テイルズオブゼスティリアでやってみた   作:609

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toz 第三十七話 騎士セルゲイの意志

騎士セルゲイが居るラストンベルに向かって歩いていたスレイ達。

スレイは俯き、黙り込んだまま歩いていた。

その背に、ミクリオが、

 

「スレイ、アリーシャのこと考えているのか?」

「ああ。大丈夫って信じてるけど、マルトランさんの最期の言葉が……」

「『反吐が出るほど嫌いだった』か。」

「うん。あれはきつかっただろうなって。」

「十年以上も信じてきた師匠の言葉だものな……」

 

ミクリオも、俯いて黙り込んだ。

そこに、二人の背を叩き、

 

「女の言葉をそのまま受け止めるなよ。青年たち。」

 

スレイは顔を上げ、

 

「別の意味があるっていうのか?」

「さあて。千年生きても女心は謎だ。けど、打算だけの関係を続けるには十年は長すぎる。」

「マルトランにはアリーシャへの愛情もあったと?」

 

ミクリオもザビーダに聞く。

ザビーダはニット笑い、

 

「憎しみも愛の形のひとつさ。本人がどう感じたかはわからないがな。」

「そうかもしれないが……」

「難しいんだな。」

 

ミクリオとスレイは遠い目をする。

ザビーダは再び二人の背を叩き、

 

「難しいってわかるのが第一歩だ。なんにせよ、心配しすぎなくていいと思うぜ。女は強い。男が思うよりずっとな。」

 

スレイは自分の頬をバシッと叩くと、

 

「よし!」

 

と、気合を入れて歩いて行った。

後ろを歩いていた天族組。

ミクリオは歩きながら、

 

「だが、マルトランは、アリーシャにふたつ利用価値があったって言ってたけど……あとひとつは何だったんだろ?」

 

そして腕を組んで悩み出す。

ライラが悲しそうに俯き、

 

「それは、おそらく……」

「災禍の顕主の目的から考えると――」

 

エドナが傘の柄を握りしめる。

ミクリオも察しがつき、

 

「スレイを穢れさせる道具にすること、か。」

「多分殺すことでね。避けられたけど。」

 

エドナはさらに傘の柄を強く握りしめる。

そしてミクリオも怒りながら、

 

「だとしたら、なんという……」

 

ライラは黙り込む。

そこにザビーダが明るい声で、

 

「案外、アリーシャに手取り足取り武術をしこむのが快感だった~とかじゃね?」

「最低だな、ザビーダ。」

 

ミクリオはザビーダにそっぽ向きながら言う。

エドナもザビーダを冷たい視線を送り、

 

「あなたが死ねばいいのに。」

「次の無言は、拒絶の無言ですわよ?」

 

ライラもザビーダを冷たい目で見た後、三人は歩いて行った。

ザビーダは驚き、

 

「ちょ⁉空気を和ませようとしただけなのに!」

「ふふ。でも、案外そうかもね。」

「へ?」

 

それを聞いていたレイはザビーダにそう言って、ミクリオの横に駆けて行った。

ザビーダを後ろに置いて行ったミクリオはスレイの横で、

 

「セルゲイはローランス軍をとめられるかな?」

「大丈夫さ。セルゲイなら石にかじりついてでも。」

 

スレイは自信満々に言う。

エドナが傘をクルクル回しながら、

 

「……逆に不安なんだけど。ね、おチビちゃん。」

「え?あ……ん。そうだね。」

 

同じようにスレイの横に来たレイが、空を見上げて言う。

 

そしてスレイ達はラストンベルに入った。

セルゲイを探して歩いていると、教会の方で怒鳴り声が聞こえて来た。

 

「信じられるかよ!勝手なことばかり言いやがって!」

「そうだ!戦ってハイランドを追い返せよ!」

「頼む!落ち着いて聞いてくれ!」

 

そこに聞き覚えのある声を聞き、スレイ達は教会に入った。

騎士セルゲイが街人に囲まれていた。

 

スレイは騎士セルゲイに近付いた。

彼はスレイを見て、

 

「すまない。開戦を止められなかった。」

「まだ最悪じゃないよ。」

「うむ。なんとか最小限の被害でとどめたい。そのために住民の避難を――」

 

そうスレイと話していると、

 

「なにが避難だよ!」

 

子供が騎士セルゲイを見上げて怒りだす。

スレイ達はその子供を見る。

 

「逃げる前に戦え!父ちゃんと兄ちゃんを殺したハイランドと!」

「あんたは和平派だったよな!避難とか言って、ハイランドに街を明け渡す気じゃねぇのか?」

「そんなの嫌だ!」

 

騎士セルゲイは首を振り、

 

「違う!本当に危険なのだ!ハイランドは全軍をあげて進攻してきている!」

「こっちも全軍で攻めればいい!」

「それでは果てしない殺し合いに――」

「敵を殺すのが騎士の仕事だろ!なあ、みんな!」

「そうだ!ハイランドなんかやっちまえよ!」

「冗談じゃないわよ!街も財産も明け渡すなんて!」

「勝手なことばかり言いやがって!」

「守れよ!俺たちを!」

 

最早、大人子供関係なしに不満と怒りが満ちている。

騎士セルゲイはスレイを横目で見て、

 

「……一度街を出よう。」

 

スレイも頷き、彼と共に歩いて行く。

レイは横目で街人を見て、

 

「本当、人間は醜い……だが、なるほどな……」

 

そう言って、スレイを追う。

街を出ると、他の騎士仲間も居た。

その騎士たちは、

 

「街の奴ら、団長の気持ちも知らず勝手なことを!」

「……彼らの気持ちもわかる。先のハイランドの戦いでは大勢死んだのだ。」

 

騎士セルゲイは視線を落として言う。

スレイは街の方を見て、

 

「それにしても……」

「住民の穢れが急に強まりました。」

「別の原因があるんじゃないか?」

 

ライラとミクリオがスレイを見て言う。

スレイは騎士セルゲイに振り返り、

 

「セルゲイ、オレたちも手伝うよ。まだ戦いを止める希望はあるさ。アリーシャもハイランド軍を抑えるために、頑張ってるはずだから。」

「アリーシャ姫の噂は聞いている。お会いしてみたいものだが――」

 

と言った時だった。

 

「うああっ!」

 

悲鳴が上がる。

レイは辺りを探った。

その先には子供の目の前に兵が囲う。

だが、スレイ達の眼には、

 

「憑魔≪ひょうま≫!」

 

騎士セルゲイは剣を抜き、駆け出す。

スレイがその背に、

 

「セルゲイ、こいつらは!」

 

憑魔≪ひょうま≫兵が剣を振り上げる。

 

「父ちゃんっ!」

 

そこに騎士セルゲイが弾き、

 

「……普通ではないな。だが――」

 

そこに他の騎士仲間もそろう。

 

「整列!三の陣!ローランスの民を傷付けるなら退くことはできない。逃げろ、少年!」

「うう……。」

 

子供は街に逃げ込む。

ミクリオがスレイを見て、

 

「スレイ、僕たちも!」

「わかってる!」

 

だが、その瞬間領域が展開される。

否、幻術のような結界に閉じ込められた。

 

「邪魔をしないでくれたまえ。」

 

そこには街で怒っていた街人の一人が立っていた。

それが光に包まれ、一人の少女に変わる。

それは紫の髪を左右に結い上げた天族の女性サイモン。

 

「せっかくのお膳立てしたんだ。」

「全部お前の仕業か!」

 

スレイは眉を寄せる。

そして天族サイモンは煽るように消えたり現れたりする。

スレイ達はそれを追う。

 

「くっ、見失ったか……?」

 

ミクリオが辺りを見渡す。

スレイも見渡し、

 

「いや……あっちになにかいる。」

 

そこに行くと、騎士セルゲイとその仲間たちだった。

ザビーダは彼に近付き、以外そうな顔で言う。

 

「はぁ?なんでこんなとこに?」

「なに、敵を片付けたからさ。」

 

そのザビーダの問いかけに、騎士セルゲイは応えた。

スレイは身構え、

 

「ザビーダ!」

 

そう言うと、騎士セルゲイがザビーダを斬り付けようとする。

 

「うおっと!」

 

ザビーダはそれをすんでで避ける。

そして騎士セルゲイはニット笑い、

 

「いかん、いかん。つい返事をしてしまった。」

 

そして騎士セルゲイは天族サイモンに変わる。

ザビーダは身構え、

 

「風まで騙すとは、すげぇ幻術だな。」

「術者はマヌケだけど。」

 

エドナも傘を構えながら言う。

レイは一歩下がって、行く末を見守る。

騎士だった者達も憑魔≪ひょうま≫に変わる。

 

「根が真面目なものでね。」

「セルゲイの姿で何をする気だ。」

 

スレイは天族サイモンを睨む。

彼女は笑いながら、

 

「使い道はいくらでもある。」

 

そして再び騎士セルゲイの姿になり、

 

「邪魔だった本人も、今頃憑魔≪ひょうま≫に殺されているだろうしな!」

 

そして斬りかかって来た。

 

「ははは!さあこい、導師よ!」

 

スレイは攻撃を交わしつつ、仕掛ける。

そしてミクリオも天響術を繰り出し、

 

「くっ!やりにくい!」

「それが狙いだ。情をかけるなよ!」

 

ザビーダが敵を薙ぎ払いながら言う。

スレイも技を繰り出し、

 

「わかってる!こいつはセルゲイじゃない!」

 

スレイは気持ちを切り替え、どんどん攻めていく。

しばらく戦うと、天族サイモンは姿を戻し笑う。

 

「まったく……容赦がないのだな。」

「……おまえはセルゲイじゃないからな。」

「なるほど。あの騎士と同じ思考だ。友だから助けるが、敵なら殺す。穢れてなければ守るが、憑魔≪ひょうま≫は消す。実に単純で素晴らしい世界だ。お前達にとっては。」

 

スレイは天族サイモンを睨んで黙り込む。

そして天族サイモンはレイを見て、

 

「主もだ、裁判者。審判者がゆっておったぞ。情が消せずに未だに元に戻らないとな。」

 

レイは天族サイモンを睨む。

ミクリオは天族サイモンを見て、

 

「なにがいいたい?」

 

天族サイモンは蔑みにも似た目になり、

 

「ただのエゴだと言ってるのだよ。穢れの源であるエゴだと。」

「そんなこと――」

 

ライラは眉を寄せる。

だが、天族サイモンはニット笑いながら、

 

「私が煽ったとはいえ、住民たちの怒りや憎しみはごく当然のものだ。だが、お前たちはそれを穢れと呼び、消そうとする。導師の使命だの騎士道だのの名目の元に。そして時に、裁判者や審判者が。さて、誰が保証するのだ?そんなお前たちが穢れていないと。」

「違います!スレイさんは穢れてなど!」

 

ライラは怒りながら言う。

天族サイモンは目を細め、

 

「違わないだろう。お前の知る先代導師も――」

 

ライラは目を見開く。

レイが天族サイモンを見て、

 

「穢れたな。導師であったのに。」

 

その瞳は怒りに燃えていた。

天族サイモンは目を細め、

 

「そんな風だから、審判者は主を殺したのではないか。何度も。」

「かもしれませんな。だが、今回の選択を出すのは我らではない。我らはあくまで、見届けるだけだ。」

 

そこにスレイが、

 

「使命でも、誰かのためだからでもない。自分が信じてることをやっているだけだ。オレも、セルゲイたちも。」

「今更、開き直るか。」

「今更じゃない。ずっとそうしてきた。」

「これからもね。」

 

スレイの言葉に、ミクリオが続く。

天族サイモンはつまらなそうに、

 

「皆に支えられて、か。それが弛まぬ所以≪ゆえん≫か。」

 

そして消えた。

ライラはスレイを見て、

 

「スレイさん……」

「戻ろう。大丈夫さ、セルゲイも。」

 

ライラに振り返る。

そして騎士セルゲイ達の元に戻る。

 

「スレイ!あそこ!」

 

ミクリオが先を見つめて言う。

ザビーダは口の端をニッと上げ、

 

「……終わったようだな。戦いは。」

 

スレイは駆けて行く。

 

「セルゲイ!」

 

そこには怪我をした騎士セルゲイと仲間たち。

そして倒れ込んだ敵と、味方もちらほらいる。

騎士セルゲイは傷を抑え、

 

「自分は大丈夫……だ。だが……」

 

仲間が何人かやられ、損害も大きい。

レイが怪我をした人たちに治癒術をかける。

そこに、

 

「セルゲイ殿。」

 

振り返ると、街人たちが立っていた。

 

「……事情は聞いた。この子を助けてくれたそうだな。」

「俺……父ちゃんと兄ちゃんの仇を討つつもりで……」

「気持ちはわかる。だが、激情に駆られて飛びかかるだけでは、獣と同じになってしまう。」

「……それでもいいと思ってた。ハイランドの奴を一人でも殺せれば、死んでもいいって……」

 

子供のその言葉に、スレイが声を上げた。

 

「いいわけない!俺たちは人間だ!もっと別の道を見つけられるはずだろ!」

 

レイはその言葉を聞き、俯いた。

騎士セルゲイはスレイを見た後、

 

「ともに探してはくれまいか。皆が生きるための道を。」

「……わかった。話だけは聞こう。」

「かたじけない。」

 

街人達は街に入って行く。

騎士セルゲイはそれを見つめ、

 

「本当はな、スレイ。自分も獣のように戦いのだ。こんな嘘吐きの自分は、きっと穢れているのだろうな。」

「穢れてなんかないよ。」

 

スレイは笑顔で騎士セルゲイに言う。

そして騎士セルゲイはスレイを見た。

そして互いに笑った。

二人は街の中に入って行く。

しばらく二人で戦場についての話す。

 

「わかった。スレイ、なんとか全面衝突だけは防ごう。」

「ああ、頼む。セルゲイ。」

 

そう言って、騎士セルゲイと別れる。

スレイは帝都ペンドラゴに向かう。


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