やはり俺の脳内選択肢は青春ラブコメに波乱をもたらす   作:こうけー

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4話いくお!


氷と雪と涙

もう後戻りは出来ない。

俺は①を選んだのだ。由比ヶ浜ではなくて雪ノ下を…

だから、どうしようもない。絶対選択肢というものが俺の中に有り続ける限りは俺は従わなくてはならないのだから。でも、不思議と後悔はしてない。いずれ来る筈だった出来事が今来たから仕方がないとかそういうのじゃないと思う。自分でも分かってはいないが恐らく、やっと『本物』を得られる喜びなのかもしれない。

雪ノ下と由比ヶ浜の3人で得る『本物』、由比ヶ浜としか得られない『本物』、そして雪ノ下としか得られない『本物』。雪ノ下を選べば由比ヶ浜との『本物』は二度と得ることは出来ない。それでも構わない。

俺は雪ノ下とーーー

 

そんな事を考えているといつの間にか奉仕部の前まで来ていた。ここに雪ノ下がいる。いつもの事なのに今は新しい気分だった。

「………」

俺は無言のまま扉を開ける。今俺はどんな顔をしているのだろう。自分では無表情をしているつもりだがもしかしたら気持ち悪い笑顔を浮かべてるかもしれないし、もしかしたらパニクって目が回ってるかもしれない。

「……あれ?」

 

いない。雪ノ下がいない。

 

俺は奉仕部の部屋を見渡す。しかし、いない。その代わり見つけたのは雪ノ下の物が全て無くなっていること。それは、たった一つの答えしか導き出さなかった。

「…っ!あの馬鹿!」

俺は奉仕部を走って出ていく。時間にしてみたら俺が奉仕部を出て戻ってくるのに凡そ10分くらい。そして、今から俺が雪ノ下の家まで走ったら100%帰路の途中で雪ノ下に会える。もし、雪ノ下が走って帰ってもあいつの体力じゃ持つわけがない。

昇降口の下駄箱のところまで来る。靴を履き替える時間がもったいない。しかし、スリッパのような走りにくいもので走っても走りにくいだけだ。

 

あれ?俺も結構本気で走ってるから途中でガス欠するんじゃ……

 

ーーー

ーー

 

「……はぁ」

ため息混じりに私は白い息を吐く。季節は冬だからいつも以上に息は白い。

今頃、比企谷君は由比ヶ浜さんとイチャコラしてるのかしら……いえ、無いわねあの男に限って……

「……はぁ」

二回目のため息。恐らく学校からここまでで数えきれないほどのため息を吐いているだろう。

よっぽど比企谷君が由比ヶ浜さんを選んだことを悔しく思っているのかしら……いえいえ、私なんかより由比ヶ浜さんの方が女の子らしくて優しくて彼の事を理解してあげてるわ。私なんかじゃ足元にも及ばないほど…

「……っ…でも……!」

やっぱり彼には私を選んで欲しかった。その気持ちは由比ヶ浜さんよりも大きいと思う。そんな事を考えていると涙が零れてくる。こんな大通りの公の場所で……恥ずかしい…

 

私は全てを失った。

生まれたときから何一つ不自由無く生きてきた。でも、人間として大事なものを私は何一つ持ってなかった。お金や美貌は有っても友達と居場所はなかった。家族はいても愛情はなかった。

そんな私にできた唯一の居場所。それが『奉仕部』。

彼処は私に色んな事を教えてくれて与えてくれた。私になかったもの全てを…だからこそ失いたくなかった。けどそうはいかない。

由比ヶ浜さんには黙ってフライングしたのだから…比企谷君に気持ちを伝えることを…だからこそ彼が由比ヶ浜さんを選んだならば私はフライングした償いとして奉仕部を去る義務があるのだ。だから、私は………………

 

「……どこ行く気だよ」

 

空を眺めて呆けてる私の耳に聞き覚えしかない声が入ってくる。今、私が一番会いたくない人の声が…

 

「…比企谷…君…」

 

まだ、私の目からは涙が流れたままだった。しかし、彼は表情一つ変えず私に近づいてくる。彼をよく見ると汗をかいて息も荒い。恐らく走って追いかけてきたのだろう。『由比ヶ浜さんと付き合うことになった』なんていう私が今一番聞きたくない事を報告するためだけに…彼は変に律儀なところがあるから、こういう時は本当に迷惑でもある。

 

「どうしたの?比企谷君?」

私は何も分からない振りをして頑張って笑顔を作る。この笑顔は見えないが自分史上最も不細工な笑顔になっているだろう。

彼はこうやって色々と考えて悩んでいる私の事なんて考えずに近づいてきて遂に私の目の前まで来る。やっぱり汗と息が荒い。

「お前何がしたいんだよ」

彼はそう言って私の目を少し睨み付けるようにしながら言ってくる。でも全然怖くない。だって彼の誰にも負けない優しさを私は知っているから。

「見て分からない?帰宅途中よ?」

「…なら、何で何時もみたいに『今日はここまでにしましょう』って俺達に言わなかった?」

「言わなくても貴方は帰るでしょ?由比ヶ浜さんとね」

相変わらず私は格好悪い。皮肉っぽく言ったって所詮は負け犬の遠吠えだ。これ以上彼と今話していると更に自分が嫌になってくる気がしたので私は何も言わずに彼に背中を向けて再び帰路につく。

しかし、それで離してくれる比企谷君ではなかった。「待てよ」と言い私の肩を掴む。その力は強く、そして力のない私には痛い。

「痛いわ。離してくれないかしら?」

そんな事で彼は当然離してくれない。更に彼は私の目から視線を逸らさずにずっと見つめてくる。すこし彼にここまでじっと見られると恥ずかしい。

「雪ノ下」

「なに?」

そして彼は一拍置いて…

 

「好きだ」

 

それだけを言うと私の肩を離す。でもその肩を離す時の感覚を私は全く感じられなかった。だってその前の言葉が衝撃的だったから。

「何を言っているのかしら?意味が分からないのだけれど…」

何せ今の言葉は由比ヶ浜さんに本来は告げなければいけない言葉だ。彼は人を間違えてる。しかし、彼が由比ヶ浜さんと私を間違えるなんて事は人間が魔法を使えるようになる可能性よりも遥かに低い。なら、何故私に言うのか…

「なら分かるまで言ってやるよ。好きだ雪ノ下」

「貴方頭が可笑しくなったの?それは私に言う言葉じゃないわ」

「………」

私がそう言うと彼はすこし口ごもりながら黙り込む。それでも彼は意を決したかの様に…

 

「俺は由比ヶ浜も雪ノ下も両方好きだ。けどな、俺が大切にしたいと思うのは…一緒に居たいと、一緒に居て落ち着くのと、一緒に居て幸せなのは雪ノ下。お前なんだよ。俺の言葉が信じられないのは分かる。昨日今日で俺はお前も由比ヶ浜も傷つけた。でも、それには理由があるんだ。訳は話せないけどそれは信じてくれ。そして、出来るのなら…まだお前が俺の事を好きでいてくれているのならーー

 

俺に触れてくれ」

 

全くもって理解不能だ。彼の意図が分からない。けど、それを悪いとは思わない私がいる。喜んでいる私がいる。

出来るものなら触れたい。それでも私の手は動かない。彼の手に触れれば全てが変わる。彼が由比ヶ浜さんを選ぶことによって私が消えるように、彼が私を選んで応えると由比ヶ浜さんが居なくなる。この恋はそういう恋なのだ。一つを選べば一つが消える。元のままではいられない。

なら、ここで彼の手に触れなければどうなる?比企谷君は由比ヶ浜さんを選んだりなんてしない。彼はそんな屑じゃない。ここで彼の手に触れなければ一番最悪な未来が訪れる。きっと比企谷君は私から離れる。由比ヶ浜さんは私と距離を置く。そして、奉仕部は消える。

そんな事はあってはならない。私の唯一の居場所。そこを守るために彼の手に触れるのは彼に失礼だ。自分の欲のために彼の決死の告白を利用するなど言語道断だ。

でも、私もそろそろ素直になってもいいのではないか?と思う。さんざん遠回りをしてきた。だからこそ本来見るはずの無かった景色も見れた。それはとても良い景色だった。だからこそ、その景色を忘れたくないし彼等に忘れさせたくないーー

 

「…ねぇ比企谷君?」

 

私の声は少し上ずったような声になっていた。彼は気づいているのかどうか分からないが「何だ?」と言う。

言いたいことは決まってる。けど、怖くて言えない。言えば何が起こるか分からないから…

そんな時に私は視線を少し下に反らして彼の手を見た。すると、彼の手は小刻みに震えていた。

彼も怖いのだ。私と同じように悩み苦しみ、そして私と違って覚悟を決めた。その覚悟の言葉は私に届いた。ならば私もちゃんと覚悟を決めなくてはいけないーー

 

息を吸って少し長く深呼吸をする。その間に言いたいことの全てを考える。でも、中々纏まらない。ふふ…こういう時の私はやっぱり弱いわね…

でも、これだけは絶対に言わなくてはいけないと思ってるから先に言わしてもらうわーー

 

私は彼の私に延びている手に触れてーーー

 

「私も貴方の事が好きよ。この世の何よりも、誰よりも何倍も何万倍も好き。私も貴方と一緒に居たい、貴方と一緒に居て幸せと思える。でもね?一つだけ言わせて頂戴」

 

私はもう一度深呼吸をする。そしてーー

 

「『まだお前が俺の事を好きでいてくれているのなら…』ですって?馬鹿にしないで欲しいわね…私が貴方の事を忘れる日が来るとしたらそれは私が死ぬときよ?」

 

そう言って私の手は彼の頬に触れる。

 

「…おいおい、そんな言葉が氷の女王から出るとは思わなかったぜ。それに…女王とは言えど涙は氷じゃなくて水なんだな」

そう言い、彼は私の目から未だに流れている涙を拭く。

「こ、これは…その…汗よ…!」

「誰がそんな言葉で納得するんだよ」

「ふふ…そうね。八幡」

「…!お前…」

彼に聞きたい事や聞いて欲しい事は沢山あるし、やりたい事も沢山ある。それはこれからの長い人生で二人でゆっくりとやっていけばいいと思う。とりあえずはーー

 

ーーー

ーー

 

これで良かったのだろうか…と思っていたが雪ノ下に八幡と呼ばれた瞬間に悪くないと思ってしまった。

まぁ、これから何かと厄介な事もあると思うが二人で頑張っていこうと思う。

 

「ねぇ…八幡?」

 

俺の名を呼んだ雪ノ下はさっきまで泣いていたとは思えない笑顔でーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「子供は何人欲しい?」

 

「……え?」

 

【選べ】

 

え…?ちょっと、え?

雪ノ下さん?絶対選択肢さん?

 

 

【①野球チームが作れるくらいかな!】

【②八幡に因んで8人かな!】

 

 

……………はいはい。分りましたよ。言えばいいんでしょ言えば!もう頭痛は勘弁だからな!もう言うぞ!?言っちゃうぞ!?本当に言うからね!?あんなに良い雰囲気だったのに絶対選択肢のせいで台無しなるじゃねぇかよ!ちくしょぉぉぉぉぉ!

 

ーーーー

ーーー

ーー

 

 

 

 

 

「八幡に因んで8人かな!!」

 

 

 

【①5話を待つ】

【②次話を待つ】

【③雪ノ下編後日談を待つ】

 

 




………終わり方、コメディにしなかったら良かった。

さて、4話終了です。次は後日談ですが、かなりブッ飛んでます。お許しください。活動報告にも書きましたが大分忙しくなってたここ最近ですが落ち着いてきたのでまた再開していきたいと思います。では!5話で会いましょう!
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