それゆえノワールとブランの侵入を許してしまったのだ。
「無駄に硬いのばっかり集まって………あっ、ブランちゃんは絶壁だから硬いのは当然よね」
「ぶっ殺す!」
しかし、それを持ち前の軽口と経験で振りを悟られないようにする。相手は射撃スキル0、どのみち近づくしかない。だがアイリスの装備はアサルトライフルの弾が100発、ハンドガンが残り50発と心許ない。
「トウカ、そっちはどう!?」
「問題ない」
しかし屋上からはとてつもない爆発音が聞こえてくる。明らかに問題ないことはない。
「上で何やってるのよ!」
「ネプギアがハザード攻撃ヘリで襲撃してきただけだ」
「大問題じゃない!?」
ハザード攻撃ヘリとはミサイルや機関銃などで武装したヘリの事である。
「こっちは二人に追いかけられてるわ!玉も残り少ない!」
「そうか、なら屋上へ来い」
「なんか考えがあるの!?」
「考えもなしに言わんさ」
その言葉を信じ、アイリスは屋上へと続く階段を駆け上がる。そして屋上へと出た瞬間見たものは
「当たるなよ!」
出入り口にロケットランチャーを向けるトウカの姿だった。発射される瞬間アイリスは右に飛び込み
「「なぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」
出てきたノワールとブランの二人に砲弾が直撃した。当然いくら体力があろうと人間の体がロケットランチャーの直撃に耐えられるわけがない。このゲームはそれほど忠実にできているのだ。
「それで?なんでああなってるの?」
「知らん」
ノワールたちを撃退した後室内へと一旦退避する。ネプギアは半ばヤケクソ気味にトウカたちのいる建設ビルを攻撃していた。
「知ってましたよ!私があんまり人気無いことぐらい分かってましたよ!?だって主人公なのに7位だし!私が活躍したBirth2とVⅡにはトラウマ級のバッドエンドが用意されてるし!二つとも私が一番の当事者だし!」
ミサイルなどを撃ちまくりながらヘリの中で暴れまわっているネプギア、その光景に2人は少し唖然としながら見ていた。
「昨日アイリスさんに『ギアちゃんって銀魂の新八と同じくらい個性無いわねぇ、あっ、でも眼鏡がある分新八の方がマシか。あはははははは!』って言われましたし!」
「言ったかしら………あっ、お酒入ってたから覚えてないかも…………」
「お前そんなこと言ったのか………」
トウカはアイリスに批難の目線を送りながらネプギアの攻撃を警戒する。
「トウカさんもこの前私のどこが好きですかって聞いたら『普通な所だ』って言われましたけど普通な所って何ですか!?それだけですか私は!?良いですよ辞めてやるよ清純派ヒロインなんて!そもそもツンデレとかロリとか巨乳とかいる中で清純派ヒロインなんか目立たないし!もう私後付け設定でもいいから写輪眼とか直死の魔眼とか複写眼とか欲しいんですよ………」
(平たく言えば魔眼が欲しいの?)
アイリスがそう考えていると、突如ネプギアのヘリが炎に包まれ墜落した。アイリスの横には無言でロケットランチャーを持っているトウカがいた。
「あなた………仮にも教え子撃ち落とす?」
「もうあんなネプギアの姿を……見ていられなかった……」
うっ……………と目を抑えながらしゃがみ込み震声でロケットランチャーをアイリスへと託した。ゲームとはいえ教え子を問答無用で撃ち落としたものを持っていたくは無かったのだろう。
「いや、私これどうしたら………」
ロケットランチャーを託されても何に使えばいいか考えていたところ。
「お前……………女神の妹を撃ち落とすか?」
「ちょっと!なに私に濡れ衣着せようとしてるのよ!?」
アイリスはネプギアが乗っていたヘリを問答無用で撃ち落とした。
「コラ!地の分まで細工しない!」
ふざけるのはここまでにして
「さてと、あと一人ね?」
「ああ……………」
最後の一人、それは既に屋上の出入り口に立っていた。
「………………ねぇ」
「どうしたネプテューヌ」
ネプテューヌは少し不機嫌そうに言った。その手には刀が握られている。
「私がここに来るまでにもう全員やられてるの?」
「そうだが?」
「どうしてよ!ちょっとくらい残してくれてもいいじゃない!ここに来るまでに3台は車を廃車にしたのに!」
((車の運転下手くそか))
プンスカと怒るネプテューヌにトウカ達は呆れるが、本人はゲームに参加できなかったことがご立腹のようだ。
「私だってみんなと遊びたかったのよ!?」
普段落ち着いているネプテューヌ(パープルハート)がゲームに参加できなかっただけで怒る、それを国民が見たらきっと呆れて涙が出るに違いない。
「まあネプちゃんが車の運転下手くそなのが悪いんじゃなぁい?」
「だって運転10だもの!そんな状態でスポーツカーに乗ったらそうなるわよ!挙句パトカーにぶつかって追いかけられるし……もう!」
「じゃあなんでスポーツカーに乗ったんだ?」
「カッコ良かったから」
真顔でそう答えるパープルハートにはぁ、とトウカはため息をついた。
「とにかく、私は必ずトウカとお姉さんを倒して、トップになってみせるわ!」
「あらそう?」
「分かった」
そう言ってトウカとアイリスはネプテューヌに向かいアサルトライフルを向ける。
「えっ…………もしかして二対一?」
「「正解」」
そうして2人はアサルトライフルをネプテューヌに向かい発砲、かくしてこのゲーム勝負はアイリスとトウカの優勝で終わったのだ。
◆◆◆
「バカァァァァァァァァァぁぁぁぁ!!」
「いきなりなんだ?」
現実世界に戻るといきなりネプテューヌが殴りかかってきた。一体どうしたんだ。
「なにあれズルイよ!私今回主人公なのに何もしてないじゃん!描写されてない所で警察に追いかけ回されて大変だったんだからね!」
「仕方ないだろう、まさかお前があんな馬鹿正直に突っ込んでくるとは思わなかったんだから」
作戦を立ててネプギアと二人で来るかと思ったらまさか一人でくるとは思わなかった。そもそも俺とアイリスがチームを組んでいると分からなかったのか?
「まあまあネプちゃん、そんな事気にしないで。ねぇギアちゃん?」
「あの、私途中から記憶がないんですけど…」
「気にしなくていいのよ」
ネプギアはしばらく考えていたが嫌な予感がしたのか思い出すのをやめたようだ。今はおとなしくアイリスの腕の中に収まっている。
「まあまあ落ち着け、帰ったらゲームに付き合ってやる」
「トウカのプリンも頂戴」
「…………分かった」
「やったぁ!!!」
「現金な奴め………」
こうして、俺たちのゲーム勝負は終わりを告げたのだった。
ギアちゃんが完全にキャラ崩壊……