比企谷八幡 「・・・もう一度会いたかった」   作:TOAST

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※公序良俗に著しく反する内容を含みます


28. 比企谷八幡は京都で汚れる

 

 

文化祭明けの代休が過ぎた水曜日、俺は若干憂鬱な気分で登校することとなった。

文化祭での一件は既に結衣や沙希にも知られている。

雪乃を含め、あの時自分の取った行動の真意を彼女たちにどう説明すべきか、そんなことばかり考えていた。

そして、2限目終了のチャイムが鳴る頃に気が付いた。

どうやら周囲の生徒が俺に関する噂話をしている。文化祭実行委員の副委員長による横領疑惑。生徒が盛り上がるためのネタとしては、話題性は充分だ。

ふと結衣と沙希を見ると、二人は噂話に沸き立つ生徒の中で困ったような表情を浮かべていた。

――こりゃ、話しかけられるのは部活が始まってから、か

今俺が二人に話しかければ、彼女達も奇異の目に晒されることになる。

俺は久々に机に突っ伏して寝たフリをし、時間が過ぎるのを待った。

 

 

「あら、よく部活に顔を出す勇気があったわね、横領犯君?」

授業後、部室へ行くタイミングを窺いながらしばらく校内をプラプラした後、勇気を出してドアを開けた俺を待っていたのは雪乃による辛辣な挨拶だった。

「…ヒッキー」 「…比企谷」

同じく既に部室にいた結衣と沙希は、複雑な表情で俺を見ていた。

「雪ノ下…俺が聞くのも変な話だが、もう大丈夫なのか?」

「まるで私が何か問題を抱えているようなその聞き方、大変遺憾だわ。思い上がらないで欲しいわね」

――いや、だって、泣いてたって…

 

そう思いながら、あの時平塚先生に電話をかけてきた結衣を見る。

彼女は視線が合うと、ムスッとした表情を浮かべる。それは沙希も同様だった。

一方、雪乃はふっと笑いながらそんな軽口を口にし続ける。

雪乃のそれが強がりであったとしても、今の俺にはその言葉が有難く感じられた。

「…そうか、あんがとな」

俺は、抱えていた緊張の原因の一つがフッと解けたのを感じながら、雪乃の対応に感謝の言葉を述べた。

「あんがとな、じゃないし!バカヒッキー!今日は学校中でヒッキーの悪口が聞こえてきて…あたし達本当に…何であんなことしたのさ!?」

俺の言葉に対し、結衣が怒りを露にした声を上げた。

「アタシもちゃんと教えて欲しい…そんな自分を犠牲にするようなやり方されて、心を痛めたのは雪ノ下だけじゃないんだよ…」

沙希も悲しげにそう呟いた。

――もうやめないか、自分を犠牲にするようなやり方は

そしてふと、昔、葉山に言われた言葉を思い出す。

当時の俺にしては珍しく、その言葉を聞いた時に激昂し、葉山に食い下がった情景が脳裏に浮かんだ。

「…お前たちに嫌な思いをさせたことは謝る。だが、俺には自分を犠牲にしたつもりなんかねぇよ。それだけは勘違いしないでくれ」

「意味わかんないし!」

結衣は再び大きな声で、俺に対する苛立ちを示した。

「お前らには、俺が打算的な期待を込めて、これ見よがしに"犠牲者"を気取ってるようにでも見えてんのか?」

「「「!!」」」

俺の言葉に3人は固まった。

「そんなこと…アタシ達は…」

3人のうち、偶然俺と目が合った沙希が、気まずそうに視線を外しながら呟く。

「俺はあの時、自分が欲しいものを手に入れるために自分の意思で行動したんだ。確かにそのための対価として、本来自分が計算に入れて然るべきの"見落とし"はあった。それはお前達にかける心配であったり、平塚先生にかける迷惑だったり…そのことについては、この通り、謝る」

俺はそう言って3人へ深々と頭を下げた。

全ての行動は雪ノ下雪乃の成功という俺が掲げた目標の実現のため。

それは俺自身の欲求に基づいて自ら下した投資判断とも言える。

そこには俺が犠牲者として他者から憐れまれるような要素は介在しない。

憐れみは、そんな俺の意思そのものを、否定し侮辱する行為だ。

槙村さんや宮田さんは、俺のその判断には、他者への配慮と合理性が欠如していた点を指摘した。だがそれは俺の主体性を否定するものでは決してなかった。だから俺は素直にそれに納得して受け入れたのだ。

我ながら我侭だとは思う。

だが、彼女達にまで、いや、彼女達だからこそ、自分が憐れまれるようなことは、俺には絶えられなかった。

「…二人とも、もう十分でしょう」

沈黙を破ったのは雪乃だった。俺はその声を聞いて、ゆっくりと顔を上げる。

結衣と沙希は完全には納得していない表情であるも、その声に頷いた。

「…私からは、念のため一言だけ言っておくわ。いくら自主的な判断とは言え、貴方のその"対価"の計算には、貴方自身のことが含まれていない。私達が気に入らないのはその点なのよ。今後、きちんと認識しておいて貰えるかしら?…そうでなければ、私達、浮かばれないじゃない」

「…ハイ」

俺は彼女の眼力に、思わずそう言って頷いた。

「…じゃあ、アタシからも1つ質問していい?…今思い返せば、夏休みの鶴見の件もそれに近いやり方だったと思うんだけどさ…比企谷が今までにこんな方法で問題を解決したケース、一体どのくらいあるの?」

俺はそんな沙希の問い掛けに対し、素直に過去を振り返った。

が、正確な回数など思い浮かばない。正直、昔の俺に思いつくことのできた方法は、似たようなものばかりだったように思われる。

だが、そんな中でも比較的鮮明に思い起こすことができる記憶が2つあった。

「…2回くらい…俺だって、しょっちゅうこんな真似してるわけじゃねぇよ」

「その2回、詳しく説明して!今すぐ!」

サバを読んでいるような気分でその数字を伝えたところ、結衣は間髪入れずに俺にそう命令した。

「おい、回数聞くだけじゃねぇのかよ?」

「それで済ますわけ無いでしょ」「そうだよ…ヒッキーのバカ」

思わず文句を言った俺に対し、沙希と結衣はそう詰め寄った。

「…分かったよ」

俺は3人に話し始めた。

「1つ目は、ちょうど今回と同じ文化祭の出来事だ…」

実行委員長に立候補した相模南。そして彼女が奉仕部へ持ち込んだ依頼。それは委員長の職務のサポートだった。

しかし、委員長としての自覚が欠如した相模に加え、雪乃の姉、雪ノ下陽乃による横槍で運営は破綻しかけ、雪乃は一時的に体調を崩す。

文化祭当日、案の定、委員長としての業務を十分にこなすことができず、全校生徒の前で恥をかいた相模は、最終日の集計結果を持ち一人逃避した。

屋上で相模を見つけた俺は、遅れてやって来た葉山と相模の取巻きの前で、彼女を徹底的に貶めた。俺は葉山を利用し、彼女を会場へ連れ戻させ、文化祭を何とか無事に終わらせることができた。

「…んで、結局今と同じ、俺は校内一の嫌われ者になったわけだ…あれ?ひょっとして俺、やっぱり高校生の時から進歩できてないんじゃ…」

俺はバツの悪さを誤魔化すようにそう言っておどけて見せるが、3人の視線は冷やかだった。

「…バカなんじゃないの」「ホント、バカ…」

「同じ文化祭でも、只の嫌われ者から横領犯へ、大出世したわね?…そう言えば、二人にはまだ伝えていなかったのだけれど、この男 "今回" は文実でその相模さんに告白されて、見苦しいくらいに動揺していたわよ」

「あ?」「ハ?」

突然の雪乃の報告に対し、結衣と沙希は眉間に皺を寄せ、今までに聞いたことも無いくらい低い声で俺を威嚇した。

「い、いや、動揺なんかしてねぇよ。それに、ちゃんと断ったのお前も聞いてただろうが!」

「どうだったかしら?」

結衣と沙希が不機嫌になったのは、火を見るより明らかだった。

慌てる俺を尻目に、雪乃は"ザマァ見なさい"といった表情でほくそ笑んでいる。

「…もう一つは!?」

言葉を失った俺に対し、結衣が乱暴にそう尋ねてきた。

「へ!?」

俺は意図せずも、すっ呆けるような声を上げてしまう。

――いや、こんな状況で、話せるわけねぇだろ

同じく過去の高校時代における、修学旅行での一件を思い返しながら、俺は背中に嫌な汗をかいた。

「だから、その文化祭の話の他に、もう一つやらかしたケースがあるんでしょ?早く吐いた方が身のためなんじゃない?」

「そうね。もしも嘘をついたり、誤魔化すような真似をしたら…」

沙希は俺を睨み付けながらそう凄む。

一方、雪乃は突如机の上に置かれていたペンを手に取って静かにそう言った。それは明らかに物を書くための握り方ではなく、俗に、"刃物で人を刺したときに罪が重くなるとされる持ち方"だった。

「わ、分かった。分かったから…それ、置いてくれる?」

俺は再び過去の話を始めた。

それは同じクラスの戸部という男子生徒から受けた依頼に端を発する。

その依頼内容は、奴が同じグループに属する女子、海老名さんへの告白の場を取持って欲しいというものだった。

一方、当の海老名さんは、戸部の自身に対する好意を敏感に感じ取っていた。

彼女には戸部の好意を受け入れる気はない。現状のグループの関係を気に入っており、人間関係の変化を嫌った彼女は、葉山に対し告白阻止を依頼する。そして俺達奉仕部にも、意味深な言葉を残していった。

修学旅行で赴いた京都において、俺達は戸部のために告白のステージを用意した。だが、その直前に葉山に真相を聞かされた俺は、とある行動に出た。

「…まさか、とべっちが姫菜を…って、それでその行動って!?」

結衣は同じグループに属するメンバーの恋愛事情には気が付いていなかったようだ。一瞬興味深げにそう呟くも、話を本題に戻して俺に続きを求めた。

「…それを話す前に1つ、これは俺にとってもう15年以上前の話だってことは承知してくれ」

「言い訳はいいから早く続けなさい」

俺の前置きを雪乃は一蹴した。

「…ハイ…戸部が告白するタイミングで俺が乱入、海老名さんに対して嘘告白をかまし、

"今は誰とも付き合わない"と言ってフッてもらった。これが全容だ…」

「「「……」」」

俺の話を聞き終えた3人は無言だった。

そして、おもむろに結衣が、ガタッと音を立てて椅子から立ち上がる。

その音に対し、俺の体はビクゥッ!と過剰な反応を示し、自分の身を守るように腕を顔の前で交差させる。我ながら情けなくなるほどの勢いだった。

結衣は無言のまま俺の方へと歩み寄ってくる。

俺はひっぱたかれるのを覚悟して目を堅く瞑った。

しかし、意外にも彼女が取った行動は、そのまま俺の背後に回り、俺を強く抱きしめる、というものだった。

そして俺の耳元で、優しい声で語りかける。

「ヒッキー…お願い。もう、そういうの、無しね?」

彼女の暖かさと柔らかさを背中に感じながら、俺は年甲斐もなく自分の顔が紅潮していくのを恥ずかしく思った。

「わ、わかった…って、ん?」

俺は結衣に対する約束の言葉を口にして、ふと違和感に気が付く。

結衣は、いつの間にか俺の両腋の下から自らの両腕を通し、俺の後頭部あたりでその両手を組むような姿勢を取っていた。

「サキサキ」

結衣から可愛らしい声で呼びかけられた沙希は無言のまま立ち上がると、俺に歩み寄った。

「…比企谷、アタシからもお願い。二度と、そういう真似はしないで」

「…ハイ」

俺は、両腕をバンザイさせつつ、肘間接を曲げてダランとだらしなく垂らした状態で返事を返した。

「じゃあこれ、アタシ達三人からのプレゼント…受け取ってくれる?」

「へ?」

――ドスッ!!

沙希の拳が俺の体の中心部に突き刺さる。そして、結衣は俺を羽交締めにしていたその手を緩めた。

それは、先日の文実の男子生徒の拳など比較にならない程的確に人体の急所を突く一撃だった。

俺は膝からその場に崩れ落ちた。

「み…鳩尾…だと」

俺は見っともなくフロアに這い蹲り、陸に打ち上げられた魚の如く口をパクパクさせた。

「じゃあ、今日は部活も撤収でいいよね!あ、ゆきのん、サキサキ!今からカラオケ行かない!?」

「一昨日も行ったじゃん。あんた、ホントにカラオケ好きだね」

「いいじゃん!早く行こ!」

結衣と沙希はそんな会話を展開しながら、カバンを手に取り、部室を後にした。

「…無様ね」

しばらく部室に残り、俺を見下ろしていた雪乃はそう呟いた。

「今日は、鍵と活動記録は貴方にお願いするわ。じゃあ、また明日会えるのを楽しみにしているわ」

そう言って彼女はニコリと微笑む。

俺は彼女に言葉を返そうとするが、口からはヒュー、ヒューという、空気の漏れるような音しか出てこなかった。

そして雪乃は結衣と沙希を追うように部室から出て行った。

☆ ☆ ☆ 

後日、奉仕部に予ねてより想定してた依頼者がやって来た。

言うまでもなく、葉山隼人と戸部翔の二人だ。

修学旅行で海老名姫菜に告白する手伝いをして欲しい、戸部は意を決したようにそう言った。

「…ホント、分かってはいても、こういうの…改めて "やっぱりそうなんだ"って思うよ」

「え?何のことだい?」

沙希が独り言のように呟いた言葉に、葉山が反応を示す。

”やっぱりそうなんだ”というのは、俺が未来から戻ってきた来たということを指しているのだろう。

沙希のその言葉を肯定するように、結衣と雪乃は苦笑いを浮かべている。

「…なんでもない…で、この依頼どうすんのさ?…アタシから言っていいわけ?」

「どうぞ」

沙希の質問に対し、雪乃は短く頷いた。

「戸部、悪いけどムリだよ。海老名でしょ?チャンスはないね。諦めたら?」

――きっつ!マジで容赦ねえのな、コイツ

俺は沙希の物言いを受けて、思わず戸部に同情してしまう。

「…マジかぁ。ショックだわぁ。ホントに駄目なんかな~」

戸部はいつもの口調を維持しつつも、明らかに意気消沈している。

「あ、あの…じゃあせめて駄目だと思う理由を教えて貰えないか?…結衣は姫菜のこと良く知ってるだろ?」

葉山は戸部を気遣うようにそうフォローする。

「え!?あたし!?…う~ん、姫菜…男子には興味あるけど、自分が男子と付合ったりするのには興味ないって言うか…ごめん!やっぱりあたしもムリだと思う!それに玉砕覚悟、とかも止めた方がいいかな。姫菜、今のグループの関係が好きっていつも言ってるし…嫌われると思う」

結衣は俺の方をチラチラと見ながら、そう身も蓋もないことを言ってのける。

どうやら彼女はこの案件から俺を遠ざけようとしている。そう直感した。

結衣の言葉に対し、戸部は無言になった。

思いを伝える自由まで禁じられ、今にも泣き出しそうな表情を浮かべている。

「…と、戸部…今は駄目だとしても、いつか機会が巡って来るさ。告白のためじゃなくて、もう少し仲良くなれるようにアドバイスして貰うって言うのはどうだろう?」

葉山は心を折られた親友を励ますように、必死でそう提案する。

「だからチャンスなんかないって。受験勉強でも始めたら?」

沙希は極めて冷静な表情でそう止めを刺しに掛かった。

「あら、アドバイスくらいならしてあげてもいいじゃない。ここに恋愛指南の適役がいるわよ」

突如、雪乃が割り込むようにそう口にした。

微笑みながら俺を指差す彼女の姿に、俺は固まった。

「適役?比企谷が、かい?」

「ええ。彼、こう見えて恋愛経験は非常に豊富なのよ。私達が知る限り、これまでの交際人数は"最低"3人…彼にその手口を披露してもらう、というのはいかがかしら?」

――おい、最低って何だよ!ひょっとして、海外駐在時代に(金の力で)現地の女の子をとっかえひっかえしてたのがバレてんのか!?…いやそんなまさか…しかし、手口ってお前な…

突然の雪乃の提案に、暫く呆けていた結衣と沙希は、何かに気が付くと突然意地悪な笑みを浮かべて俺を見る。

「マジッすか!?…ヒキタニ君!いや、ヒキタニさん!よろしくオナシャッス!シャッス!」

戸部は藁にも縋る勢いで俺に頭を下げた。

「ちょ、ちょっと待て!俺は別に恋愛に長けてねぇし、まともなアドバイスなんてできねぇよ…」

「あら、そう?相手のどんな所を好きになって、自分のどんな所を好きになってもおうと頑張ったか、そんなありきたりな話だけでもいいと思うのだけれど…ひょっとして、その程度のことも思い出せないのかしら。貴方の元交際相手がとても不憫だわ」

「そうだよ!可哀想!」 「比企谷にとっては遊びだったんじゃないの?」

――ぐっ…こいつら

 

女子高生に良いように手玉に取られる自分が情けない。

「…わかった。だが、俺がアドバイスした所で上手く行く保証はないからな。それだけは覚えとけよ」

「アザッス!マジ、アザッス!」

こうして意図せず俺の恋愛指南が始まることとなった。

 

「…じゃあまず聞くけど、戸部は何で海老名さんを好きになったんだ?」

「え!?そりゃ…一緒にいて何となく良いなって思ったっていうか」

「イキナリいい加減だ!?」

戸部の回答に対し、結衣がそんなツコッミを入れる。

「…比企谷君、見本として聞かせてあげなさい。貴方がなぜ過去の恋人を好きになったのかを」

雪乃はニヤニヤしながらそう茶々を入れた。

「…い、いや。戸部の気持ちは良くわかる。恋愛は感情だ。気付けば好きになってた、なんて良くあることだからな。いちいち理由を求めるのはナンセンスだ」

雪乃のリクエストを回避するため、俺は取って付けたような言い訳で戸部を擁護した。

すると、3人が不機嫌な顔で舌打ちするのが聞こえてくる。

俺はケツの座りの悪さを感じながら、次の話題へと切り替える。

「じゃ、じゃあお前は海老名さんと共通の趣味はあるのか?…そういやあの子、ホモネタが好きなんだろ?気色の悪いことに、葉山と俺はよく彼女の妄想の被害者になってるんだが…お前はそういうの大丈夫なのか?」

「…」

俺の問いかけに対し、葉山は露骨に嫌そうな表情を浮かべる。

っていうか、俺だって嫌なんだから、我慢しろよ。

「お、俺、流石に男同士ってのはキツイけど、海老名さんがそういうので喜んでる姿を見るのは好きっつーか…」

「なら、それ系の話題に付いて行ったり、自分から話題を振ってみるってのはどうだ?…あ、言っとくけど俺だけは巻き込むなよ?」

「いぃ!?…まぁ確かに、海老名さんも喜んでくれそうな気はするけど…女子同士、とかなら俺でもイケると思うんだけどなぁ」

おいおい、そんなに甘い訳ないだろ。

それに、そんなの俺だって大好物だぞ。雪乃x結衣とか、沙希x結衣とか超見てみたい…

「気分が悪いわ…ひょっとして、何か下劣な想像をしていないかしら、キモヶ谷君?」

「…してねぇよ」

雪乃の勘のよさに冷や汗をかきつつも、冷静さを装ってそう答える。

「趣味への理解は…まぁ置いておくとして、後出来ることと言ったら、彼女に誠意を示すことくらいなんじゃないか?由比ヶ浜が言った通り、海老名さんが今の関係を壊したくないと思ってるなら、それを尊重する姿勢を見せることだ。その上で、彼女にとことんアピールすればいい」

「そ、それって矛盾してないか?」

葉山は俺の提言に対し、疑問を口にする。

「まずは、お前達が集まってる時に、由比ヶ浜から彼女に恋愛の話題を持ちかけて、彼女の口から"誰とも付き合う気はない”と言わせればいい。無論、戸部がその台詞を耳にするタイミングでだ」

「その時点で俺終了っしょ!?」

「誠意を示せ、と言っただろ?それでもお前は彼女を特別扱いし続けるんだ。だが、告白だけは絶対にするな。そのうち彼女が "何故告白してこないのだろうか" と、意識するようになれば、そこからはお前のペースだ。一方的に追う関係から抜け出して、お前も心に余裕が持てるようになる」

「な、なるほど!」

「…いや、何感心してんの?アタシだったら、普通に"迷惑だからやめてくんない?"とか言うと思うけど…」

俺の言葉に興奮気味に食いついた戸部に対し、沙希は再び容赦のない言葉をぶつけた。

俺は顔を顰めながらも、言葉を続ける。

「…だ、大丈夫だ。彼女は今の関係の維持を望んでる。であれば、そういったストレートな言い方はしてこないはずだ」

「も、もし言われたら?」

戸部は不安そうな声でそう尋ねた。

「そん時は仕方ない。距離を取れ」

「や、やっぱ諦めろってことか~それ、キッツいわぁ」

「…違う、戦略的撤退だ。彼女の意思を尊重する姿勢を見せるだけだ。そして、絶対に落ち込む姿は見せるな。グループの雰囲気を絶対に壊さないように盛り上げろ。そうすれば、もう一度チャンスが巡ってくる…可能性がある」

「…要は、彼女の利益を一番に考えながらも、気持ちは絶対に諦めるなってことか…シンプルだな」

葉山は苦笑いを浮かべながら、俺の糞の役にも立たなそうなアドバイスを総括した。

「…なんか、すげぇよ!俺、自分に足りないものが分かったってゆーか?…ヒキタニ君、マジでリスペクトだわ~!アリガト!」

戸部は満足げな表情を浮かべて礼を述べる。

暫く雑談した後、葉山と二人で部室を後にした。

「「「ハァ~」」」

客人が去った瞬間、3人の女性が深い溜息を吐いた。

「…何だよ?あいつが満足したんだから別にいいだろ?」

「まさか、これ程までにお粗末な作戦しか立てられないような男に振り回されるなんて…屈辱以外の何物でもないわね」

俺の問いかけに対して、雪乃は心底残念そうにそう言った。

「…同感。比企谷のバカさ加減を、そっくりそのまま自分に突きつけられた気分」

「あたしも」

沙希と結衣もつまらなそうな表情でそう溢す。

「…うっせぇよ」

俺はバツの悪さを感じ、頭を掻きながらそう呟いた。

☆ ☆ ☆ 

修学旅行が始まった。

はしゃぐ生徒ですっかりと騒々しくなった新幹線の中、俺は当時の思い出に耽っていた。

あの時、俺は雪乃と結衣に対し、修学旅行の意義を語ったのを思い出した。

修学旅行とは社会生活の模倣。

上司と出張に行けば、泊まるところも晩飯のメニューも自分じゃ選べない。

でも妥協すればそれなりに楽しいのだと、自分を騙す為の訓練みたいなものだ、と。

俺はやはり何も知らない子供だったのだ。

正確には、上司と出張に行けば、泊まるところも晩飯のメニューも"全て自分で"選ばなければならない。

綿密な計画を立て、企画書を作り、事前にその許可を得る。予約も入れる。

そしてイザ現地についてから、上司はこう言うのだ。

「中華?俺気分じゃ無いんだけど。和食ねぇのかよ?」

「このホテル、朝食マズイから嫌なんだよね。どっか別の宿に変えられないの?」

「おい、夜、どっかいい店ないのか?当然調べてあんだろ?さっさと案内しろ」

「あ、出張記録は日本に到着するまでに書いといてね?」

そこには妥協してそれなりに楽しむ余地など、一切ない。

それに比べて、修学旅行のなんと気ままなことか。宿も飯も、全て学校が手配してくれるのだ。こんなに楽な旅はない。

今回の修学旅行は俺に与えられた短いモラトリアムの一つなのだ。きっと素直に楽しむのが吉だろう。

思い出したくも無い槇村さんと出張経験が脳裏に浮かび、俺は身震いした。

そういえば、あれから槇村さんから連絡は入っていない。口約束はしたが、調査は進んでいるのだろうか。

雪乃の実家との関係のことを考えれば、今は、うかつに彼女にこの話を切出すタイミングでもない。

だが、そう考えると今の俺は八方塞りだ。

俺は何の着信もない携帯を眺めながら、静かに現地到着を待った。

京都到着後、俺は前回同様葉山グループと行動を共にしていた。

当初戸塚とグループを組んでいた俺は、結衣と沙希に強引に巻き込まれる形で、葉山グループに編入させられた。

思い返せば、前回も戸部の恋愛成就のため、普段交わりのないこいつらと、一緒に行動する羽目になった。

今回は、事前に釘を刺しておいた筈の戸部の行動監視と言うミッションがある為、目的は真逆なのだが。

俺は結衣や沙希と名所旧跡を巡る傍らで、戸部の様子をちらちらと確認していた。

「べー!海老名さん!これ、ッべー!」

「…そ、そうだね。トベッち興奮しすぎだよ」

さっきからそんな会話が耳につき、その度に俺はため息を吐いた。

――テンション上がり過ぎなんじゃねぇか、あいつ?

 

京都についてから、戸部の様子がどうもおかしい。

俺はその懸念を晴らす為、清水寺観光に訪れた際に戸部の首根っこを引っ捕まえて、グループのメンバーがいない場所へと引っ張り込んだ。

「おい、お前さっきから何考えてんだ?はしゃぎたいのは分かるが、空回りしてんぞ?」

「…ヒキタニ君、俺…俺、やっぱり修学旅行中に海老名さんに告白したいってゆーか…」

戸部はやや遠慮がちにそう心境を説明した。

その真剣な表情に俺はため息を吐く。

「…言っただろ。今告白しても無理だ」

「それでも…やっぱ、気持ちを抑える事なんて出来ないっしょ?それ、誤魔化すのは違うんじゃねって思ったのよね」

「…」

その言葉に俺は押し黙る。

戸部がやろうとしているのは、エゴの押し付けだ。自分が気持ちを伝えることで、海老名さんが大事にしたいと考えている今の関係を崩壊させることになる。奴にもそれは分かっているはずだ。

だが俺にそれを批判する資格が果たしてあるだろうか。

奉仕部の3人に気持ちを一方的に押し付けて、今の中途半端な関係を築いたのは他でも無い、俺だった。

「…戸部、一つ教えてくれ。お前はとにかく気持ちを伝えたいのか、それとも海老名さんと付き合いたいのか…どっちだ?」

暫くの間、考え込んだ後に、俺は戸部にそう尋ねた

前者であれば、俺に戸部を止めることなど出来ない。

そう考えながら戸部の返答を待つ。

「…そりゃ、付き合いたいに決まってるっしょ!1%でもチャンスがあんなら、それに賭けなきゃ漢じゃないって!」

その言葉に肩の力が抜けて行くのを感じた。

「…なら俺の話を聞け。良いか? 繰り返しになるが、今告白しても成功する見込みはゼロだ。お前が言った1%の可能性すら存在しない」

「そ、そりゃないっしょ!?…ないわぁ」

俺の言葉に希望の光を奪われた戸部は、みるみる内に意気消沈していく。

そんな奴の姿を見て、俺の心の中には少しばかりの同情心が芽生える。

「…お前、ひょっとして告白が一世一代の勝負の場だと思ってないか?」

「そりゃそうだべ?正にこっから飛び降りるくらいのつもりで…」

戸部は清水寺の高台から下を見下ろし、ゴクリと喉を鳴らした。

「アホか。んなモン大怪我して終わりだ…告白なんてのはな、単なる形式上の儀式なんだよ。本来、そこに至るまでの過程でキッチリ勝負を付けておくのが恋愛の暗黙のルールだ。本当に付き合える見込みがあれば告白なんぞしなくても、既成事実で彼女は出来る」

「…そう言うモンかなぁ〜。でもさぁヒキタニ君…今、せっかくの修学旅行なワケじゃん?彼氏彼女になれば残りの時間、手を繋いだり、キスしたり…出来りゃその先も…」

なおも必死で食い下がってくる戸部に、俺は頭を抱えた。

――だめだ、こいつ。邪念に支配されて冷静に物事が判断出来なくなってやがる

「…おい、正直に答えろ。お前、海老名さんを好きになる前に、他の女子と付き合ったことはあるか?」

「…な、ないっす」

やっぱりか。

戸部には経験もなければ余裕もないのだ。これじゃ、海老名さんに対して、誠意をもって紳士的な立ち振る舞いをするなんて、どうあがいても不可能だろう。

しかし、グループ内の童貞は風見鶏の大岡だけじゃなかったのか。

まぁ、言っても総武高校は進学校だし、経験済みの男子の方が割合としては少数派なのかもしれん。付き合うにしてもちゃんと自制心を保って、純情を貫いている奴らも多そうだし、そう言えば、あの葉山ですら、彼女が出来たのは大学に入ってからだと言っていた。

戸部に女性経験が無いことについて、特段の違和感はない。

「わかった。対策を考えてやるから、今日は一旦海老名さんとは距離を取れ…京都についてから大岡や大和とあまりつるんでないだろ?行動パターンを急に変えれば怪しまれる。一方的に追えば逃げるのが女の習性だ。よく覚えとけ…ほら、行け」

「わ、わぁったっしょ」

俺は戸部の背中を軽く叩くと、いつもの男子グループへ合流することを促した。

戸部の姿が見えなくなったことを確認して、俺は清水寺から京都の景色を一望し、再びため息を吐いた。

そして、先ほどからのやり取りを物陰から見ている視線に気付く。

「比企谷、すまない」

「葉山か…残念だが、お前も覚悟しといた方がいいかもしれねぇな」

「正直参ったよ…俺は今が気に入っているんだ。戸部も姫菜も、皆でいる時間も結構好きなんだ。だから…」

「…それで壊れるくらいなら、元々そんなもんなんじゃねぇのか?」

一人、悔しそうに呟いた葉山に対し、俺は敢えてあの時と同じ言葉を問いかけた。

戸部がエゴで思いを伝えたいというのであれば、告白を阻止したいという周りの人間の考えもエゴだ。

 

――上っ面の関係に浸って何が楽しい?

あの時、俺は葉山にそう尋ねた。葉山の考えなど、理解出来なくて良い、そう思った。

だが、あれから俺は知ってしまった。

今だって、上っ面の関係と知りながら、俺はそれに縋りつくような思いで、3人と一緒にいることを望んでいる。

俺は面と向かって葉山や海老名さんを批判できるのだろうか。出来るはずが無い。

――結局、本物ってなんなんだろうな

 

かつて自分が欲して止まなかったものが、何だったのかすら分からない。

そんな気分だった。

「軽蔑するかい?」

葉山は自嘲的な笑みを浮かべてそう呟いた。

「…俺にそんな資格はねぇよ。お前の気持ちは分かる…理解なんてしたくも無かったけどな」

「…すまない」

――ピリリリリ

 

不意に、自分のポケットから電子音が鳴り響いた。

携帯電話への着信。電話の主は、槇村さんだった。

葉山に目で若干の申し訳なさを示しながら、電話に応答した。

「もしもし」

「比企谷か。待たせたな。今大丈夫か?」

「…はい」

俺は緊張した面持ちでそう答えた。

「社内のツテを使って探りを入れてみた…まだ真相は全く分からんが、やっぱりお前の言うとおり、キナ臭い動きがあるってことだけは掴んだぞ」

「それって、M&Aの村瀬って人のことですか?」

「…ああ。情報セキュリティ部門に良く知った奴がいてな。内密に雪ノ下建設関係の買収に関するメールのログを漁らせてもらったんだ」

――よくそんな危ない橋を渡ったな

これは普段から色々な部門に顔を利かせている槇村さんだからこそ出来たことだろう。

俺は彼の行動力に舌を巻いた。

「…何か、不正の証拠でも出てきたんですか?」

「その逆だ。なんもねぇんだよ。正確には、村瀬の奴、MDを通さずに、全ての雪ノ下建設関連のディールを一人で進めてやがった。未上場企業だからって、シニアを巻き込まないでM&Aの話をポンポンと何件も進められる訳がないからな。それから、買収後の戦略提案についても、外部と電子情報をやり取りした形跡が一切無いんだ。どう考えたっておかしい」

「…独断の上、証拠を残さない…」

俺は槇村さんからの情報を脳に刻み込むため、反芻する。

「…せめて、買収した子会社に何をさせてんのかが分かれば糸口になると思うが…そこまで辿り着くのは中々難しそうだ」

不意に、槇村さんの言葉を聞いて、俺は雪乃本人の他にもう一人だけ、自分の周りに情報の糸を手繰り寄せることが出来そうな人物がいたことを思い出す。

俺の通話内容を聞きながら、不思議そうな顔をしている同級生の姿が目に映った。

「…一つ、こっちで手がかりを掴めるかもしれません。上手く行くかはわかりませんが」

「そうか…この前は説教したが、目的のためになりふり構わないガムシャラな奴は、ホントは嫌いじゃない。やるならどんな手を使ってでも徹底的にやるぞ…こっちでももう少し調査は進める。だがこれは貸しだ。将来必ず俺の下で働け。いいな?」

「ぜ、善処します」

そう言って俺は電話を切った。

目的のためになりふり構わずガムシャラに、やるならどんな手を使ってでも徹底的に、か。

結局今の俺にはそれしかないのだ。

裏切りも、汚れることも、全て受け入れて、雪ノ下雪乃の将来を守ること。

そして3人と過ごすこの時間を、少しでも大事にしたい。

それが今の俺の望みの全てだった。

葉山には雪ノ下建設絡みの調査で、どうしても協力を仰ぐ必要がある。

そのためには、こいつに対して恩を売る必要がある。

差しあたっては戸部の問題を丸く収めること、それが課題だ。

俺は今の自分に出来ることを考えた。

大人には大人の、汚いやり方がある。

高校生には到底マネできない、究極に斜め下の、最低最悪なやり方だ。

弱みを握り、恩を売り、相手を抱き込む方法。駐在員時代にビジネスの世界で嫌という程やってきたではないか。

俺は再び、覚悟を固めて葉山に切り出した。

「…葉山。戸部の件、解決方法を思いついた。…その代わりと言っちゃなんだが、修学旅行が終わってから、一つ頼みたいことがある」

「ほ、本当か?…頼みって?」

「…後で話す」

既に日の沈み初めた京都の街を背景に、俺はニタリと笑って見せた。

☆ ☆ ☆ 

夜19:50

俺はホテルから少しだけ離れた目抜き通りで人目を気にするように立っていた。

あの後、俺は二人に、今晩ホテルを抜け出す準備をするように伝えた。

その集合時刻が迫るなか、5分後に葉山が到着する。俺たち2人は無言で戸部を待った。

「隼人君!ヒキタニ君!わっり~!中々抜け出せなくて」

集合時間の20:00を回ったタイミングで、遠くから戸部の声が聞こえて来た。

その姿を見て、俺は思わず叫ぶ。

「バカかお前!?なんで学校のジャージで出てきた!?私服は!?」

ホテルを抜け出すのに、学校指定のジャージを着てくる間抜けがいるとは思わなかった。

「何でってそりゃ…先に風呂に入ったからだべ?」

こちらに駆け寄ってきた戸部は不思議そうな顔でそう呟いた。

「頭使えよ!?俺たちは脱走したんだぞ?それが高校のジャージ着て徘徊してたら一発で補導されるぞ!?」

「ひ、比企谷…声が大きい」

俺の剣幕に戸部はシュンとしてしまうが、葉山に窘められて俺も口を手で塞いだ。

こうなってしまっては仕方がない。

俺は閉店時間ギリギリのアパレルチェーンで、一番安いパーカーと適当なパンツを見繕って購入すると、戸部に投げ渡した。

「…ったく、早く着替えろ」

「ここで!?」

「文句あんのか?」

「い、いや、ないっす…」

人気のない通りに移動すると、戸部はジャージを脱ぎ、パーカー姿へと着替えた。

服は安物だが、戸部は背が高い。それなりに見栄えがしており、ギリギリ大学生くらいには見える。

戸部が着替え終わる頃、俺は再び大通りへ出て、先にタクシーを一台呼び止めた。

「…どこへ行く気なんだ?」

「ちょっとしたお祓いにな。まぁ、行ってからのお楽しみだ…運転手さん、河原町まで」

訝しそうな表情を浮かべる二人をタクシーに押し込んで俺たちが向かった先は、京都四条通り東側、鴨川近辺の繁華街だ。

目抜き通りは近代的な商業施設や商店街の並ぶ、商業区画。

だが、タクシーを降りて、徒歩で一本裏路地に入れば、そこはネオンサインの輝く夜の街だった。

「ヒ、ヒキタニ君…ひょっとして…夜遊びすんの?でもあんまり金ねぇよ?」

「…金は俺が出すから安心しろ」

俺は自分の膨らんだ財布を二人に見せると、ニヤリと笑った。

「…ま、まさかそれ、文化祭の」

戸部が言いにくそうにそう呟いた。

文化祭実行委員で金を横領した疑惑は、当然、戸部たちの耳にも入っていたようだ。

「だったらどうする?」

「じょ、冗談だろ?比企谷?」「マジかよ?」

焦ったような二人の表情を見て、俺は可笑しくなって噴出した。

「冗談に決まってんだろ。俺が投資やってんのは葉山も知ってんだろうが…おっと」

酔っぱらったサラリーマンと肩がぶつかりそうになるのを避けながら、俺はズンズンと歩みを進めていく。

先ほどから居酒屋やらキャバクラやらの客引きが引っ切り無しに声をかけてくる。

戸部は幾分怯えた表情、葉山も不安げな顔を浮かべている。

――この辺の区画のはずだが

 

俺は立ち止まって、事前に携帯のネットで調べておいた地図情報を頭の中に展開しながら、周りをキョロキョロと眺めた。

「お兄さん!お兄さん!キャバですか?風俗ですか?」

すると、すぐに黒いダウンジャケットを着た、チンピラのような客引きが俺たちに話かけてきた。

戸部は完全に委縮してしまっている。

――お前にゃ、やっぱりカラーギャングなんて無理そうだな。

少し前に校内で流行った、チェーンメールの内容とのギャップに俺はまたもや噴出しそうになった。

「…ヌキで本番アリのハコある?」

「デリならいっぱいあるんですけど本番は交渉次第ですね…ホテルも安いところ紹介出来ますよ」

「この時間混むし、終了時間がズレて三人はぐれるのはちょっと…どっかないの?」

俺は固まっている二人を尻目に、客引きの兄ちゃんとそんな会話を展開した。

「…わかりました。ちょっと電話で空き状況確認するんで待ってもらえますか?」

男はそう言うと、携帯でどこかに電話をかけて問い合わせを始めた。

「ひ、比企谷…本当に、どこへ連れて行く気なんだ?」

葉山が青白い顔をしながら再び俺に質問した。それでも無理をして精一杯笑顔を浮かべているあたり、憎たらしいくらいの似非爽やか青年だ。

「あん?お祓いって言っただろ?戸部に女を抱かせて、海老名さんに対する邪念を払わせるんだよ。童貞卒業すりゃ心に余裕も生まれて、多少は紳士的に振る舞えるだろ…いい機会だ。お前もここで汚れちまえ」

俺の説明に対し、葉山はそのまま無言でUターンして、その場を去ろうとする。

俺は葉山の服の襟首を捕まえて、その場に引き留めた。

「おい、どこへ行く気だ?」

「い、いやそれは…」

「…いつまでも綺麗なままでいられると思うなよ。守りたいものがあるなら、清濁併せ飲む覚悟が必要だ…じゃなきゃ…辛くなんぞ?」

俺は奴の耳元で、低い声でそう囁いた。

言っていることはそれらしいが、やっている行動をよくよく考えれば支離滅裂だ。

葉山が少し頭を使えば、簡単に論破されるだろう。だが、奴は俺の目をじっと見て呟いた。

「君は…」

「俺だってリスク取ってんだよ。こんなの奉仕部の3人に知れてみろ。俺は破滅だ」

「わかった…」

葉山は覚悟を決めたようにそう口にした。

「あ、お兄さん!今、ちょうど3人分空いてますよ…でも、これソープとかじゃなくて、マンション系…ぶっちゃけ不法操業のハコなんで、口外無用でおねがいします」

「ってことはパネマジなしで実物選べるんですよね?可愛くなかったら即帰りますよ」

「…キッツいなぁ。お兄さん達、だいぶ遊び慣れてます?」

「いや、三人ともチェリーですから」

「またまたぁ~冗談キツイっすわ」

そんな俺と客引きの会話に、葉山は再び後悔の表情を浮かべていた。

☆ ☆ ☆ 

男に連れられて俺たちがやってきたのは薄暗いマンションの一室だった。

室内はパテーションで何室かに区切られており、その一つ一つの部屋にシャワーとベッドが設置されていた。

俺は玄関付近に置かれたソファーにドカッと腰を掛けると、葉山と戸部もそれに倣うように促した。

しばらくすると、マネージャーらしき中年の男が女の子を二名連れてやってきた。

「三人分空いてるんじゃないの?」

「モウ1人ハ、アト五分デ来マス。ドウデスカ?一時間、何回デモOK。マッサージモOKヨ」

何やら日本語の発音が怪しいのが気になるが、良くあることだ。

気にしてはいられない。

「あ、そう。じゃ、戸部、先に選んでいいぞ」

「お、俺!?いいの!?」

急に順番をふられた戸部は、上擦った声でそう確認した。

本当なら金を出す俺が、一番先に女の子を選んでお楽しみタイムとしけこむのが筋だが、今日のメインは戸部だ。

幸い、マネージャーが連れてきた二人の女の子は、まずまずの上物だった。

戸部は二人のうち、海老名さんとやや雰囲気が似ているとも言えそうな、大人しそうな女の方を指名して、奥の部屋へと消えていった。

「…ど、どうするんだ?」

葉山がこれまでに見せたことのないような不安げな声で俺に尋ねた。

「どうするもこうするもねぇよ。こっちの子も別に悪くねぇだろ。お前先に行け」

「で、でも」

「俺も行くから心配すんな。終わったらここ集合な。五分だけ待っててくれりゃいい」

「わかった」

そういって戸惑いながら葉山がソファーから立ち上がる。

待っていた女は、自分の相手が葉山だと分かると、あからさまに嬉しそうな表情を浮かべて、葉山の腕に飛びついた。

葉山はそのまま彼女に連れられて、別室へと消えていった。

別に悔しくなんてないんだからね!

俺はそう心の中で呟きながら、さらに深々とソファーに腰を掛ける。

「オキャクサン、タバコ、吸ウ?」

一人残された俺に、マネージャーがタバコを進めてきた。

「いや、いいっす」

「ソウカ……アッ、オンナノコキマシタヨ」

その言葉を聞き顔を上げると、奥の方から歩いてくる女性の姿が目に入る。

俺は少しだけソワソワしながら、ソファーの上でケツの位置を調整した。

「ドウデスカ?テクニック、コノ店No.1ダヨ」

マネージャーがそう言ったタイミングで、明かりの灯る待合部屋にその女性が入室する。

その瞬間、俺は硬直した。

同時に、少年時代にやりこんだゲームのBGMが頭の中で自動再生される。

――え、ナニコレ?モンスターボール投げていいの?捕まえて戦わせてレベル上げる奴だよね、コレ?

 

脳裏にそんな考えが浮かび上がる。

「…おい、店長呼んで来い」

俺は無意識にそう呟いていた。

「店長ワ、ワタシダヨ。ドウシタ?問題アルカ?」

マネージャーは、やはりダメか、といった表情でそう言った。

――ったりめーだ!ふざけんじゃねぇぞ!

これで、戸部や葉山の相手と同じ値段だというのだから、たまったものではない。

この業界の価格調整能力はどうなっているのか。適切なプライシングが出来ないからこそ、風俗業界はいつの時代も儲かるのだろうか。

そういや、不景気になるとOLやらモデルやらがこっちの業界に流れてくるから、価格対比で質が上がるなんて話を槇村さんから聞いたことがある。

それを踏まえりゃ、今、この空間だけはバブル景気に浮かれる80年代後半の首都東京状態だ。

不動産も株も風俗も、ファンダメンタルズを無視して価格は爆騰中である。

経済大国日本の復活は近い。

「オキャクサン?ドウシタ?」

「…いや、なんでもない。俺はここで二人を待つ…やっぱりタバコくれ」

俺は無意識のうちに巡らせていた意味不明な思考を振り切ると、この時代に戻って初めてのタバコを口にくわえた。

こんな形で再び喫煙者に返り咲くとは思ってもみなかった。

「ゴホッゴホッ…オェ」

 

肺に思い切り煙を吸い込むと、脳の血管が急速に収縮し、頭がクラクラした。

初めてタバコを吸った時の懐かしい感覚が自分を襲う。

正直、全くウマイとは感じられなかった。

俺は煙を全て吐き出すと、灰皿にタバコを押し付けて火を消した。

吐き出した紫煙が辺りにユラユラと揺れる。

俺は一人寂しく約一時間の暇つぶしを余儀なくされた。

☆ ☆ ☆ 

帰りのタクシー。

俺は葉山に対し、約束を反故にした一抹の申し訳なさを覚えつつも、戸部の様子を伺った。

「ヒキタニ君、いや、ヒキタニ先生…マジ、パなかったっす。生きてて良かった…俺、なんか生まれ変わったっていうか…」

昼とは打って変わって神妙な表情で戸部はそう感想を述べた。

その顔はツヤツヤである。

「そうか。これで、海老名さんとは雑念抜きで向き合えそうか?」

「…俺、彼女に対してはもっと紳士になるよ。時間がかかってでも、振り向いてもらえるように努力すっから」

「何よりだ…ところで、分かってると思うがこのことは三人だけの秘密だ。紳士協定だ」

俺はかつて大志と共有した謎のキーワードを再び口にした。

「分かってるって…」

「いいか?大岡や大和にも絶対に言うなよ。言ったら殺す。絶対にお前の息の根を止める。確実に抹殺する…」

「ヒッ!?わ、分かりました…隼人君はどうだった?」

俺からの念押しに承諾するとともに、プレッシャーに耐えられなくなった戸部は葉山に話題をふった。

「あ、ああ。いい社会勉強?になったよ…」

戸部とは対照的に、葉山の表情は浮かなかった。

「おい、大丈夫かよお前?何かされたのか?」

「い、いや。実はあの女の人、日本語が通じなくて…」

どうやら葉山の相手はアジア系の出稼ぎ外人だったらしい。

これも良くあることだ。

「え?隼人君、もしかして何もしなかった系?」

「…無理矢理押し倒されて、されるがままだったよ…ここだけの話にして欲しいんだけど、パンツまで破かれて大変な目に遭った…ハハ」

葉山はそう言って力なく笑った。

うらやましいシチュエーションなのに、それで落ち込むとは、どれだけプライド高いんだ、こいつ。

しばらくタクシーで走っていると、横からグースカと能天気な寝息が聞こえてきた。

「ったく、戸部の奴…いい気なもんだな」

「緊張していたんだろう。そっとしといてやろう…俺も相当緊張したし」

俺の毒づきに対し、葉山はそう苦笑いを浮かべて返してきた。

「…比企谷は今付き合ってる女子はいないのか?…奉仕部の三人とはどんな仲なんだ?」

不意に葉山は俺にそんな質問を投げかけた。

「…な、何であいつらが出てくるんだよ?」

無駄に鋭い…訳でもないか。

あいつ等に今日のことが知られたら破滅だと言ったのは自分自身だ。

言い淀んだ俺に対して、葉山は一瞬、驚きの表情を浮かべる。

「まさか三人の交際経験って、雪乃ちゃ…雪ノ下さんも入ってるのか?」

――あ、こいつひょっとして

 

葉山らしからぬ迂闊な発言に、俺は過去のやり取りを思い返した。

好きな女子のイニシャルはY。

これは夏のキャンプ場で、しつこく質問してきた戸部に対して葉山が唯一述べたヒントだった。

「雪ノ下含めて、あいつらに手は出してねぇよ…出せるわけねぇだろ…俺にとっては死ぬほど大事なんだ」

「…そうか。やっぱり君は」

葉山は何かを悟ったようにそう呟いた。

――結局、本当に人を好きになったことはないんだろうな。君も、俺も。だから勘違いしていたんだ。

 

過去の世界。俺が雪乃と付き合い出す半年ほど前、葉山はこんなことを口にしていた。

それは、奴なりの過去との決別だったのかもしれない。

悪ぃな。

そう口にしかけて、俺はそれをひっこめた。

「葉山。その雪ノ下のことで、一つ折り入って頼みがある」

「例の交換条件か?」

「ああ…いや、無理に頼める話じゃないのは理解してるんだが」

俺は葉山に説明した。

雪乃の実家で起こっているであろう、何らかの事件。

それに葉山の両親も関係している。

雪ノ下建設が買収した子会社が、投資ビークルを作って何をしているのか。

それが知りたかった。

「…わかった。俺が役に立てるかどうかわからないけど、出来る限り協力させてもらう」

「恩に着る」

「…まったく、君には本当に勝てる気がしないよ…これまでの劣等感だけじゃなく、修学旅行でトラウマまで植え付けられることになるとはね」

葉山は俺の協力要請を承諾すると、そう言って力無く笑った。

「…別に勝負なんかしてないだろ?」

「比企谷は俺の目標だよ…二年になるまで、同級生にこんなすごい奴がいるなんて思いもしなかった。それに比べて俺は…」

「…お前、親と同じ法の道を進むつもりだろ?」

自己嫌悪に近い表情を浮かべた葉山を見て、思わず俺はそう口にした。

別に此奴のご機嫌取りをしようと言う訳ではない。

だが、将来のビジョンが見えている俺には、葉山に対してかけてやれる言葉があった。

「あ、ああ。知ってたのかい?」

葉山は驚いたような声を上げる。

俺は静かに話を続けた。

「…俺は金融の道を進む。知り合いには政治の道を志す人もいる…投資、政治、そして法、この三つは切っても切り離せるもんじゃない。将来…一緒に世界を股に掛けたデカい仕事をする時ってのが、来るかもしれん」

「!?…ああ。その時は胸を張って肩を並べられるように頑張るよ」

そう口にした葉山は、何かを決意したような表情を浮かべていた。

☆ ☆ ☆ 

翌日

今日は最終日の自由行動だ。

他のクラスの雪乃も俺たちに合流し、奉仕部四人で行動することになった。

団体から離れる前に、皆の様子を見ておこうとの雪乃の提案に、俺たちは同意し、しばらく葉山グループの後をつけるように行動していた。

「ヒッキー、とべっち、何があったのかな?」

「人が変わった様に落ち着き払っているわね」

「ほんと、気味が悪いくらいだよ」

結衣、雪乃、沙希はそんな疑問を口にする。

戸部の落ち着いた言動に対し、周囲は驚きの反応を見せているのは奉仕部のメンバーだけではなかった。

「お、おい戸部?どうしたん?」

「いや、言うても俺ももう高二だし。恋にも進路にも、腰を据えて取り組みたいって言うかさ…」

「ね、熱でもあるんじゃないのか?」

大岡も大和も不思議がっている。

「あ、海老名さん。お土産買ったの?荷物持つよ……優美子もそれ、持ったままじゃ大変だべ?」

周囲への気配りも完璧である。これでひとまずは一件落着だろう。

ふと見ると、葉山もそれを安心したような表情で見ていた。

「…ま、これなら問題ないだろ。俺たちもそろそろ行こう」

遠目でそんなやり取りを見ていた俺は、含みを持たせてそう呟いた。

「「「…怪しい」」」

三人の疑いの視線が俺に集まるのも御愛嬌というものだろう。

俺はそれを受け流すと、葉山グループとは方向を変えて、予定していた観光地へ向けて歩みを進めた。

「ぬぉぉぉおおおおお八幡!!!助けてくれ!!!」

すると、その場を去ろうとしていた俺たちに、暑苦しい声をかけてくる輩が一名。

「…材木座。声がデカい。体もデカい。必要以上に顔を近付けんな…何だよ?」

「海美殿への土産を何にしようか悩んで居るのだ!」

その言葉を聞いて俺は苦笑いを浮かべる。

ずいぶん長いこと構っていなかったような気もするが、この場にも恋に悩む青年が一人いたのだ。

「土産なんて気持ちだ。何でもいいだろ…ま、強いて言うなら会話のネタになるようなものを買ってけば、話も弾むんじゃないか?」

そういえば、あれからこいつの中国語はどのくらい上達したのだろうか?

ふと、そんな疑問が頭に浮かぶ。

昨日から感じていたが、やはり京都は観光名所であり、訪れてくる外国人の数は多い。

中でも、一番多いのは中国人だろう。

昨日の清水寺然り、今俺達がいる、嵯峨嵐山駅近辺もしかり。

外国の言葉が一つも分からなかったあの頃は、まったく気付きもしなかったが、今なら、耳を澄ますと、自然と外国人観光客の会話が耳に入ってくる。

「海美の中国語レッスンは続いてんのか?」

「ふふふ、我を侮るなよ、八幡!既に中国語検定三級を習得した!」

「へぇ。やるじゃなかいか。じゃあ、あとは実戦経験だな。お前が京都でも頑張ってたって話をすれば海美も喜ぶんじゃないか?」

「京都で頑張る?何を?」

材木座は頭に疑問符を浮かべながら、俺にそう聞き返す。

俺はニヤリと口元を緩めて、息を吸い込んだ。

「大家好! 要不要免费导游! 中文导游!可中日翻译的导游!」

「は、ははは八幡!何を!?」

俺が可能な限り大きな声でそう叫ぶと、ワラワラと外国人観光客が周りに集まってきた。

俺はその一行を材木座に押し付けると、素早くその場を後にした。

「なんて言ったの?急に人が集まってきたけど?」

沙希は先ほどの俺の行動について質問する。

「…ん?無料の中国語ガイドです、ってな」

俺は涼しげな声でそう答えた。

「「「…酷い」」」

3人は声を重ねて俺を非難するような目で見る。

材木座の方に目をやると、あたふたしながらも、中国語でちゃんと対応しているのが目に入った。

俺はその様子を写真に収めると、海美にメールで転送した。

【なんか、真剣に中国語練習してんぞ】

【(*^_^*)】

直ぐに帰ってきた海美の顔文字メールに笑みを漏らすと、俺は携帯を懐にしまった。

「…じゃ、そろそろ行こっか?」

しばらくその様子を眺めていた結衣がそう提案する。

「次、どこだっけ?」

「ここを曲がったところに、有名な竹林の道があるわよ?」

沙希の質問に対し、雪乃がそう答えた。

三人は満場一致で次の行き先を決定すると、どんどんと竹林の方角へ向かっていく。

俺はポケットに手を突っ込んだまま、それに続いた。

生い茂る青竹の隙間から、太陽の光が差し込む。

それに包まれるような感覚を覚えながらゆっくりと歩みを進めた。

――まさか、またこの場所に来ることになるとはな

日中、電灯のついていない灯篭が並ぶ道を歩きながらそう思う。

――ずっと前から好きでした。俺と付き合ってください。

――貴方のやり方、嫌いだわ

――もっと人の気持ち考えてよ!

そんな昔のやり取りが思い出される。

丁度、俺が飛び出して告白をしたのもこの辺りだっただろうか。

俺は立ち止まって辺りを見渡した。

「ヒッキー!何してんの!?置いてくよ!」

道の向こうから、手を振りながら叫ぶ結衣の声を受けて、意識が現実に引き戻される。

雪乃も、沙希も、こちらを振り返り、俺が追いつくのを待っているようだった。

「ああ、今行く」

そう言った瞬間、竹林の合間を縫うように吹き込んだ清風を横顔に感じた。

それに引っ張られるように、一瞬だけ後ろを振り返った。

そこには歩いてきた道だけが続いている。

無意識にフッと笑みがこぼれる。

俺は再び前の方を向くと、三人のいる場所へと速足で駆けていった。

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