ただただバトルが書きたかったんだ。
「
「その
キィィイン──そして鳴る鈴の音は形成の証。静かに鋭く、そして確固として外界へと響き渡る。さしずめ大気を裂く冷たさは、美麗と称すにあまりある
現れたるは断頭の刃。右下腕部から大きく湾曲した刃が出現していた。
ありえない。そういうほかない光景であったか。
しかしそんな超常を目前にして、一方の少年は
ダッ! その高音が響き終わるより速く、彼はすでに走り出していた。
しかし当然。迅速でもって踏み込む彼を前に、
ゆえに彼が臆せず足を踏み出したのも必然だ。自慢じゃないが、踏んだ修羅場の数が違う。回る脚が加速する。この右手を届けろと、
刃──ギロチンを携えた少年は瞠目した。たたらを踏まず、刹那とて
先手必勝か。迫る少年は丸腰だったが、握り固めるその右手、ギロチンを手にしてなおと一蹴できぬ気迫が
しかし、こと『刹那』という駆け引きにおいて、それこそ断頭の執行者を凌駕するなどありえない。
あと一歩。右手が届くその間際。先手の拳よりもギロチンの方が速く振るわれた。尋常ではない速度。いうなれば後手必殺、神速の刃はその存在意義に従い、まっすぐ相手の首に飛んでいく。
その断頭確定コースに、寸前、右手が割り込んだ。
ギャ──ィィイイン!! と遅れて伸びる金打音。ギロチンと右手が噛み合っていた。
「…………っ!」
「…………ッ!」
ありえない。なんの変哲もない右手が、巨大なギロチンを受け止めている。どころか、
ありえない。ありえない。ありえない。
幼稚にすぎる表現で、けれど表すならそれが一番適切で、馬鹿の一つ覚えで繰り返す。
あり、えない。
それが、たった二人の少年によってなされていた。
たかだか学生でしかない二人だが、しかしどうした、起きる事象の数々は、人外の域にすら手を伸ばしている。その手、ともに右手。
かたやあらゆる異能の全てを打ち砕く稀代の『■■』、《
かたや総て
ともに至高の異常性。
だからこそ、
噛み合ったのは刹那か。次の瞬間には、当麻が受け止める反対側からギロチンが迫っていた。無論、その狙いは首以外ありえない。
身をかがめたのは経験則がさせたことか。刹那を押しのけて走る断頭を、髪の毛をかすらせながらも
シュッ! と、ギロチンが頭上を通過した直後に、カウンターの右アッパーを繰り出していた。
ゴッ、そしてものの見事、拳が蓮の顎を突き上げる。
「ガァ!?」
この瞬間ばかりは驚愕を通り越して戦慄した。
エイヴィヒカイト──マルグリット・ブルイユという至高の魂を内包したギロチンを形成しているにも関わらず、ただのアッパーに痛みを感じているのだ。
驚異的な身体能力、痛みも感じない、歳もとらない、ニコチンもアルコールも瞬く間に分解する──そんな化物というほかない肉体であったが、忌々しい肉体であったが、しかしだからこそ、『殴られた』という事実に戦慄した。こんな体クソ食らえと、そう
しかしそれを打ち壊し、握った右手が迫ってきた。
ぞあっと。汗が吹き出る。それでいて悪寒が走る。
のけぞる蓮。の首をそのまま右手で掴み取り、前に倒しながら足を払う。首を圧迫して呼吸を奪う。
単純な体術。格闘術というのすらはばかられる簡単行程。しかし当麻が今まで
ぐるん。視界が反転するのを感じながら、けれど蓮は抗わない。
身体が倒れるのを勢いにまかせ、そこからギロンを叩き込む。あいにくと、痛いのや苦しいのを我慢することには慣れている。首を
今度の驚愕は当麻だ。なにせ足を払ったにも関わらず、続く行動は反撃の二文字。しかも苦し
その死地より伸びる、
ギン! 辛うじて、その一閃を右手の甲で受ける。しかし攻めるために一歩踏み出した状態では、いくら神秘として拮抗していようとも、そもそもの踏ん張りがきくはずない。大質量+速度、という比較的簡単な理由により、当麻の右手はギロチンに
「ゴッ!?」
いくら驚異的な見切りがあるとはいえ、やはり体はいっかいの学生。踏ん張りのきかない体勢で
同時、もともと姿勢の崩れていた蓮も地面に倒れる。こちらは打って変わって軽打そのもの。……蓮の知る
蓮はそのまま後転して起き上がると、さらにその直後、後方へと距離を取る。体勢を整えるためだ。
──正直、舐めていた。
いかに異常を秘めていようが、人間。
それがどうした。
慢心がもたらした、不様というしかない現状。そんなザマで、いったいなにが守れるというのだ。
変わらない日常を欲した。終わらない刹那に焦がれた。
俺達は決して幻想にはなれない刹那だけど、だからこそ『時間が止まればいい』と思うのは間違いなんかじゃない。求め走り抜けるのが
未知はいらない。親しい奴らと知っている事だけ。それを内包して永劫走り続ける円環であればいい。至高甘美なその一瞬、永劫飽くまで味わいたいと望むから──
「────
『────
──さぁここに、俺達の
「
──地面にうずくまるようだった当麻は、けれど悠然と立ち上がる。
その体はボロボロもいいところだ。たかだか一回突き飛ばされた程度。しかし、聖遺物の力によって跳ね飛ばされ、あまつさえ当麻は生身の人間だ。一〇数メートルと転がされれば、骨をバラバラに折った程度ですめばいいところだろう。
死に体。血だらけの肉体で、しかしどうして当麻は立ち上がれるのか。
──そんなの単純。ただ、助けたいと思ったのだ。
悲劇があった、惨劇があった。それを止めるために防ぐために、それこそ自身の命を釣り合いにして駆け抜けてきた。それで救えないものがあった、間に合わないこともあった。
どうしようもない世界だと思う。それでも。
誰かを、助けたいのだ。
だから走れる。まだ走れる。もっと走れる。
そうやって足掻きに足掻いてたどり着いた先、掴むことができた手を知っているから。誰かを助けられたと理解しているから。
上条当麻は戦える。もがいてたどり着いて、ぶち破れる。そこに至るために、突っ走れる。
だからはまずは、目の前に立ちふさがるその
「────その幻想を、ぶち壊すッ!!」
拳を握り固めて、
「
しかし疾走ならば、それこそ刹那の独壇場。駆け迫る破壊者を前に、幻想を渇望する心が加速する。
光となって巡る円環。しかしそれをものともせずに踏破していくは絶対的な『主人公』。
「
挑みゆくは
ただ日常へ帰るというその一念。ただ誰かを助けるというその一心。
単純ゆえに業深く、ゆえに焦がれて止まれない。
女神の歌声が聞こえる。血が欲しいと、刹那を切り取れと。
その祝福さえ打ち砕き、当麻は右手を振りかぶる。全霊。最大威力をその手に握る。
さぁ、準備は万端だ。あと数歩で
善を叫ぶ前に、悪を語る前に。
誰かを助けるというその一点。それを
「
いいやまだだ。まだ始まってすらいない。
終わらせるなんて言語道断、お前は俺達を舐めすぎてる。
俺達の
総てを
そして、二つの純然たる願いがぶつかり合う。
刹那を
「────
今ここに、一つの結末が幕を開けた。
上条さん強し。
ネタ思いついたら続くかもしれないでげす。はい。