テイルズオブゼスティリアでやってみた   作:609

73 / 73
toz 第七十三話 過去の世界2

レイ達が災禍の顕主ベルベット・クラウ達と合流する前のこと……

スレイ達は、レイ達よりも少し前に過去の世界に来ていた。

それは自分達の時代ではカムランの先にある『王座』、ここでは『御座』と呼ばれた神殿の場所。

スレイは起き上がり、辺りを見渡す。

 

「えっと…………ここは?」

「一応、過去には来れたみたいだよ」

 

先に起き上がっていた審判者(ゼロ)が、スレイに手を差し伸べる。

その手を取り、立ち上がるスレイ。

そこに、辺りを見に行っていたミクリオとライラが戻る。

 

「起きたのか、スレイ」

「おはようございます、スレイさん」

 

スレイは腕を組んで、

 

「ゼロ。やっぱりレイ達とは、はぐれたっぽい?」

「うん」

「大丈夫かなぁ~……」

 

スレイは苦い顔になる。

ミクリオも苦笑して、

 

「確かに、スレイの心配も解る。僕も、結構心配だからね」

「でも、今は何とかなると信じましょう」

 

ライラが手を合わせて、笑顔で二人に言う。

ゼロはクルリと回ると、

 

「と、言う訳で……これから、『王都ローグレス』に向かおうと思う。あそこに、俺の知り合いもいるしね」

「へぇー、ゼロの知り合いか」

「で、ここでもう一度忠告しておくよ。君たちと、ここに居る人たちとは時代の流れが違う。関わりを持っても、その人たちの持つ歴史は変えられない。未来を変える行為となると言う事を忘れないこと。後、この時代の審判者()と裁判者には気を付けてね。特に、裁判者の方に出くわしたら、何が何でも逃げること!」

「う、うん。解った」

 

ゼロはグイッと詰め寄った。

スレイは肩ぐらいまで両手を上げて、頷く。

彼はスレイからスッと一歩下がると、

 

「そうそう。この時代では、天族達は『聖隷(・・)』と呼ばれている。だから二人の事も天族とは呼ばないように。と言っても、そう言ったところで解る者はいないだろうけどさ。それとね、憑魔は『業魔(・・)』と呼ばれているから、それも注意してね」

「へぇ」

「後、もう一つ。この時代の人間達の霊応力(・・・・・・・・・・・・)は、ある事によって上がっている(・・・・・・・・・・・・・)。それはある意味、未来と似たようなものだけど、ここでは少し違う。だから、それも忘れないように。特に、スレイ。君は、感情より先に行動する。本当に注意してくれよ」

「わ、わかってるよ」

 

スレイは引きつった笑顔で頷く。

それは、彼の言葉にミクリオも頷いていたからだ。

ゼロは大きく頷くと、

 

「じゃあ、行こうか」

 

一向は王都ローグレスへと歩き出す。

ミクリオはゼロの横を歩き、

 

「で、レイ達の居場所は掴めそうかい?」

「いや、今は無理。掴むどころか、まだ時空の歪みにいるみたいだ。それに、どうやらすでにズレが、この時代に出始めているみたいだ」

「もう、出てしまっているのですね……」

「まぁ、何かしら出るとは思ってはいたけどね」

「でもさ。あっちの……俺はどうなってるのか……」

 

スレイは眉をギュッと寄せる。

ゼロは横目でスレイを見ると、

 

「確かに、あれはスレイだ。だけど、あのスレイと君は違う」

「…………」

「それと、あれはどうやら時空の歪みでレイ達をまだ追ってる。けど、安心していい。レイ達は、そう簡単には負けないからね。何とかなるさ」

 

と、ゼロは立ち止まる。

スレイ達も立ち止まり、前をまっすぐ見る。

そこには王都ローグレスが広がる。

人間だけでなく、対魔士、聖隷が行き交う。

王都ローグレスの住人は、つい最近起きた事(・・・・・・・・)を忘れたかのように人々は生活をしていた。

いや、実際に忘れているのだろう。

この世界において、『災禍の顕主』が四聖主を目覚めさせた。

それによって、人々の霊応力が落ちた事を。

そして、解放された聖隷達がいることを。

それだけではない。

聖隷達もまた、自分達が解放された事すらも忘れているだろう。

おそらく、この世界において干渉を受けていないのは、裁判者と共に居た災禍の顕主達(・・・・・・)と聖主カノヌシと共に居た導師アルトリウス(・・・・・・・・・)

だが、今はその方が好都合だ。

だからこそ、その様子を見たゼロは頬を掻いていた。

 

「あー……ま、今はあまり周りを気にしないようについて来て」

 

彼に付いて行ったその先は酒場だった。

その中に入ると、酒場いた人達はスレイ達をスッと見据える。

スレイはビシッと姿勢を正す。

ゼロが一歩前に出て、

 

「やぁ、久しぶり♪また会えてうれしいよ、タバサ」

「……はぁ。あなたには、本当に驚かされるわ。ついさっき出て行ったばかりじゃないの」

「ははっ。いや、君にとってはそうでも、今の俺にとっては久しぶりなんだよ」

 

ゼロはカウンターにいる老婆に近付く。

そして小さく笑った後、真剣な表情になり、

 

「さて、タバサにお願いがあるんだ」

「珍しいわね。あなたが、そんな事を言うなんて」

「うーん、まあね」

「で、なにかしら?」

「彼らをしばらくの間、ここに置いて欲しいんだ。無論、タダでとは言わないさ」

「そうね……で、彼らは?見るところ、彼は対魔士(・・・)のようにも見えるけど」

「うーん……まぁ、対魔士と言えば、対魔士だね」

「まぁ、いいわ。彼らは預かるわ」

「助かるよ。後、ついでにさ。君のピーチパイが食べたいな。あ、彼らの分も頼みたい。彼らも、状況を整理させたいだろうしね」

「……ふふ。本当に珍しいわね。あなたがそんな事を言うなんて。いえ、始めてかもしれないわね。わかったわ。すぐに準備するわね」

「ありがとう、タバサ」

 

タバサはパイの準備を始める。

その後、ゼロは周りに居た人達と会話をしていた。

それらを終えると、彼はやっとスレイ達の所に行く。

 

「ごめん、ごめん。さ、ここに座って」

「ゼ、ゼロ」

「ん?なに?」

「ゼロは、ここの人たちと知り合いなのか?」

「まあね。(審判者)が、一時的に関わりを持っていたところだからね」

 

ゼロのその表情はとても嬉しそうで、悲しそうだった。

と、そこにピーチパイを運んできたタバサ。

ライラがそれを受け取りながら、みんなに小分けにしていく。

 

「あ、ありがとうございます。タバサさん」

「ふふ、いいのよ。それにしても、あなたがこんなに楽しそうにしているのは始めて見るわ」

「それは……そうだね。昔の俺は、感情という概念は知っていても、実際にするという行為自体は少なかったからね」

「そう……やっぱり、なんか不思議ね。いつものあなたと変わらないのに、違うあなたのように感じるわ。何だか、とても嬉しいわ」

「俺も、かな。君が、本当に少女時代の時から見てきたからね。君が成長し、結婚し、今こうしているのを見ていたのは、当時の俺(・・・・)からしたら、そうだなぁ……妹や娘を見ていた感じかも♪」

「それはそうよ。あなたときたら、会った時からなーんにも変わらないで、若々しいままなんですもの。この年になるまでは、それはもう嫉妬したものよ」

「あはは。こればっかりは、俺の特権だね」

 

と、二人は笑い合う。

それを見ていたスレイはニッと笑っていた。

ゼロがスレイを見て、

 

「なになに、スレイ。何を、そんなに笑ってるのさ」

「いや。なんか、ゼロにもこういった事があったと思うとなんか嬉しくってさ。オレらと居る時とは違う時のゼロって感じでさ」

「……はは。なにそれ」

「でも、それでもやっぱり……ゼロはゼロだなってすっごく思う」

 

スレイはニッと笑うと、ピーチパイを一口食べる。

と、目を輝かして、

 

「すっごく美味しい!ありがとう、タバサさん!」

「ふふ。それは良かったわ」

 

タバサは面白そうに微笑む。

ゼロは目をパチクリした後、

 

「ふっ……あはは!やっぱり、スレイは面白いな」

 

と、思いっきり笑い出した。

そして、彼もまたピーチパイを食べ、

 

「うん。とても懐かしい味(・・・・・)だ。相変わらず、とても美味しいよ」

「ふふ。本当に今のあなたは不思議ね」

 

そうして、スレイ達はしばらくこの酒場に居着いた。

スレイは、接客業と言う仕事をしながら過ごしていた。

同じく接客業をしていたゼロ。

 

「いや~、スレイもすっかり、ここになじんだね」

「ああ。オレ、ここ好きだな」

「はは。そう言って貰えて、なんか嬉しく思うよ」

 

と、ゼロの笑顔が止まり、真剣な表情に変わる。

顎に指を当て、黙り込む。

スレイは首を少し傾げ、

 

「どうしたんだ、ゼロ?」

「…………」

 

ゼロは、なおも黙り込む。

そこに、ミクリオとライラもやって来る。

二人とも、つけていたエプロンを取る。

ゼロは三人を見ると、

 

「どうやら、レイ達もこの世界(時代)にやって来たみたいだ」

「ホントか!皆は、無事か‼」

「うん。それは大丈夫。だけど……」

「だけど?」

「これまた、面白い所に(・・・・・)落ちたものだ」

「「「??」」」

「ま、なんとかなるだろうさ」

 

ゼロはパッと笑顔になる。

ライラはジッと彼を見て、

 

「では……」

「うん。俺らも、出発しようか」

「では、支度をしてまいりますわ」

「僕らも行くよ」

「ああ」

 

三人はすぐに支度を始める。

ゼロはタバサの元へ行き、

 

「タバサ」

「分かっているわ。行くのよね」

「うん」

「またいつでも、いらっしゃいな。その時は、彼らも一緒に」

「そうだね。できたら、そうするよ」

 

と、ゼロは笑う。

そこにスレイ達がやって来る。

 

「ゼロ、準備で来た!」

「すぐにでも行こう!」

 

スレイとミクリオは肩で息をしていた。

ライラが苦笑して、

 

「スレイさん、ミクリオさん。レイさん達が心配なのは解ります。ですが、挨拶はきちんとしていきましょうね」

「ご、ごめん。ライラ」「すまない」

 

二人は一呼吸して、

 

「タバサさん、みんな。お世話になりました」

「とても助かりました」

 

と、二人は頭を下げる。

ライラも頭を下げ、

 

「本当に、ありがとうございましたわ」

 

タバサは微笑み、

 

「ふふ。またいつでもいらっしゃいな。また、ピーチパイを焼いて待っているわ」

「ホント!タバサさんのピーチパイは、とても美味しいかったから楽しみにしてる!」

「ふふ、ええ。彼女(・・)も、これくらい気持ちに素直になれたら良いのにね」

「「「??」」」

 

タバサはある集団を思い出す。

三人は扉を開けて出る。

ゼロも扉の方に向かい、立ち止まる。

 

「タバサ」

「何かしら?」

「前にも言ったけど、君のこと妹や娘のように思っていた。でも、もしかしたら君たちのところで言う慕うとか、恋とかだったかもね。それこそ、後から気づく片想い的なね。ま、それは今の俺の感情(・・・・・・)だけど」

「そう。それはとても光栄ね」

「だから、ここの俺がどう想っているかは知らないけど……俺と仲良くしてあげて」

「勿論よ」

 

タバサは微笑む。

そしてゼロの背を見つめ、

 

「あなたは、彼らから『ゼロ』と呼ばれていたけれど……あなたの名で良かったのかしら?」

「うん。()の俺の名さ」

 

ゼロはクルリと回ってニッと笑う。

タバサは胸に手を当て、

 

「そう……なら、私が言うことは決まったわ」

「うん?」

「……行ってらしゃい、ゼロ(・・)

「ッ!……うん、行ってきます。ありがとう、タバサ」

 

ゼロは嬉しそうに笑い、扉を閉めた。

空を見上げ、伸びをする。

 

『何だろう。とても清々しい気持ちだ』

 

ゼロは噴水の側でまだかまだか、と言う顔をしているスレイ達を見る。

小さく笑い、

 

「さて、それじゃ行こうか。まずは港で船を探そう」

「船?」

「そ。ここからある島に向かうためのね」

 

ゼロはスレイ達を酒場で身を隠せている間、自分は情報を集めていた。

特に、この時間軸ではすでに死んでいる彼らの。

そして、この時代の干渉化に入っている聖主カノヌシと導師アルトリウスの居場所。

彼らはどうやらある島で突如膨れた力を使い、儀式を行おうとしていた。

まず、四聖主の贄となった者達の復活による戦力アップ。

それによって、記憶が来たのだろう災禍の顕主が行った事を自分なりに行おうとしていた。

だが、かの災禍の顕主は自身と聖主カノヌシが共に喰らい合い、眠り続ける事で俺らのいる未来へと繋がっている。

それを変えるとなると、彼はどうやってあの形のように循環を持って行くのかは興味のあるところではある。

が、それは審判者として見る事は可能だろう。

しかし、ゼロという一個人としては看過できない。

俺自身は、あの時代(・・・・)が好きなのだから。

理由はそれで事足りるはずだ

 

スレイは首を傾げ、

 

「前みたいに地脈を通ったりしないのか?」

「あー、それは無理。そんな事したら、この時代の裁判者に見つかっちゃうよ。それだけじゃない。君達に何かあれば、俺が二人に怒られる」

「……じゃあ、船を探すしかないね。行こう、スレイ」

「ああ。楽しみだな」

 

ミクリオはすぐに何かを察した。

故に、何も気づいていないスレイを先導する。

歩いて行くミクリオとスレイの背を見たライラは微笑み、

 

「ふふ。さ、行きましょう、ゼロさん」

「ああ。そうだね」

 

彼らはローグレス近くの港、『ゼクソン港』に来た。

ゼロは、港の漁師達に話をつけに行った。

スレイとミクリオは、今か今かと待っていた。

と、人々の噂話が聞こえてくる。

 

「聞いた?」

「聞いたわよ!災禍の顕主でしょ!」

「ええ。この間なんか、島一つ破壊したとか」

「聖寮は何をしているのかしら」

「きっと、導師様にもお考えがあるのでしょうよ」

「そうよね。なんたって、アルトリウス様は殿下のお墨付きですものね」

 

と、会話が続いていく。

スレイは空を見上げ、

 

「導師に、災禍の顕主か……」

「……スレイ」

「わかってるさ。でもさ……」

「気持ちはわかるよ」

 

スレイはミクリオを見る。

ミクリオは拳をスレイに向ける。

スレイも小さく笑って拳を当てる。

ライラはそんな二人を見て、小さく微笑んだ。

しばらくして、ゼロの手配が済んだ。

スレイ達は船に乗り、ある島を目指して出発した。

 

船に乗ってから数日が経った。

船に乗る人々も、日々変化する。

その船に新しく乗ってきた人々がある噂話をしていた。

 

「ねぇ、聞いた?」

「何を?」

「先日、黒い大きなドラゴンが現れたらしいのよ」

「あら?その話は違うのではないかしら?私は白いドラゴンが現れたと聞きましたよ」

「うそ。私は知らないわ」

 

と、続けられていく。

スレイとミクリオは互いに顔を見合い、

 

「白いドラゴンって……」

「レイだろうね」

「大丈夫かな……」

「今は信じるしかないだろうさ」

 

そういう二人のもとに、先程の噂話がまた聞こえてくる。

 

「私は、その二匹が大暴れして聖寮が動いたって聞いたわよ」

「しかも、聖寮は二匹とも逃してしまったとか」

 

スレイとミクリオは頭を抱えていた。

それもそうだろう。

なんたって、そのドラゴンとは関りがある。

 

「「あー……」」

 

二人の苦難は続く。

これは一刻も早く、レイ達と合流しなければならない。

しばらくして、目的の島まであと少しのところで船から降りる。

ゼロがスレイ達を影でつかんで島へと向かって空を飛ぶ。

 

レイ達が居るであろうある島にたどり着いたのだった。

まぁ、実際自分達が先か、レイ達が先かは解らないのだが…

 

島に着くと、見知った相手に出くわす。

 

「ザ、ザビーダ?」

「あぁ?誰だ、おめぇら」

 

と、上着を着ていて、髪を少し縛った風の天族(聖隷)ザビーダがいた。

彼は不機嫌そうに、こちらを睨みつける。

 

「え…っ…と……ある意味、人違いでした」

「あぁ⁈つか、てめぇも、聖寮のもんか!」

「いや……違うけど……違わないのか?あー…いや、やっぱり違うかも?」

「どっちだ!」

 

と、身構え始める風の天族(聖隷)ザビーダ。

だが、いつの間にかゼロが彼に近づき、

 

「やぁやぁ、お久しぶり♪」

「……な⁈この気配は審判者!」

「スレイ。俺は、ちょっとこの彼(・・・)を別のところに連れていくね。この後の事を考えると、少~しまずいから。というわけで、その辺でちょっと待ってて」

 

と、ゼロは天族(聖隷)ザビーダをガシッと捕まえる。

天族(聖隷)ザビーダは眉をものすごく寄せて、

 

「ふざけるな!」「あ!ゼロ!」

 

スレイが言う間もなく、ゼロは慌てて天族(聖隷)ザビーダを連れて消えた。

と言う訳で、スレイ達はゼロに待つように言われ待機していた。

そこに……

またしても見知った相手(・・・・・・)が現れた。

紫の長い髪を一つに結い上げた白と黒のコートのような服を身にまとい、仮面をつけた少女が現れたのだ。

 

「さ、裁判者⁉」

「…………なるほど、お前たちが来訪者(・・・)か」

 

そう、裁判者だ。

だが、この時代の(・・・・・)裁判者だった。

レイやゼロからは遭遇したら、逃げろと言われている。

スレイ達は頬に汗が一つ流れる。

 

「………そう身構えるな。なに、取って喰おうとは思ってはいない。今は(・・)、な」

 

裁判者は目をスッと細める。

ミクリオは身構えながら、

 

「ライラ、どう思う?」

「解りません。私も、そこまでは……」

 

ライラは戦闘態勢を解き、

 

「ですが、今は敵ではないということでしょう。なら、ここは大人しくしていた方が――」

「見つけたぞ!第一級指名手配犯!」

「逃しませんわ!」

 

そこに、二人の白い制服を見にまとった男女が現れる。

裁判者は目をそちらに向け、

 

「………忠告したはずだ。死にたくないのであれば構うな、と。それに、私は用がある」

「させません。災禍の顕主との合流をはかっているのでしょう」

「アルトリウス様によって、力を封じられた今のおまえを捕えることくらい今の僕らでもできる」

 

二人の男女は剣と杖を構える。

スレイは眉を寄せ、

 

「裁判者の力を封じるだって⁈」

「そんなことが可能なのか⁈」

 

ミクリオも眉を寄せていた。

裁判者は手に持っていた剣に手をかけ、

 

「では、試してみるか人間。どちらにせよ、実験には丁度いいかもしれん」

 

裁判者が剣を抜こうとした時だ。

駆け足が聞こえて来て、木々の間から二人組が現れる。

 

「やっと見つけましたよ、裁判者!」

 

現れた赤髪の女性は、白き服の男女を見て驚いていた。

 

「そんな⁈オスカー⁈テレサ⁈」

 

その声に反応した白い二人組。

男性の方が、現れた赤髪の女性を見る。

 

「ん?エレノア……ということは、すでに災禍の顕主が、あの場から離脱したと言うことか」

「はぁ。こっちも、本当に復活しているとはな」

「アイゼン!そんなに落ち着いている場合ではありません!」

 

と、赤髪の女性(エレノア)の横にいた金髪の黒服をまとった男性に言う。

だが、それ以前に……

 

「アイゼンだって⁉」

「それって⁈」

 

こっちはこっちで、テンパるミクリオとスレイ。

二人はアイゼンと呼ばれた男性をマジマジと見る。

 

「確かに、あの人で間違いない!」

「エドナの兄さん!」

 

スレイがエドナのことを口にすると、

 

「あぁ⁈てめぇ、なぜエドナのことを知っている!」

 

と、スレイとミクリオを睨みつける。

スレイはアイゼンを見て、

 

「エドナが大切な仲間だからだ!」

「……仲間。じゃあ、お前達がエドナの言っていた……だが、俺は認めんぞ!」

 

と、スレイとミクリオに構えるアイゼン。

スレイとミクリオは驚き、

 

「何が⁈」「意味が解らない……」

 

だが、アイゼンの睨みは増す。

横にいたエレノアと呼ばれた女性は、

 

「アイゼン!遊んでる暇はありませんよ!こちらは、こちらでやることがあるでしょう!」

「これは、俺の戦いだ!」

「あー!もう!!」

 

と、エレノアは眉を寄せる。

そうこうしている内に、裁判者はその場を離れ始めていた。

それに気づいたオスカーと呼ばれた男性と、テレサと呼ばれた女性は、

 

「待て!」「待ちなさい!」

 

と、追いかけて行く。

エレノアはハッとして、

 

「アイゼン!あなたが遊んでいるから、裁判者が行ってしまったではありませんか!」

「あいつなど、知るか!今はこいつらだ!」

「アイゼン!!」

 

と、エレノアはアイゼンに怒りまくる。

そんなやりとりを見ていたライラは、

 

『……もう、どうしましょう。どんどん話がゴチャゴチャに……』

 

ライラはため息をついていた。

エレノアはアイゼンを指差し、

 

「私は知りませんよ!今に死神の呪い(・・・・・)で、アイゼンに災厄が来ても!」

「ふん。今更、動じる呪いなどーー」

「のぁーー‼︎」

 

そう、彼らは休む間も無く、今度は空から人が落ちて来た。

それも、アイゼンの真上に(・・・・・・・・・)

 

「ぐお‼︎」「がは‼︎」

 

そしてそれは直撃したのだった。

スレイは魔女の格好をした女性を見る。

 

「なんか、また変わったのが来たな……」

「全く。何が起きているだ……」

 

ミクリオも、頭を抱える。

エレノアは驚き、そして悲しそうに、

 

「すいません、アイゼン……まさか、このような呪いが来るとは思ってませんでした」

 

魔女の格好をした女性は空を見上げ、手を挙げて怒る。

 

「こらー、ジジイ!乙女を落とすとは何事じゃー!」

 

そんな魔女の格好をした女性の下が小刻みに動き出す。

アイゼンは、自分の上に落ちて来た魔女の格好をした女性を睨みつける。

 

「マギルゥ。てめぇ‼︎早くどけ!」

「なんじゃ、なんじゃ、アイゼン。何を切れてあるのじゃ」

「早くどけ、と言ってるんだ!」

「まーたく」

 

と、マギルゥと呼ばれた魔女の格好をした女性は降りる。

そこに、今度はスレイたちも知る人物が現れる。

 

「おお。ここに居たか、アイゼン」

「ザビーダ!エドナはどうした」

「ロクロウと一緒だ」

 

そう、それはザビーダだった。

それも、自分たちのよく知る方の。

スレイは彼に駆けて行き、

 

「ザビーダ!」

「お、スレイ!それにミク坊とライラも一緒か。無事でなりよりだ」

「そっちこそ、元気そうで良かった!」

「まぁ、ここで会えたのは幸いだ。嬢ちゃんも、かなりストレス溜まってたからな」

「あー……なんかゴメン」

「良いってことよ。それより、審判者はどうしたんだ。一緒じゃないのか」

「え〜と……ザビーダを飛ばしにいちゃった」

「はぁ?!」

「この時代のザビーダとここで出くわしてね……その、ね?」

「あーー……なるほどな。やーっぱ、出たかーぁー。………ま、あっちの俺様無事そうで良かったわ」

「それで、今はどういう感じなの?」

「あー、それな。実は今、この時代の裁判者を捕まえなきゃならないんだわ」

「え?!あの人を!?だって……」

「ああ、出会ったら逃げろって言われてたもんな。けどな、これ俺ら所の裁判者が言い出した事なんだわ」

「えー…あの人もなんかあれだね」

「あれなんだわ。裁判者と言うより、嬢ちゃんが、な…」

 

ミクリオとライラもそれを聞き、困った顔になる。

そしてスレイ達には沈黙がながれるのだが……

 

「おい!俺を無視してるんじゃねぇ!おい、テメェ!」

「え?!は、はい!」

 

と、スレイを睨みつけるアイゼン。

アイゼンは構えて、

 

「エドナに相応しいかどうか……いや!理由がどうあれ、エドナに近づくヤローは許さん!」

「エドナは大事な仲間だ!だからえっと、信じてくれ、アイゼン!」

「馴れ馴れしい奴だ!男がぶつかった時はやることは一つだけだ!」

 

殴りかかろうとするアイゼンだが、

 

「アイゼン!今は裁判者を追わないといけないんですよ!」

「知るか!」

「……解った!戦おう!」

「おい、スレイ!」

「ミクリオ、先に行ってレイと合流してくれ」

「解った。そっちは任せたぞ」

「ああ!」

 

二人は拳を当てる。

そしてミクリオは、この時代の裁判者が向かった方へと駆け出した。

その方がレイに会える確率が上がる。

会えれば、エドナにも会えるだろうと思っていた。

ザビーダはライラを見て、

 

「ライラ、お前はミク坊について行ってやれ。なーに、スレイは俺様に任せな」

「…解りましたわ。ゼロさんが来たら、お願いします」

「おうよ。エレノアとマギルゥも、行きな。アイゼンと後から追うわ」

「アイゼンを頼みます」「頑張んじゃよ〜」

 

ライラ、そしてエレノアとマギルゥもその後を追う。

ザビーダは一歩下がり、スレイとアイゼンの戦いを見守ることにした。

 

「いくぞ、アイゼン!」

「ああ、来い!」

 

スレイの儀礼剣とアイゼンの拳がぶつかり合う。

時にはアイゼンは聖隷術を繰り出す。

スレイはそれを巧みに避け、距離を詰めたり取ったりする。

それが続く中、再び剣と拳がぶつかり抑え合う中、

 

「なぜ、ザビーダの手を借りない」

「これは、俺とアイゼンの戦いだからだ!」

「ほう。聖隷は対魔士にとっては道具だろう」

「違う!俺はザビーダ達天族(・・)達を道具とは思わない!大切な仲間だ!」

「……」

 

二人は抑えていた剣と拳が弾く。

アイゼンはフッと小さく笑う。

そこにスレイの剣が、アイゼンの腹に当たる。

その剣を手で抑え、

 

「お前の想いは解った」

「アイゼン」

「あのエドナが、仲間と認める訳だ」

「だろ〜、アイゼン!スレイは面白いやつだ」

「あのお前が、ここまでだからな」

 

と、ザビーダがアイゼンの肩へと腕を回す。

スレイはその姿につい笑ってしまっていた。

すると今度はスレイの肩に腕を回す者がいた。

 

「やぁ、やっと終わった?」

「ゼロ!戻ったんだ」

「うん。ほんと苦労したよ…」

「え?」

「いや、この時代のザビーダをここより遠くに連れって行ったのは良かったんだけど…着いた途端、殴りかかってくるわ、暴れ出すでさ」

「あ〜」「いや〜、悪いわ」

「まぁ、ちょっとこっちも手を出したしね。あれなら当分派手な動きはできないよ」

「え?それって俺様相当やばくないか?」

「大丈夫だよ、多分」

「「多分……」」

 

スレイとザビーダは、この時代のザビーダが心配になってきた。

しかし、アイゼンはゼロを見て、

 

「…なるほど、あの裁判者がかなり変わっていたが、こっちはあまり変わっていないようだな」

「ん?」

「あえてい言うならば、腹黒さが増したか」

「え〜。で、今こっちはどうなってるの」

「それは移動しながら説明する」

 

四人は駆け出した。

 

それはスレイ達がこの島に着くほんの少し前の事だ。

レイ達によって、スレイ達の事は伝えられた。

そしてこの時代の裁判者は、この島に来ていた。

だが、導師アルトリウスにより、クローディンの作り出した術式によって力を封じられた。

丁度その頃、スレイ達とレイ達もこの島にたどり着いたのだった。

レイ達は、この時代の裁判者、そして導師アルトリウス達の場所へと辿り着いたのだった。

そこには、死んだはずの魔道士メルキオルと剣士シグレが並び立っていた。

 

「やはり復活していたと言う話は、本当だったようだな」

「ま〜ったくじゃ。あの腐れジジイの相手をまたせねばならぬとは、これは骨がおるわ」

 

彼らはそれぞれ戦闘体制に入る。

向こうも向こうで、

 

「ほほう、あれからまた少しは強くなったようじゃないか」

「前のようにはいかないぞ、災禍の顕主ども!今度こそ、倒してみせるわ」

 

と、彼らも戦闘体制には入っている。

導師アルトリウスの背後から聖主カノヌシが姿を表す。

 

「アルトリウス、あの小さいのがもう一人の裁判者みたいだ」

「俄には信じられぬが、そうみたいだな」

「アルトリウス、カノヌシ。覚悟しなさい」

「僕らが必ずあなた達を止める!」

 

四人の視線はぶつかり合う。

レイはこの時代の裁判者を見る。

向こうは向こうで、こっちを見ている。

 

「「……」」

「嬢ちゃん、どうした?」

「いや、そのね…」

「ん?」

「解ってはいたんだけど…この時代の私ってさ、あんな感じだんだよなぁって」

「そうれはまぁ、な」

「よくあんなのに付き合ってこれたね、君たち」

「「……」」

 

今度はザビーダとエドナが黙り込んだ。

そしてエドナはこの時代の裁判者を見る。

今でも嫌いだが、この時代の裁判者はさらに嫌いな時期だ。

 

「まぁ、子供の世話は大変って聞くしね」

「そうね、ほんと嫌になるくらいのガキね」

「さて、あの子供を彼らに悪用されないようにしないと」

「ほんと、手のかかるガキね」

「おい、エドナ。心の声が漏れてるぞ」

「あえて言っているのよ、わからない?」

「ハァ〜…」

 

ザビーダは大きなため息が漏れた。

この時代の裁判者は、あの小さな裁判者が自分とは思えなかった。

 

「あれでは審判者ではないか」

「裁判者だよ」

「まるで人間に近い」

「みたいにしているからね。さて、クローディンの友と導師アルトリウス…いや、クローディンの弟子よ」

「なんだ」

「今の私だからこそ言える。クローディンを救えなくて済まなかったな」

「「!」」

「あれは、私にとっては良いライバルであった」

「貴様!今更、そのような事をほざくか!我が友のことを!」

「全くだ。まるで人間そのもののような事を口にするとは」

「裁判者。どうやら、この先のお前はああなると言うことか。我が師が、それを知ったらどうのような反応をするか」

「知れたこと。私には関係ないの事であり、何よりあれは(・・・)私ではない(・・・・・)

 

そう言いながら、メルキオルによる拘束を無理矢理壊した。

それを見た聖主カノヌシは力を使おうとした。

だが、それを止めたのはレイだった。

 

「聖主カノヌシ。それはルール違反だ。君に扉を使う権利はない」

「アルトリウス。どうやら、あれも封じた方が良さそうだ」

「そうのようだな」

 

二人の標的はこちらになっていた。

そこには赤い瞳を光らせている見覚えのある裁判者の姿。

レイはベルベット達を見て、

 

「とりあえず、聖主は私が止めておいてあげる。ベルベットは、この時代の裁判者にかけられた封術を喰らって壊して」

「はぁ?」

「このままだと、君たちの未来はなくなる」

「たく!裁判者!」

「断る」

 

裁判者はかけて寄って来たベルベットに即答だった。

その返答にレイは笑顔で、

 

「だよね」

「ちょっと、どういう事なのよ」

「まぁ、あの子供が素直に受けとるとは思ってなかったけど…時と場合を考えろ」

 

レイは笑顔だ。しかし、オーラが怖い。

これ、素が出てませんか?いや、そもそも裁判者の性格ではない気がする。

特にそれを感じていたザビーダとエドナ。

 

「仲間割れしている間に仕掛けるぞ、アルトリウス」

「ああ」

 

メルキオルと導師アルトリウスは動く。

シグレも、やれやれと言う形で剣を抜く。

それはロクロウが引き継いだ剣と同じ、元の彼の剣と一緒だ。

違うのは纏っているオーラくらいだ。

あれはなんだかやばそうだ。

 

「おいおい、シグレ。随分とお前らしくないものを持ってるじゃないか」

「俺も不本意だが、仕方ないことだ」

「ロクロウ、手伝います」「僕も!」

「…ああ、頼む。エレノア、ライフィセット、まずは動きを止めるぞ」

「ええ!」「うん!」

 

二刀剣を構えるロクロウと槍を構えるエレノア、聖隷術の詠唱を始めるライフィセット。

技を仕掛ける前に、その術を阻止したマギルゥがメルキオルの前に立つ。

 

「相手は儂じゃ。もう一度、看取ってやるわい」

「ふん!」

 

メルキオルは宙に浮く。それを追うようにマギルゥも式神に乗る。

導師アルトリウスの剣を受け止めたのはアイゼンとザビーダ。

さらにエドナの聖隷術が繰り出される。

 

「お前の相手は俺たちがしてやる」

「しばし付き合ってもらうぜ」

「少しは大人しくしていなさい」

「ふ、いいだろう」

 

導師アルトリウスは剣を構え直す。

聖主カノヌシはレイによって抑えられてはいたが、レイ自身簡単なことではない。

それに加え、ベルベットを頑なに拒否っている裁判者にも腹を立てていた。

そんな中、ベルベットは剣を抜いた裁判者を相手にもしていたからだ。

 

「いい加減にしろ!この子供はぁ‼︎」

「「⁉︎」」

 

ベルベットと裁判者は驚いてしまった。

レイはレイとで言うと、影が蠢いていた。

 

「こっちはお兄ちゃん達を後回しにして、そっちを優先してあげたんだからね!」

 

その怒声は全体に聞こえていた。

ザビーダとエドナは『ああ、やっぱり』と思っていた。

その怒りが頂点に達したのか、影が思いっきり裁判者を投げ飛ばした。

 

「あ……」

「はぁ……」

 

レイはしまったと言う顔を、ベルベットは呆れ顔をした。

それにいち早く反応したのは、メルキオルだった。

 

「オスカー、テレサ!裁判者を探せ!力はアルトリウスによって封じておる!」

ーーわかりました!

ーーお任せを

「む!いかん!ジジイが何やら連絡を取ったようじゃ」

「どうすんだ、ちび裁判者!」

「……この時代の裁判者を捕まえて!」

「チッ!世話のかかる!」

「なら、私が行きます!」

「アイゼン、お前も行ってやれ!裁判者が相手なら、お前みたいなやつの方がいい!」

「頼んだわよ、お兄ちゃん!」

「くそ!行くぞ、エレノア!」

「はい!」

 

こうして二人は裁判者を探している所で、スレイ達にあったのである。

そしてあの場を一時撤退したのがザビーダ達である。

まぁ、マギルゥはむしろ吹き飛ばされたと言うべきかもしれない。

と言う訳である。

 

「なんというか、レイがごめん…」

「何、今に始まったことじゃないからな」

「むしろ、あれの相手をよくできたもんだ」

「まぁ、レイになってからかなり主張激しいからね。裁判者は、裁判者で何もしないだろうし。お互い、似たもの同士…いや、本人なんだけどね。何分、一から構成されているしね、レイは…」

 

スレイは苦笑する。

はるか昔から裁判者を知っている3人からしたら、今のレイは見たことのなかった裁判者ではある。

が、根本は変わっている所は少ないのだろう。

スレイ達が先に行っていたミクリオ達に追いついた。

そこはすでに戦闘が行われていた。

 

「ミクリオ!」

「スレイ!」

 

ミクリオの隣に行き、オスカーと呼ばれていた対魔士と戦っていた。

ミクリオとの息の合った戦い方に、

 

「君は対魔士か。君とその聖隷は随分と仲が良さそうだな」

「…まるで、不思議とそうに言うだな」

「当然だ。聖隷は道具だからな」

「違う!彼らだって生きている!心があるんだ!」

「…だが、心があると言うことは穢れを生むと言うことだ。その穢れを1番産んでしまうのは人間だ。そして聖隷は、穢れに触れるとどうなるか知っているか」

「ドラゴンになる」

「そうだ。ドラゴンになってしまったら、それはもう穢れの塊だ。心はない」

「けど、そうなる前に、浄化する事ができる!それに、今は無理でもドラゴンになってしまった天族を元に戻す事だってできるはずだ!」

「…夢物語だけでは世界は救えない!アルトリウス様のように、自らを犠牲にしなければ!」

「そうかもしれない!けど、だからと言って心を奪うのは違う!俺たちは手を取り合って生きていける!そうだろ、ミクリオ!」

「ああ!」

 

そう、スレイ達はあの酒場で働いていた時に聞いていた。

この時代の導師アルトリウスが何をしようとして、世界を救おうとしたのかを。

何より、彼のやり方では希望と夢がない。

俺はみんなと過ごすあの笑顔が、楽しさが好きだ。

確かに良い事ばかりじゃない。

けど、だからこそ仲間がいるんだ。

なのに、彼はその聖隷(天族)を道具みたいに扱う。

 

「まだ名乗ってなかったな。僕の名は一等対魔士オスカー・ドラゴニア」

「俺はスレイ。導師スレイだ」

「導師だと?」

「ああ!」

「いいだろう!その力見せてみろ!」

 

対魔士オスカーは使役聖隷と神依に似た姿へとなる。

スレイもミクリオと見合って、

 

「ああ!ミクリオ!」

「もちろんだ!行くぞ、スレイ!」

 

対魔士オスカーを見る。

 

「「ルズローシヴ=レレイ‼︎」」

 

スレイ達も神依をする。

剣と矢がぶつかり合う。

想いの強さは同じ。

違うのは共に戦う絆だ。

 

「ぐっ!」

「「これで決める!」」

「ぐあ!」

 

対魔士オスカーは吹き飛ばされた。

神依が解け、起き上がる。

そこに空から降りて来た老人対魔士。

 

「…なるほど。未来から来た導師というのは嘘ではないようだな」

「あなたは?」

「儂の名はメルキオル。オスカー、テレサ。ここは一旦撤退する」

「ですが、メルキオル様!」「まだ、戦えます!」

「何、裁判者を捕らえることに成功した」

「なんだと⁉︎」

 

これにはザビーダが驚く。

いくら力を抑えられたとしてもだ、あの裁判者が捕まるだと、と。

それに、レイ達がそれを防いでいたはずだ。

 

「嬢ちゃん達はどうした」

「あの小さい裁判者なら、聖主カノヌシに加担したドラゴンに敗れおったわ。お前の仲間と共にな」

「なんだって⁉︎」「くそ!」

「それはおかしな事を言うね」

「む?審判者か」

「あいにく、君たちの知る方のじゃないけどね。だけど、いくらレイでもこの時代の裁判者を、あいつに渡すとは思えない。何をした」

「…簡単なこと。人間となったのなら、隙は生まれると言うだけじゃ」

 

そう言うと同時に、辺りに霧が発生する。

そして晴れた頃には、彼らの姿は消えていた。

 

「どうする、スレイ」

「ゼロ。レイ達の居場所はわかるか?」

「この状況下になっていたら、俺は気付けているはず。けど、気付けなかった。それに、もっと早くに気づけばよかったよ。レイの…いや、裁判者の気配を感じない」

「ちっ!だとすると、最初に行ったあの場所に行くか?」

「…いや、ここは地の流れを読む。できれば、君にも手伝って欲しいんだけど」

 

と、ゼロはアイゼンを見る。

アイゼンは組んでいた腕をとき、

 

「エドナも気になる。何より、仲間を見捨てる気はない」

「じゃ、始めようか」

 

二人は地面に手を着き、地脈を探る。

どれくらいそうしていただろうか。

やっと手を離し、

 

「1番怪しいのは…」

「あの山の上」

 

そう言って、二人はここよりずっと先にそびえ立つ山を見上げる。

この島だけでも、かなりの広さがある。

簡単には辿り着けないだろう。

だが、彼らの決意は決まっていた。

 

「行こう!」

「はい!仲間を救い出します!」

 

すぐにでも、出発しそうになるスレイとエレノアを掴むゼロ。

 

「何?」「なんですか?」

「いや、行くのはいいけど、まずはお互いを知ろうよ。でないと、連携は取れないと思うけど?」

「……そう、だね。俺はスレイ。導師スレイ」

「ええ。レイ達から聞いてます。私は一等対魔士、エレノア・ヒュームと言います」

「儂は大魔法使い、マジギギカ・ミルディン・ド・ディン・ノルルン・ドゥ。そしてこのノルミン聖隷はビエンフー。」

「マギギ?」『ビエンフーがまさかここに居るとは…』

「あいつの事はマギルゥでいい。そして俺はアイゼン。と言っても、そっちは知っているみたいだがな」

「ええ。エドナさんのお兄さんですもの。私は火の天族ライラと申します」

「僕は水の天族ミクリオだ」

「そして俺は知っての通り、審判者。今はゼロと名乗っているよ」

「天族…未来では、聖隷の事を天族と呼べるようになっているのですね。良かったです」

「?うん」

「そして、ここにはいませんが、ロクロウとライフィセット、そしてベルベットが私たちの仲間です」

『ベルベット…その人が災禍の顕主』

「さ〜て、自己紹介が終わったところで、行きますか」

「うん!」

 

そして、一行は進み出した。

仲間を救うために。

お互いの未来を救う為に。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。