「当麻。困っている人がいたら迷わず助けろよ。それは当麻にしか出来ないことなんだからな」
俺は夢の中で自分より一回りでかい人物からそう言われた。顔はよく見えなかった。その言葉を言うと彼は背を向けてどこかへ歩いて行った。俺は必死に彼の名前を叫んで追いかけるけど、どんどん離れていった。彼が消えたところで目が覚める。
「はっ!?・・・またか」
狭い風呂の中で俺は全身に嫌な汗をかきながら体を起こす。
この不思議な夢を見るようになったのは上里勢力、木原、魔術サイド、科学サイドそしてアレイスターとの戦いが終わった日からだった。
夢に出てくる男には全く見覚えはない。だけど前の自分、記憶を失う前の上条当麻の知り合いだとしたら可能性はある。理由は毎日同じ夢を見るうちに夢の中の自分は幼い頃の自分だと分かったから。
さすがに毎日見てれば気になってくるが、ようやく訪れた平穏を手放したくないし、つーか進級がかかった補習やら奉仕活動でいっぱいいっぱいな上条さんにとって他のことをしている暇などない。改めて自分の現状を痛感し、虫の知らせ的な現象からこれからの厄介事を想像した。
「不幸だ」
決まり文句を言って休日補習に備えてもう一度寝ることにした。
今日は12月24日クリスマスイブ。ほとんどの学生は冬休みに入っていて、友人や恋人と過ごす日。しかし
「上条ちゃーん!ちゃんと先生の話を聞いてますかー?」
「!?聞いてましたよ!この期に及んで居眠りとか洒落になんねーし!」
「それでは先ほどの問題を答えてくださいね」
「えっと・・・②平城京」
「正解です!日々の補習のおかげでだいぶ前より良くなってきましたね!」
「はい!だから宿題の量を減らし
「調子に乗るなですよ」
こんなとある少年がいることも事実である。
キーンコーンカーン
「やっと終わった」
午前中はサンタクロースになって幼稚園にプレゼントを届けに行き、午後は補習という激務がやっと終わり、体を伸ばしながら一息ついた。
さっさと帰って飯食って風呂入って宿題やって寝るかなと考えながら、昇降口に向かう。
「ん?」
靴箱を開けると何かがひらりと落ちた。それを片手でキャッチする。可愛らしい桃色の封筒だった。
「デジャブを感じる」
恐る恐る確認すると、上条当麻君へと女の子らしい丸い文字で書かれていた。期待半分、不安半分。中身を見てみる。
「あなたのことが好きです。。12月25日、放課後に私の秘密基地で待ってます。雲川芹亜」
暫く動けなかった。
「・・・これは!!本物のラブレターだああああ!!!」
差出人よりも本物のラブレターが来たことに嬉しさを感じる辺り、相当あのジジイにされたことがトラウマになっているわけだが、そんなこともうどうでも良かった。
「今日は赤飯にするぞー」
そんなことを言いながら学校を出ていった。
「ちょっとアンタ待ちなさい」
学校から出てすぐのところで御坂美琴にエンカウントした。
「ふふ、分かっていましたよ?上条さんに幸せなど訪れないことなんて。でもいいじゃん!ちょっとぐらいさー!夢見させてくれよう!」
嘆いていると、御坂が近づいてきた。ああ、やられるなと思った。
「はいこれ」
御坂は手に桃色の封筒を持って、こちらに向けている。
状況を把握できずに固まっていると封筒を押し付けられた。
「待ってるから」
上目遣いで言われたその一言に不覚にもドキッとした。
御坂はそれだけ言うと走って行ってしまった。御坂の顔が真っ赤だったのは気のせいだろうか。
壊れかけの自販機がある公園のベンチに座って御坂からもらった手紙を見てみた。
上条当麻君へ
ずっと好きでした。
あなたは意外と思うかもしれないけど
これが私の本心です。
もし返事をもらえるなら12月25日
放課後いつもの公園で待ってます。
御坂美琴
「・・・御坂」
少し前まではビリビリしてくる危ない中学生っていうのが印象だった。でも今は頼りになる戦友、前の戦いでも彼女がいてくれなかったら危なかったことがたくさんあった。守るべき後輩から背中を預けられる親友になったのはいつからだろうか。
「ふむふむ。上条的にはどちらにするのか決めたのか?」
不意の声に俺は顔をあげる。手紙に夢中で目の前に人が来ていたことに気がつかなかった。
「あんた、誰だ?」
彼女はモコモコのコートに短いスカートという格好で、つい俺はスカートから伸びる足、胸、顔という順番で見てしまう。
「妾の名前はウラヌス」
「外人さんが俺に何の用だよ?」
「上条、話をそらすのではない。質問に答えるのじゃ」
「てめえに関係ねえだろ」
「なんじゃ!その物の言い方!妾が答えたというのに御主は答えぬというのか!?」
「うるせえ!分かってんだよ!どーせ答えたらお前の力で世界がぶっ壊れて上条さんが厄介事に巻き込まれるに決まってんだ!こっちはやっと平穏な日常を取り戻して青春謳歌してんだから邪魔すんな!」
言ってやった。ここでなんとか流れを自分に引き込まなければトントンといつもの感じになってしまう。バトルの肝はトークなのだ。
と、心の中でガッツポーズしてるとひっく、ひっくとなんだか誰かが泣いているような音がする。
「ひっく・・・ひっく、わ、妾は、ひっく、ただ、ひっく、質問をしただけなのに」
彼女の様子はまるで時限爆弾のように爆発のタイムリミットを知らせていた。
「びええええええええん!!!わあああああん!!!」
俺はとんでもないことをしてしまった。ついまたどっかの黒幕が俺にちょっかいかけてきたのかと思ってしまった。だがしかし、相手はただの女の子、見た目からしてインデックスくらいの少女を理不尽な理由で怒鳴って泣かせてしまった。
「ごめん!すみません!申し訳ありません!だから泣かないで!ほ、ほら!俺の魚肉ソーセージ食べるか?」
俺はポケットから取り出した昼飯の残り物を献上。
「わああああん!」
食べ物作戦は失敗。
「本当に申し訳ありませんでしたあああ!お詫びに何なりと私目にお申し付けくださいいい!」
土下座&体で支払う作戦に移行。もう許してもらえるなら何でもするしかない。俺はウラヌスに負けないくらい大声で謝罪した。
それから1時間後、ファミリーレストランで特大パフェを少女に奢るとある男子高校生がいた。
「ところでウラヌスはどこの学区に住んでるんだ?」
俺はウラヌスの機嫌がなおったところを見計らい聞いてみた。
「内緒じゃ。知らない人に住所を教えるなと先生に言われおるのでな」
「でも、もう遅いし。送っていくよ」
「要らん世話じゃ。送ってもらわなくても帰れる。もしもの場合は防犯ブザーでアンチスキルを呼ぶから心配せんでもよい」
「そっか、しっかりしてるな」
「別に普通じゃ」
いやいや、普通じゃないです。食べ物で釣られる腹ペコシスターとか厄介事に首を突っ込みたがるビリビリ中学生とかいるんです。あれ?俺の周りが普通じゃない?
「ところで上条。まさかさっきのパフェで償いは終わりというわけではなかろうな?」
コミュ障みたいな独り言をしてたら、ウラヌスから賠償の話をふられた。
「な、何をお求めですか?貧乏学生上条さんは特大パフェくらいしか奢れません!」
「いや。もうお金関係は要らん。ただ・・・」
ウラヌスの声が急に小さくなった。
「ただ、なんだ?」
「ただ、御主ともっと話がしたいんじゃ。迷惑か?」
「なんだ!そんなことならぜんぜん構わない!」
どんな要求が来るのかと思えばそんなことかと安堵した。
「本当か?じゃ、じゃあ、今度暇な時に会いたいのだが構わぬか?」
「もちろん!」
俺達は連絡先を交換して別れた。
帰宅途中俺は大事なことに気がついた。
「明日、返事しないとな」
心の中ではもうどちらにするのか決めている。でもどちらにも精一杯気持ちに答えようと覚悟を決めた。
「インデックスのやつ腹空かして冷蔵庫空にしてなきゃいいけど」
そんなことを思いながら帰宅した。
1週間に1回くらい投稿。予定