ウラヌスの夢を見てから3日経った。
「ねえ、当麻くん」
「なんだ?美琴」
「本当に、本当に大丈夫?」
美琴が俺の隣で心配そうに聞いてきた。
「ああ、大丈夫だよ」
俺は美琴の頭を撫でながら答えた。
俺達は今電車に乗ってお互いの実家に帰省する途中だ。あれから俺はウラヌスに何度も電話をかけたけど、まったく繋がらなかった。いてもたってくもいられず学園都市中を走り回って探した。でも見つからなかった。走りながら俺はウラヌスの事をほとんど知らないことに気づいた。まるで昔から俺の事を知っているような口調で俺に話しかけるウラヌスに俺は甘えていたのかもしれない。
そんな俺の異常を感じた美琴とインデックスはすぐに力になってくれた。美琴は後輩の風紀委員にウラヌスの情報を探ってもらった。でもそれもダメで学園都市に在住している記録がなかった。ならば魔術サイドの人間なのかインデックスを通じてイギリス清教に調べてもらったが、やはり情報はなかった。
俺はどうしてもあの夢が気になっていた。記憶を失う前に見たあの男の背中とウラヌスの泣き声。この二つの夢に関連性があると思った。まったく確証はないけど両親が何か知っているかもしれない。そう思った俺は急遽実家に帰ることに決めた。俺の実家と美琴の実家は近所みたいだから挨拶もついでにすることにした。
美琴は俺が記憶を失っている事を知っている。だから俺が失った思い出でショックを受けないか心配している。でも俺は失った記憶を集めたいと自然と思っていたんだ。今まではそんなこと考える余裕がなかったからこの機会に少しでも前の自分を知りたいと思ったんだ。
俺達は目的の駅で降りた。
「ママが迎えに来てるはずなんだけど・・・」
「美鈴さんかー、何か嫌な予感が・・・」
俺が以前絡まれた悪夢を思い出す。
「かーみーじょーくーん!」
「!?」
見覚えのある声と共に突然視界が真っ暗になって背中に体重がかかった。
「ちょっと!?ママ何やってんの!?」
「何ってサプライズ」
「あのー、何か背中に柔らかい二つの感触が当たっているんですが」
「ママ!!」
「てへぺろ」
やっと美鈴さんから解放された俺は少し美鈴さんから距離をとる。
「もう、当麻くんもすぐに振り払えばいいじゃない」
今度は美琴が拗ねてしまった。こういうことは付き合ってからしばしばある。
「美琴。悪かった」
「ふん」
「どうしたら許してくれる?」
「・・・私の事好きって言って」
「好きだよ、美琴」
「私はもっと好き」
「今度美琴の好きそうな可愛い喫茶店に行こう」
「うん!楽しみ!」
ああ幸せだな、と改めて感じている。こんな気持ちに気づかせてくれた美琴に感謝だ。
「ねえねえお姉さんのこと忘れてなーい?」
「まだ居たんスか?」
「居るよー!私運転手、貴方たちのアッシーだから!」
「は?アッシー?」
「知らないだと!?ヤバイこれがジェネレーションギャップというやつか」
なぜか落ち込んだ美鈴さんはほっといて先に駐車場に行った。どうせ寂しくなって来るだろ。
しばらくして美鈴さんが愚痴りながら俺たちを送迎してくれた。
車に乗りながら俺は今後について考えた。実家に居る日数は2日、1月3日からまた補習と奉仕活動が待っている。その間にウラヌスについての手がかりを見つけなくてはいけない。事前に美琴が俺の幼少の頃の写真を見たいという理由をつけて母さんに小さい頃の思い出の物を用意してもらっている。そこから話を聞く予定だ。もしウラヌスについて情報がなかったら俺ではなく他の人に託すつもりでいる。以前の俺だったら学校を無断欠席していただろう。
自嘲気味に笑って外の風景を眺めていると、町中に同じようなポスターがあることに気がついた。
「学園都市統括理事長選挙か」
アレイスターの失脚により次の統括理事長を決めることになり初めは親船最中がなるはずだったみたいだが、学園都市のこの弱味に日本政府が首を突っ込んできた。
「もうすぐね。確か学園都市からは親船最中、外からは斎藤千尋」
「斎藤千尋ってまだ18歳だろ?」
「しかも飛び級で大学院まで行って、アンチ学園都市派として学園都市に頼らない社会を目指してるって話よ」
「そんな奴が選挙で勝てるのか?」
「上条君もやっぱりそう思うみたいね。でも中ではそうでも外にいる日本国民は違うのよ」
「違う?」
「中に住んでる人には分からないけど、外の人間は学園都市に憧れと嫉妬心を抱いているの。超能力なんて誰でも欲しいと思うわよ。それが手に入るかもしれないチャンスなんてもうないでしょ」
「でも若すぎないですか?」
「大人じゃ得体の知らないものは手を出さないの。どんなリスクがあっても前に進む若さに日本国民は引かれるのよ」
美鈴さんの言葉に何となくだけど納得してしまう。中に住んでるとどうしても外の世界に疎くなってしまうことがある。
「上条君にも少し似てるわよねー」
「え、どの辺がですか?」
「またまたー?どうせそうやって美琴ちゃんと普段からまわりを気にせずイチャイチャしてるんでしょー?」
「「!?」」
美鈴さんから見えないように俺と美琴は手を繋いでいたのだが見破られて思わず手を離してしまった。
「アハハ、若さっていいわねー!」
そんな世間話をしながら俺達は上条宅に着いた。
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