【ネタ】とある刹那と幻想殺し   作:KiLa

1 / 1
戦う理由なんてないよ。
ただただバトルが書きたかったんだ。


刹那 vs 幻想殺し

幻想(ジャンル)違いはすっこんでろ!!」

 

「その日常(げんそう)を、ぶち壊す!!」

 

 

 キィィイン──そして鳴る鈴の音は形成の証。静かに鋭く、そして確固として外界へと響き渡る。さしずめ大気を裂く冷たさは、美麗と称すにあまりある金音(かなおと)でもって、その存在を見せつける。

 現れたるは断頭の刃。右下腕部から大きく湾曲した刃が出現していた。

 ありえない。そういうほかない光景であったか。

 忽然(こつぜん)と突然と、怜美な刃音(はおと)でもって現れたそれを、彼はいったいどこから取り出したというのか。いや、右腕と一体となっているそれに対し、『取り出した』という形容は不適切か……いずれにしろ、常識というものさしで(はかる)るにおいて、その刃の具現は説明のしようがなかった。

 しかしそんな超常を目前にして、一方の少年は微塵(みじん)とて動揺を見せない。──どころか。

 ダッ! その高音が響き終わるより速く、彼はすでに走り出していた。

 しかし当然。迅速でもって踏み込む彼を前に、()()()()()()()()()()()()()()()児戯(じぎ)と言っても誇張じゃない。その程度は()()()()()()

 ゆえに彼が臆せず足を踏み出したのも必然だ。自慢じゃないが、踏んだ修羅場の数が違う。回る脚が加速する。この右手を届けろと、(はや)(いさ)み加速する。

 刃──ギロチンを携えた少年は瞠目した。たたらを踏まず、刹那とて逡巡(しゅんじゅん)を見せなかった決断に刮目する。

 先手必勝か。迫る少年は丸腰だったが、握り固めるその右手、ギロチンを手にしてなおと一蹴できぬ気迫が(あふ)れている。()()()()()()()()。先手を許したことも相まって、まさしくそれは必勝と呼ぶに相応しい。

 しかし、こと『刹那』という駆け引きにおいて、それこそ断頭の執行者を凌駕するなどありえない。

 あと一歩。右手が届くその間際。先手の拳よりもギロチンの方が速く振るわれた。尋常ではない速度。いうなれば後手必殺、神速の刃はその存在意義に従い、まっすぐ相手の首に飛んでいく。

 その断頭確定コースに、寸前、右手が割り込んだ。

 ギャ──ィィイイン!! と遅れて伸びる金打音。ギロチンと右手が噛み合っていた。

 

 

「…………っ!」

 

「…………ッ!」

 

 

 ありえない。なんの変哲もない右手が、巨大なギロチンを受け止めている。どころか、(やいば)を受ける手のひらに、一切の傷がなかった。正真正銘、真っ向から受け止めている。

 ありえない。ありえない。ありえない。

 幼稚にすぎる表現で、けれど表すならそれが一番適切で、馬鹿の一つ覚えで繰り返す。

 あり、えない。

 (ギロチン)が突然現れ、臆することなく飛び込み、先手より先んじ、素手が刃と噛み合う。その一連、わずか一〇秒となかったろう。たったそれだけの閃光がごときせめぎ合い、しかし濃厚すぎる『超常』の応酬。

 それが、たった二人の少年によってなされていた。

 上条(かみじょう)当麻(とうま)藤井(ふじい)(れん)

 たかだか学生でしかない二人だが、しかしどうした、起きる事象の数々は、人外の域にすら手を伸ばしている。その手、ともに右手。

 かたやあらゆる異能の全てを打ち砕く稀代の『■■』、《幻想殺し(イマジンブレイカー)》。

 かたや総て(ことごと)く不死をも切り殺す断頭の刃(エイヴィヒカイト)、《罪姫・正義の柱(マルグリット・ボワ・ジャスティス)》。

 ともに至高の異常性。(ことわり)を超越する真なる異能。両者ほかの一切とを寄せ付けず、追いつかせない、絶対的な人外能。

 だからこそ、()()()()()()()()、しのぎを削ってぶつかるのだ。

 噛み合ったのは刹那か。次の瞬間には、当麻が受け止める反対側からギロチンが迫っていた。無論、その狙いは首以外ありえない。

 身をかがめたのは経験則がさせたことか。刹那を押しのけて走る断頭を、髪の毛をかすらせながらも(かわ)しきる。生身とは思えない、ただの人間とは考えられない。それほどまでの見切りでもって、当麻は断頭の結末を否決した。──さらに、である。

 シュッ! と、ギロチンが頭上を通過した直後に、カウンターの右アッパーを繰り出していた。

 ゴッ、そしてものの見事、拳が蓮の顎を突き上げる。

 

 

「ガァ!?」

 

 

 この瞬間ばかりは驚愕を通り越して戦慄した。

 エイヴィヒカイト──マルグリット・ブルイユという至高の魂を内包したギロチンを形成しているにも関わらず、ただのアッパーに痛みを感じているのだ。

 驚異的な身体能力、痛みも感じない、歳もとらない、ニコチンもアルコールも瞬く間に分解する──そんな化物というほかない肉体であったが、忌々しい肉体であったが、しかしだからこそ、『殴られた』という事実に戦慄した。こんな体クソ食らえと、そう(のたま)っておいて、けれど同時、それは信頼の裏返し。ぶち殺してやりたいクソッタレなメルクリウスの秘術であるが、それが悔しいほどに完璧なのも理解している。

 しかしそれを打ち壊し、握った右手が迫ってきた。

 水銀(メルクリウス)さえものともしない異端の右手。すでに一度打ち合っているといえ、下手をすれば、マリィすらも砕けるのでは──?

 ぞあっと。汗が吹き出る。それでいて悪寒が走る。(つい)なす驚愕のその刹那、しかして当麻は止まらない。

 のけぞる蓮。の首をそのまま右手で掴み取り、前に倒しながら足を払う。首を圧迫して呼吸を奪う。

 単純な体術。格闘術というのすらはばかられる簡単行程。しかし当麻が今まで淘汰(とうた)してきた修羅場がもたらす経験則による『心眼』は、絶対的なタイミングというものを逃さない。ようは蓮が驚くほんの一瞬、そこを狙って技をかけた。いわばそこは思考の空白だ。避けようにも、考えられないんじゃ答えが出せない。

 ぐるん。視界が反転するのを感じながら、けれど蓮は抗わない。

 身体が倒れるのを勢いにまかせ、そこからギロンを叩き込む。あいにくと、痛いのや苦しいのを我慢することには慣れている。首を鷲掴(わしずか)まれた程度、臆するには到底足りない!

 今度の驚愕は当麻だ。なにせ足を払ったにも関わらず、続く行動は反撃の二文字。しかも苦し(まぎ)れの一刀じゃなく、愚直なまでに首を狙う必断の(ひらめ)き。一瞬とはいえ、気休め程度とはいえ、呼吸を奪ったのだ。それは刹那という駆け引きにおいて思考を奪ったにも等しく、だからこそ当麻は、続く追撃のために踏み込みを兼ねた足払いをしたのだ。

 その死地より伸びる、(くろがね)の断頭刃。好機が危機へと急転した。

 ギン! 辛うじて、その一閃を右手の甲で受ける。しかし攻めるために一歩踏み出した状態では、いくら神秘として拮抗していようとも、そもそもの踏ん張りがきくはずない。大質量+速度、という比較的簡単な理由により、当麻の右手はギロチンに()り負ける。

 

 

「ゴッ!?」

 

 

 いくら驚異的な見切りがあるとはいえ、やはり体はいっかいの学生。踏ん張りのきかない体勢で()されたともなれば、ブッ飛ぶのは当たり前だ。ドッドッドッ、と。痛ましいほどの鈍い音でバウンドして、当麻は後方に転がった。たっぷり一〇メートル以上は跳ねていったか。

 同時、もともと姿勢の崩れていた蓮も地面に倒れる。こちらは打って変わって軽打そのもの。……蓮の知る(よし)もないが、幻想殺し(イマジンブレイカー)の効力によってエイヴィヒカイト最大の強みともいえる『魂の補強』が用をなしていないため、後ろから倒れた彼は、当然、軽いとはいえ、ダメージを負う。──しかしそんなの鑑みられないほど、この戦いは逼迫(ひっぱく)していた。

 蓮はそのまま後転して起き上がると、さらにその直後、後方へと距離を取る。体勢を整えるためだ。

 ──正直、舐めていた。

 いかに異常を秘めていようが、人間。化物(エイヴィヒカイト)におよぼうはずがない、と。

 それがどうした。(いま)(げん)に、自分は殴られ、傷を負っているではないか。

 慢心がもたらした、不様というしかない現状。そんなザマで、いったいなにが守れるというのだ。

 変わらない日常を欲した。終わらない刹那に焦がれた。

 俺達は決して幻想にはなれない刹那だけど、だからこそ『時間が止まればいい』と思うのは間違いなんかじゃない。求め走り抜けるのが(あやま)ちのはずない。

 未知はいらない。親しい奴らと知っている事だけ。それを内包して永劫走り続ける円環であればいい。至高甘美なその一瞬、永劫飽くまで味わいたいと望むから──

 

 

「────時よ止まれ、君は美しい(Verweile doch, du bist so schoen.)

 

『────愛しいひと(Mon cheri.)

 

 

 ──さぁここに、俺達の刹那(かつぼう)を歌い上げよう。

 

 

Die Sonne toent nach alter Weise(日 は 古 よ り 変 わ ら ず) In Brudersphaeren Wettegesang(星 と 競 い)

 Und ihre vorgeschriebne Reise(定 め ら れ た 道 を) Vollendet sie mit Donnergang.(雷 鳴 の 如 く 疾 走 す る)

 

 

 ──地面にうずくまるようだった当麻は、けれど悠然と立ち上がる。

 その体はボロボロもいいところだ。たかだか一回突き飛ばされた程度。しかし、聖遺物の力によって跳ね飛ばされ、あまつさえ当麻は生身の人間だ。一〇数メートルと転がされれば、骨をバラバラに折った程度ですめばいいところだろう。

 死に体。血だらけの肉体で、しかしどうして当麻は立ち上がれるのか。

 ──そんなの単純。ただ、助けたいと思ったのだ。

 悲劇があった、惨劇があった。それを止めるために防ぐために、それこそ自身の命を釣り合いにして駆け抜けてきた。それで救えないものがあった、間に合わないこともあった。

 どうしようもない世界だと思う。それでも。

 誰かを、助けたいのだ。

 だから走れる。まだ走れる。もっと走れる。

 そうやって足掻きに足掻いてたどり着いた先、掴むことができた手を知っているから。誰かを助けられたと理解しているから。

 上条当麻は戦える。もがいてたどり着いて、ぶち破れる。そこに至るために、突っ走れる。

 だからはまずは、目の前に立ちふさがるその(ギロチン)

 

 

「────その幻想を、ぶち壊すッ!!」

 

 

 拳を握り固めて、幻想殺し(イマジンブレイカー)が疾走した。

 

 

Und schnell und begreiflich schnell,(そ し て 速 く  何 よ り 速 く) In ewig(永 劫 の) schnellm(円 環 を) Sphaerenlauf.(駆 け 抜 よ う)

 Da flammt ein blitzendes Verheeren,(光 と な っ て 破 壊 し ろ) Dem Pfade vor des(そ の 一 撃 で) Donnerschlags;(燃 や し つ く せ)

 

 

 しかし疾走ならば、それこそ刹那の独壇場。駆け迫る破壊者を前に、幻想を渇望する心が加速する。

 光となって巡る円環。しかしそれをものともせずに踏破していくは絶対的な『主人公』。

 

 

Da keiner dich ergruenden mag,(そ は 誰 も 知 ら ず) Und alle(届 か ぬ) deinen hohen Werke(至 高 の 創 造)

 Sind herrlich(我 が 渇 望 こ そ が) wie am ersten Tag.(原 初 の 荘 厳)

 

 

 挑みゆくは幻想殺し(イマジンブレイカー)。迎え打つは超越の片鱗(ツァラトゥストラ)

 ただ日常へ帰るというその一念。ただ誰かを助けるというその一心。

 単純ゆえに業深く、ゆえに焦がれて止まれない。()えて(たけ)る物語の衝突。互いに真っ向ど正直。掛け値なしの純真さ。

 女神の歌声が聞こえる。血が欲しいと、刹那を切り取れと。

 その祝福さえ打ち砕き、当麻は右手を振りかぶる。全霊。最大威力をその手に握る。

 さぁ、準備は万端だ。あと数歩で刹那(げんそう)に手が届く。その渇望を終わらせて、本当の結末にたどり着ける。

 善を叫ぶ前に、悪を語る前に。

 誰かを助けるというその一点。それを()すためだけに拳を握れ、立ちはだかるものを打ち砕け!!

 

 

Briah(創造)――」

 

 

 いいやまだだ。まだ始まってすらいない。

 終わらせるなんて言語道断、お前は俺達を舐めすぎてる。

 俺達の渇望(せかい)は、今ここから廻り始めるのだから。

 (めぐ)り廻る孤高の刹那。疾走する停滞というその概念、それを守り続ける執行者たれ。

 総てを()ねる断頭の刃。刹那を守り、愛を超えろ!!

 

 

 そして、二つの純然たる願いがぶつかり合う。

 刹那を(めぐ)幻想(レギオン)か、結末に至る神上(レギオン)か。

 

 

 

「────Eine Faust ouvertüre(美 麗 刹 那 ・ 序 曲 !!) !!」

 

 

 

 今ここに、一つの結末が幕を開けた。




上条さん強し。

ネタ思いついたら続くかもしれないでげす。はい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。